Page:Abraham Lincoln by CHOATE(JP).djvu/20

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背誦する所となれり。斯くして彼の同化力は大に亢進せり。唯理由わけもなく數多き書册を亂讀するよりも、數部の書に就いて沈潜久しきに及ぶことは、却て智力を進め德性を高むることに於て大に有功なることあり。少年リンコンの心は、今や聖書の知識、聖書の語にてみ渡れり。後年此等の語を自在に驅使して人の驚く所となりしもの誠に故ある也。劇しき一日の務終りて、人皆深き眠に入りたる時は、彼が正に讀書を貪る時にてありき。彼は幼より事物に對して獨立の判斷を爲せり。一たび定めたる心のおきては、飽くまで之を守るの習性を作れり。而して是れ實に未來の大統領に缺くべからざる資性なりき。當時紙を得ること能はざりし彼は、每夜