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第147回国会における小渕内閣総理大臣施政方針演説

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演説

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はじめに

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 新しい千年紀の幕開けという記念すべき西暦二〇〇〇年を迎え、第百四十七回国会の開会に当たり、国政をお預かりする立場から、施政に関する所信を申し述べます。

 西暦二〇〇〇年の元日、この記念すべき日にわが国で誕生したいわゆるミレニアム・ベビーは二千余人であります。二十世紀から二十一世紀へと時代が移ろうとするそのときに、私は、明日の時代を担うこの子どもたちのために何ができるのか、何をしなければならないのか、一人の政治家としてそのことをまず第一に考えるものであります。

 この子どもたちにどのような日本を引き継いでいくのか、この子どもたちがやがて大人になったとき、日本という国家は世界から確固たる尊敬を得られるようになっているだろうか、と案ずるのであります。時代の転換期に当たり、私たちは当面する短期の問題に集中する虫の目ではなく、十年、二十年先を見据える鳥の目で日本の在るべき姿を熟慮し、そのために今何をなすべきかを考える必要があると確信いたします。

 そのような思いから、私は各界有識者からなる「二十一世紀日本の構想」懇談会を設置いたしました。新しい世紀の日本の在るべき姿を、「富国有徳」の理念の下、様々な角度から議論していただき、先ごろ十か月に及ぶ議論の末にまとめられた報告書を受け取りました。

 報告書は、二十一世紀最大の課題は、日本及び日本人の潜在力をどのように引き出すかである、と述べております。これまで幾多の苦難をみごとに乗り切ってきた私たち日本には、計り知れないほどの潜在力があると私も確信いたしております。「日本のフロンティアは日本の中にある」という報告書の表題は、日本及び日本人の中にこそ大きな可能性があるのだということを力強く宣言しております。

 まさに私の思いと一致するところであります。昨年の施政方針演説で私は「建設的な楽観主義」という言葉を使いました。「コップ半分の水をもう半分しかないと嘆くのではなく、まだ半分あると思う意識の転換が必要だ」と申し上げました。今私は、日本及び日本人の意欲と能力をもってすれば、再びなみなみとコップに水を注ぐことが可能だと考えます。

 「やればできる」という「立ち向かう楽観主義」が大切であります。踏みとどまっていては二十一世紀の明るい展望を開くことはできません。大事なことは嘆き続けることではなく、一歩を力強く踏み出すことであります。

 「経済再生内閣」と銘打って内閣をお預かりしてから一年半が過ぎました。まだまだ安心できるような状況ではありませんが、時折ほのかな明るさが見えるところまでたどり着いたように思います。「立ち向かう楽観主義」で、この明るさを確かなものとするため、更なる努力を傾注してまいることをお誓いいたします。

 二〇〇〇年の到来と同時に、新しい時代の風が吹き始めております。この風をしっかりととらえて、明日の日本の基礎を築いていかなければなりません。明日の日本は個人が組織や集団の中に埋没する社会ではなく、個人が輝き、個人の力がみなぎってくるような社会でなければなりません。

 個人と公が従来の縦の関係ではなく横の関係となり、両者の協同作業による「協治」の関係を築いていかなければならないと考えます。自立した個人がその能力を十二分に発揮する、そのことが国家や社会を品格あるものにする、そのように国民と国家との関係を変えていく必要に迫られております。ここでは、失敗しても再挑戦が可能な寛容さを社会が持つとともに、社会のセイフティ・ネットが有効に機能することが必要であります。

 先進諸国を始めとする多くの国々が、グローバル化、少子高齢化、それに社会の構造を根本から変える可能性を秘めた情報技術革命のうねりの中にあります。わが国もまた例外ではありません。明治以来わが国は「追いつき追い越せ」を目標に努力を重ねてまいりましたが、もはや世界のどこを探しても、目標となるモデルは存在しておりません。日本の在るべき姿を、私たちは自ら考えなければならないのであります。

 この際、私は二つの具体的な目標を掲げたいと思います。輝ける未来を築くために最も重要なことは、いかにして人材を育てるかであります。「教育立国」を目指し、二十一世紀を担う人々は全て、文化と伝統の礎である美しい日本語を身につけると同時に、国際共通語である英語で意思疎通ができ、インターネットを通じて国際社会の中に自在に入っていけるようにすることであります。もう一つは「科学技術創造立国」であります。現在、日本も加わって遺伝子の解析が行われておりますが、こうした分野で日本が果たすべき役割は極めて大きいと確信しております。科学技術分野で日本が重要な位置を占めることができるよう、例えば遺伝子治療でガンの根治を可能にするなど高い目標を掲げ、その実現を図ってまいります。

