粗忽(そこつ)の使者(ししゃ)
粗忽(そこつ)の使者(ししゃ)と云(い)ふお話(はなし)を申上(まをしあ)げます、粗忽(そこつ)の者(もの)を使(つか)つて寄來(よこ)すと云(い)ふは誠(まこと)に可笑(をかしい)樣(よう)ですが、昔(むかし)は御大名方(おだいみやうがた)が御本丸(ごほんまる)へ御登城(ごとじやう)遊(あそ)ばす時(とき)に、殿樣方(とのさまがた)が種々(いろ〳〵)御自慢(ごじまん)の御話(おはなし)を爲(な)さいます ○「是(これ)は松平殿(まつだひらどの)、御貴殿(ごきでん)何(な)にか面白(おもしろ)いお話(はなし)は御座(ござ)らぬかな 松「左樣(さやう)別(べつ)に面白(おもしろ)いと云(い)ふ事(こと)も御座(ござ)らんが、拙者(せつしや)は米(こめ)を飯(めし)に致(いた)す事(こと)を存(ぞん)じ居(を)るが、如何(いかゞ)で御座(ござ)