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明治元訳新約聖書 (大正4年)/馬太傳福音書 (2)

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第十章

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[1] イエスその十二弟子(じふにでし)を召彼等(よびかれら)に汚(けがれ)たる鬼(おに)を逐出(おひいだ)し又(また)すべての病(やまひ)すべての疾(わづらひ)を醫(いや)す權(ちから)を賜(たま)へり
2 その十二使徒(じふにしと)の名(な)は左(さ)の如(ごと)し首(はじめ)にはペテロと名(なづ)け給(たま)ひしシモンその兄弟(きゃうだい)アンデレ、ゼベダイの子(こ)ヤコブその兄弟(きゃうだい)ヨハ子
3 ピリポ、バルトロマイ、トマス、税吏(みつぎとり)マタイ、アルパイの子(こ)なるヤコブ、タッダイと名(な)づくるレッパイ
4 カナンのシモン、イスカリオテのユダ是(これ)すなハちイエスを賣(わた)しゝ者なり


5 イエスこの十二(じふに)を遣(つかは)さんとして命(めい)じ曰(いひ)けるは異邦(いはう)の途(みち)に往(ゆく)なかれサマリア人(びと)の邑(むら)にも入(いる)なかれ
6 惟(ただ)イスラエルの家(いへ)の迷(まよ)へる羊(ひつじ)に往(ゆけ)
7 往(ゆき)て天国(てんこく)は近(ちかき)に在(あり)と宣傳(のべつたへ)よ
8 病(やまひ)の者(もの)を醫(いや)し癩病(らいびょう)を潔(きよく)し死(し)にたる者(もの)を甦(よみがへ)らせ鬼(おに)を逐出(おひいだ)すことをせよ爾曹價(なんぢらあたひ)なしに受(うけ)たれば亦價(またあたひ)なしに施(ほどこ)すべし
9 爾曹金(なんぢらきん)または銀(ぎん)または銭(ぜに)を貯(たくは)へ帶(おぶ)る勿(なか)れ
10 行嚢二(たびぶくろふたつ)の裏衣履杖(うらぎくつつへ)も亦然(またしかり)そは工人(はたらくもの)の其食物(そのしょくもつ)を得(うる)は宜(うべ)なり
11 凡(おほよ)そ郷邑(むらざと)に至(いた)らバ其中(そのうち)の好者(よきもの)を訪(たづね)て出(いづ)るまでハ其處(そこ)に留(とどま)れ
12
[千六百六十二] 人(ひと)の家(いへ)に入(い)らば其平安(そのやすき)を問(とへ)
13 その家(いへ)もし平安(やすき)を得(う)べき者(もの)ならば爾曹(なんぢら)の願(ねが)ふ平安(やすき)ハ其家(そのいへ)に至(いた)らん若(も)し平安(やすき)を受(うく)べからざる者(もの)ならば爾曹(なんぢら)の願(ねが)ふ平安(やすき)は爾曹(なんぢら)に歸(かへ)るべし
14 もし爾曹(なんぢら)を接(うけ)ず爾曹(なんぢら)の言(ことば)を聽(きか)ざる者(もの)あらバ其家(そのいへ)または其邑(そのむら)を去(さる)とき足(あし)の塵(ちり)を拂(はら)へ
15 われ誠(まこと)に爾曹(なんぢら)に告(つげ)ん審判(さばき)の日到(ひいた)らばソドムとゴモラの地(ち)は此邑(このむら)より却(かへっ)て易(やす)からん


16 われ爾曹(なんぢら)を遣(つかは)すは羊(ひつじ)を狼(おほかみ)の中(なか)に入(いる)るが如(ごと)し故(ゆゑ)に蛇(へび)の如(ごと)く智(さと)く鴿(はと)の如(ごと)く馴良(おとなし)かれ,br /> 17 愼(つつしみ)て人(ひと)に戒心(こゝろ)せよ蓋人(そはひと)なんぢらを集議所(しふぎしょ)に解(わた)し又(また)その會堂(くわいだう)にて鞭(むちう)つべければ也(なり)
18 又(たま[:誤植?!])わが縁故(ゆゑ)によりて侯伯(つかさ)および王(わう)の前(まへ)に曳(ひか)るべし是(これ)かれらと異邦人(いはうじん)に證(あかし)をなさんが爲(ため)なり
19 人(ひと)なんぢらを解(わた)さば如何(いかに)なにを言(いは)んと思(おも)ひ煩(わづ)らふ勿(なか)れ
20 是(これ)なんぢら自(みづか)ら言(いふ)に非(あら)ず爾曹(なんぢら)の父(ちち)の靈(みたま)その衷(うち)に在(あり)て言(いふ)なり

21 兄弟(きゃうだい)は兄弟(きゃうだい)を死(し)に付(わた)し父(ちち)は子(こ)を付(わた)し子(こ)は兩親(ふたおや)を訴(うった)へ且(かつ)これを殺(ころ)さしむべし