 昨年の施政方針演説で掲げました「五つの架け橋」を更に進め、国民の決意と叡智を持って取り組むべき課題に、私は本年「五つの挑戦」と名づけました。「創造への挑戦」、「安心への挑戦」、「新生への挑戦」、「平和への挑戦」、「地球への挑戦」の五つであります。国民の皆様のご理解とご支援を賜りたいとお願いするものであります。

創造への挑戦

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 新しい時代を輝けるものにするために、私はまず「創造への挑戦」に全力で取り組みます。未知なるものに果敢に挑戦し、わが国の明るい未来を切り拓き、同時に世界に貢献していくためには、創造性こそが大きな鍵となります。組織や集団の「和」を尊ぶ日本社会は、ともすれば発想や行動が画一的になりがちだと指摘されてまいりました。明日の日本社会は、いろいろなタイプ、様々な発想を持った人々であふれている、そうならなければ国際社会で生きていくことは難しいと考えます。

 創造性の高い人材を育成すること、それがこれからの教育の大きな目標でなければなりません。志を高く持ち、様々な分野で創造力を活かすことのできる人材をどのようにして育てていくか、単に教育制度を見直すだけではなく、社会の在り方まで含めた抜本的な教育改革が求められております。広く国民各界各層の意見を伺い、教育の根本にまでさかのぼった議論をするために、私は「教育改革国民会議」を早急に発足させる考えであります。

 教育は学校だけでできるものではありません。学校とともに大事なのは家庭での教育であります。また、学校と家庭、それに地域コミュニティがうまくかみ合ったものでなければならないと考えます。学校、家庭、地域の三者の共同作業で、明日の日本を担う人材育成に当たらなければなりません。

 必要なときには先生も親もきちんと子どもをしかる、悪いことをしている子どもがいたらよその子どもでもいさめてあげる、そのような社会をつくり上げなければならないと考えるものであります。子どもたちは学校や家庭だけのものではなく、社会全体の宝であるという考え方に立つべきであります。

 申し上げるまでもなく、科学の進歩の速さには驚異的なものがあります。科学が進歩し続ければし続けるほど、科学をしっかりとコントロールできるような確かな心が必要になります。知識と心の均衡のとれた教育が求められるゆえんであります。

 子どもは大人社会を見ながら育ちます。まず大人自らが、倫理やモラルに普段から注意しなければなりません。また、過激な暴力シーンや性表現のある出版物やゲームなどが青少年に悪影響を与えており、これを放置している社会にも問題がある、との指摘もあります。子どもの健全な発達を支えていく社会を築いていかなければなりません。

 私は、司馬遼太郎氏の「二十一世紀に生きる君たちへ」を読むたびに、強い感動を覚えます。その中で若い人たちに対し、自己の確立 ─ 自分に厳しく、相手にやさしく、すなおでかしこい自己の確立を呼びかけ、また、助け合い、いたわりの気持ちの大切さを訴えています。これを改めて心に刻み、私は内閣の最重要課題として教育改革に全力で取り組むことをお誓いするものであります。

 わが国の発展の原動力となるものは科学技術であります。科学技術の進歩こそ、創造性の高い社会を築くために不可欠なものであります。政府一丸となってその振興を図ってまいります。とりわけ、情報化、高齢化、環境対応という、今最も重要な三つの分野で、産業界、学界、政府共同の「ミレニアム・プロジェクト」を推進するとともに、研究を進めるに当たっての環境整備や産業技術力強化に力を注ぐ決意であります。また、わが国経済を支えてきた「ものづくり」の大切さを深く認識し、「ものつくり大学」の設立を始め、その基盤強化を進めてまいります。

安心への挑戦

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 人々が生き生きと、しかも安心して暮らせる社会、そのような社会を築くことは政治にとって最も重要な責任であります。青少年も、働き盛りの世代も、そして老後を暮らす人々も、みな健康で豊かで安心して生活できる社会をつくるために、私は「安心への挑戦」に取り組みます。

