るから、何う云ふ譯だと聞くと、使者が云ふには、子供の時に能く手習かなんかするに、物忘れ致し、其時に親父やお母が尻をつめツて吳れた、スルと痛い〳〵と思つて、思ひ出した事が御座るから、氣の氣だが三太夫さんに尻をつめツて吳れと賴んだのだ、三太夫さん宜しい遠慮なく尻をまくれと、尻をまくらして一生懸命でつめると、當人一向に通じませんと來るのだ、終には田中さんも額へ靑筋を出して、土手をかじつてつめつたが一向に通じませんだ 熊「オイ留公、土手と云ふのは何んだ 留「三太夫さんは齒が無いから土手じやアないか、夫れだからな餘り可哀想だから俺が是から往つて、一番尻をつめつてやらうと思ふのだ 熊「廢せよ、夫れだから汝の事をお煙草盆と云ふのだ、何んて云ふと人より先へ出たがる 留「默つて居ろ、ベラ棒め此方は是でも江戶子だ、人の困るのを見て居られるかイ、一番つめつて助けて遣るのだ、若し尻が堅くつて氣が付なければ、此の釘拔でつめつて遣るのだ、 熊「オイ無暗な事をするな 留「宜ひつて事よ」とヅカ〳〵と御中の口へ遣つて參り