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長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典あいさつ (2001年)

提供:Wikisource


 本日ここに、被爆五十六周年の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典が執り行われるに当たり、原子爆弾の犠牲となられた数多くの方々の御霊に対し、謹んで哀悼の誠を捧げます。そして、今もなお、被爆の後遺症に苦しんでおられる方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。

 今から五十六年前の今日、原子爆弾の投下により、幾多の尊い生命が一瞬にして失われ、この長崎の地は廃墟と化しました。現在では市民の皆様の並々ならぬ御努力により、「国際文化都市長崎」として、ますますの発展を遂げておりますが、現在の平和と繁栄の礎に、原子爆弾の惨禍による尊い犠牲があることを決して忘れることはできません。

 人類史上唯一の被爆国である我が国は、平和憲法を遵守し、非核三原則を堅持するとともに、原子爆弾による惨禍が再び繰り返されることのないよう、核兵器の廃絶と恒久平和の実現を、国際社会に訴え続けてまいりました。

 昨年十月の国連総会において、我が国は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効など、核軍縮・核不拡散のための具体的措置を盛り込んだ「核兵器の全面的廃絶への道程」と題する決議案を提出し、圧倒的多数の支持を得て採択されたところです。 また、本年九月には、CTBT発効促進会議がニューヨークにおいて開催されます。 我が国としては、これまでも様々な機会を通じてCTBT発効のための努力を行ってまいりましたが、この会議が成功するよう努力するとともに、更にこれを契機として、一層、積極的に各国への働きかけを行ってまいります。

 こうした中、昨年長崎市において開催された「核兵器廃絶-地球市民集会ナガサキ」の成功は、核兵器の廃絶に向けて国内外の非政府組織の力を結集した取組として、誠に意義深いものがあります。 さらに、現在、世界平和連帯都市市長会議が、長崎と広島で開催されておりますが、世界の多くの都市が連帯し、核兵器廃絶の国際世論を喚起しようとしていることは、大変心強いものであります。

 また、被爆者の方々に対しましては、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」に基づき、保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護施策の充実を図ってまいりました。 今後とも、高齢化が進む被爆者の方々の実状を十分に酌み取りながら、援護施策の推進に誠心誠意努めてまいります。

 私は厚生大臣を務めていた際、本慰霊平和祈念式典に参列させていただきましたが、総理大臣として、本日の式典に臨み、改めて、平和への決意を新たにし、我が国が、今後とも国際社会の先頭に立ち、核軍縮・核不拡散の取組を押し進め、核兵器の廃絶と恒久平和の実現に向けて、全力で取り組んでいくことを御霊の前にお誓い申し上げます。

 終わりに、原子爆弾の犠牲者の方々の御冥福と、御遺族並びに被爆者の方々の今後の御多幸を心からお祈りし、併せて参列者並びに長崎市民の皆様の御健勝を祈念申し上げます。

平成十三年八月九日

内閣総理大臣 小泉純一郎