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に戰ひ、後に敵する人は前に降り、是が爲に​英雄​^{​エイイウ​}の​大業​^{​タイゲフ​}も、​確實​^{​クワクジツ​}なる​詳傳​^{​シヤウデン​}を失ふに至れリ。而して​喇失惕 額丁​^{​ラシツド エツヂン​}は之を用ひて集史を作り、​察罕​^{​チヤハン​}は之を譯して開天記を作り、元史の太祖︀ 本紀も之に依り、元史 類︀編その外 有らゆる史編は皆 元史に依れり。​朶遜​^{​ドーソン​}の蒙古史 出でて、​歐羅巴​^{​ヨウロツパ​}の史學者︀は皆 之を以て太祖︀の實傳とし、洪鈞の元史 譯文 證補 出でて、錢大昕の​卓說​^{​タクセツ​}も「非​（ズ）_㆓篤論​（ニ）_㆒矣」と​誹​^​ソシ​られたり。然らば修正 祕史の​勢​^{​イキホヒ​}を得たるは、我が日本紀の如くにして、此書の​位置​^​ヰチ​は、​前時​^{​ゼンジ​}の古事記に似たり。故に​余​^​ワレ​は、此書の譯本を蒙古 古事記と名づけんと欲したり。

　然れども此書は又 古事記と​異​^​コト​なる處あり。古事記は、千餘年の閒に​渉​^​ワタ​れる古傳を今より千二百年 ​前​^​マヘ​に書ける者︀なり。此書は百餘年の閒の​耳​^​ミミ​に​聞​^​キ​き​目​^​メ​に​覩​^​ミ​たる事を今より六百 六十餘年 ​前​^​マヘ​に書ける者︀なり。先世の系譜を述べたる處は、我が古事記に善く似たれども、そは篇首 一卷にも滿たず。古事記は​過半​^{​クワハン​} ​神︀話​^{​シンワ​}なれども、此書は殆ど皆 實傳なり。故に此書は、上古史に非ずして、近世史なり。古の事を​追敍​^{​ツヰジヨ​}せる歷史に非ずして、當時の事を​直敍​^{​チヨクジヨ​}せる記錄なり。之を我が古事記に​凝​^{​ナゾラ​}ふるは、​僭​^​セン​に非ざれば​妄​^​バウ​なり。その​體裁​^{​タイサイ​} 最も實錄の書に近きが故に、今は古事記の名を​罷​^​ヤ​めて、實錄の名を取れり。

　​實錄​^{​ジツロク​}は、​唐宋​^{​タウソウ​} ​以來​^{​イライ​} ​世​^​ヨ​ ​毎​^​ゴト​に必ず​撰述​^{​センジユツ​}せらる。​天子​^{​テンシ​} ​崩​^​ホウ​ずれば、​嗣帝​^{​シテイ​}の​世​^​ヨ​には​大抵​^{​タイテイ​} ​先朝​^{​センテウ​}の實錄の​撰修​^{​センシウ​}に​取掛​^{​トリカヽ​}れり。故に實錄は、史書