軍人勅諭 (満州国)

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勅   諭

朕夙ニ順天安民ヲ以テ心ト爲シ 盟邦ト協力シテ 群黎ノ福利ヲ圖リ 內ハ匪害ヲ剿絕シテ以テ境土ヲ攘メ 外ハ邊患ヲ攘除シテ以テ四疆ヲ靖ム 建國二載 庶績咸熙キ 國運愈隆ク 國基益固マル 茲ニ上天ノ寵命ヲ承ケ 滿洲國皇帝ノ位ニ卽ク 惟フニ爾將士 建國ノ始 搶攘未タ定マラサル時ニ當リ 克ク順逆ヲ辨ヘ 大義ヲ洞明シ 力ヲ戎行ニ致シテ 其ノ身ヲ顧ミス 濯征是レ勗メ 以テ堅寇ヲ鋤シ 以テ弗庭ヲ服ス 功ノ社稷ニ在ルヤ 洵ニ鮮カラスト爲ス 朕深ク之ヲ嘉ス

夫レ一國ヲ統治スルニハ 必ス大中至正堅忍不拔ノ軍隊有リテ 方ニ拱衞ニ資スルニ足ルコト 古今理ヲ一ニシ 東西軌ヲ同クス 今我カ新帝國 亦將ニ此ニ國基ヲ確立シテ 之ヲ悠久ニ擁護セントス 爾將士ニ望ム所ノモノ實ニ多シ 朕ト盟邦トハ 關係緊密ニシテ 將ニ無窮ニ相信シ相倚リ 以テ東亞ノ和平ヲ確定シ 億兆ノ安康ヲ保障セントシ 前ニ盟邦ト議定書ヲ交換シ 國家ノ防衞ハ 必ス兩國協同シテ以テ其ノ任ヲ完ウスヘキコトヲ載明セリ 爾將士宜ク此ノ旨ヲ體シ 盟邦將士ト 親善提携スルコト 渾然一ノ如クシ 中正ニシテ純 嚴明ニシテ公 以テ國祚ヲ擁護シ 永久替ルコト無カルヘシ 朕深ク之ヲ望ム

我カ新帝國ハ建國ヨリ以來 大中至正ヲ以テ本ト爲ス 其ノ諸朋黨比周ノ 軋ヲ傾ケ事ヲ生シ 專閫獨裁シテ 飛揚跋扈スルハ 必ス禁スル所ニ在リ 爾將士ハ國ノ干城タリ 朕ハ卽チ爾ノ大元帥タリ 原同氣一體ニ屬ス 各級ノ指揮ニハ 各職掌アリ 或ハ時ニ因リ宜キヲ制シ 特ニ規範ヲ定ムト雖モ 而モ統帥ノ大權ハ 攬リテ朕カ躬ニ在リ 爾將士ハ總テ宜ク全軍一心 朕ヲ奉戴シテ元首ト爲シ 其ノ股肱ノ力ヲ竭シ 以テ匪躬ノ節ヲ致スヘシ 朕深ク之ニ賴ル

今ヤ凡百ノ施設 蒸蒸トシテ日ニ上リ 初有ラサル靡ク 要ハ終有ルニ在リ 爾將士ノ任大ニシテ責重シ 凡ソ民ノ安居樂業ハ 胥ニ惟レ爾ニ是レ賴ル 務メテ宜ク故習ヲ湔除シ 軍心ヲ一新シ夙夜懈ラス 宣誓ノ條文ヲ恪守シテ 厥ノ職事ニ供ヘ 敢テ怠荒スルコト勿カルヘシ

茲ニ御極ノ始ニ當リ 天地照鑒ノ下 特ニ諭旨ヲ爾將士ニ頒ツ 尙クハ其レ朕カ命ヲ廢スル勿ランコトヲ厚ク望ムトコロ有リ 此ヲ欽メ

御名御璽


康德元年三月五日

この著作物は、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。