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明治元訳新約聖書 (大正4年)/馬太傳福音書 (2)

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第十章

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[1] イエスその十二弟子じふにでし召彼等よびかれらけがれたるおに逐出おひいだまたすべてのやまひすべてのわづらひいやちからたまへり
2 その十二使徒じふにしとごとはじめにはペテロなづたまひしシモンその兄弟きゃうだいアンデレゼベダイヤコブその兄弟きゃうだいヨハ子
3 ピリポバルトロマイトマス税吏みつぎとりマタイアルパイなるヤコブタッダイづくるレッパイ
4 カナンシモンイスカリオテユダこれすなハちイエスわたしゝ者なり


5 イエスこの十二じふにつかはさんとしてめいいひけるは異邦いはうみちゆくなかれサマリアびとむらにもいるなかれ
6 ただイスラエルいへまよへるひつじゆけ
7 ゆき天国てんこくちかきあり宣傳のべつたへ
8 やまひものいや癩病らいびょうきよくにたるものよみがへらせおに逐出おひいだすことをせよ爾曹價なんぢらあたひなしにうけたれば亦價またあたひなしにほどこすべし
9 爾曹金なんぢらきんまたはぎんまたはぜにたくはおぶなか
10 行嚢二たびぶくろふたつ裏衣履杖うらぎくつつへ亦然またしかりそは工人はたらくもの其食物そのしょくもつうるうべなり
11 おほよ郷邑むらざといたらバ其中そのうち好者よきものたづねいづるまでハ其處そことどま
12
[千六百六十二] ひといへらば其平安そのやすきとへ
13 そのいへもし平安やすきべきものならば爾曹なんぢらねが平安やすき其家そのいへいたらん平安やすきうくべからざるものならば爾曹なんぢらねが平安やすき爾曹なんぢらかへるべし
14 もし爾曹なんぢらうけ爾曹なんぢらことばきかざるものあらバ其家そのいへまたは其邑そのむらさるときあしちりはら
15 われまこと爾曹なんぢらつげ審判さばき日到ひいたらばソドムゴモラ此邑このむらよりかへっやすからん


16 われ爾曹なんぢらつかはすはひつじおほかみなかいるるがごとゆゑへびごとさと鴿はとごと馴良おとなしかれ,br /> 17 つつしみひと戒心こゝろせよ蓋人そはひとなんぢらを集議所しふぎしょわたまたその會堂くわいだうにてむちうつべければなり
18 たま[:誤植?!]わが縁故ゆゑによりて侯伯つかさおよびわうまへひかるべしこれかれらと異邦人いはうじんあかしをなさんがためなり
19 ひとなんぢらをわたさば如何いかになにをいはんとおもわづらふなか
20 これなんぢらみづかいふあら爾曹なんぢらちちみたまそのうちありいふなり

21 兄弟きゃうだい兄弟きゃうだいわたちちわた兩親ふたおやうったかつこれをころさしむべし

22 またなんぢら我名わがなためすべてひとにくまれんされおはりまでしのものすくはるべし
23 このむらにてひとなんぢらをせめなばほかむらのがれわれまことに爾曹なんぢらつげ爾曹なんぢらイスラエル諸邑むらゝゝ廻盡めぐりつくさゞるうちひときたるべし
24 弟子でしよりまさらずしもべあるじよりまさらざるなり
25 弟子でし其師そのしごとしもべ其主そのあるじごとくならばたりぬべし人主ひとあるじよびベルゼブルいはまし其家そのいへものをや
26 是故このゆゑ彼等かれらおそるゝことなかれそハおおはれてあらはれざるものなくかくれしられざるものなければなり
27 われ幽暗くらきおい爾曹なんぢらつげしことを光明あかるさのべみゝをつけてきゝしことを屋上やのうへ宣傳いひひろめよ
28 ころしてたましひころすことあたはざるものおそるゝなかたゞなんぢらをたましひからだとを地獄じごくほろぼものおそれよ
29 二羽にはすずめ一銭いっせんにてうるあらずやしかるに爾曹なんぢらちちゆるしなくしては其一羽そのいちはおつることあら
30 爾曹なんぢらかしらまたみなかぞへらる
31 ゆゑおそるゝなか
[千六百六十三] 爾曹なんぢらおほくすずめよりもまされり
32 されおほよひとまへわれしらんといはものわれ亦天またてんいま我父わがちちまへこれしらんといは
33 ひとまへわれしらずといはものわれ亦天またてんいま我父わがちちまへこれしらずといふべし