22 又(また)なんぢら我名(わがな)の爲(ため)に凡(すべて)の人(ひと)に憾(にくま)れん然(され)ど終(おはり)まで忍(しの)ぶ者(もの)は救(すく)はるべし
23 この邑(むら)にて人(ひと)なんぢらを責(せめ)なば他(ほか)の邑(むら)に逃(のがれ)よ我(われ)まことに爾曹(なんぢら)に告(つげ)ん爾曹(なんぢら)イスラエルの諸邑(むらゝゝ)を廻盡(めぐりつく)さゞる間(うち)に人(ひと)の子(こ)は来(きた)るべし
24 弟子(でし)は師(し)より優(まさ)らず僕(しもべ)は主(あるじ)より優(まさ)らざる也(なり)
25 弟子(でし)は其師(そのし)の如(ごと)く僕(しもべ)は其主(そのあるじ)の如(ごとく)ならば足(たり)ぬべし若(も)し人主(ひとあるじ)を呼(よび)てベルゼブルと云(いは)ば況(まし)て其家(そのいへ)の者(もの)をや
26 是故(このゆゑ)に彼等(かれら)を懼(おそ)るゝこと勿(なかれ)そハ掩(おおは)れて露(あらは)れざる者(もの)なく隱(かくれ)て知(しら)れざる者(もの)なければ也(なり)
27 われ幽暗(くらき)に於(おい)て爾曹(なんぢら)に告(つげ)しことを光明(あかるさ)に述(のべ)よ耳(みゝ)をつけて聽(きゝ)しことを屋上(やのうへ)に宣傳(いひひろ)めよ
28 身(み)を殺(ころ)して魂(たましひ)を殺(ころ)すこと能(あた)はざる者(もの)を懼(おそ)るゝ勿(なか)れ唯(たゞ)なんぢらを魂(たましひ)と身(からだ)とを地獄(じごく)に滅(ほろぼ)し得(う)る者(もの)を懼(おそ)れよ
29 二羽(には)の雀(すずめ)は一銭(いっせん)にて售(うる)に非(あら)ずや然(しか)るに爾曹(なんぢら)の父(ちち)の許(ゆるし)なくしては其一羽(そのいちは)も地(ち)に隕(おつ)ること有(あら)じ
30 爾曹(なんぢら)の頭(かしら)の髪(け)また皆(みな)かぞへらる
31 故(ゆゑ)に懼(おそ)るゝ勿(なか)れ
[千六百六十三] 爾曹(なんぢら)は多(おほく)の雀(すずめ)よりも優(まさ)れり
32 然(され)ば凡(おほよ)そ人(ひと)の前(まへ)に我(われ)を識(しら)んと言(いは)ん者(もの)を我(われ)も亦天(またてん)に在(いま)す我父(わがちち)の前(まへ)に之(これ)を識(しら)んと言(いは)ん
33 人(ひと)の前(まへ)に我(われ)を識(しら)ずと言(いは)ん者(もの)を我(われ)も亦天(またてん)に在(いま)す我父(わがちち)の前(まへ)に之(これ)を識(しら)ずと言(いふ)べし


34 地(ち)に泰平(おだやか)を出(いだ)さん爲(ため)に我來(われきた)れりと意(おもふ)なかれ泰平(おだやか)を出(いだ)さんとに非(あら)ず刄(やいば)を出(いだ)さん爲(ため)に來(きた)れり
35 夫(それ)わか來(きた)るは人(ひと)を其父(そのちち)に背(そむ)かせ女(むすめ)を其母(そのはは)に背(そむ)かせ媳(よめ)を其姑(そのしうとめ)に背(そむ)かせんが爲(ため)なり
36 人(ひと)の敵(あだ)は其家(そのいへ)の者(もの)なるべし
37 我(われ)よりも父母(ちちはは)を愛(いつくし)む者(もの)は我(われ)に恊(かなは)ざる者(もの)なり我(われ)よりも子女(むすこむすめ)を愛(いつくし)む者(もの)は我(われ)に恊(かなは)ざる者(もの)なり
38 その十字架(じふじか)を任(とり)て我(われ)に従(したが)ハざる者(もの)も我(われ)に恊(かなは)ざる者(もの)なり
39 その生命(いのち)を得(う)る者(もの)は之(これ)を失(うしな)ひ我(わが)ために生命(いのち)を失(うしな)ふ者(もの)は之(これ)を得(う)べし
40 爾曹(なんぢら)を接(うく)る者(もの)は我(われ)を接(うく)る也(なり)また我(われ)を接(うく)る者(もの)は我(われ)を遣(つかは)しゝ者(もの)を接(うく)るなり
41 預言者(よげんしゃ)なるを以(も)てその預言者(よげんしゃ)を接(うく)る者(もの)は預言者(よげんしゃ)の報賞(むくい)をうけ義人(ただしきひと)なるを以(も)てその義人(ただしきひと)を接(うく)る者(もの)は義人(ただしきひと)の報賞(むくい)を受(うく)
42 わが弟子(でし)なるをもて小(ちひさ)き一人(ひとり)の者(もの)に冷(ひやゝか)なる水一杯(みづいっぱい)にても飲(のま)する者(もの)は誠(まこと)に爾曹(なんぢら)に告(つげ)ん必(かなら)ず其報賞(そのむくい)を失(うしな)はじ


