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海軍軍備制限ニ關スル條約

提供:Wikisource

朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ帝國、亞米利加合衆國、英帝國、佛蘭西國及伊太利國ノ各全權委員カ大正十一年二月六日亞米利加合衆國華盛頓ニ於テ署名調印シタル海軍軍備制限ニ關スル條約ヲ批准シ茲ニ之ヲ公布セシム

御名

大正十二年八月十七日

內閣總理大臣男爵加藤友三郞

外 務 大 臣伯爵內田  康哉

海 軍 大 臣    財 部  彪

條約第二號

亞米利加合衆國、英帝國、佛蘭西國、伊太利國及日本國ハ 一般ノ平和ノ維持ニ貢獻シ且軍備競爭ノ負擔ヲ輕減セムコトヲ望ミ 右目的ヲ達成スル爲各自ノ海軍軍備ヲ制限スルノ條約ヲ締結スルコトニ決シ之カ爲左ノ如ク其全權委員ヲ任命セリ

亞米利加合衆國大統領

合衆國人民「チァールス、エヴァンス、ヒューズ」 同    「ヘンリー、カボット、ロッジ」 同    「オスカー、ダブリュー、アンダウッド」 同    「エリヒュー、ルート」

大不列顚愛蘭合王國及大不列顚海外領土皇帝印度皇帝陛下

樞密委員議長國會議員「アーサー、ジェームス、バルフォア」 海軍大臣男爵「リー、オヴ、フェアラム」 亞米利加合衆國駐箚特命全權大使「サー、オークランド、キァンブル、ゲデス」

加奈陀

「ロバート、レアド、ボーデン」

濠太利聯邦

內務大臣上院議員「ジョージ、フォスター、ピアス」

新西蘭

新西蘭最高法院判事「サー、ジョン、ウィリアム、サルモンド」

南阿弗利加聯邦

國會議員「アーサー、ジェームス、バルフォア」

印度

印度參議院議員「ヴァリングマン、サンカラナラヤナ、スリニヴァサ、サストリ」

佛蘭西共和國大統領

植民大臣下院議院「アルベール、サロー」 亞米利加合衆國駐箚特命全權大使「ジュール、ジー、ジュスラン」

伊太利亞國皇帝陛下

參議院議員「カルロ、シァンツェル」 亞米利加合衆國駐箚特命全權大使「ヴィットリオ、ロランディ、リッチ」 參議院議員「ルイジ・アルベルチィニ」

日本國皇帝陛下

海軍大臣男爵加藤友三郞 亞米利加合衆國駐箚特命全權大使幣原善重郞 外務次官埴原正直

右各委員ハ互ニ其ノ全權委任狀ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ如ク協定セリ

第一章
海軍軍備ノ制限ニ關スル一般規定

第一條

締約國ハ本條約ノ規定ニ從ヒ各自ノ海軍軍備ヲ制限スヘキコトヲ約定ス

第二條

締約國ハ第二章第一節ニ揭クル主力艦ヲ各自保有スルコトヲ得本條約實施ノ上ハ合衆國、英帝國及日本國ノ既成又ハ建造中ノ他ノ一切ノ主力艦ハ第二章第二節ノ規定ニ從ヒ之ヲ處分スヘシ但シ本條中ノ左ノ諸規定ヲ留保ス 合衆國ハ第二章第一節ニ揭クル主力艦ノ外現ニ建造中ノ「ウェスト、ヴァージーニア」級二隻ヲ完成シ之ヲ保有スルコトヲ得右二隻完成ノ上ハ「ノース、ダコータ」及「デラウェーア」ハ第二章第二節ノ規定ニ從ヒ之ヲ處分スヘシ 英帝國ハ第二章第三節ノ第換表ニ從ヒ基準排水量各三萬五千噸(三萬五千五百六十「メートル」式噸)ヲ超エサル新主力艦二隻ヲ建造スルコトヲ得右二隻完成ノ上ハ「サンダラー」、「キング、ジョージ」五世、「エージァックス」及「センチューリオン」ハ第二章第二節ノ規定ニ從ヒ之ヲ處分スヘシ

第三條

第二條ノ規定ヲ留保シ締約國ハ各自ノ主力艦建造計畫ヲ廢止スヘク又締約國ハ第二章第三節ニ揭クル所ニ從ヒ建造シ又ハ取得スルコトヲ得ヘキ代換噸數以外ニ新主力艦ヲ建造シ又ハ取得スルコトヲ得ス

第二章第三節ニ從ヒ代換セラレタル軍艦ハ同章第二節ノ規定ニ從ヒ之ヲ處分スヘシ

第四條

各締約國ノ主力艦合計代換噸數ハ基準排水量ニ於テ合衆國五十二萬五千噸(五十三萬三千四百「メートル」式噸)、英帝國 五十二萬五千噸(五十三萬三千四百「メートル」式噸)、佛蘭西國十七五千噸(十七萬七千八百「メートル」式噸)、伊太利國十七萬五千噸(十七萬七千八百「メートル」式噸)日本國三十一萬五千噸「三十二萬四十「メートル」式噸」ヲ超ユルコトヲ得ス

第五條

基準排水量三萬五千噸(三萬五千五百六十「メートル」式噸)ヲ超ユル主力艦ハ何レノ締約國モ之ヲ取得シ又ハ之ヲ建造シ、建造セシメ若ハ其ノ法域內ニ於テ之カ建造ヲ許スコトヲ得ス

第六條

何レノ締約國ノ主力艦モ口徑十六吋(四百六「ミリメートル」)ヲ超ユル砲ヲ裝備スルコトヲ得ス

第七條

各締約國ノ航空母艦合計噸數ハ基準排水量ニ於テ合衆國十三萬五千噸(十三萬七千百六十「メートル」式噸)、英帝國十三萬五千噸(十三萬七千百六十「メートル」式噸)、佛蘭西國六萬噸(六萬九百六十「メートル」式噸)、伊太利國六萬噸(六萬九百六十「メートル」式噸)日本國八萬一千噸(八萬二千二百九十六「メートル」式噸)ヲ超ユルコトヲ得ス