34 泰平おだやかいださんため我來われきたれりとおもふなかれ泰平おだやかいださんとにあらやいばいださんためきたれり
35 それわかきたるはひと其父そのちちそむかせむすめ其母そのははそむかせよめ其姑そのしうとめそむかせんがためなり
36 ひとあだ其家そのいへものなるべし
37 われよりも父母ちちははいつくしものわれかなはざるものなりわれよりも子女むすこむすめいつくしものわれかなはざるものなり
38 その十字架じふじかとりわれしたがハざるものわれかなはざるものなり
39 その生命いのちものこれうしなわがために生命いのちうしなものこれべし
40 爾曹なんぢらうくものわれうくなりまたわれうくものわれつかはしゝものうくるなり
41 預言者よげんしゃなるをてその預言者よげんしゃうくもの預言者よげんしゃ報賞むくいをうけ義人ただしきひとなるをてその義人ただしきひとうくもの義人ただしきひと報賞むくいうく
42 わが弟子でしなるをもてちひさ一人ひとりものひやゝかなる水一杯みづいっぱいにてものまするものまこと爾曹なんぢらつげかなら其報賞そのむくいうしなはじ


第十一章

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[1] イエスその十二弟子じふにでし示畢しめしおはりしとき此處ここをさりみちをしひろめんがため彼等かれら諸邑むらゝゝゆけ


2 さてヨハ子ひとやにてキリストなしわざきゝその弟子二人でしふたりかれつかはして
3 いはせけるはきたるべきものなんぢなるかまたわれらほかまつべき
4 イエス彼等かれらこたへいひけるは爾曹なんぢらきくところみるところのことヨハ子ゆきつげ
5 瞽者めしひハみ跛者あしなへはあゆみ癩病人らいびょうにんきよまり聾者つんぼハきゝにたるもの復活いきかへされ貧者まづしきもの福音ふくいんきかせらる
6 おほよわがためにつまづかざるものさいはひなり


7 彼等かれらかへれるのちイエスヨハ子こと人々ひとゞゝいひけるは爾曹何なんぢらなにんとていでしやかぜうごかさるゝあしなる
8 さら爾曹何なんぢらなにんとていでしや美服やはらかきころもたるひと美服やはらかきころもたるもの王室おうのいへ
9 さらなにんとて
[千六百六十四] いでしや預言者よげんしゃなるかしかりわれ爾曹なんぢらつげかれ預言者よげんしゃよりも卓越すぐれたるものなり
10 それなんぢにさきだちてみちそなふ使者つかひわれなんぢのまへおくらんとしるされたるハすなはこれなり
11 まことつげをんなうみたるものうちいまだバプテスマヨハ子よりおほいなるものおこらざりきされ天国てんこく最小いとちいさものかれよりはおほいなるなり
12 バプテスマヨハ子ときよりいまいたるまで人々勵ひとゞゝはげみ天國てんこくとらんとすはげみたるものこれとれ
13 それすべて預言者よげんしゃ律法おきて預言よげんしたるハヨハ子ときまでなれバなり

14 もしなんぢら我言わがことばうくることをこのまバきたるべきエリヤこれなり
15 みゝありてきこゆるものきくべし


16 われこのなにたとへんや童子街わらべちまた其侶そのともよび
17 われらふえふけども爾曹なんぢらをどらずかなしみをすれども爾曹胸なんぢらむねうたずといふたり
18 そはヨハ子きたりくらふことのむことをざればおにつかれたるものなりと人々言ひとゞゝいへ
19 ひときたりてくらふことをしのむことをれバ又食またしょくたし[な:落植字]さけこの人税吏罪ひとみつぎとりつみあるものともなりといふされども智慧ちゑ智慧ちゑただしらるるなり


20 イエス異能ことなるわざなしたまひたる諸邑むらゝゝ悔改くいあらためざるによりいましめいひけるハ
21 あゝわざわひなるかなコラジン噫禍あゝわざはひなるかなベテサイダ爾曹なんぢらうちなし異能ことなるわざもしツロシドンなししならば彼等かれらはやあさをきはいかむりて悔改くいあらためしなるべし
22 われ爾曹なんぢらつげ審判さばきにはツロシドン刑罰けいばつ爾曹なんぢらよりもかへっやすからん
23 すでてんにまであげられしカペナウン又陰府またよみにまでおとさるべしそはなんぢになし異能ことなるわざもしソドムなししならバ今日けふまで尚保存なほたもちしならん
24 われなんぢらにつげ審判さばきソドムなんぢよりもかへっやすかるべし


