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貸座敷、引手茶屋、営業取締規則

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第一條 貸座敷、引手茶屋ノ営業ハ警視廳ニ於テ指定シタル貸座敷営業指定地ニ限ルモノトス但シ貸座敷営業指定地外デ現在営業ノ許可ヲ得タ者竝相続人ニ在テハ比ノ限ニアラス(へ)
第二條 貸座敷、引手茶屋ノ営業ヲ爲サムトスル者ハ左記ノ事項ヲ具シ所轄警察官署ヲ経テ警視廳ニ願出許可ヲ受クヘシ第三號、第四號ノ事項ヲ變更シ又ハ営業用家屋ヲ改築、増築シムトスルトキ亦同シ(ろ、は、に)
 一 属籍、住所、氏名、生年月日
 二 楼名又ハ屋号
 三 営業ノ場所
 四 家屋ノ配置圖(縮尺二百分ノ一又ハ百分ノ一)、同平面圖(出入口、非常口、通路ノ幅、戸ノ開ク方向等記入スヘシ縮尺五十ノ一)、同断面圖(縮尺五十分ノ1)、同外面圖(縮尺五十分ノ一)、同断面圖(縮尺五十分ノ一)、同外面圖(縮尺百分ノ一又ハ五十分ノ一)、構造竝材料ヲ詳記シタル仕様書
 五 四隣ノ平面略圖(道路、路次ノ幅等ヲ記入スヘシ)
 六 燈火ノ種類及装置ノ圖面竝仕様書
  営業用家屋ヲ修繕シ若ハ燈火ニ関スル改設、増設、變更ヲ爲サムトスルトキハ前項ノ規定ニ準シ所轄警察官署ニ願出許可ヲ受クヘシ(に)
第二條ノ二 貸座敷営業指定地内ニ於ル貸座敷引、引出茶屋ノ構造ハ左ノ各號ニ依ルヘシ但其ノ建坪ガ三十坪未満ノモノハ第一號乃至第四號ニ依ラサクコト得(ほ、は、へ) 
 一 家屋ノ幅員二間以上ノ通路ニ面セシムルコト
 二 家屋間口ハ四間以上タルヘキコト
 三 非常口ノ幅ハ五尺以上、高サハ五尺七寸以上タルヘキコト
 四 非常口ノ扉ハ外開キ又ハ引戸ト為シ其ノ戸締ハ内部ニ之ヲ爲スヘキコト
 五 家屋ノ階層ハ三階以下タルヘキコト
 六 層階ヲ設クルモノハ各層ニ於ル坪数七坪未満ノモノハ幅員三尺以上ノ階段一個、七坪以上十五坪未満ノモノハ幅員内寸法四尺以上階段一個、十五坪以上三十坪未満ノモノハ幅員内寸法四尺以上階段二個設置シ尚二十坪増ス毎ニ一個ヲ増設スルコト
 七 三階ノ階層ニハ容易ニ屋外ニ出ルコトヘキ装置ヲ為スヘキコト
土地ノ状況又ハ構造ノ種類ニ依リ前項ノ制限ニ拘ラス特ニ其ノ構造ヲ指定スルコトアルヘシ
第三條 貸座敷営業指定地外ニ於ケル貸座敷、引手茶屋ニ在テハ三階以上ノ建物其ノ他人目ヲ惹クカ如キ構造及装置ヲ爲スヘカラス(へ)
第二條の二第一項第三號第四號及第六號ノ規定ハ前項ノ営業者ニ之ヲ準用ス(ハ、ホ)
第四條 燈火ニ關シテハ左ノ制限ニ従フヘシ(は)
 一 燈火ハ電気燈又ハ瓦斯燈ヲ使ウヘシ但シ洋燈と雖金属製ノ油壺及適當ナル油煙止ヲ備フルモノハ郡部ニ限リ特ニに之ヲ許可スルコトアルヘシ
 二 瓦斯燈ニハ適當ノ場所ニ遮断器ヲ備フルコト
 三 瓦斯管ハ鐡製又ハ真鍮製ノモノヲ使用スヘシコト但シ已ヲ得サル場所ニ在リテハ此ノ限アラス
第五條 第二条ノ許可ヲ得タル後其ノ構造落成シタトキハ所轄警察官署ニ届出使用ノ認可ヲ受ケルヘシ其ノ證ヲ受クルニアラサレハ使用スルコト得ス