第八條

航空母艦ノ代換ハ第二章第三節ノ規定ニ從フノ外之ヲ行フコトヲ得ス但シ千九百二十一年十一月十二日ニ現存シ又ハ建設中ノ一切ノ航空母艦ハ之ヲ試驗的ノモノト看做スヘク且其ノ艦齡ノ如何ニ拘ラス第七條ニ規定スル合計噸數ノ範圍內ニ於テ之ヲ代換スルコトヲ得

第九條

基準排水量二萬七千噸(二萬七千四百三十二「メートル」式噸)ヲ超ユル航空母艦ハ何レノ締約國モ之ヲ取得シ又ハ之ヲ建造シ、建造セシメ若ハ其ノ法域內ニ於テ之カ建造ヲ許スコトヲ得ス

尤モ各締約國ハ其ノ航空母艦ノ割當合計噸數ヲ超エサル限リ基準排水量各三萬三千噸(三萬三千五百二十八「メートル」式噸)ヲ超エサル航空母艦二隻以內ヲ建造スルコトヲ得ヘク又經費節約ノ爲各締約國ハ第二條ノ規定ニ依リ廢棄スヘキ規制又ハ建造中ノ主力艦中ノ二隻ヲ右目的ニ利用スルコトヲ得基準排水量二萬七千噸(二萬七千四百三十二「メートル」式噸)ヲ超ユル航空母艦ノ武裝ハ第十條ノ規定ニ準據スヘシ但シ備砲中ニ口徑六吋(百五十二「ミリメートル」)ヲ超ユルモノアルトキハ航空機防禦砲及口徑五吋(百二十七「ミリメートル」)以下ノ砲ヲ除クノ外備砲ノ數ハ合計八問ヲ超ユルコトヲ得ス

第十條

何レノ締約國ノ航空母艦モ口徑八吋(二百三「ミリメートル」)ヲ超ユル砲ヲ裝備スルコトヲ得ス備砲中二口徑六吋(百五十二「ミリメートル」)ヲ超ユルモノアルトキハ航空機防禦砲及口徑五吋(百二十七「ミリメートル」)以下ノ砲ヲ除クノ外備砲ノ數ハ合計十問ヲ超ユルコトヲ得ス但シ第九條ノ規定ノ適用ヲ妨クルコトナシ又備砲中ニ口徑六吋(百五十二「ミリメートル」)ヲ超ユルモノナキトキハ砲ノ數ハ制限セラルルコトナシ右何レノ場合ニ於テモ航空機防禦砲及口徑五吋(百二十七「ミリメートル」)ヲ超エサル砲ノ數ハ制限セラルルコトナシ

第十一條

主力艦又ハ航空母艦以外ノ軍艦ニシテ基準排水量一萬噸(一萬百六十「メートル」式噸)ヲ超ユルモノハ何レノ締約國モ之ヲ取得シ又ハ之ヲ建造シ、建造セシメ若ハ其ノ法域內ニ於テ之カ建造ヲ許スコトヲ得ス特ニ戰鬪用艦船トシテ建造セラレタルモノニ非サル船舶ニシテ艦隊用務又ハ軍隊輸送ノ爲其ノ他戰鬪用船舶トシテ爲ス以外ニ於テ敵對行爲ノ遂行ヲ幇助スル爲使用セラルルモノハ本條ノ制限ヲ受ケサルモノトス

第十二條

將來起工セラルヘキ何レノ締約國ノ軍艦モ主力艦ヲ除クノ外口徑八吋(二百三「ミリメートル」)ヲ超ユル砲ヲ裝備スルコトヲ得ス

第十三條

第九條ニ規定スル場合ヲ除クノ外本條約中ニ廢棄スヘキモノトシテ指定セラレタル軍艦ハ再ヒ之ヲ軍艦ニ變更スルコトヲ得ス

第十四條

商船ハ軍艦ニ變更スルノ目的ヲ以テ平時之ニ武裝ヲ施スノ準備ヲ爲スコトヲ得ス但シ口徑六吋(百五十二「ミリメートル」)ヲ超エサル砲ヲ裝備スル爲必要ナル甲板ノ補強設備ハ之ノ限ニ在ラス

第十五條

何レノ締約國ノ法域內ニ於テ非締約國ノ爲ニ建造スル軍艦モ締約國ノ建造シ又ハ建造セシムル同型ノ軍艦ニ付本條約ニ規定スル排水量及武裝ニ關スル制限ヲ超ユルコトヲ得ス但シ非締約國ノ爲ニ建造スル航空母艦ノ排水量ハ如何ナル場合ニ於テモ基準排水量二萬七千噸(二萬七千四百三十二「メートル」式噸)ヲ超ユル事ヲ得ス

第十六條

締約國ノ法域內ニ於テ非締約國ノ爲ニ軍艦ヲ建造スルトキハ該締約國ハ他ノ締約國ニ對シ契約締結ノ日及軍艦ノ龍骨据附ノ日ヲ速ニ通報シ且第二章第三節第一款(ロ)ノ(四)及(五)ニ規定スル軍艦ニ關スル細目ヲ通知スヘシ

第十七條

締約國ハ戰爭ニ從事スル場合ニ於テハ其ノ法域內ニ於テ他國ノ爲ニ建造中ノ軍艦又ハ其ノ法域內ニ於テ他國ノ爲ニ建造シタルモ引渡ヲ了セサル軍艦ヲ軍艦トシテ使用スルコトヲ得ス

