コンテンツにスキップ

検索結果

  • 文字盤にⅩⅡに下された二個の濡れた黄昏。 ドアアの中のドアアの中の鳥籠の中のカナリヤの中の嵌殺戸扉の中のアイサツ。 食堂の入口迄来た雌雄の様な朋友が分れる。 黒インクの溢れた角砂糖が三輪車に積荷れる。 名刺を踏む軍用長靴。街衢を疾駆する造花金蓮。 上から降りて下から昇つて上から降りて下から昇つた人は下から昇らなかつた上から降…
    8キロバイト (1,522 語) - 2019年4月6日 (土) 00:50
  •  隣室でジャズが始まると、歌麿の顔が急に活き活きして来る、葡萄酒のせいもあるであろう。  芭蕉は、相変わらずニコニコしながら、一片の角砂糖をコーヒーの中に落として、じっと見つめている。  小さな泡(あわ)がまん中へかたまって四方へ開いて消える。…
    237キロバイト (40,461 語) - 2023年10月22日 (日) 05:59
  • 、「もう一杯上げましょうか」と聞いた。私はすぐ茶碗を奥さんの手に渡した。 「いくつ? 一つ? 二ッつ?」  妙なもので角砂糖をつまみ上げた奥さんは、私の顔を見て、茶碗の中へ入れる砂糖の数(かず)を聞いた。奥さんの態度は私に媚(こ)びるというほどではなかったけれども、先刻(さっき)の強い言葉を力(つと…
    557キロバイト (105,682 語) - 2019年9月29日 (日) 04:49
  • 「いやあ亡国の菓子が来た」 「亡国の菓子とは何だい」と甲野さんは茶碗を引き寄せる。 「亡国の菓子さハハハハ。糸公知ってるだろう亡国の菓子の由緒(いわれ)を」と云いながら角砂糖を茶碗の中へ抛(ほう)り込む。蟹(かに)の眼のような泡(あわ)が幽(かす)かな音を立てて浮き上がる。 「そんな事知らないわ」と糸子は匙(さじ)でぐるぐる攪(か)き廻している。…
    711キロバイト (133,899 語) - 2023年10月17日 (火) 13:49
  •  冷たそうに燦(ぎら)つく肌合(はだあい)の七宝(しっぽう)製の花瓶(かびん)、その花瓶の滑(なめ)らかな表面に流れる華麗(はなやか)な模様の色、卓上に運ばれた銀きせの丸盆、同じ色の角砂糖入と牛乳入、蒼黒(あおぐろ)い地(じ)の中に茶の唐草(からくさ)模様を浮かした重そうな窓掛、三隅(みすみ)に金箔(きんぱく)を置いた装飾用のアルバ…
    1.06メガバイト (208,097 語) - 2023年10月17日 (火) 13:45