第五條ノ二 貸座敷、引手茶屋営業者ハ所轄警察官署ノ指示ニ従ヒ屋内ノ要所ニ適當ナル個数ノ消火器又ハ消火劑ノ類ヲ設備シ時々試験ヲ行ヒ常ニ有効ニ保持スヘシ(は)
所轄警察官署ニ於テ必要アリト認メタルトキハ前項ノ試験ヲ爲サシメルコトアルヘシ(は)
第五條ノ三 厠圊ハ毎日清潔ニ掃除シ防臭劑ヲ撒布スヘシ(は)
第六條 貸座敷営業者ハ貸座敷所在地内ニ於テ料理屋、藝妓屋営業ヲ兼スルコト得ス(い、ほ)
第七條 貸座敷、引手茶屋営業者ニシテ本則ニ違背シ又ハ公安ヲ害スル虞アリ若ハ他人ニ名義ヲ貸スノ事實アリト認ムルトキハ其ノ許可ヲを取消シ又ハ警視廳ニ於テ其ノ営業ヲ停止スルコトアルヘシ(い)
第八條 貸座敷営業者、引手茶屋営業者ニシテ許可ヲ得タル後正當ナ事由ナクシテ三個月以内ニ開業セス又ハ一個年以上休業シタルトキハ許可ノ効ヲ失フモノトス
第九條 貸座敷、引手茶屋営業者ニシテ属籍、住所、氏名、楼名、屋号ニ異動ヲ生シ又ハ法定代理人ヲ變更シ若ハ廃業、休業シタルトキハ三日以内ニ所轄警察官署ヲ経テ警視廳ニ届出ヘシ(は)
第十條 貸座敷営業指定地外ニ於ケル貸座敷、引手茶屋営業者ハ夜間十二時以後ニ於テ歌舞音曲ヲ爲サシムヘカラス(へ)
第十一條 貸座敷営業指定地外ニ於ケル貸座敷、引手茶屋営業者ハ業名又ハ楼名、屋号ヲ記シタル看板又ハ標燈、街燈其ノ他外観ヲ装フヘキ燈火ヲ道路又ハ道路ニ面シタル場所ニ掲クヘカラス(い、へ)
第十二條 貸座敷、引手茶屋営業者ハ遊客人名簿ヲ備エ置キ遊客毎ニ其ノ氏名年齢及遊興費ヲ記入スヘシ(ほ)
警察官吏ノ要求アリタルトキハ何時タリトモ営業用諸帳簿ノ検閲ヲ拒ムコト得ス(ほ)
第十三條 貸座敷、引手茶屋営業者ニシテ雇人ヲ雇入シ又ハ解雇シタトキハ族籍、住所、氏名、年齢ヲ詳記シ三日以内ニ所轄警察官署ニ届出ヘシ
第十四條 貸座敷、引手茶屋営業者ニ於テ営業用ニ使用スル雇人ハ第四十條ノ雇人簿ヲ所持スル者ニアラサレハ雇入ルヘカラス
第十五條 座敷営業者ニシテ婦女ヲ宿泊セシメタトキハ二十四時間以内ニ所轄警察官署ニ届出ヘシ
第十六條 貸座敷、引手茶屋営業者ハ左ノ各號ヲ遵守スヘシ
 一 客ノ求メサル飲食物ヲ出シ若ハ之ヲ強ヒサルコト
 二 客引ヲ出シ若ハ雇人等ヲシテ店頭ニ佇立、仿徨其ノ他ノ行爲ヲ爲サシメ又ハ廣告其ノ他方法ノ何タルヲ問ハス遊興ヲ勧誘セサルコト(は)
 三 学校ノ徽章ヲ著タル學生、生徒竝未成年者ヲ遊興セシメサルコト
 四 遊客ニ面会ヲ求ムル者アルトキハ之ヲ拒ミ又ハ隠蔽等ノ所爲ナキコト
 五 遊興費ノ抵償トシテ客ノ所持品ヲ受取ラムトスル場合ニ於テハ所轄警察官署ニ同伴シテ其ノ承認ヲ受クヘキコト
 六 客ニ提供スル飲食物ノ定價表ヲ各客室ニ掲示シ若ハ客ニ提示スヘシ(ほ)
第十六條ノ二 貸座敷営業者ハ娼妓ヲシテ張見世ヲ爲サシムヘカラス(ほ)
第十七條 貸座敷、引手茶屋営業者ハ所轄警察官署ヨリ取締上ニ關シ臨時ニ別段ノ命令アリタルトキハ之ヲ遵守スヘシ(い)
第十八條 削除(は)
第十九條 種類ノ何タルヲ問ハス景容又ハ之ニ類スル舉行ヲ爲サムトスルトキハ豫メ其ノ方法ヲ詳記シ所轄警察官署ニ願出許可ヲ受クヘシ但シ貸座敷営業指定地外ニ在リテハ許可セス(ろ、へ)