第十八條

各締約國ハ贈與、賣却又ハ如何ナル讓渡ノ型式ニ依ルヲ問ハス外國海軍ニ於テ軍艦ト爲スヲ得ルカ如キ方法ニ依リ其ノ軍艦ヲ處分セサルヘキコトヲ約ス

第十九條

合衆國、英帝國及日本國ハ左ニ揭クル各自ノ領土及屬地ニ於テ要塞及海軍根據地ニ關シ本條約署名ノ時ニ於ケル現狀ヲ維持スヘキコトヲ約定ス

(一) 合衆國カ太平洋ニ於テ現ニ領有シ又ハ將來取得スルコトアルヘキ島嶼タル屬地但シ(イ)合衆國、「アラスカ」及巴奈馬運河地帶ノ海岸ニ近接スル島嶼(「アリューシアン」諸島ヲ包含セス)竝(ロ)布哇諸島ヲ除ク

(二) 香港及英帝國カ東經百十度以東ノ太平洋ニ於テ現ニ領有シ又ハ將來取得スルコトアルヘキ島嶼タル屬地但シ(イ)加奈陀海岸ニ近接スル島嶼(ロ)濠太利聯邦及其ノ領土竝(ハ)新西蘭ヲ除ク

(三) 太平洋ニ於ケル日本國ノ下記ノ島嶼タル領土及屬地卽チ千島諸島、小笠原諸島、奄美大島、琉球諸島、臺灣及澎湖諸島竝日本國カ將來取得スルコトアルヘキ太平洋ニ於ケル島嶼タル領土及屬地

前記ノ現狀維持トハ右ニ揭クル領土及屬地ニ於テ新ナル要塞又ハ海軍根據地ヲ建設セサルヘキコト、海軍力ノ修理及維持ノ爲現存スル海軍諸設備ヲ增大スルノ處置ヲ執ラサルヘキコト竝右ニ揭クル領土及屬地ノ沿岸防禦ヲ增大セサルヘキコトヲ謂フ但シ右制限ハ海軍及陸軍ノ設備ニ於テ平時慣行スルカ如キ磨損セル武器及裝備ノ修理及取替ヲ妨クルコトナシ

第二十條

第二章第四節ニ規定スル排水量噸數算定ノ規則ハ各締約國ノ軍艦ニ之ヲ適要ス

第二章
本條約實施ニ關スル規則及用語ノ定義
第一節
締約国ノ保有シ得ヘキ主力艦

各締約國ハ第二條ノ規定ニ從ヒ本節ニ揭クル軍艦ヲ保有スルコトヲ得

合衆國ノ保有シ得ヘキ軍艦

艦 名
噸 數
「メーリンド」 三二、六〇〇
「カリフォルニア」 三二、三〇〇
「テネシー」 三二、三〇〇
「アイダホー」 三二、〇〇〇
「ニュー、メキシコ」 三二、〇〇〇
「ミシシッピー」 三二、〇〇〇
「アリゾーナ」 三一、四〇〇
「ペンシルヴァーニア」 三一、四〇〇
「オクラホーマ」 二七、五〇〇
「ネヴァーダ」 二七、五〇〇
「ニュー、ヨーク」 二七、〇〇〇
「テキサス」 二七、〇〇〇
「アーカンソー」 二六、〇〇〇
「ワイオーミング」 二六、〇〇〇
「フロリダ」 二一、八二五
「ユター」 二一、八二五
「ノース、ダコータ」 二〇、〇〇〇
「デラウェーア」 二〇、〇〇〇
合計噸數 五〇〇、六五〇

第二條ノ規定ニ從ヒ「ウェスト、ヴァージーニア」級二隻ヲ完成シ且「ノース、ダコータ」及「デラウェーア」ヲ廢棄シタル上ハ合衆國ノ保有スル合計噸數ハ五十二萬五千八百五十噸ナリ

英帝國ノ保有シ得ヘキ軍艦

艦 名
噸 數
|-
「ローヤル、ソヴェレン」 二五、七五〇
「ローヤル、オーク」 二五、七五〇
「リヴェンジ」 二五、七五〇
「レゾリューション」 二五、七五〇
「ラミリース」 二五、七五〇
「マラヤ」 二七、五〇〇
「ヴァリアント」 二七、五〇〇
「バーラム」 二七、五〇〇
「クウィン、エリザベス」 二七、五〇〇
「ウァースパイト」 二七、五〇〇
「ベンホー」 二五、〇〇〇
「エンペラー、オヴ、インディア」 二五、〇〇〇
「アイアン、デューク」 二五、〇〇〇
「マーバラ」 二五、〇〇〇
「フッド」 四一、二〇〇
「リナウン」 二六、五〇〇
「リパルス」 二六、五〇〇
「タイガー」 二八、五〇〇
「サンダラー」 二二、五〇〇
「キング、ジョージ」五世 二三、〇〇〇
「エージァックス」 二三、〇〇〇
「センチューリオン」 二三、〇〇〇
合計噸數 五八〇、四五〇

第二條ノ規定ニ從ヒ建造セラルヘキ新軍二隻ヲ完成シ且「サンダラー」、「キング、ジョージ」五世、「エージァックス」及「センチューリオン」ヲ廢棄シタル上ハ英帝國ノ保有スル合計噸數ハ五十五萬八千九百五十噸ナリ

佛蘭西國ノ保有シ得ヘキ軍艦

艦 名
噸 數
「ブルターニュ」 二三、五〇〇
「ロレーヌ」 二三、五〇〇
「プロヴァンス」 二三、五〇〇
「パリー」 二三、五〇〇
「フランス」 二三、五〇〇
「ジァン、バール」 二三、五〇〇
「クールベー」 二三、五〇〇
「コンドルセー」 一八、八九〇
「ディドロー」 一八、八九〇
「ヴォルテール」 一八、八九〇
合計噸數 二二一、一七〇