 充実した人生を送るために必要な教育、雇用、育児、社会保障などを国民一人一人が自ら選択し、人生設計ができるようにしていかなければなりません。

 世界に例を見ない少子高齢化が進行する中で、国民の間には社会保障制度の将来に不安を感じる声も出ております。医療、年金、介護など、制度ごとに縦割りに検討するのではなく、実際に費用を負担し、サービスを受ける国民の視点から、税制を始め関連する諸制度まで含めた総合的な検討が求められております。

 戦後の第一次ベビーブーム世代、いわゆる「団塊の世代」の人々がやがて高齢世代の仲間入りをします。社会保障構造の在り方についての検討が急がれるゆえんであり、私は、最後の検討機会との思いで、有識者会議を設置いたしました。高齢世代の社会的役割を積極的に位置づけ、多様な選択を可能にするために何が必要なのか、こうした問題を含め横断的な観点からの検討をお願いし、将来にわたり安定的で効率的な社会保障制度の構築に全力を挙げてまいります。

 年金制度につきましては、国会でご審議いただいている法案の実施により世代間の負担の公平化を図るほか、新たに確定拠出型年金制度の導入を図ります。また医療制度改革を進めるとともに、介護保険制度の本年四月からの円滑なスタートに万全を期し、介護サービス提供体制の計画的な整備など高齢者の保健福祉施策を積極的に推進いたします。

 急速な少子化は社会全体で取り組むべき課題であります。明るい家庭をつくり、子育てに夢を持てるように保育・雇用環境の整備や児童手当の拡充などを進めてまいります。また、女性も男性も喜びと責任を分かち合える男女共同参画社会の実現に一層の努力をしてまいります。

 現下の雇用情勢はまことに厳しいものがあります。これを重く受け止め、雇用情勢を改善させ雇用不安をなくすために全力で立ち向かう考えであります。社会の変化に対応する雇用保険制度の再構築を図るとともに、高齢者の雇用機会の確保に努めてまいります。

 安心できる生活の基盤は、良好な治安によってもたらされます。治安を支える警察は国民と共になければなりません。一連の不祥事によって揺らいだ警察に対する国民の信頼を回復するため、公安委員会制度の充実強化を始め、必要な施策を推進いたします。また、時代の変化に対応し、国民にとって利便性の高い司法制度にするために必要な改革を行います。

 阪神・淡路大震災から五年が経ちました。多くの犠牲者の上に得られた教訓を決して忘れてはなりません。災害対策を始めとする危機管理に終わりはなく、更なる対策の充実・強化に努めてまいります。

新生への挑戦

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 わが国経済は緩やかな改善を続けております。大胆かつスピーディーに実施してまいりました様々な政策の効果が表れつつあり、またアジア経済の回復なども良い影響をもたらしております。しかしながら、民間需要の回復力はまだ弱い状況にあります。私は、目の前の明るさを確かなものとするため、日本経済の「新生への挑戦」に果敢に取り組んでまいります。単に景気を立ち直らせるだけでなく、本格的な景気回復と構造改革の二つを共に実現するために、力の限り立ち向かってまいります。

 昨年秋に決定した経済新生対策などを力強く推進することにより、公需から民需へと転換を図り、設備投資や個人消費など民需主導の自律的な景気回復を実現させます。私はこれまで、金融システムの改革や産業競争力の強化、規制緩和など構造改革に積極的に取り組んでまいりました。その推進・定着に一層の努力をしてまいります。中小企業は経済の活力の源泉であります。意欲あふれる中小・ベンチャー企業への支援や金融対策に万全を期してまいります。このような様々な施策を推進することにより、十二年度の国内総生産の実質成長率は一・〇%程度に達するものと見通しております。

 予算編成に当たっては、経済運営に万全を期す観点から、公共事業や金融システム安定化・預金者保護に十分な対応を行うとともに、総額五千億円の経済新生特別枠を始め、新しい千年紀にふさわしい分野に重点的・効率的に資金を配分することといたしました。

 税制面では、昨年から実施している六兆円を上回る規模の個人所得課税や法人課税の恒久的な減税が継続しております。加えて十二年度には、本格的な景気回復を目指し、民間投資の促進や中小・ベンチャー企業の振興を図るための措置を講じるほか、年金税制、法人関係税制等について適切に対応してまいります。