25 そのときイエスこたへいひけるは天地てんちしゅなるちち此事このこと智者達者かしこきものさときものかくして赤子をさなごあらはしたまふをしゃ
26 ちちしかりそれかくごとき聖旨みこゝろかなへるなり
27 ちちわれ萬物ばんぶつあたへたまへりちち
[千六百六十五]ほかしるものなくまたおよびあらはところものほかちち識者しるものなし


28 すべつかれたるものまたおもきおへものわれきたわれなんぢらをやすません
29 われ心柔和こゝろにゅうわにして謙遜者へりくだるものなれバ我軛わがくびきおひわれならへなんぢらこゝろ平安やすきべし
30 そはわがくびきやすくわがかろければなり


第十二章

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[1] 當時そのときイエス安息日あんそくにちむぎはたけすぎしが其弟子等飢そのでしたちうゑえて摘食つみくひはじめたり
2 パリサイひとこれをイエスいひけるはなんぢ弟子でし安息日あんそくにちまじきことなせ
3 これこたへけるはダビデおよびともありものうゑしときなししことをいまよまざる
4 すなはかみ殿みやいり祭司さいしほかおのれおよびともにおるものくらふまじきそなへのパンをくらへり
5 また安息日あんそくにち祭司さいし殿みやうちにて安息日あんそくにちをかせどもつみなきこと律法おきておいよまざる
6 われ爾曹なんぢらつげ殿みやよりおほいなるものここあり
7 われ衿恤あはれみこのみ祭祀まつりこのまずとは如何いかなることかこれしらつみなきものつみせざるべし
8 それひと安息日あんそくにちしゅたるなり


9 こゝさり彼等かれら會堂くわいだういりしに
10 一手かたてなへたるひとありければ彼等かれらイエスうったへんとてこれとひけるは安息日あんそくにちにハいやすことをなすべき
11 彼等かれらいひけるは爾曹なんぢらうちひとつひつじもてものあらんにもしその羊安息日ひつじあんそくにちあなおちいらバこれ挈上とりあげざる
12 ひとひつじよりすぐるること幾何いかばかりぞやされ安息日あんそくにちぜんなすよし
13 つひにそのひとなんぢのべよといひけれバのばせりすなはほかごといゆ
14 パリサイひといでゝイエスころさんとはかれり
15 イエスこれしりこゝさりしにおほく人々ひとゞゝこれにしたがすべ疾病やまひあるものをみないや
16 われひとあらはすことなかれといましめたり
17 これ預言者よげんしゃイザヤいひことば
18 えらび我僕わがしもべすなはち我心わがこゝろかなひたるいつくしものわれこれ我霊わがみたまあたへん彼異邦人かれいはうじん審判さばきしめすべし
19 かれきそふことなくさけぶことなし人街ひとちまたおい其聲そのこえきくことなし
20 審判さばきをしてかち
[千六百六十六] げしむるまではいためあしをることなくけぶれるあさけすことなし
21 異邦人いはうじんまたそのよるべしとあるかなはせんためなり


22 こゝおにつかれたるものめしひおふしなるものイエスもと携來つれきたりければ此瞽このめしひおふしいやしてものいみゆるやうにせり
23 衆人ひとゞゝみなあやしみていひけるはダビデにハあらざる
24 パリサイのひときゝていひけるは此人このひとおにかしらベルゼブルつかふにあらざれバおに逐出おいいだすことなし
25 イエスそのこゝろしり彼等かれらいひけるハすべ相争あひあらそくにほろすべ相争あひあらそむらいへたつべからず
26 サタンもしサタン逐出おいいださバみづか相争あひあらそふなりさら其國そのくにはいかでたゝんや
27 もしわれベルゼブルによりて惡鬼あくき逐出おいいださバ爾曹なんぢら子弟こどもだれよりこれ逐出おいいだすやそれかれらハ爾曹なんぢら裁判人さいばんにんとなるべし
28 もしわれかみみたまよりおに逐出おいいだしゝならバかみくにハもハや爾曹なんぢらいたれり
29 また勇士つよきものをまづしばらざれバ如何いか其家そのいへいりその家具かぐうばふことをんやしばりのち其家そのいへうばふべし
30 われともならざるものわれそむわれともあつめざるものちらすなり
31 是故このゆゑ爾曹なんぢらつげ人々ひとゞゝすべをかところつみかみけがすことハゆるされんされ人々ひとゞゝ聖霊せいれいけがすことハゆるさるべからず
32 ことばひとそむものゆるさるべしされことば聖霊せいれいそむもの今世このよおいても亦来世またのちのよおいてもゆるさるべからず
33 あるひよしとし其果そのみをもよしとせよあるひあしゝとし其果そのみをもあしゝとせよ夫樹それき其果そのみよりしらるゝなり
34 あゝまむしすゑ爾曹惡なんぢらあくにして如可いかぜんいふことをんや夫心それこゝろみつるよりくちいはるゝものなればなり
35 善人よきひとこゝろ善庫よきくらよりよきものをいだ惡人あしきひとはその惡庫あしきくらよりあしきものをいだせり
36 われ爾曹なんぢらつげすべひとのいふところ虛言むなしきことば審判さばきこれうったへざるを
37 それなんぢそのいふところのことばによりてとせられ又其またそのいふことばによりてつみありとせらるゝなり


