洋食はレストランにては普通一食二十五仙、五十仙、七十五仙、一弗、夫れ
以上はお好み次第であるが、二十五仙、五十仙程度のものが最も多い。而し日
給一弗乃至二弗の勞働者に取つては、一食二十五仙、三食〔ママ〕七十五仙は贅澤過ぎ
る所から、十五仙食と云ふのがあつて大抵歐州移民の經營するものである。
生活程度の高い米人には二十五仙以下の洋食店は經營し切れぬのである。所が
日本人は一層安い十仙食と云ふのを經營して、勞働者のお得意を取り。千客
萬來で金を儲ける。ポートランドだけでも十仙食は二三十軒あるが、悉く山
口縣人の經營であるのを見ても、日本人も地方によつて營業の特質があること
が分るであらう。
徹夜仕事の多い勞働者を相手の商賣であるから十仙洋食店は徹夜營業をする
ので、斯る勉强は日本人ならでは到底出來ぬことである。偖十仙で何んな物を