Page:成沢玲川『米国物語』.djvu/76

スター（君）と云ふ背（ひ〔ママ〕）廣（びろ）式（しき）を喜ぶので、大（だい）統（とう）領（りやう）でも悉くミスター誰々で通（とほ）つて居 る。米人の英（えい）語（ご）辭（じ）書（しよ）のうちでオノラブルなどは量も黴（かび）の生（は）へた言葉の方であら う。然（しか）るに日本人はオノラブルといふ尊（そん）稱（しよう）を好む國民だと云ふことも彼（かれ）等（ら）が奇 妙に感ずる所で日本語を直（ちよく）譯（やく）すると「御」の字がオノラブルの意（い）味（み）に當（あた）るから、 其やゝつこしいのに驚（おどろ）くのも無理は無い。ハースト系（けい）の排（はい）日（にち）新（しん）聞（ぶん）は其後日本人 の事を書（か）くのにオノラブル、ジヤツプ（ジヤツプ閣（かく）下（か））と云ふ皮（ひ）肉（にく）極（きは）まる文字を 案（あん）出（しゆつ）して是を見出しに使ふなど誠に始（し）末（まつ）に行かぬ惡（あく）德（とく）記（き）者（しや）共（ども）である。しかし此 頃は米人も段（だん）々（〳〵）覺（さと）つて來て、ジヤツプといふ言（こと）葉（ば）を使（つか）はぬ申し合せをした處も あるとは、遲（おそ）蒔（まき）ながら兩國々交の爲めにも結（けつ）搆（こう）なことであると思ふ。

所が玆（こゝ）にジヤツプの如く國（こく）家（か）的（てき）ならずして個人的に日本人の憤（ふん）怒（ど）を招く言葉 がある。夫（そ）れはチヤ〜レーと云ふ名（な）前（まへ）で、白人が日本人を見ると「お早う（グツドモーニング）チヤ