格言301~340

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301.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―は、アシュアス・イブン・カイスの息子の死を慰めて言った。

おお、アシュアスよ、あなたが息子のことを悲しむのは、誠に、血族だからである。しかし、あなたが忍耐するなら、アッラーはどんな苦痛にも報いを与えられる。おお、アシュアスよ、あなたが忍耐したとしても、物事はアッラーが定められたように動く。そのとき、あなたは報酬を受ける価値がある。あなたが忍耐を失った場合も物事はアッラーが定められたように動くが、その場合にはあなたが罪を背負うことになる。おお、アシュアスよ、あなたの息子が生きていた間、あなたを幸福にしてくれた。だが同時に、彼はあなたにとっての試練だったのだ。彼が亡くなったとき、彼はあなたのことを悲しんだ。だが同時に、彼はあなたのために報酬と慈悲の源を証明したのだ。


302.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―は、神の使徒―彼とその子孫の上に平安あれ―が埋葬されたとき、その墓に向かって言った。

誠に、忍耐は良いことです。あなたのことでなければ。思い悩むのは悪いことです。あなたのことでなければ。あなたのことで味わう苦痛は耐え難く、その前の苦痛も後の苦痛もそれに比べたら小さなものです。


303.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

愚か者とつき合うな。愚か者はあなたの前で自分の行為を美化させ、あなたも彼のようになるのを望むようになる。


304.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―は、東西の距離について質問されてこう返答した。

太陽の一日の移動する距離である。


305.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

友達は三人いる。敵も三人いる。友達とは、あなたの友、あなたの友の友、あなたの敵の敵である。敵とは、あなたの敵、あなたの友の敵、あなたの敵の友である。


306.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―は、男が自身にも害になることで敵と忙しくしているのを見て言った。

あなたは自分の背後に座っている者を殺そうとして槍を自分に突いてしまう者のようだ。


307.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

教訓の対象はなんと多いことか。だが、教訓から学ぶ者はなんと少ないことか。


308.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

口論で度が過ぎる者は罪人である。(口論で)不足する者は苦しめられる。口論する者がアッラーを畏れるのは難しい。


309.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

わたしは礼拝で二回のラクアをしてアッラーの御加護を求めた後は、過ちを心配しない。


310.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―はこう尋ねられた。

人間は大勢いるのにどうやってアッラーはすべての人を配慮されるのでしょうか?

彼が返答した。

人数が多くても糧を与えられるのと同じように。

(質問者が)彼に言った。

人々にはかれが見えないのにどうやって配慮されるのでしょうか?

彼が返答した。

彼らに見えなくても糧を与えられるのと同じように。


311.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

使者(配達人)は知性の解釈者である。一方、手紙はそれよりも本当の自分を豊かに表現する。


312.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

困難に苦しむ人よりも祈りが必要なのは、災難を容赦されてきたが免れてはいない人である。


313.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

人々はこの世の子孫である。その母を愛することで非難される者がいてはならない。


314.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

貧窮者とは神の使徒のことである。彼を拒む者はアッラーを拒んでいるのであり、彼に与える者はアッラーに与えているのである。


315.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

自尊心のある人は決して不貞行為をしない。


316.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

用心深くしているのは、人生の定められた時間で十分である。〈注1〉

注1:雷が十万回光っても、大嵐が来ても、地震で揺れても、山々が砕けても、人生の限られた時間が続くかぎり、どんなことがあってもそれを害することはできず、死の台風が生命の灯を消すことはできない。つまり、死までの時間は定めであり、その時が来る前に何かがそれを途絶えさせることはできないのである。死自体が見張り人であり、人生の守護者なのである。


317.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

人は自分の子が死んでも眠れるのに、財産を失うと眠れない。


サイード・アル=ラディの言葉

我が子の死には忍耐しても財産の損失には忍耐がないという意味。


318.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

父親同士の相互の情愛は息子同士の関係を築く。情愛に人間関係が必要である以上に、人間関係には情愛が必要である。


319.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

信ずる者の見識を恐れなさい。なぜなら、崇高のアッラーは彼らの舌に真実を置かれたからである。


320.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

自分よりアッラーを信頼するのでなければ、その人の信心は本物とはいえない。


321.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―がバスラに来たとき、アナス・イブン・マーリクをタルハーとアッ・ズバイルの許に遣わせた。アナスが直接、神の使徒―彼とその子孫の上に平安あれ―から聞いたことを、二人に思い出させるためだったのだが、アナスはそうするのを拒み、アミール・アル=ムウミニーンの許に戻ったとき、忘れていたと言った。 それでアミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