第十一章

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[1] イエスその十二弟子(じふにでし)に示畢(しめしおはり)しとき此處(ここ)をさり道(みち)を教(をし)へ廣(ひろめ)んが爲(ため)に彼等(かれら)の諸邑(むらゝゝ)に往(ゆけ)り


2 偖(さて)ヨハ子獄(ひとや)にてキリストの行(なし)し業(わざ)を聞(きゝ)その弟子二人(でしふたり)を彼(かれ)に遣(つかは)して
3 曰(いは)せけるは来(きたる)べき者(もの)は爾(なんぢ)なるか又(また)われら他(ほか)に待(まつ)べき乎(か)
4 イエス彼等(かれら)に答(こたへ)て曰(いひ)けるは爾曹(なんぢら)が聞(きく)ところ見(みる)ところの事(こと)をヨハ子に往(ゆき)て告(つげ)よ
5 瞽者(めしひ)ハみ跛者(あしなへ)はあゆみ癩病人(らいびょうにん)ハ潔(きよ)まり聾者(つんぼ)ハきゝ死(し)にたる者(もの)ハ復活(いきかへ)され貧者(まづしきもの)は福音(ふくいん)を聞(きか)せらる
6 凡(おほよ)そ我(わが)ために躓(つまづ)かざる者(もの)は福(さいはひ)なり


7 彼等(かれら)の歸(かへ)れる後(のち)イエス、ヨハ子の事(こと)を人々(ひとゞゝ)に曰(いひ)けるは爾曹何(なんぢらなに)を見(み)んとて野(の)に出(いで)しや風(かぜ)に動(うごか)さるゝ葦(あし)なる乎(か)
8 然(さら)バ爾曹何(なんぢらなに)を見(み)んとて出(いで)しや美服(やはらかきころも)を着(き)たる人(ひと)か美服(やはらかきころも)を着(き)たる者(もの)ハ王室(おうのいへ)に在(あ)り
9 然(さら)バ何(なに)を見(み)んとて
[千六百六十四] 出(いで)しや預言者(よげんしゃ)なるか然(しかり)われ爾曹(なんぢら)に告(つげ)ん彼(かれ)は預言者(よげんしゃ)よりも卓越(すぐれ)たる者(もの)なり
10 夫(それ)なんぢに先(さきだ)ちて道(みち)を備(そなふ)る我(わ)が使者(つかひ)を我(われ)なんぢの前(まへ)に遣(おくら)んと録(しる)されたるハ即(すなは)ち是(これ)なり
11 誠(まこと)に告(つげ)ん婦(をんな)の生(うみ)たる者(もの)の中(うち)いまだバプテスマのヨハ子より大(おほい)なる者(もの)は起(おこ)らざりき然(され)ど天国(てんこく)の最小(いとちいさ)き者(もの)も彼(かれ)よりは大(おほい)なる也(なり)
12 バプテスマのヨハ子の時(とき)より今(いま)に至(いた)るまで人々勵(ひとゞゝはげみ)て天國(てんこく)を取(とら)んとす勵(はげみ)たる者(もの)の之(これ)を取(とれ)り
13 それ凡(すべて)の預言者(よげんしゃ)と律法(おきて)の預言(よげん)したるハヨハ子の時(とき)までなれバ也(なり)

14 若(もし)なんぢら我言(わがことば)を承(うく)ることを好(この)まバ来(きたる)べきエリヤは是(これ)なり
15 耳(みゝ)ありて聽(きこ)ゆる者(もの)は聽(きく)べし


16 我(われ)この世(よ)を何(なに)に譬(たとへ)んや童子街(わらべちまた)に坐(ざ)し其侶(そのとも)を呼(よび)て
17 われら笛(ふえ)ふけども爾曹(なんぢら)をどらず哀(かなしみ)をすれども爾曹胸(なんぢらむね)うたずと云(いふ)に似(に)たり
18 蓋(そは)ヨハ子来(きたり)て食(くら)ふこと飲(のむ)ことを爲(せ)ざれば鬼(おに)に憑(つか)れたる者(もの)なりと人々言(ひとゞゝいへ)り
19 人(ひと)の子(こ)きたりて食(くら)ふことをし飲(のむ)ことを爲(す)れバ又食(またしょく)を嗜(たし[な:落植字])み酒(さけ)を好(この)む人税吏罪(ひとみつぎとりつみ)ある者(もの)の友(とも)なりといふ然(され)ども智慧(ちゑ)は智慧(ちゑ)の子(こ)に義(ただし)と爲(せ)らるるなり