 健全なる財政がもとより重要であることは申すまでもありません。私は、来年度末の債務残高が六百四十五兆円にもなることを重く受け止めております。財政構造改革という重要な課題を忘れたことは、片時もありません。しかしながら私は今、景気を本格軌道に乗せるという目的と財政再建に取り組むという重要課題の双方を同時に追い求めることはできない、「二兎を追うものは一兎をも得ず」になってはならない、と考えております。

 私はまず経済新生に全力で取り組みます。八〇年代半ば、未曾有の財政赤字に苦しんでいた米国は、今や史上空前の黒字を記録することとなり、その使い途をめぐって大論争が起こっているほどであります。不可能とも言われた米国の財政再建が実現したのは、様々な改革とともに、百六か月に及ぶ史上最長の景気拡大があったからであります。

 わが国の景気回復は、わが国ばかりでなく国際社会が等しく強い期待を寄せているところであります。財政再建は重要ですが、足元を固めることなく、景気を本格軌道に乗せる前に取りかかるという過ちを犯すべきではありません。わが国経済が低迷を脱し、名実ともに「国力の回復」が図られ、それにより財政・税制上の諸課題について将来世代のことも展望した議論に取り組む環境を整え、その上で財政構造改革という大きな課題に立ち向かってまいりたいと考えております。

 国民生活の質を高めることも、経済新生の重要な課題であります。規制緩和が一段と進展する中で、不公正な取引などによる被害者の救済制度や、消費者が事業者と結んだ契約に係る紛争の公正・円滑な解決のためのルールを整備いたします。また、毎日の生活をより快適なものとするため、生活空間の倍増を目指すとともに、時代の変化に対応した魅力ある都市づくりに向け、都市再生の具体化に取り組んでまいります。

 ペイオフにつきましては、金融システムを一層強固なものにするため、その解禁を一年延長いたします。併せて、金融機関の破綻処理等に係る恒久的な制度を整備することといたします。

平和への挑戦

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 私は二十一世紀を「平和の世紀」と位置づけ、二十世紀に繰り返された体制間、国家間、地域間の戦争の廃絶に向け、わが国として力を尽くしていきたいと考えるものであります。世界が平和で安定するところに、わが国の輝かしい未来があるのです。「平和への挑戦」を掲げ国際社会で積極的な役割を担ってまいります。

 私は昨年、九州・沖縄サミットの開催を万感の思いを込めて決断いたしました。二〇〇〇年という節目の年に開かれるこのサミットを、「平和の世紀」の建設を世界に発信する重要な機会ととらえ、明るく力強いメッセージを打ち出したいと考えております。九州・沖縄地域はアジア各国と密接なつながりを持っており、アジアの視点を十分に踏まえた議論が行われるものと期待しております。

 このサミットは絶対に成功させなければなりません。わが国が国際社会で果たすことを求められている大きな役割は、全てこのサミットの成功の上に積み上げられると信じるからであります。首脳会合の開催地である名護市を始め各自治体のご協力もいただきながら、私は持てる情熱の全てを傾け、国際社会に対するわが国の責任をしっかりと果たしてまいります。

 わが国自らの安全保障基盤を強固なものとしながら、国際的な安全保障の確立に貢献することも、平和への重要な課題であります。国民の皆様のご理解をいただきながら、国連の平和活動への一層の協力を進めてまいりたいと考えております。

 私は先日、カンボディア、ラオス、タイの各国を訪問いたしました。アジア経済危機の際のわが国からの積極的な支援に対し、日本はまさに「まさかの時の友こそ真の友」との高い評価をいただいてまいりました。

 日韓関係は未来を志向する新たな段階を迎えており、両国国民の感情は劇的に改善しつつあります。今年の元日、私は金大中大統領とともに、両国メディアを通じてお互いの国民に新年のメッセージを送りました。こうした取組は史上初めてのことであります。二〇〇二年のサッカー・ワールドカップ及び「日韓国民交流の年」に向け、更に幅広く交流を進めてまいります。日朝関係につきましては、韓国、米国との密接な連携の下、昨年来芽生え始めた対話を更に進め、その中で国交正常化、人道及び安全保障の問題につき真摯に話し合い、双方が互いに前向きの対応を取り合うようにしていきたいと考えております。また、アジアの主要国である中国との関係の発展に、一層努めてまいります。昨年十一月、私と中国と韓国の首脳が、史上初めて三か国の会談を行いました。私は、この会談が、将来の東アジアの平和につながっていくものと確信しております。