あなたが嘘をついているなら、アッラーがあなたをターバンで隠すことのできない白斑で苦しませるだろう。

サイード・アル=ラディの言葉

この後、アナスの顔に白斑ができ、被り布をしていない姿が見られることはなかった。 〈注1〉

注1:この出来事の背景だが、ジャマルの戦いでアミール・アル=ムウミニーンは、アナス・イブン・マーリクをタルハーとアッ・ズバイルの許へ派遣した。その目的は、預言者の次の言葉を思い出させるためだった。「あなたがた二人はアリーを敵にして戦い、彼に対して行き過ぎた行為をするだろう」だが、アナスは伝えるのを忘れたと報告した。それでアミール・アル=ムウミニーンはあのように述べたのである。しかしながら、アミール・アル=ムウミニーンが預言者の次の言葉―わたしをマスターとする者はアリーをマスターとする。おお、アッラーよ、アリーを愛する者を愛し、彼を嫌う者を嫌い給え―を証言するようアナスに求めた出来事があったとき、大勢が証言したのにアナスだけは無言を通した。それでアミール・アル=ムウミニーンは彼に言った。「あなたもガディール・クンムにいたではないか。なぜ無言でいるのか?」するとアナスはこう返事した。「わたしは年を取ったので記憶が衰えている」その時、アミール・アル=ムウミニーンはこの伝承の言葉を述べた。(『アンサーブ・アル=アシュラフ』アル=バラーズリー 156‐157頁。『アル=アルアーク・アン・ナフィーサ』イブン・ルスタ 221頁。『ラターイフ・アル=マッアリフ』アス・サッアリービー、105‐106頁。『ムハッダラート・アル=ウダバ』アル=ラーギブ、3巻293頁。イブン・アビー・ハディド 4巻74頁。『アルジャ・アル=マターリブ』アシュ・シャイフ・ウバイドッラー・アル=ハナフィー 578、579、580頁。)

 これと関連して、イブン・クタイバ(アブドッラー・イブン・ムスリム・アッ・ディナワリー(231/828‐276/889)が記している。

人々が語っている。アミール・アル=ムウミニーンが預言者の言葉「おお、アッラーよ、アリーを愛する者を愛し、アリーを憎悪する者を憎悪されよ」についてアナス・イブン・マーリクに尋ねると、彼はこう返答した。「わたしは年を取って忘れてしまった」そのとき、アリーは言った。「あなたが嘘をついているなら、アッラーがあなたをターバンで隠すことのできない白斑で苦しませるだろう」 (『アル=マッアリフ』580頁)

 イブン・アビー・ハディドもこの見解を支持しており、サイード・アル=ラディが述べた出来事を否定して、このように記している。

サイード・アル=ラディが述べた出来事、すなわち、アミール・アル=ムウミニーンがアナス・イブン・マーリクをタルハーとアッ・ズバイルのところへ派遣したという出来事は記録されていない。もしもアミール・アル=ムウミニーンが預言者の言葉を思い出させるために二人のところへ派遣していたのであれば、戻ってきてから忘れたなどと言うことはほとんどありえない。派遣されたときには覚えていたはずである。わずか一時間か一日後に忘れてしまい、否定したなどということがあるだろうか。これは実際に起こった出来事とはいえない。(『シャリフ・ナフジュ・ル・バラーガ』19巻217‐218頁)


322.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

心は時折、前進したり後退したりする。前進するときは任意のことも行いなさい。だが、後退するときは義務だけにとどめておきなさい。


323.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

クルアーンには過去に関する知らせ、未来に関する予言、現在の掟が含まれる。


324.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

飛んできたところから石を投げ返せ。悪が受けるのは悪だけである。


325.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が、長官のウバイドッラー・イブン・アビー・ラーフィゥに言った。

