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  • 夾竹桃の家の女』(きょうちくとうのいえのおんな) 作者:中島敦 底本:1994年7月18日岩波書店発行『山月記・李陵 他九篇  中島敦作』 午後。風がすっかり呼吸を停めた。 薄く空一面を蔽(おお)うた雲の下で、空気は水分に飽和して重く淀(よど)んでいる。暑い。全く、どう逃れようもなく暑い。…
    13キロバイト (2,505 語) - 2021年8月31日 (火) 22:18
  • 夾竹桃(きょうちくとう)は、この涼しそうな部屋の空気に、快い明るさを漂(ただよ)わしていた。  壁際(かべぎわ)の籐椅子(とういす)に倚(よ)った房子(ふさこ)は、膝の三毛猫(みけねこ)をさすりながら、その窓の外の夾竹桃へ、物憂(ものう)そうな視線を遊ばせていた。…
    37キロバイト (6,956 語) - 2019年9月29日 (日) 05:10
  • 時どき柱時計の振子の音が戸の隙間(すきま)から洩(も)れきこえて来た。遠くの樹(き)に風が黒く渡る。と、やがて眼近(まぢか)い夾竹桃(きょうちくとう)は深い夜のなかで揺れはじめるのであった。喬はただ凝視(みい)っている。――闇(やみ)のなかに仄白(ほのじろ)く浮かんだ家の額(ひ…
    23キロバイト (4,808 語) - 2021年12月9日 (木) 11:40
  • を敷かないので、綺麗(きれい)な砂が降るだけの雨を皆吸い込んで、濡れたとも見えずにいる。真中に大きな百日紅(さるすべり)の木がある。垣の方に寄って夾竹桃(きょうちくとう)が五六本立っている。  車から降りるのを見ていたと見えて、家主が出て来て案内をする。渋紙(しぶがみ)色の顔をした、萎(しな)びた爺(じい)さんである。…
    61キロバイト (12,116 語) - 2020年6月18日 (木) 15:57
  • 秋の瞳 作者:八木重吉 書誌情報 書誌情報の詳細は議論ページをご覧ください。  私は、友が無くては、耐へられぬのです。しかし、私には、ありません。この貧しい詩を、これを、読んでくださる方の胸へ捧げます。そして、私を、あなたの友にしてください。 〈[#改ページ]〉 息を ころせ いきを ころせ あかんぼが 空を みる…
    29キロバイト (4,760 語) - 2023年10月22日 (日) 08:18
  • 鳴らしていた屋敷のうちが、今はひっそりとして空家(あきや)かと思われるほどである。門の扉(とびら)は鎖(とざ)してある。板塀の上に二三尺伸びている夾竹桃(きょうちくとう)の木末(うら)には、蜘(くも)のいがかかっていて、それに夜露が真珠のように光っている。燕(つばめ)が一羽どこからか飛んで来て、つと塀のうちに入った。…
    94キロバイト (19,001 語) - 2021年5月20日 (木) 17:17
  • 、三回。そして、その音が強くなるたび、静かな山全体が揺れるように感じた。地震だ。 また、水路に沿って行く。今度は水が多い。恐ろしく冷たい澄んだ水。夾竹桃(きょうちくとう)、枸櫞樹(シトロン)、たこの木、オレンジ。それらの樹々の円天井(まるてんじょう)の下をしばらく行くと、また水がなくなる。地下の溶…
    264キロバイト (47,546 語) - 2020年11月3日 (火) 00:50
  • 敷を占領したやうな形であつた。客もすくない二階の表廊下へ出ると、めづらしい實を結んだ棕梠の庭樹の間から、鳥取の町の空が見えた。今をさかりと咲き誇る夾竹桃(けふちくたう)の花の梢も夏らしいやうな裏の廊下の方へも行つて見た。きのふは町の屋根の上に晝の花火を望んだのもそこだ。遠くの寺からでもひゞいてくる…
    158キロバイト (34,214 語) - 2019年9月29日 (日) 05:09
  • の周囲(まわり)を歩き廻った。梨(なし)、桃は既に熟し林檎(りんご)の実もまさに熟しかけている野菜畠の間を歩いても、紅(あか)い薔薇(ばら)や白い夾竹桃(きょうちくとう)の花のさかんに香気を放つ石垣の側を歩いても、あるいはこのあたりに多い羊の群の飼われる牧場の方へ歩き廻りに行っても、彼は旅らしい心…
    1メガバイト (204,909 語) - 2019年9月29日 (日) 05:14