Page:死霊解脱物語聞書.pdf/47

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見づぎ申べしと。ことうけすれば。其時和尚もきげんよく いそぎ寺にかへりつゝ。すぐにはうぢやうへ行たまひ。なつしよきやうてん に近付。やぜんれいこんはいよ去。菊はほんぶくしたれども ゑじきともまづしければ。命をさそふるたよりなし。爾るに かれをぞんめいさするならば。おほくの人のけやくなるへし。なに とぞ命をたすけたく思ふに。まつをのふるぎのあらば 一つあてとらせよ。我も一つはおくるべし。さて方丈の御ぜん 米をかゆにたかせあたへたく思ふなどしてりやうかへり給ふ時 方丈はらうかにたちやすらひ。此事を聞し召なつしよちか つけ仰せられしは。にもかのものゝいふごとく。此女のいのち は大切なるぞや。それよういしてつかはせ。さて是をは だにきせよとてかたしけなくも上にめされしさやの御 こそでを。ぬがせたまひ下しつかはされける時。名主年寄 兩人を急度めしよせられ。じきに仰らるゝは。汝らよくがつ てんして。菊が命をまもるべし。そのゆへは我〻きやうしやくをつ たへて。せんまんにんすれども。みなこれだうりしごくぶんにし て。いまだげんしやうあらはさず。爾るに此女は。直にぢこくこく らくを見てよくゐんぐわを顕す者なれば。ばんけやくしやうこなり。ずいぶんせつかいほうせよ。なをざりにもてなし なせたるなど聞ならば。此ぐきやうじおんねんなんぢらにかゝる べし。とはげしくけうくんしたまへば。二人の者どもなみだ をながし。かしこまつて御前を立。急き羽生へ帰りつゝ。方丈