38 此時このときある學者がくしゃとパリサイの人答ひとこたへいひけるは休徴しるしをな
[千六百六十七]して我儕われらせんことをなんぢねが
39 こたへ彼等かれらいひけるハ奸惡かんあくなる休徴しるしもとむされど預言者よげんしゃヨナ休徴しるしほかこれ休徴しるしあたへられじ
40 それヨナ三日三夜魚みっかみようをはらなかありごとひと三日三夜地みっかみよちうちあるべし
41 ニネベ人審判ひとさばきともたちいまつみさだめん彼等かれらヨナをしへより悔改くいあらためたりそれヨナよりおほいなるものこゝにあり
42 みなみ女王にょわうさバきのともたちいまつみさだめんかれはてよりソロモン智慧ちえんとてきたれりそれソロモンよりおほいなるものこゝにあり
43 惡鬼人あくきひとよりいでかわきたるめぐ安息やすきもとむれどもずしていひけるハ
44 いでいへかへらんすできたりしに空虚くうきょにして掃浄はききよまかざれるを
45 つひゆきおのれよりもあしなゝつ惡鬼あくきたづさともいりこゝすまへバそのひとのち患状ありさままへよりもさらあしかるべしこのあしきもまたかくごとくならん
46 イエス人々ひとゞゝかたりをるときそのはゝ兄弟きゃうだいかれにものいハんとてそとたちけれバ
47 或人あるひとイエスいひけるはなんぢはゝ兄弟きゃうだいなんぢにものいハんとしてそとたて
48 イエスつげものこたへいひけるは我母わがはゝたれ我兄弟わがきゃうだいたれぞや
49 のべその弟子でしさしいひけるはこれわがはゝわが兄弟きゃうだいなり
50 そはすべててんいまちちむねおこなものこれわが兄弟きゃうだいわが姉妹しまいわがはゝなれバなり


第十三章

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[1] 當日このひイエスいへいで海邊うみべせしに
2 おほく人々彼ひとゞゝ集來あつまりきたりけれバイエスふねのりすべて人々ひとゞゝきしたて
3 イエスたとへ多端さまゞゝこと人々ひとゞゝかたりたねまく者播ものまきいでしが
4 まけるときみちほとりおちたねあり空中そらとりきたりてついばつくせり
5 またつちうすき磽地いしじおちたねありたゞち萌出はえいでたれど
6 いでしときやかれしがバなきがゆゑかれたり
7 またいばらなかおちたねありいばらそだちてこれふさげり
8 また沃壤よきちおちたねありむすべることあるひ百倍ひゃくばいあるひは六十倍ろくじふばいあるひはさん
[千六百六十八]十倍じふばいせり
9 みゝありてきこゆるものきくべし
10 弟子等でしたちきたりてかれいひけるは何故なにゆゑたとへをもて彼等かれらかたたまふや
11 こたへいひけるは爾曹なんぢらには天国てんこく奥義おくぎしることをあたへたまへど彼等かれらにはあたたまはざればなり
12 それもてものあたへられてなほあまりあり無有者もたぬものはそのもてものをもとらるゝなり
13 彼等かれらてもきゝてもきかさとらざるがゆゑ我譬われたとへ彼等かれらかたれり
14 イザヤ預言よげん爾曹なんぢらきけどもさとらずみれども
15 そはこの民目たみめにて見耳みみゝにて聴心きゝこゝろにてさとあらためてわれいやされんことをおそれそのこゝろにぶくみゝおほとぢたりといひしにかなへり
16 され爾曹なんぢら見爾曹みなんぢらみゝきくゆゑさいはひなり
17 われまこと爾曹なんぢらつげおほく預言者よげんしゃ義人ただしきひと爾曹なんぢらみるところをんとしたりしがみることを爾曹なんぢらきくところをきかんとしたりしがきくことをざりき
18 ゆゑ爾曹播種なんぢらたねまきたとへきけ
19 天國てんこくをしへきゝさとらざれバ惡鬼あしきものきたりて其心そのこゝろまかれたるたねうば是路これみちほとりまきたるたねなり
20 磽地いしぢまかれたるたね是教これをしへきゝすみやかによろこうくれども
21 おのれなけれバ暫時しばしのみをしへため患難かんなんあるひハせめらるゝことおこときたちまみちつまづものなり
22 またいばらなかまかれたるたね是教これをしへきけども此世このよ思慮こゝろづかひ貨財たからまどひをしへふさがれてみのらざるものなり
23 沃壤よきちまかれたるたね是教これをしへきゝさとむすぶことあるひ百倍ひゃくばいあるひハ六十倍ろくじふばいあるひハ三十倍さんじふばいするものなり


