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Page:Gunshoruiju18.djvu/774

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 隔つなよ我世のなかの人なれはしるもしらぬも草の一もと

あくれば八月十三日。あさ霧いよふかくして。道もさだかにみえわかず。馬にまかせて行。長井の庄にもつきぬ。まことやわかむらさきの卷に。かゝるあさ霧をわけいらんとあるもこれなるべし。大澤の庄などを行に。やうやうすみ田川にもつきぬ。河づらをみれば。まことにしろき鳥のはしとあしとあかき鳥のむれゐて。魚をくふありさま。むかしをおもひいでて。

 都鳥隅田かはらに船はあれとたゝその人は名のみありはら

むかひは安房上總まのあたりに見わたさる。こゝに葛西の庄淨興寺の長老。とし八十餘にをよべるが迎にいでられ。寺內に立より一宿すべきよし申されければ。河をわたり。かの寺に行て一宿するに。夜に入。風ひやゝかに吹たり。松風入琴といふ事を思ひいでゝ。

 松風の吹聲きけはよもすからしらへことなるねこそかはらね

あくれば。駒をはやめかへらんとて。もとの道にさしかゝり。いつこよろぎの磯づたひ。日數つもりてけふは八月中旬にも成ぬ。小田原にこそつきにけれ。

右武藏野記行以扶桑拾葉集挍合了