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Page:Kokubun taikan 01.pdf/146

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とていぬきがこれをこぼち侍りにければ繕ひ侍るぞ」とていとだいじとおぼいたり。「げにいと心なき人のしわざにも侍るかな。今つくろはせ侍らむ。今日はこといみして、な泣い給ひそ」とて出で給ふ氣色いと所せきを、人々はしに出でゝ見奉れば、姬君も立ち出でゝ見奉り給ひて、ひゝなの中の源氏の君繕ひたてゝうちに參らせなどし給ふ。「今年だに少しおとなびさせ給へ。とをにあまりぬる人はひゝな遊は忌み侍るものを、かく御をとこなど儲け奉り給ひてはあるべかしうしめやかにこそ見え奉らせ給はめ。みぐしまゐる程をだに物うくせさせ給ふ」など少納言聞ゆ。御遊にのみ心入れ給へれば耻しと思はせ奉らむとていへば、心の中に我はさはをとこまうけてけり、この人々のをことてあるは醜くこそあれ、我はかくをかしげに若き人をももたりけるかなと今ぞおぼし知りける。さはいへど御年の數そふしるしなめりかし。かく幼き御けはひの事に觸れてしるければ殿の內の人々も怪しと思ひけれど、いとかう世づかぬ御そひぶしならむとは思はざりけり。うちより大とのにまかで給へり。例のうるはしうよそほしき御さまにて心美しき御氣色もなく苦しければ「今年よりだに少し世づきて改め給ふ御心見えばいかに嬉しからむ」など聞え給へど、わざと人すゑてかしづき給ふと聞き給ひしよりはやんごとなくおぼし定めたることにこそはと心のみ置かれていとゞ踈く耻しくおぼさるべし。强ひて見知らぬやうにもてなして、亂れたる御けはひにはえしも心强からず御いらへなどうち聞え給へるは猶人よりはことなり。四年ばかりがこのかみにおはすれば、うち過ぐしはづかしげに盛にとゝのほりて見え給ふ。何事かはこの人