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秦婦吟

白文 書き下し文 訳文
中和癸卯春三月 中和癸卯、春三月
洛陽城外花如雪 洛陽城外、花、雪の如し
東西南北路人絶 東西南北、路人絶え
緑楊悄悄香塵滅 緑楊、悄々として、香塵滅す
路旁忽見如花人 路旁忽ち見る、花の如き人
独向緑楊陰下歇 独り緑楊に向かい、陰下に歇む
鳳側鸞欹鬢脚斜 鳳側き、鸞欹き、鬢脚斜めなり
紅攅黛斂眉心折 紅攅り、黛斂り、眉心折れる
借問女郎何処来 借問す、女郎何処から来る
含嚬欲語声先咽 嚬を含み語らんと欲し、声先ず咽ぶ
長安寂寂今何有 長安、寂々として、今何か有らん 長安はうらぶれて、今は何も残らず
廃市荒街麦苗秀 廃市荒街、麦苗ひい ただかつての市場や通りには麦苗が伸びているだけ
採樵斫尽杏園花 樵を採り、り尽くす、杏園の花 薪にするため杏園の花は切りつくされ
修寨誅残御溝柳 とりでを修し、誅残す、御溝の柳 とりでを築くために御溝の柳も掘り起こされた
華軒繍轂皆銷散 華軒繍轂かけんしゅうこく、皆な銷散し 立派な車も刺繍の乗り物もみな消えうせ
甲第朱門無一半 甲第朱門、一半も無し 権貴の屋敷や朱門もほとんど残っていない
含元殿上狐兎行 含元殿上、狐兎行き 含元殿の上は狐や兎の住処となり
花萼楼前荊棘満 花萼かがく楼前、荊棘けいきょく満つ 花萼楼の前には棘が多い
昔時繁盛皆埋没 昔時の繁盛、皆な埋没し かつての繁華はすべて埋没し
挙目凄涼無故物 目を挙ぐれば凄涼として、故物無し 目の前には凄涼として、往時のものは何もない
内庫焼為錦誘灰 内庫、焼けてる、錦綉の灰 宮廷の書庫は焼けて錦綉の灰となり
天街踏尽公卿骨 天街、踏み尽くす、公卿の骨 都大路では公卿の骨が踏みつけられる