佛蘭西國ハ第三節第二款ノ限定ニ從ヒ千九百二十七年、千九百二十九年及千九百三十一年ニ新艦ヲ起工スルコトヲ得

伊太利國ノ保有シ得ヘキ軍艦

艦 名
噸數(「メートル」式噸)
「アンドレア、ドーリア」 二二、七〇〇
「カイオ、デゥイリオ」 二二、七〇〇
「コンテ、ディ、カヴール」 二二、五〇〇
「ジュリオ、チェザーレ」 二二、五〇〇
「レオナルド、ダ、ヴィンチ」 二二、五〇〇
「ダンテ、アリギエーリ」 一九、五〇〇
「ローマ」 一二、六〇〇
「ナポリ」 一二、六〇〇
「ヴィットーリオ、マヌエン」 一二、六〇〇
「レジナ、エレーナ」 一二、六〇〇
合計噸數 一八二、八〇〇

伊太利國ハ第三節第二款ノ限定ニ從ヒ千九百二十七年、千九百二十九年及千九百三十一年ニ新艦ヲ起工スルコトヲ得

日本國ノ保有シ得ヘキ軍艦

艦 名
噸 數
「陸   奧」 三三、八〇〇
「長   門」 三三、八〇〇
「日   向」 三一、二六〇
「伊   勢」 三一、二六〇
「山   城」 三〇、六〇〇
「扶   桑」 三〇、六〇〇
「霧   島」 二七、五〇〇
「榛   名」 二七、五〇〇
「比   叡」 二七、五〇〇
「金   剛」 二七、五〇〇
合計噸數 三〇一、三二〇
第二節
軍艦廢棄ニ關スル規則

第二條及第三條ノ規定ニ從ヒ處分スヘキ軍艦ノ廢棄ニ關シテハ左ノ諸規則ヲ遵守スヘシ

 廢棄スル軍艦ハ之ヲ戰鬪用ニ供シ得サル狀態ニ置クコトヲ要ス

 右結果ハ左ノ方法ノ何レカノ一ニ依リ確定的ニ之ヲ實現スルコトヲ要ス

(イ) 軍艦ヲ永久ニ沈沒セシムルコト

(ロ) 軍艦ヲ解體スルコト 解體ハ必ス一切ノ機械汽罐及裝甲竝一切ノ甲板、舷側及船底ノ鈑ノ破壞又ハ撤去ヲ含ムヘキモノトス

(ハ) 軍艦ヲ專ラ標的用ニ變更スルコト 此ノ場合ニ於テ本節第三號ノ一切ノ規定ハ豫メ之ヲ遵守スルコトヲ要ス但シ(六)(軍艦ヲ移動標的トシテ使用スルニ必要ナル限度ニ於テ)及(七)ハ此ノ限ニ在ラス各締約國ハ右目的ノ爲同時ニ一隻ヲ超ユル主力艦ヲ保有スルコトヲ得ス

(ニ) 佛蘭西國及伊太利國ハ千九百三十一年又ハ其ノ以後ニ於テ本條約ニ依リテ廢棄スヘキ主力艦中ヨリ專ラ練習用ノ爲卽チ砲術學校又ハ水雷學校用トシテ航海可能ノモノ二隻ヲ各自保有スルコトヲ得佛蘭西國ノ保有スル右軍艦二隻ハ「ジァン、バール」級ノモノタルヘク又伊太利國ノ保有スルモノノ內一隻「ダンテ、アリギエーリ」ニシテ他ノ一隻「ジュリオ、チェザーレ」級ノモノタルヘシ佛蘭西國及伊太利國ハ前記目的ノ爲右軍艦ヲ保有スルニ當リ其ノ司令塔ヲ撤去破壞シ且該軍艦ヲ軍艦トシテ使用セサルヘキコトヲ各自約定ス

三 (イ) 第九條ニ揭クル例外ヲ留保シ軍艦カ廢棄ノ時期ニ到達シタルトキハ直ニ廢棄ノ第一期作業卽チ軍艦ヲ爾後戰鬪任務ニ堪ヘサルモノト爲スコトニ著手スヘシ

(ロ) 軍艦ハ左ノ諸物件ヲ撤去陸揚シ又ハ艦內ニ於テ破壞シタルトキハ爾後戰鬪任務ニ堪ヘサルモノト認メラルヘシ

(一) 一切ノ砲及砲ノ主要部分、砲火指揮所竝一切ノ露砲塔及砲塔ノ旋回部

(二) 水壓又ハ電力ヲ以テ作動スル砲架ノ操作ニ必要ナル一切ノ機械

(三) 一切ノ砲火指揮用具及距離測定儀

(四) 一切ノ彈藥、爆藥及機雷

(五) 一切ノ魚雷、實用頭部及發射管

(六) 一切ノ無線電信裝置

(七) 司令塔及一切ノ舷側裝甲又ハ此等ノ代リニ一切ノ主要推進機械

(八) 一切ノ飛行機發著用甲板及其ノ他一切ノ航空用附屬物件

 軍艦ノ廢棄ヲ實行スヘキ期間左ノ如シ

(イ) 第二條第一項ニヨリ廢棄スヘキ軍艦ニ付テハ本節第三號ニ從ヒ爾後戰鬪任務ニ堪ヘサルモノト爲スノ作業ヲ本條約實施ノ時ヨリ六月內ニ完了シ且其ノ廢棄ヲ右實施ノ時ヨリ十八月以內ニ全部完了スヘシ

(ロ) 第二條第二項及第三項ニ依リ又ハ第三條ニヨリ廢棄スヘキ軍艦ニ付テハ本節第三號ニ從ヒ爾後戰鬪任務ニ堪ヘサルモノト爲スノ作業ハ其ノ代艦完成ノ日以前ニ之ヲ開始シ右完成ノ日ヨリ六月內ニ之ヲ完了スヘシ諸軍艦ハ其ノ代艦完成ノ日ヨリ十八月內ニ本節第三號ニ從ヒ確定定期ニ之ヲ廢棄スヘシ但シ新艦ノ完成遲延スルトキハ本節第三號ニ從ヒ舊艦ヲ爾後戰鬪任務ニ堪ヘサルモノト爲スノ作業ハ新艦ノ龍骨据附後四年以內ニ之ヲ開始シ該作業開始ノ日ヨリ六月內ニ之ヲ完了スヘク且舊艦ハ爾後戰鬪任務ニ堪エヘサルモノト爲スノ作業開始ノ日ヨリ十八內日本節第二號ニ從ヒ確定的ニ之ヲ廢棄スヘシ

