鐵道震害調査書/第一編/第二章/第十一節
第十一節 東北本線(秋葉原古河間40哩)
築堤 築堤の被害󠄂は蕨浦和間に於て延󠄂長130呎間最大約2呎6吋沈下したる外,約1呎以下の沈下數箇所󠄁を數ふるに過󠄁ぎず。
土留壁 上野日暮里間に於て土留石垣約80面坪󠄁崩󠄁壞せり。
橋梁 荒川橋梁は鈑桁用橋臺並に橋脚悉く沈下し,傾斜󠄁せるもの亦多し。鈑桁用橋脚第35號󠄂の如きは5呎餘沈下し,構桁用橋脚第39號󠄂(2箇の井筒の上端に拱を架して一體と爲せるもの)は井筒上端連結部に於て水平󠄁に切斷せられ,又󠄂第40號󠄂はその一部に水平󠄁龜裂を生ぜり。利根川橋梁は上り線第三號󠄂橋脚に水平󠄁罅裂を生じ,第二號󠄂及び第九號󠄂橋脚は傾斜󠄁並に床石目地切斷し,第十一號󠄂橋脚は沈下し,又󠄂下り線に於ては6箇の橋脚沈下したり。
停車場 驛本屋は上野驛の煉化石造󠄁,上家は上野驛乘降場の木鐵混造󠄁なりしを除き他は全󠄁部木造󠄁なりしが,上野驛本屋及び上家は全󠄁燒し秋葉原驛は本屋及び上家の過󠄁半󠄁數燒失し,蕨驛本屋及び上家は倒潰し,その他は何れも被害󠄂小なり。尙秋葉原倉庫はその貯藏品と共に燒失せり。(寫眞第百八十九乃至第百九十一參照)
諸建物 甞て上野驛の機關庫なりし煉化石造󠄁半󠄁潰して火災に罹り田端機關庫(煉化石造󠄁)は壁に龜裂を生ぜしのみにて被害󠄂小なり。大宮工場に於ける建󠄁物中,煉化石造󠄁の發電動機室は煉化石壁倒壞し,木造󠄁小屋組墜󠄁落して室內の機械も亦損害󠄂を被り,又󠄂旋盤仕上工場は鑄鐵柱鋼製小屋組亞鉛󠄁引鐵板葺なりしが,鑄鐵柱切斷し小屋墜󠄁落せり。
乘降場及び積卸場 蕨驛に於ける乘降場の擁壁一部崩󠄁壞し,その他は沈下傾斜󠄁等被害󠄂小なり。
跨線橋 跨線橋は殆ど被害󠄂なし。
地下道󠄁 王子驛の地下道󠄁に罅裂を生じたるのみにして他は殆ど被害󠄂なし。
給水器及び信號機 上野秋葉原兩驛に於ける給水器及び信號󠄂機の燒損せし外被害󠄂殆どなし。
軌道󠄁 火災により秋葉原上野間の軌條枕木等燒損したるも地震動による被害󠄂は輕微なり。
發電所󠄁 赤羽發電所󠄁は鐵筋混凝土造󠄁にして,地盤極めて軟弱󠄁なるを以て建󠄁造󠄁當時基礎杭打を充分󠄁になしたるため被害󠄂は豫想外に少く,建󠄁物全󠄁體約9吋沈下せる外柱とタービン据付床との間に罅裂を生じタービンのベーン小破せり,尙煙󠄁突2基小罅裂を來し煙󠄁道󠄁中央絕緣部に約1呎喰違󠄄ひを生じたり。