20 イエスの異能(ことなるわざ)を行(なし)たまひたる諸邑(むらゝゝ)の悔改(くいあらた)めざるに由(より)て責(いましめ)いひけるハ
21 あゝ禍(わざわひ)なる哉(かな)コラジンよ噫禍(あゝわざはひ)なる哉(かな)ベテサイダよ爾曹(なんぢら)の中(うち)に行(なし)し異能(ことなるわざ)を若(もし)ツロとシドンに行(なし)しならば彼等(かれら)ハ早(はや)く麻(あさ)をき灰(はい)を蒙(かむ)りて悔改(くいあらため)しなるべし
22 われ爾曹(なんぢら)に告(つげ)ん審判(さばき)の日(ひ)にはツロとシドンの刑罰(けいばつ)は爾曹(なんぢら)よりも却(かへっ)て易(やす)からん
23 既(すで)に天(てん)にまで擧(あげ)られしカペナウンよ又陰府(またよみ)にまで落(おと)さるべし蓋(そは)なんぢに行(なし)し異能(ことなるわざ)を若(もし)ソドムに行(なし)しならバ今日(けふ)まで尚保存(なほたもち)しならん
24 我(われ)なんぢらに告(つげ)ん審判(さばき)の日(ひ)にソドムの地(ち)は爾(なんぢ)よりも却(かへっ)て易(やす)かるべし


25 其(その)ときイエス答(こたへ)て曰(いひ)けるは天地(てんち)の主(しゅ)なる父(ちち)よ此事(このこと)を智者達者(かしこきものさときもの)に隱(かく)して赤子(をさなご)に顯(あらは)したまふを謝(しゃ)す
26 父(ちち)よ然(しかり)それ此(かく)の如(ごとき)は聖旨(みこゝろ)に適(かなへ)るなり
27 父(ちち)は我(われ)に萬物(ばんぶつ)を予(あたへ)たまへり父(ちち)の
[千六百六十五]外(ほか)に子(こ)を識(しる)もの無(なく)また子(こ)および子(こ)の顯(あらは)す所(ところ)の者(もの)の外(ほか)に父(ちち)を識者(しるもの)なし


28 凡(すべ)て勞(つかれ)たる者(もの)また重(おもき)を負(おへ)る者(もの)は我(われ)に来(きた)れ我(われ)なんぢらを息(やす)ません
29 我(われ)は心柔和(こゝろにゅうわ)にして謙遜者(へりくだるもの)なれバ我軛(わがくびき)を負(おひ)て我(われ)に學(ならへ)なんぢら心(こゝろ)に平安(やすき)を獲(う)べし
30 蓋(そは)わが軛(くびき)は易(やすく)わが荷(に)は輕(かろ)ければ也(なり)


第十二章

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[1] 當時(そのとき)イエス安息日(あんそくにち)に麥(むぎ)の畑(はたけ)を過(すぎ)しが其弟子等飢(そのでしたちうゑ)えて穂(ほ)を摘食(つみくひ)はじめたり
2 パリサイの人(ひと)これを見(み)てイエスに曰(いひ)けるは爾(なんぢ)の弟子(でし)は安息日(あんそくにち)に爲(す)まじき事(こと)を行(なせ)り
3 之(これ)に答(こたへ)けるはダビデおよび從(とも)に在(あり)し者(もの)の饑(うゑ)しとき行(なし)しことを未(いま)だ讀(よま)ざる乎(か)
4 即(すなは)ち神(かみ)の殿(みや)に入(いり)て祭司(さいし)の他(ほか)は己(おのれ)および偕(とも)におる者(もの)も食(くら)ふまじき供(そなへ)のパンを食(くら)へり
5 また安息日(あんそくにち)に祭司(さいし)ハ殿(みや)の内(うち)にて安息日(あんそくにち)を犯(をか)せども罪(つみ)なき事(こと)を律法(おきて)に於(おい)て讀(よま)ざる乎(か)
6 われ爾曹(なんぢら)に告(つげ)ん殿(みや)より大(おほい)なるもの茲(ここ)に在(あり)
7 われ衿恤(あはれみ)を欲(このみ)て祭祀(まつり)を欲(このま)ずとは如何(いか)なることか之(これ)を知(しら)ば罪(つみ)なき者(もの)を罪(つみ)せざるべし
8 それ人(ひと)の子(こ)は安息日(あんそくにち)の主(しゅ)たるなり