第三節
代換

主力艦及航空母艦ノ代換ハ本節第一款ノ規則及第二款ノ表ニ依リ之ヲ行フヘシ

第一款
 代換ニ關スル規則

(イ) 主力艦及航空母艦ニシテ其ノ完成ノ日ヨリ二十年ヲ經過シタルモノハ第八條及本節第二款ノ表ニ別段ノ規定アル場合ヲ除クノ外代換セラルヘキ舊艦ノ完成ノ日ヨリ十七年ヲ經過スルニ非サレハ之ヲ据附クルコトヲ得ス但シ主力艦ハ第二條第三項ニ揭クル軍艦及本節第二款ニ揭クル代換噸數ヲ除クノ外千九百二十一年十一月十二日ヨリ十年間ハ之ヲ起工スルコトヲ得ス

(ロ) 各締約國ハ速ニ左ノ事項ヲ他ノ各締約國ニ通知スヘシ

(一) 新艦建造ニ依リ代換セラルヘキ主力艦及航空母艦ノ艦名

(二) 代艦建造ニ對スル政府公認ノ日

(三) 代艦ノ龍骨据附ノ日

(四) 起工スル各新艦ノ噸及「メートル」式噸ニ依ル基準排水量竝主要寸法卽チ主水線、全長水線又ハ水線下ノ最大幅員及基準排水量ニ於ケル平均吃水

(五) 各新艦完成ノ日、完成ノ時ニ於ケル噸及「メートル」式噸ニ依ル基準排水量竝完成ノ時ニ於ケル主要寸法卽チ水線全長、水線又ハ水線下ノ最大幅員及基準排水量ニ於ケル平均平均吃水

(ハ) 主力艦又ハ航空母艦亡失シ又ハ不慮ノ事變ニ依リ破壞セラレタルトキハ第四條及第七條ニ定ムル噸數ノ範圍內ニ於テ且 本條約ノ他ノ規定ニ從ヒ新艦建造ニ依リ直ニ之ヲ代換スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ正規ノ代換計畫ハ該艦ノ關スル限リ之ヲ繰上ケタルモノト認ム

(ニ) 保有スヘキ主力艦又ハ航空母艦ハ空中及水中ノ攻擊ニ對スル防禦裝置ヲ施スノ目的ヲ以テスル場合ニ限リ下記ノ規定ニ從ヒ之ヲ改造スルコトヲ得卽チ締約國ハ右目的ノ爲各現存艦ニ付其ノ增加スヘキ排水量三千噸(三千四十八「メートル」式噸)ヲ超エサル限リ「バルヂ」若ハ「ブリスター」又ハ空中攻擊ニ對スル防禦甲板ヲ之ニ裝備スルコトヲ得舷側裝甲又ハ主砲ノ口徑、數若ハ一般裝備法ハ左ノ場合ヲ除クノ外之ヲ變更スルコトヲ得ス

(一) 佛蘭西國及伊太利國ハ「バルヂ」ニ關シ增加スルコトヲ得ル噸數ノ範圍內ニ於テ其ノ現存主力艦ノ裝甲ヲ增加シ且其ノ備砲ノ口徑ヲ十六吋(四百六「ミリメートル」)ヲ超エサル限リ增大スルコトヲ得

(二) 英帝國ハ「リナウン」ニ付テハ既ニ開始シ一時中止シタル裝甲變更工事ヲ完了スルコトヲ得

第二款
主力艦ノ代換及廢棄

合衆國

年度 起工代艦 完成代艦 廢棄艦(括弧內ノ數字ハ艦齡) 保有艦總數
「ジュットランド」海戰
前ノ型 後ノ型
      「メーン」(二〇)、「ミズーリ」(二〇)、「ヴァージーニア」(一七)、「ジョージア」(一七)、「ニュー、ジァーシー」(一七)、「ロード、アイランド」(一七)、「カネティカット」(一七)、「ルイジアーナ」(一七)、「ヴァーモント」(一六)、「カンザス」(一六)、「ミネソータ」(一六)、「ニュー、ハンプシァー」(一五)、「サウス、カロライナ」(一三)、「ミシガン」(一三)、「ウォシントン」(〇)、「サウス、ダゴータ」(〇)、「インディアナ」(〇)、「モンターナ」(〇)、「ノース、カロライナ」(〇)、「アイオワ」(〇)、「マッサチュセッツ」(〇)、「レキシントン」(〇)、「コンスチチューション」(〇)、「コンステレーション」(〇)、「サラトーガ」(〇)、「レンジァー」(〇)、「ユナイテッド、ステーツ」(〇)(註一) 一七
一九二二   「い」、「ろ」(註二) 「デラウェーア」(一二)、「ノース、ダコータ」(一二) 一五
一九二三       一五
一九二四       一五
一九二五       一五
一九二六       一五
一九二七       一五
一九二八       一五
一九二九       一五
一九三〇       一五
一九三一 「は」、「に」     一五
一九三二 「ほ」、「へ」     一五
一九三三 「ご」     一五
一九三四 「ち」、「り」 「は」、「に」 「フロリダ」(二三)、「ユター」(二三)、「ソイオーミング」(二二) 一二
一九三五 「ぬ」 「ほ」、「へ」 「アーカンソー」(二三)、「テキサス」(二一)、「ニューヨーク」(二一)
一九三六 「る」、「を」 「ご」 「ネヴァーダ」(二〇)、「オクラホーマ」(二〇)
一九三七 「わ」 「ち」、「り」 「アリゾーナ」(二一)、「ペンシルヴェーニア」(二一) 一〇
一九三八 「か」、「よ」 「ぬ」 「ミシシッピー」(二一) 一一
一九三九 「た」、「れ」 「る」、「を」 「ニュー、メキシコ」(二一)、「アイダホー」(二〇) 一三
一九四〇   「わ」 「テネシー」(二〇) 一四
一九四一   「か」、「よ」 「カリフォルニア」(二〇)、「メーリランド」(二〇) 一五
一九四二   「た」、「れ」 「ウェスト、ヴァージーニア」級二隻 一五
(註一)合衆國ハ第二節第三號(ロ)ノ規定ニ準據シタル上「オレゴン」及「イリノイ」ヲ非戰鬪用トシテ保有スルコトヲ得

