Page:Abraham Lincoln by CHOATE(JP).djvu/32

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 當時の訴訟なるものも、亦頗る單純にして、多くは常識にて判するを得たるものなれば、判事も辯護士も小六ヶ敷法律的技巧に訴ふるの必要なかりし也。當時尙ほ未だ鐡道なく、大會社なく、遺產の悶着なく、此等の錯綜より生ずべき込み入りたる法律問題も亦自ら存せざりき。從ッて是等の事に通曉せる專門家なる者も、亦大體に於て必要なかりし也。されど當時のイリノイス州內の辯護士社會には、間々深奧なる法律家のありしは事實にして、此等の人物は皆功名富貴を此の新開の地に求めて來れる也。而してリンコンが辯護士としての力量を發揮し、其の術に習熟するを得たるものは、主として此等專門明達の士と、或は交はり、或は爭ひた