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格言211~240

提供:Wikisource

211.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

寛大は名誉の守護者である。自制は愚か者の手綱である。許すことは成功の税金である。無関心(無視)は裏切る者への懲罰である。相談は導きの最高の方法である。自分の見解に満足している者は危険に直面する。忍耐は災難(不幸)に勇敢に立ち向かうが、せっかち(我慢のなさ)はこの世の困難を手伝う。最良の満足(心の安らぎ)は欲望を捨てることである。奴隷のような心の多くは、圧倒的な願望に従属する。能力は経験の保存を助ける。愛とは十分に役に立つ関係のことである。悲嘆にくれている者を信頼するな。


212.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

人の虚栄心は知性の敵のひとつである。


213.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

苦痛を無視しなさい。さもなければ、絶対に幸福にはなれないだろう。


別の伝承

苦痛と悲嘆を無視しなさい。そうすれば、あなたは必ず幸福になるだろう。


214.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

幹が柔らかい木には、太い枝ができる。〈注1〉


注1:傲慢で短気な人は周囲を楽しませることができない。その人の知人はみじめに感じ、その人のことが嫌になるだろう。だが、温和でやさしい言葉遣いをする人は友達が寄ってくる。必要なときに援助者・支持者となってくれるので、その人の人生は成功する。


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215.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

対立は良き忠告を破壊する。


216.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

寛大に与える者は地位を確立する。


別の解釈による伝承

地位を確立する者はそれを悪用し始める。


217.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

状況の変化で人の気性がわかる。


218.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

友の嫉妬は愛の欠乏である。


219.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

知性の不足のほとんどは、瞬時の貪欲によって起きる。


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220.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

確率に頼って下す判定に公正はない。


221.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

審判の日のための最悪の用意は、人々に対して横暴なことである。


222.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

高貴な人の最高の行為は、知っていても知らないふりをすることである。


223.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

慎み深さという服装を身につける者の欠点を、人々がみつけることはできない。


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224.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

過度の沈黙は畏れを生む。公正はより親しい友を作る。寛大は地位を高める。謙虚はたくさんの祝福で満たす。困難に直面することで指導者の地位(指導力)が確立される。公正な行為によって敵対者は征服される。愚か者に対する辛抱(自制)によって、その愚か者に都合の悪い支持者が増える。


225.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

嫉妬深い人が体の健康に関しては嫉妬しないのは奇妙なことである。〈注1〉


注1:健康な体はあらゆることの最良の恩恵であるが、嫉妬する人は他人の財産や地位には嫉妬を感じても健康や体力には嫉妬しない。なぜなら富の効果は目の前にあり、快適であるための手段だからである。だが、健康はありふれたこと、いつもあるものとして軽視される。重要なものとはみなされていないので、嫉妬深い人も嫉妬の対象とは考えない。しかし、健康を害したときに初めて健康のありがたさを思い知らされる。健康を最も価値のある祝福とみなすべきであり、健康に気をつけねばならぬことの指摘である。


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226.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

欲深さは不名誉という足枷である。


227.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が信心(イーマーン)について聞かれたときに言った。

信心とは、心での感謝、舌で示す感謝、体での行為のことである。


228.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

現世を悲しむ者は、実際にはアッラーの天命(与えられるもの)に不満なのである。自身にふりかかる災難に不平を言う者は、主に不平を言っているのである。富者に近づき、富を理由にその者の前で屈服する者は、信仰の三分の二を失ったのである。クルアーンを読んでいても死んで地獄に行く理由は、聖なる節を笑いものにした一人だからである。心がこの世に愛着をもったときは、三つのものをつかむ。すなわち、彼から決して消えることのない心配、彼を置き去りにしない欲深さ、彼を満たすことのできない欲望である。


229.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

満足すること(心の安らぎ)は財産と同じほど良い。徳性は祝福と同じほど良い。


230.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

「誰でも善い行いをし(真の)信者ならば、男でも女でも、われは必ず幸せな生活を送らせるであろう。なおわれはかれらが行った最も優れたものによって報酬を与えるのである。(聖クルアーン16章97節)」

この後で彼は言った。

この意味は、満足することである。


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231.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

豊かな生計手段を持つ者と共有者になりなさい。なぜなら、彼はもっと豊かになる可能性があり、確実にその分配分を増やす見込みがあるからである。


232.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

「本当にアッラーは公正と善行を命じ……(聖クルアーン16章90節)」 このアドル(公正)とは等配分、イフサーン(公正)とは親切な行為を意味する。


233.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

短い手で与える者は、長い手によって与えられる。


サイード・アル=ラディの言葉

自身の所有物からの施しがわずかであっても、崇高なるアッラーがその報いとして善き報酬を御与えになる、という意味。ふたつの手はふたつの恩恵を意味し、アミール・アル=ムウミニーンは人間による恩恵とアッラーによる恩恵を区別させたのである。短い手、長い手と表現したのは、アッラーの恩恵が人の恩恵の何倍も多いからで、ほかの恩恵はすべてアッラーの恩恵を拠り所とし、そこから派生したものだからである。


234.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が息子のハサンに言った。

戦いを挑んではならない。だが、呼ばれたら応じなさい。戦いをもちかけた者は反乱者であり、反乱者は破壊されねばならないからである。〈注1〉


注1:この言葉の意味はこうである。敵が戦いを目的とし口火を切るなら、敵と対峙するために進み出るべきであるが、攻撃を始めてははらない。高圧的で行き過ぎた行為だからである。このような行為をする者は敗者となる。だからこそ、アミール・アル=ムウミニーンは、常に、敵に挑まれてから戦場にはいったのである。彼は自分から戦いを挑んだことは一度もなかった。


235.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

女性の最良の特質は、男性の最悪の特質なのである。すなわち、虚栄心、臆病、物惜しみである。拠って、女性は虚栄心が強いので誰にも自分に近づかせない。女性は物惜しみするので自分の財産と夫の財産を保護する。女性の心はか弱いから、自分に降りかかるすべてを恐れる。


236.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

賢い人を説明してみなさい。

それから彼は言った。

賢い人とは、物事を適切な位置に置く者のことである。

この後、質問があった。

無知な人を説明してください。

彼が言った。

もう説明した。


サイード・アル=ラディの言葉

無知な人は物事を適切な位置に置かない者。アミール・アル=ムウミニーンは説明を省くことで無知とは賢い人の反対であることを示したのである。


237.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

アッラーにかけて。わたしの見解では、あなたがたのこの世は、癩病患者の手が握る(残骸の)豚の骨よりもみすぼらしい。


238.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

確かに、人々の一団は報酬が欲しくてアッラーに礼拝する。これは商人(取引する者)の礼拝である。別の一団は畏怖からアッラーに礼拝する。これは僕の礼拝である。また別の一団は感謝からアッラーを礼拝する。これは自由民(奴隷でない自由な人)の礼拝である。


239.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

女性は概して言えば、弊害である。最悪なのは、人は女性なしでは困るということだ。


240.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

怠け者は自分の権利を失う。中傷する者(悪口を言う者)を信じる者は友達を失う。