9 此(こゝ)を去(さり)て彼等(かれら)の會堂(くわいだう)に入(いり)しに
10 一手(かたて)なへたる人(ひと)ありければ彼等(かれら)イエスを訴(うった)へんとて之(これ)に問(とひ)けるは安息日(あんそくにち)にハ醫(いや)すことを行(なす)べき乎(か)
11 彼等(かれら)に曰(いひ)けるは爾曹(なんぢら)の中(うち)に一(ひとつ)の羊(ひつじ)を有(もて)る者(もの)あらんに若(もし)その羊安息日(ひつじあんそくにち)に坑(あな)に陥(おちい)らバ之(これ)を挈上(とりあげ)ざる乎(か)
12 人(ひと)は羊(ひつじ)より優(すぐる)ること幾何(いかばかり)ぞや然(され)ば安息日(あんそくにち)に善(ぜん)を行(なす)は宜(よし)
13 遂(つひ)にその人(ひと)に爾(なんぢ)が手(て)を伸(のべ)よと曰(いひ)けれバ伸(のば)せり即(すなは)ち他(ほか)の手(て)の如(ごと)く愈(いゆ)
14 パリサイの人(ひと)いでゝイエスを殺(ころ)さんと謀(はか)れり
15 イエス之(これ)を知(しり)て此(こゝ)を去(さり)しに多(おほく)の人々(ひとゞゝ)これに從(したが)ふ凡(すべ)て疾病(やまひ)ある者(もの)をみな愈(いや)し
16 我(われ)を人(ひと)に露(あらは)すこと勿(なか)れと戒(いましめ)たり
17 これ預言者(よげんしゃ)イザヤの云(いひ)し言(ことば)に
18 視(み)よ我(わ)が選(えらび)し我僕(わがしもべ)すなはち我心(わがこゝろ)に適(かなひ)たる我(わ)が愛(いつくし)む者(もの)われ之(これ)に我霊(わがみたま)を賦(あた)へん彼異邦人(かれいはうじん)に審判(さばき)を示(しめ)すべし
19 彼(かれ)は競(きそふ)ことなく喧(さけぶ)ことなし人街(ひとちまた)に於(おい)て其聲(そのこえ)を聞(きく)ことなし
20 審判(さばき)をして勝(かち)と
[千六百六十六] げしむるまでは傷(いため)る葦(あし)を折(をる)ことなく煙(けぶ)れる麻(あさ)を熄(けす)ことなし
21 異邦人(いはうじん)も亦(また)その名(な)に賴(よる)べしと有(ある)に適(かなは)せん爲(ため)なり


22 爰(こゝ)に鬼(おに)に憑(つかれ)たるもの瞽(めしひ)の瘖(おふし)なる者(もの)をイエスの所(もと)に携來(つれきた)りければ此瞽(このめしひ)の瘖(おふし)を醫(いや)して言(ものい)ひ見(みゆ)るやうに爲(な)せり
23 衆人(ひとゞゝ)みな奇(あやし)みて曰(いひ)けるは此(こ)ハダビデの裔(こ)にハ非(あら)ざる乎(か)
24 パリサイの人(ひと)きゝて曰(いひ)けるは此人(このひと)は鬼(おに)の王(かしら)ベルゼブルを役(つか)ふに非(あら)ざれバ鬼(おに)を逐出(おいいだす)ことなし
25 イエスその意(こゝろ)を知(しり)て彼等(かれら)に曰(いひ)けるハ凡(すべ)て相争(あひあらそ)ふ國(くに)は亡(ほろ)び凡(すべ)て相争(あひあらそ)ふ邑(むら)や家(いへ)ハ立(たつ)べからず
26 サタン若(もし)サタンを逐出(おいいだ)さバ自(みづか)ら相争(あひあらそ)ふなり然(さら)バ其國(そのくに)はいかで立(たゝ)んや
27 若(もし)われベルゼブルによりて惡鬼(あくき)を逐出(おいいだ)さバ爾曹(なんぢら)の子弟(こども)ハ誰(だれ)に由(より)て之(これ)を逐出(おいいだ)すや夫(それ)かれらハ爾曹(なんぢら)の裁判人(さいばんにん)となるべし
28 若(もし)われ神(かみ)の靈(みたま)に由(より)て鬼(おに)を逐出(おいいだ)しゝならバ神(かみ)の國(くに)ハもハや爾曹(なんぢら)に至(いた)れり
29 また勇士(つよきもの)をまづ縛(しば)らざれバ如何(いか)で其家(そのいへ)に入(いり)その家具(かぐ)を奪(うば)ふことを得(え)んや縛(しばり)て後(のち)に其家(そのいへ)を奪(うば)ふべし
30 我(われ)と偕(とも)ならざる者(もの)ハ我(われ)に背(そむ)き我(われ)と偕(とも)に斂(あつめ)ざる者(もの)ハ散(ちら)すなり
31 是故(このゆゑ)に爾曹(なんぢら)に告(つげ)ん人々(ひとゞゝ)の凡(すべ)て犯(をか)す所(ところ)の罪(つみ)と神(かみ)を瀆(けがす)ことハ赦(ゆるさ)れん然(され)ど人々(ひとゞゝ)の聖霊(せいれい)を瀆(けがす)ことハ赦(ゆるさ)るべからず
32 言(ことば)を以(も)て人(ひと)の子(こ)に背(そむ)く者(もの)ハ赦(ゆるさ)るべし然(され)ど言(ことば)を以(も)て聖霊(せいれい)に背(そむ)く者(もの)ハ今世(このよ)に於(おい)ても亦来世(またのちのよ)に於(おい)ても許(ゆるさ)るべからず
33 或(あるひ)ハ樹(き)を善(よし)とし其果(そのみ)をも善(よし)とせよ或(あるひ)ハ樹(き)を惡(あしゝ)とし其果(そのみ)をも惡(あしゝ)とせよ夫樹(それき)ハ其果(そのみ)に由(より)て知(しら)るゝ也(なり)
34 あゝ蝮(まむし)の裔(すゑ)よ爾曹惡(なんぢらあく)にして如可(いか)で善(ぜん)を言(いふ)ことを得(え)んや夫心(それこゝろ)に充(みつ)るより口(くち)に言(いは)るゝ者(もの)なれば也(なり)
35 善人(よきひと)ハ心(こゝろ)の善庫(よきくら)より善(よき)ものを出(いだ)し惡人(あしきひと)はその惡庫(あしきくら)より惡(あしき)ものを出(いだ)せり
36 われ爾曹(なんぢら)に告(つげ)ん凡(すべ)て人(ひと)のいふ所(ところ)の虛言(むなしきことば)は審判(さばき)の日(ひ)に之(これ)を訴(うった)へざるを得(え)じ
37 それ爾(なんぢ)その曰(いふ)ところの言(ことば)によりて義(ぎ)とせられ又其(またその)いふ言(ことば)によりて罪(つみ)ありとせらるゝ也(なり)