24 またたとへ彼等かれらしめしていひけるは天国てんこく人畑ひとはたけ美種よきたねまくたり
25 人々ひとゞゝいねたるうち其敵そのあだきたりむぎなか稗子からすむぎまきされ
26 なへはえいでみのりたるとき稗子からすむぎあらはれたり
27 主人あるじしもべきたりていひけるはしゅはたけには美種よきたねまかざりしか如何いかにして稗子からすむぎある
28 しもべいひけるは敵人あだびとこれをなせ僕主人しもべあるじいひけるはしからば我儕われらゆきてこれぬきあつむるはよき
29 いなおそらくは爾曹稗子なんぢらからすむぎぬきあつめんとてむぎをもともぬくべし
30 収穫かりいれまでふたつながらそだておけわれかりいれのときまづ稗子からすむぎ抜集ぬきあつめやかためこれつかむぎをバくらをさめよと刈者かるものいは


31 またたとへ彼等かれらしめしていひけるは天国てんこく芥種からしだねごとひとこれをとりはたけまけ
32 よろづたねよりはちひさけれどもそだちてハほかくさよりおほいにして天空そらとりきたり其枝そのえだ宿やどるほどのとなるなり


33 またたとへ彼等かれらかたりけるハ天国てんこく麪酵ぱんだねごとをんなこれをとり三斗さんとなかかくせばことゞゝ脹發ふくれいだすなり
34 イエスたとへをもてすべ此等これらこと衆人ひとゞゝかたりたまへりたとへにあらざればかたたまハず
35 これ預言者よげんしゃより我譬われたとへまうけくちひらはじめよりかくれたることを言出いひいださんといはれたるにかなはせんためなり


36 つひイエス衆人ひとゞゝかへしていへいれ其弟子そのでしきたりていひけるははたけ稗子からすむぎたとへ我儕われらときたまへ
37 これこたへいひけるは美種よきたね播者まくものひとなり
38 はたけハこの世界せかいなり美種よきたね是天国これてんこく諸子こどもなり稗子からすむぎ悪魔あくま子類こどもらなり
39 これをまくあだ悪魔あくまなり収穫かりいれをはりなり刈者かるものてん使等つかひたちなり
40 稗子からすむぎあつめやかるごと此世このよをはりおいてもかくごとくなるべし
41 ひとその使者つかひたちをつかはして其國そのくにうちよりすべ躓礙つまづきとなるものまたあくをなすひとあつめ
42 これ投入なげいるべし其處そこにて哀哭切齒かなしみはがみすることあら
43 このとき義人ただしきひと其父そのちちくにおいごとかがやかんみゝありてきこゆるものきくべし


44 また天國てんこくはたけかくれたるたからごとひとみいださばこれかくよろこかへ其所有そのもちものことゞゝうりてそのはたけかふなり


45 また天國てんこく好眞珠よきしんじゅもとめんとする商人あきびとごと
46 ひとつあたひたかき眞珠しんじゅ見出みいださバその所有もちものことゞゝうりこれかふなり


47 また天國てんこくうみうち各様さまゞゝうををとるあみごと