Page:Danpen Hagiwara KyojiroShishu.djvu/63

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窓の側をあぶれの勞働者がつぶれた鳥打を冠つて通つてゐる
マラテスタは夕食のパンを燒かずに食べてゐる
イタリーの革命新聞のため每夜白熱的論文を書いてゐるのである
フランスの監獄から逃亡して來た身をこれからイタリーへ變裝して潛入しやうとしてゐるのだ
マラテスタはいつ見ても同じ元氣の顏をして
繰り返しの投獄
ギロチンに引き廻はされる宣吿
XX
それのどれが眞先きに自分をとらえるか
そのどれへもこれへも腹を裾えて
明日 その渦中に身を沒するマラテスタが屋根裏にペンを握つてゐるのである