指を握り、女は左手に杖、右手は指を握り、男女共足を揃へ、右手・左手かはるがはる屈伸しつゝ、男は「ホッ・ホッ・ホッ」と呼び、女は悲哀なる聲をしぼりて「ホーホー・ホー」と號び、圖に示すが如き順序にて、「ヌサ」(〈幣の集り〉)の前面に至り、先頭なる古老人は、左の如き祈を神に捧げたり。其の肺肝をしぼり出づる悲哀なる祈禱は、聞く者をして、淚を流さゞるを得ざらしめたり。此の間後列の者、及び主人側たる「チン」部落民は、男女共相和して「ホーホー」と號び、心の弱き女は式を終るまで務むる能はずして、泣き崩れ、男とても淚滂沱たりき。
『大昔神世の時代「シーカントコロカムイ」(造物主)は「モシリ」(世界)を創造し、人を作り、此の世界を守護すべく數多の神を降され、中にも「アペフチカムイ」(〈火の神にして女神〉)「シランパカムイ」(〈木を支配する神〉)は最と