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Page:Gunshoruiju17.djvu/129

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群書類從卷第三百七


物語部一

伊勢物語 朱雀院塗籠御本


むかしおとこありけり。うゐかぶりして。ならの京かすがの里にしるよしして。かりにいきけり。其さとに。いともなまめきたる女ばら[女はらからイ]すみけり。かのおとこかいま見てけり。おもほえずふるさとに。いともはしたなくありければ。心ちまどひにけり。男きたりけるかりぎぬのすそをきりて。うたをかきてやる。そのおとこしのぶずりのかりぎぬをなんきたりける。

 かすかのゝ若紫の摺ころもしのふのみたれかきりしられす

となん。をいつぎてやれりける。となんいひつぎてやれりけるおもしろきことゝや。

 陸奧に忍ふもちすりたれゆへに亂れそめけん我ならなくに

といふうたのこゝろばへなり。むかし人は。かくいちはやきみやびをなんしける。

昔男ありけり。みやこのはじまりける時。ならの京ははなれ。此京は人の家 いまださだまらざりける時。西京に女有けり。其女世の人にはまさりたりけり。かたちよりは心なんまされりける。人そのみも[ひとりのみにもイ]あらざりけらし。それをかのまめ男うち物かたらひて。かへりきていかが思ひけん。時は彌生の朔日。雨うちそぼふりけるにやりける。

 おきもせすねもせてよるを明しては春の物とて詠め暮しつ

昔男ありけり。けさうしける女のもとに。ひじきといふものをやるとて。