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Page:Gunshoruiju18.djvu/523

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いでに。侍從大夫などのことはぐくみお[ほイ]すべきよしもこまかにかきつけて。おくに。

 きみをこそ朝日とたのめ古鄕に殘るなてしこ霜にからすな

と聞えたれば。御かへりもこまやかにいとあはれにかきて。歌の返しには。

 思をく心とゝめは古さとの霜にもかれしやまとなてしこ

とぞある。いつゝのこどもの歌のこりなくかきつゞけぬるも。かつはいとをこがましけれど。おやの心にはあはれにおぼゆるまゝにかきあつめたり。さのみ心よはくて[はイ]いかゞとて。つれなくふりすてつ。あはだぐちといふ所より車はかへしつ。ほどなくあふさかのせきこゆるほどに。

 さためなき命はしらぬ旅なれと又あふ坂とたのめてそ行

のぢといふ所はこしかた行さき人もみえず。日は暮かゝりていと物がなしとおもふに。時雨さへうちそゝぐ。

 うちしくれ古鄕思ふ袖ぬれて行先遠き野路の篠原

こよひはかゞみといふ所につくべしとさだめつれど。くれはてゝゆきつかず。もり山といふ所にとゞまりぬ。こゝにも時雨なをしたひきにけり。

 いとゝ猶袖ぬらせとや宿りけんまなく時雨のもる山にしも

けふは十六日の夜なりけり。いとくるしくてふしぬ。いまだ月のひかりかすかにのこりたるあけぼのに。もり山をいでてゆく。やす川わたるほど。さきだちて行たび人のこまのあしをとばかりさやかにて。きりいとふかし。

 旅人はみなもろともにあさたちて駒打わたすやすの川霧

十七日の夜はをのゝしゆくといふ所にとゞまる。月いでて。山のみねに立つゞきたる松の木のま。けぢめみえていとおもしろし。こゝは夜ふかき霧のまがイひにたどりいでつ。さめが井といふ水。夏ならばうち過ましやとおもふに。