 米国との関係はわが国外交の基軸であり、首脳間の確固たる信頼関係を基に更なる強化を図ってまいります。普天間飛行場の移設・返還問題につきましては、稲嶺沖縄県知事から代替施設の移設候補地の表明があり、さらに岸本名護市長からその受入れが表明されました。政府といたしましては、その建設に当たり安全・環境対策に万全を期すとともに、地域の振興に全力で取り組み、地元の期待に応えてまいります。また、沖縄における更なる米軍施設・区域の整理・統合・縮小にも、SACO最終報告の着実な実施に向け、真剣に取り組んでまいります。

 エリツィン大統領は退任されましたが、ロシアの新しい指導者との間で、日露間で合意された目標期限である本年、各分野での関係を一層強化しながら、東京宣言などに基づき平和条約を締結すべく力を尽くしてまいります。

 二十一世紀の外交は、国と国との関係ばかりでなく、国家を構成する一人一人の個人にも焦点を当てることが求められるのではないでしょうか。私は、世界中の人々が自由に生きられる世界を築くため、心を砕いてまいります。人権を尊重し、自由の基礎となる民主主義を守り、貧困の撲滅やヒューマン・セキュリティ、人間の安全保障の確保に直結するような開発途上国への援助に力を注いでまいります。また、多角的な自由貿易体制の維持・強化のため、WTO新ラウンドの早期立上げに向け、引き続き努力いたします。

地球への挑戦

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 私は平成十二年度を「循環型社会元年」と位置づけ、「地球への挑戦」に果敢に取り組みます。

 大量生産、大量消費、大量廃棄というわが国社会の在り方は、地球環境に大きな負荷をかけております。こうした社会の在り方を見直し、生産、流通、消費、廃棄といった社会経済活動の全段階を通じ、物質循環を基調とした「循環型社会」を構築しなければなりません。今国会にその基本的な枠組みとなる法案を提出いたします。

 エネルギーの安定供給を確保するための総合的な政策にも万全を期してまいります。省エネルギー・新エネルギー政策などに積極的に取り組み、環境保全、市場効率化の要請に対応してまいります。また、原子力に関しましては、昨年九月の臨界事故の厳しい反省の上に立ち、先に成立した原子力災害対策特別措置法等の着実な実施により、安全規制の抜本的な強化と防災対策の確立を早急に図ってまいります。

 世界の総人口が爆発的に増え続ける中で、食料の確保は地球的規模での重要な課題であります。農林水産業と農山漁村の健全な発展に引き続き取り組み、国土・環境の保全や文化の伝承など多面的な機能の発揮とともに、食料の安定供給の確保を図ってまいります。

むすび

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 新しい千年紀を迎え時代が大きく変わろうとしている今、私は内閣をお預かりする責任の重さをひしひしと感じております。次の時代を背負って立つ私たちの子どもや孫たちの世代が、あの時に先輩たちが頑張ってくれたんだと思ってくれるよう、なすべきことをきちんと仕上げていかなければならないと考えます。

 今日、明日の利害よりも、五年後、十年後にきちんと花を咲かせるような、地味であっても明日の日本のために死活的に大事な種をまかなければなりません。そのためには、国会において志を同じくする人たちの協力を得たい、それが自由党に加えて公明党にも政権参加をお願いした理由であります。必要な政策を遅滞なく推し進め、三党連立による成果を得たいと願うものであります。

 この一年は、いつにも増して極めて重要な一年であります。明年一月六日から中央省庁再編により、新しい形での政府がスタートいたします。地方自治も、大転換の時期を迎えております。内政から外交まで、取り組むべき課題は目の前に山積しております。また、国会改革も行われ、党首同士の討論や政府委員制度の廃止などが国会の役割を一段と大きく変えるものと思われます。

 今国会から衆参両院に憲法調査会が設置されました。国民の負託を受けた真の有識者である国会議員の皆様による、幅広い議論が展開されるものと期待しております。

 演説を締めくくるに当たり、私は、二十一世紀を担う若い世代の人々に、宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」の中から、次の言葉を贈りたいと思います。

ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら

峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつです

 国民の皆様、また議員各位のご理解とご支援を心よりお願い申し上げ、私の施政に関する演説を終わります。

出典

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