(註二)「ウェスト、ヴァージーニア」級二隻

備考―「い」「ろ」「は」「に」等ハ當該年度ニ於テ起工シ及完成スヘキ基準排水量三萬五千噸ノ各主力艦ヲ示ス

主力艦ノ代換及廢棄

英帝國

年度 起工代艦 完成代艦 廢棄艦(括弧內ノ數字ハ艦齡) 保有艦總數
「ジュットランド」海戰
前ノ型 後ノ型
      「コンモンウェルス」(一六)、「アガメンノン」(一三)、「ドレッドノート」(一五)、「ベレロフォン」(一二)、「セント、ヴィンセント」(一一)、「インフレクシブル」(一三)、「シュパーブ」(一二)、「ネプチューン」(一〇)、「ハーキュリーズ」(一〇)、「インドミタブル」(一三)、「テメレーア」(一二)、「ニュー、ジーランド」(九)、「プリンセス、ローヤル」(九)、「コンケラー」(九)、「モナーク」(九)、「オライオン」(九)、「オーストレーリア」(八)、「エジンコート」(七)、「エリン」(七)、建造又ハ計畫中ノ四隻 二一
一九二二 「い」、「ろ」(註二)     二一
一九二三   「イ」、「ロ」(註二)   二一
一九二四       二一
一九二五   「い」、「ろ」 「キング、ジョージ」五世(一三)、「エージァックス」(一二)、「センチューリオン」(一二)、「サンダラー」(一三) 一七
一九二六       一七
一九二七       一七
一九二八       一七
一九二九       一七
一九三〇       一七
一九三一 「は」、「に」     一七
一九三二 「ほ」、「へ」     一七
一九三三 「ご」     一七
一九三四 「ち」、「り」 「は」、「に」 「アイアン、デューク」(二〇)、「マーバラ」(二〇)、「エンペラー、オヴ、インディア」(二〇)、「ベンボー」(二〇) 一三
一九三五 「ぬ」 「ほ」、「へ」 「タイガー」(二一)、「クウィン、エリザベス」(二〇)、「ウァースパイト」(二〇)、「バーラム」(二〇)
一九三六 「る」、「を」 「ご」 「ムラヤ」(二〇)、「ローヤル、ソヴェレン」(二〇)
一九三七 「わ」 「ち」、「り」 「リヴェンジ」(二一)、「レゾリューション」(二一) 一〇
一九三八 「か」、「よ」 「ぬ」 「ローヤル、オーク」(二二) 一一
一九三九 「た」、「れ」 「る」、「を」 「ヴァリアント」(二三)、「リパルス」(二三) 一三
一九四〇   「わ」 「リナウン」(二四) 一四
一九四一   「か」、「よ」 「ラミリース」(二四)、「フッド」(二一) 一五
一九四二   「た」、「れ」 「い」(一七)、「ろ」(一七) 一五
(註一)英帝國ハ第二節第三號(ロ)ノ規定ニ準據シタル上「コロッサス」及「リンドウッド」ヲ非戰鬪用トシテ保有スルコトヲ得

(註二)基準排水量三萬五千噸艦級二隻

備考―「い」「ろ」「は」「に」等ハ當該年度ニ於テ起工シ及完成スヘキ基準排水量三萬五千噸ノ各主力艦ヲ示ス

主力艦ノ代換及廢棄

佛蘭西國

年度 起工代艦 完成代艦 廢棄艦(括弧內ノ數字ハ艦齡) 保有艦總數
「ジュットランド」海戰
前ノ型 後ノ型
一九二二      
一九二三      
一九二四      
一九二五      
一九二六      
一九二七 三五、〇〇〇噸    
一九二八      
一九二九 三五、〇〇〇噸    
一九三〇   三五、〇〇〇噸 「ジァン、バール」(一七)、「クールベー」(一七) (註)
一九三一 三五、〇〇〇噸     (註)
一九三二 三五、〇〇〇噸 三五、〇〇〇噸 「フランス」(一八) (註)
一九三三 三五、〇〇〇噸     (註)
一九三四   三五、〇〇〇噸 「パリー」(二〇)、「ブルターニュ」(二〇) (註)
一九三五   三五、〇〇〇噸 「プロヴァンス」(二〇) (註)
一九三六   三五、〇〇〇噸 「ロレーヌ」(二〇) (註)
一九三七       (註)
一九三八       (註)
一九三九       (註)
一九四〇       (註)
一九四一       (註)
一九四二       (註)
(註)噸數制限ノ範圍內ニ於テ隻數ハ任意トス

備考―佛蘭西國ハ主力艦噸數割合ヲ其ノ適當ト認ムル所ニ從ヒ使用スルノ權利ヲ明ニ留保ス但シ各艦ノ排水量カ三萬五千噸ヲ超エサルコト及主力艦合計噸數カ本條約ニ定ムル制限ノ範圍內タルヘキコトヲ條件トス

