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Page:Kokubun taikan 01.pdf/198

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れど殊に引き繕ひ給へる御用意いとめでたく見え給へば、御供なるすきものども所からさへ身にしみて思へり。御心にもなどて今まで立ちならさゞりつらむと過ぎぬる方悔しうおぼさる。物はかなげなる小柴を大垣にて板屋どもあたりあたりいとかりそめなめり。黑木のとりゐどもはさすがにかうがうしく見え渡されて煩はしき氣色なるに、かんづかさの者ども此處彼處にうちしはぶきて己がどち物言ひたるけはひなども外にはさま變りて見ゆ。火燒屋幽かに光りて人げ少くしめじめとして、此處に物思はしき人の月日を隔て給へらむ程をおぼしやるにいといみじうあはれに心苦し。北の對のさるべき所に立ち隱れ給ひて、御せうそこ聞え給ふに遊は皆やめて心にくきけはひあまた聞ゆ。何くれの人傳の御せうそこばかりにて自らはたいめんし給ふべきさまにもあらねばいとものしとおぼして、「かやうのありきも今はつきなきほどになりにて侍るをおぼし知らば、かうしめのほかにはもてなし給はでいぶせう侍ることをもあきらめ侍りにしがな」とまめやかに聞え給へば、人々げにいとかたはらいたう立ち煩はせたまふに、「いとほし」などあつかひ聞ゆればいざや此處の人目も見苦しうかのおぼさむこともわかわかしう出で居むが今更につゝましきことゝおぼすに、いと物憂けれどなさけなうもてなさむにもたけからねば、とかう打ち嘆き休らひてゐざり出で給へる御けはひいと心にくし。「こなたは簀子ばかりの許されは侍るや」とて、のぼり居給へり。花やかにさし出でたる夕づく夜にうちふるまひ給へるさまにほひ似る物なくめでたし。月頃のつもりをつきづきしう聞え給はむもまばゆきほどになりにければ、榊をいさ