運について

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• 底本：大町桂月 著『人の運』,至誠堂書店,大正2. 国立国会図書館デジタルコレクション:info:ndljp/pid/951794/1/20
• 青空文庫『旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針』にしたがって、表記を現代仮名遣い、新字体に改めた。また、底本は総ルビであるが難読の箇所や誤読のおそれがある箇所を除いて削除した。

運は運也（なり）、運転する也。独断の人を去って、果断の人に来（きた）る。頑固の人を去って、自信ある人に来る。酒に溺るる人を去って酒に狂わぬ人に来る。女に迷う人を去って女に優しき人に来る。屁理窟（へりくつ）言う人を去って、道理を解する人に来る。躁急（そうきゅう）の人を去って、勇往の人に来る。肩先の勇気の人を去って、腹底の勇気の人に来る。心の動く人を去って、才智の動く人に来る。己に寛大なる人を去って、人に寛大なる人に来る。自暴を起（おこ）す人を去って、憤を発する人に来る。人を怨（うら）む人を去って、人を愛する人に来る。自から侮る人を去って、分を守る人に来る。慾（よく）の多き人を去って、慾の大なる人に来る。傍観する人を去って、奮闘する人に来る。顧慮する人を去って、熟慮する人に来る。厭（あ）き易（やす）き人を去って、見切（みきり）の善（よ）き人に来る。小事（しょうじ）に拘泥する人を去って、小事を忽（ゆるかせ）にせざる人に来る。人を恐るる人を去って、天を恐るる人に来る。過去を思う人を去って、現在を思う人に来る。現在を思う人を去って、未来を思う人に来る。