主力艦ノ代換及廢棄

伊太利國

年度 起工代艦 完成代艦 廢棄艦(括弧內ノ數字ハ艦齡) 保有艦總數
「ジュットランド」海戰
前ノ型 後ノ型
一九二二      
一九二三      
一九二四      
一九二五      
一九二六      
一九二七 三五、〇〇〇噸    
一九二八      
一九二九 三五、〇〇〇噸    
一九三〇   三五、〇〇〇噸  
一九三一 三五、〇〇〇噸 三五、〇〇〇噸 「ダンテ、アリギエーリ」(一九) (註)
一九三二 四五、〇〇〇噸     (註)
一九三三 二五、〇〇〇噸 三五、〇〇〇噸 「レオナルド、ダ、ヴィンチ」(一九) (註)
一九三四       (註)
一九三五   三五、〇〇〇噸 「ジュリオ、チェザーレ」(二一) (註)
一九三六   四五、〇〇〇噸 「コンテ、ディ、カヴール」(二一)、「デゥイリオ」(二一) (註)
一九三七   二五、〇〇〇噸 「アンドレア、ドーリア」(二一) (註)
(註)噸數制限ノ範圍內ニ於テ隻數ハ任意トス

備考―伊太利國ハ主力艦噸數割合ヲ其ノ適當ト認ムル所ニ從ヒ使用スルノ權利ヲ明ニ留保ス但シ各艦ノ排水量カ三萬五千噸ヲ超エサルコト及主力艦合計噸數カ本條約ニ定ムル制限ノ範圍內タルヘキコトヲ條件トス

主力艦ノ代換及廢棄

日本國

年度 起工代艦 完成代艦 廢棄艦(括弧內ノ數字ハ艦齡) 保有艦總數
「ジュットランド」海戰
前ノ型 後ノ型
      肥前(二〇)、三笠(二〇)、鹿島(一六)、香取(一六)、薩摩(一二)、安藝(一一)、攝津(一〇)、生駒(一四)、伊吹(一二)、鞍馬(一一)、天城(〇)、赤城(〇)、加賀(〇)、土佐(〇)、高雄(〇)、愛宕(〇)、未タ起工セサル計畫中ノ八隻(註)
一九二二      
一九二三      
一九二四      
一九二五      
一九二六      
一九二七      
一九二八      
一九二九      
一九三〇      
一九三一 「い」    
一九三二 「ろ」    
一九三三 「は」    
一九三四 「に」 「い」 金剛(二一)
一九三五 「ほ」 「ろ」 比叡(二一)、榛名(二〇)
一九三六 「へ」 「は」 霧島(二一)
一九三七 「と」 「に」 扶桑(二二)
一九三八 「ち」 「ほ」 山城(二一)
一九三九 「り」 「へ」 伊勢(二二)
一九四〇   「ご」 日向(二二)
一九四一   「ち」 長門(二一)
一九四二   「り」 陸奧(二一)
(註)英帝國ハ第二節第三號(ロ)ノ規定ニ準據シタル上敷島及朝日ヲ非戰鬪用トシテ保有スルコトヲ得

備考―「い」「ろ」「は」「に」等ハ當該年度ニ於テ起工シ及完成スヘキ基準排水量三萬五千噸ノ各主力艦ヲ示ス

第二款ノ一切ノ表ニ適用スヘキ備考

前記ノ軍艦廢棄順序ハ艦齡ニ依ル尤モ前揭諸表ニ依リ代換ノ開始スルトキハ各締約國ハ其ノ軍艦廢棄順序ヲ任意ニ變更スルコトヲ得但シ各年度ニ付表中ニ規定スル關數ヲ廢棄スルコトヲ要ス

第四節
定義

左ノ用語ハ本條約ノ適用ニ付テハ本節ニ定ムル意義ニ之ヲ解スヘキモノトス

主力艦

主力艦トハ將來建造スル軍艦ニ關スル限リ基準排水量一萬噸(一萬百六十「メートル」式噸)ヲ超ユル軍艦又ハ口徑八吋(二百三「ミリメートル」)ヲ超ユル砲ヲ裝備スル軍艦ニシテ航空母艦ニ非サルモノヲ謂フ

航空母艦

航空母艦トハ特ニ且專ラ航空機ヲ搭載スル目的ヲ以テ設計シタル基準排水量一萬噸(一萬百六十「メートル」式噸)ヲ超ユル軍艦ヲ謂フ航空母艦ハ艦上ニ於テ航空機ノ發著シ得ヘキ構造ヲ有スヘク且第九條又ハ第十條ノ何レカニ依リ詐容セラレタルモノ以上ノ有力ナル砲ヲ裝備スルノ設計構造ヲ有セサルコトヲ要ス

基準排水量

軍艦ノ基準排水量トハ工事完成シ、委員ヲ充實シ、機關ヲ据付ケ且航海準備(一切ノ武器彈藥、齊備品、艤裝品、乘員用ノ糧食及淸水、各種需品竝戰時ニ於テ裝備スヘキ各種ノ用具ノ搭載ヲ含ム)完成シ唯燃料及豫備罐水ヲ搭載セサル軍艦ノ排水量ヲ謂フ

本條約中「噸」ノ語ハ(「メートル」式噸)ノ語ヲ用ヰタル場合ヲ除クノ外外二千二百四十「ポンド」(千十六「キログラム」)ノ噸ヲ意味スルモトノス

現ニ完成シタル軍艦ハ各自國ノ計量法ニ依リ算定シタル現排水量噸數ヲ引續キ有スルモノトス但シ「メートル」式噸ヲ以テ排水量ヲ表示スル國ハ本條約ノ適用ニ付テハ之ヲ二千二百四十「ポンド」ノ噸ヲ以テ算定シタル相當排水量ヲ有スルニ過キサルモノト看做ス

今後完成スル軍艦ノ排水量噸數ハ右ニ定ムル基準排水量ニ付之ヲ算定スルモノトス

第三章
雜則

第二十一條

本條約ノ有效期間中何レカノ締約國ニ於テ海軍力ニ依ル防衞ニ關スル自國安全ノ要件カ四圍ノ狀況ノ變化ニ依リ重大ナル影響ヲ受ケタリト認メタル場合ニ於テハ締約國ハ諸國ノ要求ニ基キ本條約ノ規定ヲ再議シ且相互ノ協定ニ依リ之カ修正ヲ爲スノ目的ヲ以テ會議ヲ開催スヘシ

