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Page:Gunshoruiju17.djvu/253

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あそびなどもなかりけり。大じむかんだちめをめして。いづれの山かてんにちかきととはせ給ふに。ある人そうす。するがの國にあるなるやまなん。此みやこもちかく。天もちかくはむべるとそうす。これをきかせ給ひて。

 逢事もなみたに浮ふわか身にはしなぬ藥もなにゝかはせむ

かのたてまつるふしの藥にまたつぼ[のつぼに御文イ]ぐして。御つかひにたまはす。ちよくしには。月のいはがさといふ人をめして。するがの國にあなる山のいたゞきにもて[ゆイ]くべきよしおほせ給ふ。岑にてすべきやうをしへさせ給ふ。御ふみ。ふしのくすりのつぼ。ならべて火をつけてもやすべきよしおほせ給ふ。そのよしうけたまはりて。つはものどもあまたぐして山へのぼりけるよりなむ。そのやまをふじのやまとなづけける。そのけぶりいまだ雲の中へたちのぼるとぞいひつたへたイる。

右竹取翁物語以織部正乘尹主藏本書寫以古寫三本及活板本幷流布印本挍合畢