第二十條 貸座敷ニ在テハ客室ヲ道路ヨリ見透シ得サル様設備スヘシ(ほ)
第二十一條 貸座敷営業者ハ娼妓ニ對シ虐待ヲ加ヘ若ハ贅費ヲ爲サシムヘカラス
第二十二條 貸座敷営業者ハ娼妓ニシテ疾病アルトキハ速ヤカニ醫師ノ診断ヲ受ケシムヘシ
第二十三條 貸座敷営業者ハ貸座敷、引手茶屋娼妓取締規則ヲ娼妓ノ見易キ場所ニ掲示シ置クヘシ
第二十四條 貸座敷営業者ハ娼妓ニシテ本則ニ背キタルトキハ直ニに所轄警察官署ニ届出ヘシ
第二十五條 引手茶屋営業者ハ遊客、娼妓及藝妓ヲ宿泊セシムヘカラス
第二十六條 貸座敷、引手茶屋営業者及娼妓ハ一區域毎ニ組合ヲ設ケ規約ヲ定メ所轄警察官署ヲ経テ警視廳ニ届出許可ヲ受クヘシ其ノ規約ノ改正、變更ヲ要スルトキ亦同シ
第二十七條 組合ハ正副取締各一名ヲ選擧シ所轄警察官署ニ願出許可ヲ受クヘシ(に)
第二十八條 取締ハ貸座敷、引手茶屋営業又ハ娼妓稼業ニ関スル規則ノ變更、改正若ハ命令アリタルトキハ其ノ事項ヲ組合員ニ告知スヘキ
第二十九條 取締ニ於テ取扱フヘキ事項ハ本則規定ノ外臨時警視廳ニ於テ命令スルコトアルヘシ(い)
第三十條 娼妓稼業ヲ為サムトスル者ハ明治三十三年十月内務省令第四十四號娼妓取締規則第三條ノ 申請書ニ左ノ事項ヲ記載シ所轄警察官署ニ差出スヘシ(い)
 一 妓名
 二 稼業年限
前項ニ依リ登録ヲ受ケタル後第二號ノ年限ヲ變更セントスルトキハ明治三十三年十月内務省令第四十四號娼妓取締規則第三条第三號第四號第五號ノ事項ヲ具シタル書面ニ其ノ年限竝變更ヲ要スル事由ヲ記載シ所轄警察官署ニ名簿ノ變更ヲ申請シ登録ヲ受クヘシ
第三十一條 娼妓ハ貸座敷営業指定地内ニ居住スヘシ但シ指定地外ノ貸座敷ニ於テ稼業スル娼妓ハ其ノ貸座敷内ニ寄寓スヘシ(い、へ)
三十二條 (削除)(へ)
第三十三條 娼妓ガ寄寓ヲ轉シ稼業セムトスルトキハ現寄寓貸座敷営業者及寄寓貸座敷営業者連署ノ上、所轄警察官署ニ名簿ノ變更ヲ申請シ登録ヲウクヘシ此ノ場合ニ於テハ第三十條条第一號第二號及明治三十三年十月内務省令第四十四號娼妓取締規則第三條第三號第四號第五號ノ事項ヲ具シタル書面ヲ添付スルモノトス但シ他ノ警察官署管内ニ転スルトキハ前所轄警察官署ヲ経由スヘシ(い)
第三十四條 娼妓ニシテ属籍、氏名、妓名ニ異動ヲ生シ又ハ休業若ハ就業シタルトキハ三日以内ニ所轄警察官署ニ届出ヘシ(い)
第三十五條 娼妓ニシテ雇人ヲ雇入レヌトスルトキハ第四十條ノ雇人簿ヲ所持スルモノニ非サレハ雇使ルスコトヲ得ス但シ其ノ雇入又ハ解雇ノの届出ハ第十三條ノ手続ニ依ルヘシ(い)
第三十六條 娼妓ハ所轄警察官署ヨリ取締上ニ関シ臨時ニ別段ノ命令アリタルトキハ之ヲ遵守スヘシ(い)
第三十七條 娼妓ハ別ニ定ムル所ノ規則ニヨリ身體検査ヲ受クルヘシ(い)
第三十八條 娼妓ニシテ外出ヲ為サムトスルトキハ所轄警察官署ニ願出認可ヲ受クヘシ但シ貸座敷営業指定地内ヲ限リ外出スルハコノ限リニアラス(い、へ)
第三十九條 娼妓ハ左ノ行為ヲ為シヘカラス(ほ)
 一 道路又ハ道路ニ面スル場所ニ於テ目立ツヘキ扮装ヲ為スコト
 二 道路又ハ道路ヨリ見透スヘキ場所ニ佇立又はハ仿徨スルコト
