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七、婦女子の風俗と夏冬の服裝

 マハネク(婦人)頭髮はあごの上兩耳各一寸五分位の處より周圍全部を刈り前面鼻を目標とし頭上の髮を左右に分ける。其頭頂にはヘトムイ(圓形にして天鵞絨其他綿布を以て作りたるもの)スマリルシ(狐皮)ロツセ(木鼠)等の皮類にて作りたるものと二種あり、天鵞絨にて作りたるものには種々の色彩を施し小玉類を附ける。それを載せる是は髮毛の亂れを防ぐ爲なり。

 マハネ、クイカム、ハツカ(婦人帽子)と稱して(綿布に綿を入れたる帽子)を外出の時に冠る、ナンチエソエ(無綿又は薄綿を入れたる物にして丁度覆面帽に似たるもの)兩方共頂上に綿を入れたる細長き物を巧に之を組合せ附けるなり。


八、伊達栖原當時のアイヌ

 アイヌ人の近昔即ち伊達栖原當時のアイヌは(六十年前)夏期に北海道より樺太島に年々漁業經營上內地方面より輸入されし米等を勞役に或は物品交換に依り得る位故米等の常食は出來得ない、冬期は殊に交通不便の爲米食を取る事は不可能の狀態であつた。伊達栖原の兩氏が樺太に漁業經營上番家