墨壺に綿をいれなさい。ペン先が長持ちする。書面を美しくするので、行間を開け、文字の間をつめて書きなさい。


326.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

わたしは信ずる者のヤッスーブ(先導者)である。一方、富は邪悪な者の先導者である。


サイード・アル=ラディの言葉

信ずる者はわたしに従うが、邪悪な者は富に従う。蜂がそのリーダーであるヤッスーブに従うのと同じように、という意味。〈注1〉

注1:聖預言者によって「ヤッスーブ」の称号がアミール・アル=ムウミニーンに与えられたことについては、262番ですでに説明した。

 この称号が述べられている伝承のひとつを紹介する。アブー・ライラー・アル=ギファリー、アブー・ザッル、サルマーン、イブン・アッバース、フザイ・イブン・アル=ヤマーンが語った。聖預言者はこう言っていた。 「わたしの死後すぐに不一致が生じるであろう。そのときはアリー・イブン・アビー・ターリブに従いなさい。なぜなら、審判の日、最初にわたしと会い、手を握るのが彼だからである。彼は最も誠実な人(アッ・サディーク・アル=アクバル)である。彼はこのウンマからの正悪の識別者(ファールーク)、信ずる者のヤッスーブ(指導者)である。一方、富は似非信者のサッスーブである。(これ以外では次を参照されたい。『ファイド・アル=カディール』4巻358頁。『カンズ・アル=ウムマル』12巻214頁。『ムンタファブ・アル=カンズ』5巻33頁。イブン・アビー・ハディド13巻228頁。イブン・アサーキル(アミール・アル=ムウミニーンの伝記)『タリフ・アシュ・シャーム』1巻74‐78頁。『アル・シーラ・アル=ハラビヤー』1巻380頁。『ザフハーイル・アル=ウクバー』56頁。『ヤナービゥ・アル=マワッダ』62、82、201、251頁。)


327.あるユダヤ人がアミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―に言った。

あなたがたは預言者のことで相違があったとき、預言者を埋葬していなかった。

アミール・アル=ムウミニーンが返答した。

彼のことで相違があったのではない。彼が去った後のことで(後継者のことで)相違があったのだ。ところが、あなたの民は預言者について問い始めた時、川(ナイル川)から出た後で足を乾かさなかった。「『ムーサーよ、かれらが持っている神々のような一柱の神を、わたしたちに置いてくれ。』かれは言った。『本当にあなたがたは無知の民である。』(聖クルアーン7章138節)」〈注1〉

注1:ユダヤ人は預言者ムハンマドの預言者性に議論の余地があると言いたかったのであるが、アミール・アル=ムウミニーンは、「預言者のことで」を「預言者が去った後のこと」という言葉で明白にさせた。論点は預言者性ではなく、後継者のことだと言ったのである。今日、預言者の後継者に関して相違する人々を、ムーサーの時代にアッラーの唯一性に関して疑問をもつようになった人々になぞらえてユダヤ人に指摘した。エジプト人の奴隷の身から解放されたとき、人々は川の向こうのシナの寺院にある牛の偶像を見て、ムーサーに同じような偶像がほしいと求めた。つまり、アッラーの唯一性を進んで受け入れた後でも偶像を見ると同じ偶像を欲しがった民に、ムスリムの間の相違を批判する権利はない、という意味である。


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328.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が問われた。

何をもって敵を圧倒されたのか?

彼が答えた。

対決したときは、相手がわたしを助けたのである。


サイード・アル=ラディの言葉

アミール・アル=ムウミニーンは相手の心中の畏怖を突いたことを指摘している。 〈注1〉

注1:畏敬の念から気合負けした敵が倒されるのは確実である。敵と対峙するには体力だけでは十分でなく、確固たる信念と勇気も必要である。敵が勇気を失い、負けを感じれば、負けるのは確かだ。アミール・アル=ムウミニーンの敵にも同じことが起きた。彼の名声に影響されたので死を覚悟しなければならなかった。精神力も自信も無くなり、その精神状態が死に追いつめた。


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329.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が息子のムハンマド・イブン・アル=ハナフィーヤに言った。

息子よ、わたしはおまえが貧窮に襲われるのではないか心配だ。アッラーに御加護を求めなさい。貧窮は信仰の欠乏と知性の惑いが原因だからである。また、それは頑固な人々の憎悪を引き起こす。


330.難しい質問をした人に、アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が返答した。

質問は理解するためであり、混乱するために問うのではない。なぜなら無知な者が学ぼうとするのは学識ある者に似ているが、混乱させようとする学識ある者は無知な者に似ているからである。


331.アブドッラー・イブン・アル=アッバースがアミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―の見解に反することを彼に忠告したときに言った。

あなたは忠告するがわたしはどうするかわからない。わたしがあなたの忠告に反する行為をするときは、あなたはわたしに従うべきである。〈注1〉

注1:アブドッラー・イブン・アル=アッバースはアミール・アル=ムウミニーンの地位が安定し、政府が力を回復するまでの間、タルハーとアッ・ズバイルをクーファ知事とし、ムアーウィヤをシリア知事にする任命書を出すよう忠告した。この忠告に対してアミール・アル=ムウミニーンは、他者の現世の益のために信仰を危険にさらすことはできないと返答し、自分の見解を主張しないでわたしの言うことに耳を傾けて従うべきだと言い添えたのである。


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332.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―がスイッフィーンからクーファに戻り、シバーム族の住宅の前を通ると、女たちがスイッフィーンで殺された人々のことで泣いているのが聞こえた。そのとき、シバーム族の崇高な一人、ハルブ・イブン・シュラフビル・アシュ・シバーミーが彼の許にやって来たので、アミール・アル=ムウミニーンが彼に言った。

泣き声が聞こえるが、あなたがたの女たちがあなたがたを支配しているのか? あんなに泣くのをやめさせないのか?

