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Page:Gunshoruiju18.djvu/479

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 なかれ行身にしあらすはすまの浦とまりて夜はの月に見てまし

同日。夕方巡‐見石屋幷繪嶋。靑巖之形。綠松之躰。碧潭之色。晚嵐之聲。其感興忘愁緖ヲ了。卽繪嶋ノ明神詣シテ法施法樂。

 見るはかりいかゝ語らむ繪嶋潟むへしを神はこゝにすみける

四日。石屋ヲタチ乘船。瀧ノ口ニイタリテヲル。海路七里。海路之樣。西ハ淡路嶋。臨行バ奇巖滑石宛モ如山水。東千里。靑山ダモハルカニ遠シ。其中ニ眺望末ニアタリテ。幽ニ高野山ミユ。山門寺中ノコトナムドモオモヒヤラレテ。アハレニオボエテ。舟中ノ人々ニアスヨリハ高野ノミユル所ハ有間敷歟ト問バ。淡路山中ニ入候ナバ高野ノミユル所ハヨモ候ハジトイフヲ聞テ。

 はなれくる高野の山の霞をもけふはかりやはなかめ暮さん

同日。船ヲ下テ。陸地三里行テ。淡路國府八木ニ至テ中一日ヲ經タリ。石屋宿ニテハ淡路配國人同道同宿之間。互世出世之事等相談シテナグサム事アリ。件人ハ瀧ノ口ニトヾマリヌ。又此八木ノ宿ヨリハ只同朋一兩輩許也。羈旅ノ思マコトニ心ボソシ。

 さらぬたにねさめおほかる草枕まとろむ夢を吹嵐哉

六日。國府ヲ立三里行て。フクラノトマリ二至ル。風あしくして三ケ日逗留。西風ハゲシク時々雪フヾキスサマジク物アハレ也。

 興津風ふくちかいそにひかすへてならはぬ浪にぬるゝ袖哉

 行さきもわかふるさとにあちなくに爰を旅とは何急くらん

十日。フクラヲタチ阿波ノ戶ヲワタリテ佐伊田二ヲル。海路三里餘。シマ入江々々ノ有樣。悅目養意。舟ヲヲリテ阿波國坂束郡大寺二宿ス。

十一日。大寺を立て。大坂をして。讀岐あいの中の山なる大津賀ニイタル。路間九里餘。

十二日。サヌキノ國府ニイタル。路間六里。廳