38 此時(このとき)ある學者(がくしゃ)とパリサイの人答(ひとこたへ)て曰(いひ)けるは師(し)よ休徴(しるし)をな
[千六百六十七]して我儕(われら)に見(み)せんことを爾(なんぢ)に請(ねが)ふ
39 答(こたへ)て彼等(かれら)に曰(いひ)けるハ奸惡(かんあく)なる世(よ)ハ休徴(しるし)を求(もとむ)されど預言者(よげんしゃ)ヨナの休徴(しるし)の外(ほか)は之(これ)に休徴(しるし)を與(あたへ)られじ
40 夫(それ)ヨナが三日三夜魚(みっかみようを)の腹(はら)の中(なか)に在(あり)し如(ごと)く人(ひと)の子(こ)も三日三夜地(みっかみよち)の中(うち)に在(ある)べし
41 ニネベの人審判(ひとさばき)の日(ひ)に共(とも)に起(たち)て今(いま)の世(よ)の罪(つみ)を定(さだ)めん彼等(かれら)ハヨナの教(をしへ)に由(より)て悔改(くいあらため)たり夫(それ)ヨナより大(おほい)なる者(もの)こゝに在(あり)
42 南(みなみ)の女王(にょわう)さバきの日(ひ)に共(とも)に起(たち)て今(いま)の世(よ)の罪(つみ)を定(さだ)めん彼(かれ)ハ地(ち)の極(はて)よりソロモンの智慧(ちえ)を得(え)んとて来(きた)れり夫(それ)ソロモンより大(おほい)なるもの此(こゝ)にあり
43 惡鬼人(あくきひと)より出(いで)て旱(かわき)たる地(ち)を巡(めぐ)り安息(やすき)を求(もとむ)れども得(え)ずして曰(いひ)けるハ
44 我(わ)が出(いで)し家(いへ)に歸(かへ)らん既(すで)に來(きたり)しに空虚(くうきょ)にして掃浄(はききよま)り飾(かざ)れるを見(み)
45 遂(つひ)に往(ゆき)て己(おのれ)よりも惡(あし)き七(なゝつ)の惡鬼(あくき)を携(たづさ)へ偕(とも)に入(いり)て此(こゝ)に居(すまへ)バその人(ひと)の後(のち)の患状(ありさま)ハ前(まへ)よりも更(さら)に惡(あし)かるべし此(この)あしき世(よ)もまた此(かく)の如(ごとく)ならん
46 イエス人々(ひとゞゝ)に語(かたり)をる時(とき)その母(はゝ)と兄弟(きゃうだい)かれに言(ものい)ハんとて外(そと)に立(たち)けれバ
47 或人(あるひと)イエスに曰(いひ)けるは爾(なんぢ)の母(はゝ)と兄弟(きゃうだい)なんぢに言(ものい)ハんとして外(そと)に立(たて)り
48 イエス告(つげ)し者(もの)に答(こたへ)て曰(いひ)けるは我母(わがはゝ)ハ誰(たれ)ぞ我兄弟(わがきゃうだい)ハ誰(たれ)ぞや
49 手(て)を伸(のべ)その弟子(でし)を指(さし)て曰(いひ)けるは是(これ)わが母(はゝ)わが兄弟(きゃうだい)なり
50 蓋(そは)すべて我(わ)が天(てん)に在(いま)す父(ちち)の旨(むね)を行(おこな)ふ者(もの)ハ是(これ)わが兄弟(きゃうだい)わが姉妹(しまい)わが母(はゝ)なれバ也(なり)