第四十條 貸座敷、引手茶屋ノ営業上及娼妓ニ雇使セラルル雇人タラムトスル者ハ別紙様式ニ依り雇人簿ヲ調製シ雇主ノ所轄警察官署ニ願出検印ヲ受クヘシ但シ他ノ警察官署ニ転セムトスル場合ニハ所轄警察官署ニ検印ノ削除ヲ請ヒ移転地所轄警察官署ニ願出検印ヲ受クヘシ(い)
第四十一條 雇人簿ニハ原籍、住所、氏名ノ移動及雇主ノ氏名、雇用・解雇ノ年月日竝雇用中ニ於テ処罰セラレタル事項ヲ記入スヘキモノトス(い)
第四十二條 雇人簿ニハ原籍、住所、氏名ノ異動及雇主ノ氏名、雇用、解雇ニ異動ヲ生シタルトキハ其ノ都度自記シ貸座敷、引手茶屋所轄ノ警察官署ニ申出検印ヲ受クヘシ(い)
第四十三條 雇人簿ヲ棄損、亡失シタルトキハ三日以内ニ貸座敷、引手茶屋所轄ノ警察官署ニ届出其ノ事由ヲ疏明シ更ニ雇人簿ニ検印ヲ請ウヘシ(い)
第四十四條 貸座敷、引手茶屋及娼妓ノ雇人ニシテ雇人タルコトヲ止メタルトキハ検印ヲ受ケタル警察官署ニ三日以内ニ届出検印ノ削除ヲ請フヘシ(い)
第四十五條 所轄警察官署ハ雇人ニシテ本則ニ違背シ又ハ就業上不適當ノ者ト認メタルトキハ雇人簿ノ検印ヲ削除スルコトアルヘシ(い、ろ)
第四十六條 貸座敷、引手茶屋ニ雇使セラルル雇人ハ就業中本則第十六條及第二十一條ノ規定ヲ順守スヘシ(い)
第四十七條 第二條、第三條、第五條、第五條ノ二,第五條ノ三,第九條乃至第十七條、第十九條乃至第二十八條、第三十條乃至第三十六條、第三十八條乃至第四十條、第四十二條乃至第四十四條及第4四十六條ニ違背シ又ハ第二十七條、第二十九條ノ命令ニ違背シタルトキハ拘留又ハ科料ニ處ス(い、は)
第四十八條 営業者ハ営業上ニ関シ家族乃至雇人其ノ他従業員ノ行為ニシテ第四十七條ニ規定シタル違背行為アルトキハ自己ノ指揮ニ出サルノ故ヲ以テ処罰ヲ免ルルコトヲ得ス(い、は)
第四十九條 営業者ニシテ未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ第四十七條ノ罰則ヲ法定代理人ニ適用ス(い、は)
第四十九條ノ二 営業者タル法人ノ代表者、雇人、其ノ他ノ従業員ノ行為ニシテ第四十七條ニ規定シタル違背行為アリタルトキハ同條ノ罰則ヲ其ノ法人ノ代表者ニ適用ス(は)
 附 則
第五十條 現在ノ貸座敷、引手茶屋営業用家屋ニシテ第二條ノ二,第三條、第四條ノ制限ニ抵觸スルモノハ大修繕又ハ改築ノ場合ニ於テ本則ニ據リ構造スヘシ(い、ほ)
第五十一條 (削除)(い、ほ)
第五十二條 本則ハ発布ノ日ヨリ施行ス(い)
第五十三條 明治二十九年七月警視廳令第四十四號貸座敷引手茶屋娼妓取締規則ハ本則施行ノ日ヨリ廃止ス(い)
 附 則(は、ほ)
  一 伊豆七島及小笠原諸島ニアリテハ特ニ本令ノ規定ヲ斟酌スルコトアルヘシ
 ニ 本令第十六條ノ二ハ大正五年七月三十一日迄施行ヲ猶豫ス
 三 明治四十四年五月警視廳令第九號附ハ之ヲ廃止ス
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
 附 則(へ)
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス