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Page:Gunshoruiju18.djvu/766

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らはれてゆうにははベれ。さてかへりくるみちに。朝倉山のほとりにて。

 むかしをや忘れはてけむ郭公きけとなのらぬあさくらの山

道の行てにひとりかく思ひつゞけける。一日二日ありて名護屋にまかりけるに。みちすがらの名所どもたづねとはせければ。是ぞいきの松ばらと申すといふ。さる事あり。太宰帥隆家筑紫にくだりける時。扇たまはせ給ふとて。枇杷大后宮。凉しさはいきの松ばらとよみしところにぞあなるか。まことに歌人はゆかずして名所をしるとことわざにいへるがごとく。松原の景氣海にちかく。ちとさしあがり。たかきところなれば。すゞしかるベき境地なり。玉嶋川。松浦川。何もやがて海にながれいでてぞ侍る。松浦川は七瀨の淀とよめるにたがはずいと大きなる川にてぞありける。彼松浦さよひめがひれふりしより名にいはれけむ山も。けぢかき程にみえていとおかしきさまなり。鏡の神にといへるも。都にておもひおこせしほどは。いとはるかにて。いかなりけむ宮居ぞなどこゝろあてにせしことも。おもかげうかびたるやうに覺えて。いとすぐれたりける。其日なごやにいたりて。草まくらむすびさだむるほどもはベらぬに。ほとゝぎす一こゑをとづれて過ければ。

 郭公はつ音きくにはなくさまて出し故鄉なをそ忘れぬ

なれもかへらむにはしかじとなけば成べし。ふるさとのたよりもとめてかくなむいひつかはしける。

 あまさかる ひなのなかちに おとろへて 心つくしの

 旅のそら 草葉を分る たもとより をくるゝ跡の

 なみたのみ かゝる袖こそ わひしけれ けふてをゝりて

 かそふれは をのかふる里 立いてし 日數の程も

 いまははや とをとてむつに なりにけり たのむこととは

 むはたまの 夜の衣も かへしつゝ 夢のたゝちの