第十三章

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[1] 當日(このひ)イエス家(いへ)を出(いで)て海邊(うみべ)に坐(ざ)せしに
2 多(おほく)の人々彼(ひとゞゝ)に集來(あつまりきたり)けれバイエスは舟(ふね)に登(のり)て坐(ざ)し凡(すべて)の人々(ひとゞゝ)ハ岸(きし)に立(たて)り
3 イエス譬(たとへ)を以(も)て多端(さまゞゝ)の言(こと)を人々(ひとゞゝ)に語(かたり)ぬ種(たね)まく者播(ものまき)に出(いで)しが
4 播(まけ)るとき路(みち)の旁(ほとり)に遺(おち)し種(たね)あり空中(そら)の鳥(とり)きたりて啄(ついば)み盡(つく)せり
5 また土(つち)うすき磽地(いしじ)に遺(おち)し種(たね)あり直(たゞち)に萌出(はえいで)たれど
6 日(ひ)の出(いで)しとき灼(やか)れしがバ根(ね)なきが故(ゆゑ)に槁(かれ)たり
7 また棘(いばら)の中(なか)に遺(おち)し種(たね)あり棘(いばら)そだちて之(これ)を蔽(ふさ)げり
8 また沃壤(よきち)に遺(おち)し種(たね)あり實(み)を結(むす)べること或(あるひ)ハ百倍(ひゃくばい)あるひは六十倍(ろくじふばい)あるひは三(さん)
[千六百六十八]十倍(じふばい)せり
9 耳(みゝ)ありて聽(きこ)ゆる者(もの)は聽(きく)べし
10 弟子等(でしたち)きたりて彼(かれ)に曰(いひ)けるは何故(なにゆゑ)に譬(たとへ)をもて彼等(かれら)に語(かた)り給(たま)ふや
11 答(こたへ)て曰(いひ)けるは爾曹(なんぢら)には天国(てんこく)の奥義(おくぎ)を知(しる)ことを予(あたへ)たまへど彼等(かれら)には与(あた)へ給(たまは)ざれば也(なり)
12 それ有(もて)る者(もの)は与(あたへ)られてなほ餘(あまり)あり無有者(もたぬもの)はその有(もて)る者(もの)をも奪(とら)るゝ也(なり)
13 彼等(かれら)ハ視(み)ても見(み)ず聽(きゝ)ても聞(きか)ず悟(さとら)ざるが故(ゆゑ)に我譬(われたとへ)を以(も)て彼等(かれら)に語(かた)れり
14 イザヤの預言(よげん)に爾曹(なんぢら)は聽(きけ)ども悟(さと)らず視(みれ)ども見(み)ず
15 蓋(そは)この民目(たみめ)にて見耳(みみゝ)にて聴心(きゝこゝろ)にて悟(さと)り改(あらた)めて我(われ)に醫(いや)されんことを恐(おそれ)その心(こゝろ)を頑(にぶく)し耳(みゝ)を蔽(おほ)ひ目(め)を閉(とぢ)たりと云(いひ)しに應(かな)へり
16 然(され)ど爾曹(なんぢら)の目(め)ハ見爾曹(みなんぢら)の耳(みゝ)ハ聞(きく)が故(ゆゑ)に福(さいはひ)なり
17 われ誠(まこと)に爾曹(なんぢら)に告(つげ)ん多(おほく)の預言者(よげんしゃ)と義人(ただしきひと)ハ爾曹(なんぢら)が見(みる)ところを見(み)んとしたりしが見(みる)ことを得(え)ず爾曹(なんぢら)が聞(きく)ところを聞(きか)んとしたりしが聞(きく)ことを得(え)ざりき
18 故(ゆゑ)に爾曹播種(なんぢらたねまき)の譬(たとへ)を聽(きけ)
19 天國(てんこく)の教(をしへ)を聞(きゝ)て悟(さと)らざれバ惡鬼(あしきもの)きたりて其心(そのこゝろ)に播(まか)れたる種(たね)を奪(うば)ふ是路(これみち)の旁(ほとり)に播(まき)たる種(たね)なり
20 磽地(いしぢ)に播(まか)れたる種(たね)ハ是教(これをしへ)を聽(きゝ)て速(すみや)かに喜(よろこ)び受(うく)れども
21 己(おのれ)に根(ね)なけれバ暫時(しばし)のみ教(をしへ)の爲(ため)に患難(かんなん)あるひハ迫(せめ)らるゝ事(こと)の起(おこ)る時(とき)は忽(たちま)ち道(みち)に礙(つまづ)く者(もの)なり
22 また棘(いばら)の中(なか)に播(まか)れたる種(たね)ハ是教(これをしへ)を聞(きけ)ども此世(このよ)の思慮(こゝろづかひ)と貨財(たから)の惑(まどひ)に教(をしへ)を蔽(ふさが)れて實(みの)らざる者(もの)なり
23 沃壤(よきち)に播(まか)れたる種(たね)ハ是教(これをしへ)を聞(きゝ)て悟(さと)り實(み)を結(むすぶ)こと或(あるひ)ハ百倍(ひゃくばい)あるひハ六十倍(ろくじふばい)あるひハ三十倍(さんじふばい)する者(もの)なり


