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遺芳尙ほ德界に遍く、吾人は此れが著大の薰化に浴す。葢し斯道を產み、斯道を育ひたる社會の狀態は、杳として跡を斂めたりと雖、維れ昔、霄漢萬里に麗りし星辰の、其本體は旣に消燼せるも、而も殘光尙ほ頭上に熒々たるが如く、封建の寵兒たりし武士道は、此れが生みの母たる舊制度の滅後に存し、光輝遂に蔽ふべからず、吾人の道を明かにす。英國エドモンド、ボルクは曾て、哀々の辭を以て、旣に久しく世の顧みざりし歐洲武士道の柩槨を弔せり。予も亦た斯人の顰に倣ひ、其國語を假りて、我武士道を攷究するを以て、自から心に快しとするものなり。

 悲しむべし、外人の東洋に關する知識に缺乏せるの甚しきや。彼の識見該博なること、ジヨージ、ミラー博士の如き