格言151~180

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150.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

行為をしないで来世に望みを抱き、欲望を引延ばして悔悟を遅らせる者のようであってはならない。そのような者は物を言うときはこの世の苦行者のようなのだが、それ(現世)を熱望する人々のように行動する。そこ(現世)で何かを与えられると満足しない。拒否されると不満である。得るものに感謝せず、何でも自分に残るものが増えるよう熱望する。他者にはやめさせるが自分にはそうしない。自分ではやらないのに他者には勧める。高徳者を愛するのに自分は彼らのように行為しない。堕落した者を嫌悪するのに彼はその一人である。自分の罪が多すぎて死を嫌うが、執着するので死を恐れる。

病気になると恥じる。健康のときには安心して享楽に耽る。病が回復すると自身のことを虚しく感じる。苦しむときは希望を失う。困窮すると当惑した人のように礼拝する。人生が楽になると虚偽に騙されて顔を背ける。心は架空のもの(想像上のもの)によって圧倒されるが、確信によって心を制御できない。他者には小さな罪を心配するが、自身には自分の行為以上の報酬を期待する。裕福になると自意識過剰となり不道徳に陥るが、貧しくなると失望して弱くなる。善行するときはそっけないのだが、施しを請うときはやりすぎる。感情に圧倒されると罪を犯すのが早いが悔悟を遅らせる。困難が降りかかると、(イスラームの)共同体の戒律を超えてしまう。教訓的な出来事を口にするのだが、自分では教えを得ようとしない。長々と説教をするのだが、自分はどんな説教も受け入れない。語ることにおいては(背が)高いが、行為においては低い。消滅してしまうものを熱望し、永久に続くことを無視する。利益を損失と考え、損失を利益とみなす。死を恐れるのに、それを予期することは何もしない。

他人の罪は大罪とみなすが、自分に対しては同じ罪を小さな罪と考える。アッラーへの服従に自分が何かをしたときはたいしたこととみなすが、他人が同じことをしてもたいしたことはないと思う。従って、他者を非難するが、自分のことは褒める。貧者とアッラーを思い出すことよりも、富者の友との娯楽を大切にする。自分の利のためには他者を判断するが、他者の利のために自身に対してそうすることはしない。他者を導くことはするが、自分を誤り導く。他人に服従させるのに、自分はアッラーに不服従である。自分の権利を満たそうとするが、他者の権利を満たすことはしない。主(アッラー)以外のもののために人々を恐れるが、人々との関係においては主を畏れない。


151.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

人間は誰もが終焉と出会わなければならない。喜びかもしれない。不快かもしれない。


152.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

来た人はだれもが戻っていかねばならない。戻った後、その人が存在しなかったかのように。


153. アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

忍耐する者は、たとえ時間がかかっても成功を逃さない。


154.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

集団の行為に同意する者は、その行為において彼らに加わっているのである。不正に加わる者は二つの罪を犯している。不正を犯した罪と、それに同意した罪である。

155.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

契約は固守しなさい。その遂行は堅実な人びとに委ねなさい。


156.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

あなたがたには、知らなかったと言い訳することのできない人に従う義務がある。〈注1〉


注1: アッラーの正義と御慈悲により、かれは信仰に導くために一連の預言者を遣わされた。同じように、アッラーは教えが変わってしまわぬように、それを保護するために、イマーム性の制度を定められた。それぞれの時代のイマームが私欲の攻撃から神の教えを守り、イスラームの正しい教えを示すことができるようにするためである。教えの祖(預言者)を知るのが義務であるように、教えの保護者を知ることは不可欠である。保護者を知らないでいることは許されない。なぜならイマーム性の由来には数多くの証拠・証言があり、知性ある人がそれを否定することはできないからである。聖預言者はこう言われた。

自分の時代のイマームが誰かを知らないで死んだ者の死は、ジャーヒリーヤ時代(無明時代)の死である。 (『シャラフ・アル=アマカシド』アッ・タフタザーニー・アッ・シャーフィイー、2巻、275頁。『アル=ジャワーヒル・アル=ムディッヤー』アル=ハティーブ・アル=ハナフィー 2巻 457、509頁。)

 アブドッラー・イブン・ウマル・ムアーウィヤ・イブン・アビー・スフヤーンとアブドッラー・イブン・アル=アッバースも神の使徒―彼とその子孫の上に平安あれ―がこう言われたと語っている。

自分のイマームを知らず、彼に忠誠を誓わないで死んだ者の死は、ジャーヒリーヤ時代(無明時代)に属する者の死であり、(イマームへの)服従から手を引っ込める者は、審判の日にアッラーの御前に立つとき、自分のために弁護してくれる人はいない。 (『アル=ムスナード』アッ・タヤーリスィー、259頁。『サヒーフ』ムスリム、6巻、22頁。『アル=ムスナード』アフマド・イブン・ハンバル、4巻、96頁。『スナン・アル=クブラ』アル=バイハキー、8巻、156頁。『タフシール』イブン・カスィール、1巻、517頁。『マジュマ・アッ・ザワーイド』5巻、218、224、225頁。)


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157.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

誠に、あなたが見ようとさえすれば、見ることはできる。導きを受け取ることに関心さえあれば、導かれる。耳を傾けようとさえすれば、聞くことはできる。


158.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

同胞には良いふるまいで忠告してあげなさい。また、彼をかばってやることで悪に近づかせないようにしなさい。


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159.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

悪い評判に身を置く者は、彼に対して悪い考えを抱いた人々を非難すべきではない。


160.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

権威を握った者は、大抵、えこひいきする。


161.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

自分の意見のみに頼って行動する者は破滅する。他者に相談する者は他者の理解を共有する。


162.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

自分の秘密を守る者は自分の手で抑制を保つ。


163.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

欠乏状態(極貧)は最大の死である。


164.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

自分の権利を守ってくれない人の権利を守る行為は、その人のことを信仰しているようなものだ。


165.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

アッラーの命令に反する者に服従すべきではない。


166.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

誰も自分の権利を守るのが遅れたことを責められてはならない。責められるべきは自分の権利にないものを奪い取る者。


167.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

虚栄心は進歩を妨げる。


168.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

審判の日は近い。わたしたちの共通の連れは短い。


169.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

目のある者には、夜はすでに明けている。


170.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

罪の自制は後で助けを求めるよりも楽である。


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171.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

多量の食事は複数の食事を妨げる。〈注1〉


注1:人は一つの利益を執拗に追い求めると、他のいくつかの利益を諦めなければならない、ということを示す格言である。例えば、食欲に反した食事や過食は、その後、何度も食事をせずにいなければならない。


172.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

人々は知らないことに害を与える。


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173.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

複数の見解を持つ者は、落とし穴(隠れた危険)を理解する。


174.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

アッラーのために怒りの歯を研ぐ者は、不正に忠義を尽くす者を圧倒する力を身につける。


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175.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

何かを恐れているときは、そのなかに飛び込みなさい。恐れていることよりも避けようとすることの方がずっと悪いからである。


176.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

高い権威をする維持するための手段は、心の広さ(寛大)である。


177.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

善行する者に報酬を与えることで、悪行する者を非難しなさい。


178.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

自身の心から悪を取り去ることによって、他者の心から悪を切り離しなさい。


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179.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

頑固は良い忠告を駄目にする。


180.アミール・アル=ムウミニーン―彼の上に平安あれ―が言った。

貪欲は永遠の奴隷身分である。