技術上及科學上ノ將來ノ發達ヲ考量シ合衆國ハ、他ノ締約國ト協議ノ上、右發達ニ適應スル爲本條約中如何ナル變更ヲ必要トスヘキカトヲ審議スルノ目的ヲ以テ本條約實施ノ時ヨリ八年ヲ經過シタル後成ルヘク速ニ會合スヘキ締約國全部ノ會議ノ開催ヲ準備スヘシ

第二十二條

何レカノ締約國カ海軍力ニ依ル自國安全ノ防衞ニ影響ヲ及ホスト認ムル戰爭ニ從事スルニ至リタル場合ニ於テハ該締約國ハ他ノ締約國ニ通吿ヲ爲シタル後第十三條及第十七條ニ規定スルモノヲ除クノ外本條約ニ定ムル自國ノ義務ヲ右敵對行爲ノ期間中停止スルコトヲ得但シ該締約國ハ他ノ締約國ニ對シ該時局カ右停止ヲ必要トスル性質ノモノナルコトヲ通吿スルコトヲ要ス

前記ノ場合ニ於テ爾餘ノ締約國ハ本條約中相互ノ間ニ如何ナル一時的修正ヲ爲スヘキカニ關シ協定ヲ爲スノ目的ヲ以テ協議スヘシ該協議ノ結果各締約國ノ憲法上ノ手續ニ準據シテ正當ニ成立スル協定ヲ得ルニ至ラサルトキハ右締約國ノ何レノ一國モ他ノ締約國ニ通吿ヲ與ヘタル上第十三條及第十七條ニ規定スルモノヲ除クノ外本條約ニ定ムル自國ノ義務ヲ該敵對行爲ノ期間中停止スルコトヲ得

敵對行爲終了ノ上ハ締約國ハ本條約ノ規定中如何ナル修正ヲ爲スヘキカニ付審議スル爲會議ヲ開催スヘシ

第二十三條

本條約ハ千九百三十六年十二月三十一日迄效力ヲ有ス締約國中何レノ一國ヨリモ右期日ノ二年前ニ本條約ヲ廢止スルノ意思ヲ通吿セサルトキハ本條約ハ締約國ノ一國カ廢止ノ通吿ヲ爲シタル日ヨリ二年ヲ經過スル迄引續キ其ノ效力ヲ有スヘク爾後本條約ハ締約國全部ニ對シ廢止セラルヘシ右通吿ハ合衆國政府ニ對シ書面ヲ以テ之ヲ爲スヘク同政府ハ直ニ通吿書ノ認證謄本ヲ爾餘ノ締約國ニ送付シ且通吿書ヲ受領シタル日ヲ之ニ通吿スヘシ該通吿ハ右受領ノ日ニ行ハレタルモノト看做シ且其ノ日ヨリ效力ヲ生スルモノトス合衆國政府自ラ廢止ノ通吿ヲ爲ス場合ニ於テハ其ノ通吿ハ他ノ締約國ノ華盛頓駐箚外交代表者ニ對シテ之ヲ行フヘク該通吿ハ右外交代表者ニ通牒ヲ爲シタル日ニ行ハレタルモノト看做シ且其ノ日ヨリ效力ヲ生スルモノトス

何レカノ一國ノ爲シタル廢止通吿カ效力ヲ生シタル日ヨリ一年內ニ締約國全部ハ會議ヲ開催スヘシ

第二十四條

本條約ハ締約國ニ依リ各自ノ憲法上ノ手續ニ從ヒ批准セラルヘク且批准書全部ノ審託ノ日ヨリ實施セラルヘシ右ノ審託ハ成ルヘク速ニ華盛頓ニ於テ之ヲ行フヘシ合衆國政府ハ批准書寄託ノ調書ノ認證謄本ハ同政府ヨリ他ノ締約國ニ之ヲ送付スヘシ

本條約ハ佛蘭西語及英吉利語ノ本文ヲ以テ共ニ正文トシ合衆國政府ノ記錄ニ寄託保存セラルヘタ其ノ認證謄本ハ同政府ヨリ他ノ締約國ニ之ヲ送付スヘシ


右證據トシテ前記各全權委員ハ本條約ニ署名ス


千九百二十二年二月六日華盛頓市ニ於テ之ヲ作成ス

チァールス、エヴァン、ヒューズ (印)
ヘンリー、カボット、ロッジ (印)
オスカー、ダブリュー、アンダウッド (印)
エリヒュー、ルート (印)
アーサー、ジェームス、バルフォア (印)
リー、オヴ、フェアラム (印)
エー、シー、ゲデス (印)
アール、エル、ボーデン (印)
ジー、エフ、ビアス (印)
ジョン、ダブリュー、サルモンド (印)
アーサー、ジェームス、バルフォア (印)
ヴィー、エス、スリニヴァサ、サストリ (印)
アー、サロー (印)
ジュスラン (印)
カルロ、シァンツェル (印)
ヴィー、ロランディ、リッチ (印)
ルイジ、アルベルティニ (印)
加藤友三郞 (印)
幣原喜重郞 (印)
埴原正直 (印)

(英文・仏文・伊文略)


天佑ヲ保有シ萬世一系ノ帝祚ヲ踐メル日本國皇帝(御名)此ノ書ヲ見ル有衆ニ宣示ス

朕帝國、亞米利加合衆國、英帝國、佛蘭西國及伊太利國ノ各全權委員カ大正十一年二月六日亞米利加合衆國華盛頓ニ於テ署名調印シタル海軍軍備制限ニ關スル條約ヲ閱覽點檢シ之ヲ嘉納批准ス

神武天皇卽位起元二千五百八十二年大正十一年八月五日葉山ニ於テ親ラ名ヲ署シ璽ヲ鈐セシム

御名 國璽

外務大臣 伯爵 內田康哉

この著作物は、日本国の著作権法第10条1項ないし3項により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。(なお、この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により、発行当時においても、著作権の目的となっていませんでした。)


この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。