格言181~210

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181.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

怠慢の結果は恥辱であるが、先見の目の結果は安全である。


182.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

知恵のあることを沈黙するのは益にならない。愚かなことを発言して良いことがないように。


183.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

呼びかけがふたつあれば、そのひとつは誤りの導きに向かうものである。


184.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

正道に関してわたしは一度も疑惑を抱いたことはない。なぜなら、わたしはそれを見せられたからである。


185.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

わたしは嘘を言ったことがなく、また嘘を尽かれたこともない。わたしは道を逸脱したことがなく、また(他者を)逸脱させたこともない。


186.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

先頭に立って抑圧する者は、明日、(悔悟のために)自分の手を噛まねばならない。


187.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

(現世からの)出発は避けられないことである。


188.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

正道から顔を背ける者はみな、破滅する。


189.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

忍耐が救済してくれない者は、切望(我慢のなさ)に圧倒される。


190.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

なんと奇妙なことか。(預言者の)教友であることを通じてカリフになれるが、(預言者の)教友であり血縁者であることを通じてはなれないのか?


サイード・アル=ラディの言葉 同じ件についてアミール・アル=ムウミニーンが語った言葉がほかにもあった。

協議で権限を保持できると主張するなら、助言を求められるべき人々が不在の間にそれが行なわれたのはどういうことか! 血縁関係が反論の理由になるのであれば、聖預言者により近いということで、誰かにはさらなる権利がある。 


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191.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

この世では、人間は死の矢が飛んでくる標的であり、困難によって崩壊の速まる富に似ている。(この世では)あらゆる飲物が窒息させ、あらゆる食べ物の一口が喉を詰まらせる。ここでは何かを失わなければ誰も何も手に入れることができない。その人の人生から一日が終わるまで、彼の年齢は一日も進まない。従って、我々は死を助ける人なのである。そして、我々の生命は死ぬ運命の標的なのである。であれば、どうして生命が永遠に続くよう期待できようか。彼らが築いたものは何であろうと、すかさず破壊の用意がないままで、また彼らが協力してつくったものは何であろうと、ばらばらに裂かれる用意がないままで、昼と夜がそれらを高く築くことはないからである。


192.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

おお、アーダムの息子よ、あなたが稼いだ必需品以上のものは、他人のために番をしているだけなのだ。


193.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

心は、感情および前進と後退の力に染まっている。従って、感情的なとき、また心が早まろうとするときは、行動するためにそれに近づきなさい。なぜなら、心は何かを強いられると盲目になるからである。


194.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

もしもわたしが怒るときは、いつ自分の怒りを爆発させるべきか。報復できないでいるときに、「我慢したほうがよい」と言われたときだろうか? 自分に報復の力があるときに、「赦してやったほうがよい」と言われたときだろうか?


195.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が汚物でいっぱいのごみ捨て場のそばを通り過ぎたときに言った。

これは欲ばりが出し惜しみしていたものである。

別の伝承ではこう語った。

これはあなたがたが昨日まで互いに口論していたことなのだ!


196.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

教訓を教えてくれる富は無駄ではない。


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197.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

体が疲労するように心も疲れる。従って、(回復させるためには)心のために、美しい格言を捜しなさい。


198.ハワーリジュのスローガン「アッラーを除いて判定はない」を聞いて、アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

この言葉は正しい。だが、解釈が間違っている。


199.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が群集について言った。

この人々は集ると圧倒的だが、散らばると識別できない。

アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―は、この伝承とは異なる言葉で語った。

この人々は集ると害を及ぼすが、散らばると有益である。

彼に指摘があった。彼らが集まると害になるのはわかりますが、散らばっているときに有益であるとはどういうことでしょうか?

アミール・アル=ムウミニーンが答えた。

労働者が自分の仕事に戻り、人々はそれで助かる。石工が現場に戻るのや、織工が織機に戻るのや、パン屋の主人が製パン所に戻るのに似ている。


200.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―の前に犯罪者が連れてこられた。そこにはこの犯罪者と共に群集もいた。アミール・アル=ムウミニーンが言った。

不正の出来事のときにだけ見える顔に災いあれ。


201.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

各人は二人の天使に守られている。天命が近づくとき、彼らはそれのやり方に任せる。誠に、定めの時は(それが起こる前の出来事への)防御である。


202.タルハーとアッ・ズバイルが言った。

このこと(カリフの件)をあなたと共有するという条件で、我々はあなたに忠誠を誓う用意がある。

アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

いや、違う。あなたがたは(カリフの)強化と、援助を与えることを分かち合うのである。そして、あなたがた二人は、必要とするときに、また困難のときに、わたしを助けるであろう。


203.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

おお、人々よ。アッラーを畏れよ。あなたがたが話すときに聞いておられる御方を。(秘密を)隠しても知っておられる御方を。死との対面のために準備しておきなさい。死は逃げても追いついて来る。留まっていても捕まる。あなたがたが忘れても死はあなたがたを忘れない。


204.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

人に感謝されないからといって善行をやめてはならない。益をなにも引き出せなかった人でもそのことに感謝するかもしれないからである。その人の感謝の気持ちは(感謝を)否定する人の忘恩よりも偉大である。「本当にアッラーは、善い行いをなす者を愛でられる。(聖クルアーン 3章134節、148節。5章93節)」


205.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

入れる中身でどんな容器も細く縮むものであるが、知識はそうではなく広げる。


206.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

辛抱強さ(寛容)を実践する者の第一の報酬は、無知な者に対して人々が援助者になってくれることである。


207.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

辛抱できないときは、辛抱したふりをしなさい。なぜなら、一人の人間が一団のようになろうとして、その中の一人になることは稀だからである。〈注1〉


208.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

自身をよく知る者は益を得る。それを怠る者は苦しむ。恐れる者は安全である。(身の回りのことから)教えられる者は光を得る。光を得る者は理解する。理解する者は知識を確保する。


209.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

雌駱駝が身を切るように若い駱駝に注意を向けるように、現世は手に負えなくなった後で我々に注意を向けるのである。


この後、アミール・アル=ムウミニーンは節を読誦した。

「われは、この国で虐げられている者たちに情けをかけたいと思い、かれらを(信仰の)イマーム(指導者)となし、後継ぎにしようとした。」〈注1〉(聖クルアーン28章5節)


注1:一連のイマームの後、待ち望まれている最後のイマームのことである。彼が現れると、すべての国と政府は終焉し、この節で示された完全な状況が目の前に現れる。


210.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

アッラーを畏怖せよ。(この世の俗事から)身を引き、そのような心構えで努力する者のように。その後で、この世にいる間、彼は急いで行為する。そして大急ぎで(過ちに陥る)危険を考慮し、目的地への到達、旅の終点、やがて戻る場所に目をやる。