馬に乗るアミール・アル=ムウミニーンにしたがって歩きはじめたので、彼はハルブに言った。

戻りなさい。あなたのような人がわたしのような者と歩くのは統治者にとって害であり、信ずる者にとって恥辱である。


333.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―がナフラワーンの戦いの日にハワーリジュの死体のそばを通ったときに言った。

あなたたちの上に災いあれ! あなたたちを惑わした者によってあなたたちは害を被ったのである。

彼は問われた。

おお、アミール・アル=ムウミニーンよ、誰が彼らを惑わしたのですか?

彼は答えた。

悪魔だ。人を罠にかける者。人を悪に導く精神の悪魔である。激しい感情(情熱)を介して彼らを惑わせ、罪を犯しやすくさせ、彼らに勝利を約束し、やがて火獄に投げ込むのである。


334.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

ひとりのときにアッラーに不服従であることに気をつけなさい。(その状況の)証人は裁定者でもあるからである。


335.ムハンマド・イブン・アビー・バクル殺害〈注1〉の知らせが届いたとき、アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

我々の悲しみは敵の喜びほど大きい。彼らが敵を失い、我々が友を失ったということを除いて。

注1:ヒジュラ暦38年、ムアーウイャはアムル・イブン・アル=アースを大軍と共にエジプトへ派遣した。アムル・イブン・アル=アースはムアーウィヤ・イブン・フダイジュの援助を求めた。彼らはウスマーンの支持者を招集し、ムハンマド・イブン・アビー・バクルとの戦いを開始し、彼を捕らえた。ムアーウィヤ・イブン・フダイジュは彼の首を切り落とし、体を死んだロバの腹に縫い入れ、燃やした。ムハンマドは28歳だった。この災難の知らせが彼の母親に届いたとき、母親は深い怒りと憤りで失神したという。彼の父系の姉妹であったアーイシャは、自分が生きている限り、二度と焼いた肉を口にしないと誓った。彼女は礼拝するたびに、ムアーウィヤ・イブン・アビー・スフヤーン、アムル・イブン・アル=アース、ムアーウイャ・イブン・フダイジュへの災いを祈っていた。  アミール・アル=ムウミニーンはムハンマドの殉教の知らせを聞いて、深い悲しみに落ちた。バスラにいたイブン・アッバースに悲嘆の言葉で手紙を書き、ムハンマド・イブン・アビー・バクルの痛ましい死を知らせた。  その知らせを受けてイブン・アッバースがバスラからクーファに来て、アミール・アル=ムウミニーンに弔意を表した。  アミール・アル=ムウミニーンの密偵の一人がシリアから来て言った。 「おお、アミール・アル=ムウミニーンよ、ムハンマド殺害の知らせがムアーウィヤに届いたとき、彼は説教台に立ち、ムハンマドの殉教にかかわった一団を称賛しました。シリアの民の喜びようは、わたしが今までに見たことのないものでした」  その時、アミール・アル=ムウミニーンは上述の発言をしたのである。さらに続けて、ムハンマドは義理息子だが本当の息子のようだった、と述べた。 (タバリー1巻3400‐3414頁。イブン・アル=アシール、3巻352‐359頁。イブン・カスィール、7巻313‐317頁。アブッ・ル・フィダ、1巻179頁。イブン・アビー・ハディド、6巻82‐100頁。イブン・カルドゥーン、2巻2部181‐182頁。アル=イスティッアーブ、3巻1366‐1367頁。アル=イサーバ、3巻472‐473頁他)  ムハンマド・イブン・アビー・バクルについては説教67番の注釈ですでに述べた。

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336.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

アッラーが人間の言い訳を認められるのは60歳までである。


337.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

罪に打ち負かされた者に勝利はない。悪で勝利を得た者は、実は打ち負かされたのである。


338.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

栄光のアッラーは富者の財産の中に貧窮者の糧を御定めになった。そのため、貧窮者が空腹のままでいるときは、富者の誰かが分配を拒んだからである。崇高のアッラーがそのことについて彼らに問われる。

339.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

言い訳をしなくてもよい状態にあるほうが、本当の言い訳よりもよい。〈注1〉

注1:義務を果たしていれば言い訳をしなくてもよい。本当のことであるとしても、言い訳するのは、欠点やつまらないことがあることを暗示しているからである、という意味。


340.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

アッラーのあなたに対する最小限の権利は、かれの恩恵を、罪を犯すことに使ってはならないということである。