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だつた。
四
「ハヽヽヽヽヽ、今日は面白いものが見られるぜ」
自動車が途中で止ると、ぬつと這入つて来たのは、例の怪異な相をした小男の手塚だつた。
「眼の動く人形と云うのはどう云う事なのですか」簑島は幾分心易く聞いた。
「まあ、暫く辛抱し給え。直ぐ分るから」
自動車はやがて宏壮な建物の前に止つた。それは思いがけなく代議士の菅原精一の家だつた。
二人は直ぐに、贅沢の限りを尽した広々とした応接室に通された。
やがて腮髯を長く延ばして傲然とした中年紳士が、
「何か用かね」と云つた。
「余り好い用じやないよ」手塚は揶揄うような口調で、
「ちよつと許り無心に来たのさ」
「怪しからん」菅原はむつとしたように、
「無心なら無心らしく云うが好い。その口の利き方は何だ」
「ウフヽヽヽ」手塚は薄気味悪い笑を洩らしながら、
「無心にだつて頭を下げて貰うのと、威張つて貰うのとあらあな。俺のは頭を下げるような生優しいのじやないのだ。おい、菅原、俺は之が買つて貰いたいのだ」
そう云うと共に手塚はトンと力強く卓子に何か叩きつけた。見ると、それはいつの間に取り出したか、一つの金属製の人形だつた。
「あツ、それは」菅原はサッと顔の色を変えた。
人形は例の亀津が白石の所から盗み出したものに相違なかつた。顔は確かに彼の語つたように一目見てもぞつとする程妖異な相で、膚は蛞蝓のように蒼白く光つていた。そして、何よりも怪奇に恐ろしく見えたのは、そのギロ〳〵と動く両眼だつた。
「どうだ、驚いたろう」手塚はせゝら笑いながら、
「このギロ〳〵動く眼は、恰度天秤の皿のように、眼の玉と同じ重さのもので平衡を取つて、