なふなり、
第二十四 修行者の事
ある修行者行くれて、わづかなるあやしのしづのやに、一夜を借ける、主人情ふかきものにて、結綠にとてかしける、比は冬ざれの霜夜なれば、手足こゞへてかゞまりければ、我息をふきかけてあたゝめけり、やゝ有て後、あつき食をくふとて、息を以て吹さましければ、主此由をみて、あやしき法師のしわざかな、つめたきものをば、あつき息かけあたゝめ、あつき物は、ひやゝかなる息を出してさまし侍る、いか樣にも只人のしわざ共見えず、天まの現じ來れるやと、をろかにおそれて、あかつき方に及で追出しぬ、其如く、至つて心づきなき物は、我身に具足したる事をだにもわきまへず、やゝもすれば迷ひがち也、これ程の事をだにもわきまへぬやからは、能事を見せば、かへつて惡しとや思ふべき、かねてこれを心得よ、これをば打聞ば、をろか成樣なれ共、人の世に有て、道にまどへる事、かの主が人の息のあつきとぬるきと、わきまへかねたるにことならず、
第二十五 鷄こがねの
ある人鷄をかいけるに、日々に
第二十六 猿と犬との事
ある女猿、一度に子を二つうみけり、されば我胎內より、同子をうみながら、一つをばふかく愛し、一つをばをろそかにす、彼にくまれ子、いかん共せん方なく、月日を送れり、我愛する子をば、前にいだき、にくむ子をせなかに置けり、或時後よりたけき犬來事有、