24 また譬(たとへ)を彼等(かれら)に示(しめ)して曰(いひ)けるは天国(てんこく)は人畑(ひとはたけ)に美種(よきたね)を播(まく)に似(に)たり
25 人々(ひとゞゝ)の寢(いね)たる間(うち)に其敵(そのあだ)きたり麥(むぎ)の中(なか)に稗子(からすむぎ)を播(まき)て去(され)り
26 苗(なへ)はえ出(いで)て實(みのり)たるとき稗子(からすむぎ)も現(あらは)れたり
27 主人(あるじ)の僕(しもべ)きたりて曰(いひ)けるは主(しゅ)よ畑(はたけ)には美種(よきたね)を播(まか)ざりしか如何(いかに)して稗子(からすむぎ)ある乎(や)
28 僕(しもべ)に曰(いひ)けるは敵人(あだびと)これを行(なせ)り僕主人(しもべあるじ)に曰(いひ)けるは然(しか)らば我儕(われら)ゆきて之(これ)を抜(ぬき)あつむるは宜(よき)か
29 否(いな)おそらくは爾曹稗子(なんぢらからすむぎ)を抜(ぬき)あつめんとて麥(むぎ)をも共(とも)に抜(ぬく)べし
30 収穫(かりいれ)まで二(ふたつ)ながら長(そだて)おけ我(われ)かりいれの時(とき)まづ稗子(からすむぎ)を抜集(ぬきあつめ)て焚(やか)ん爲(ため)に之(これ)を束(つか)ね麥(むぎ)をバ我(わ)が庫(くら)に収(をさめ)よと刈者(かるもの)に言(いは)ん


31 また譬(たとへ)を彼等(かれら)に示(しめ)して曰(いひ)けるは天国(てんこく)は芥種(からしだね)の如(ごと)し人(ひと)これを取(とり)て畑(はたけ)に播(まけ)バ
32 萬(よろづ)の種(たね)よりは小(ちひさ)けれども長(そだち)てハ他(ほか)の草(くさ)より大(おほい)にして天空(そら)の鳥(とり)きたり其枝(そのえだ)に宿(やどる)ほどの樹(き)となる也(なり)


33 また譬(たとへ)を彼等(かれら)に語(かたり)けるハ天国(てんこく)は麪酵(ぱんだね)の如(ごと)し婦(をんな)これをとり三斗(さんと)の粉(こ)の中(なか)に藏(かく)せば悉(ことゞゝ)く脹發(ふくれいだ)すなり
34 イエス譬(たとへ)をもて凡(すべ)て此等(これら)の事(こと)を衆人(ひとゞゝ)に語(かたり)たまへり譬(たとへ)にあらざれば語(かた)り給(たま)ハず
35 これ預言者(よげんしゃ)に託(より)て我譬(われたとへ)を設(まうけ)て口(くち)を啓(ひら)き世(よ)の始(はじめ)より隱(かくれ)たることを言出(いひいだ)さんと云(いは)れたるに應(かなは)せん爲(ため)なり


36 遂(つひ)にイエス衆人(ひとゞゝ)を歸(かへ)して家(いへ)に入(いれ)り其弟子(そのでし)きたりて曰(いひ)けるは畑(はたけ)の稗子(からすむぎ)の譬(たとへ)を我儕(われら)に解(とき)たまへ
37 之(これ)に答(こたへ)て曰(いひ)けるは美種(よきたね)を播者(まくもの)ハ人(ひと)の子(こ)なり
38 畑(はたけ)ハこの世界(せかい)なり美種(よきたね)は是天国(これてんこく)の諸子(こども)なり稗子(からすむぎ)は悪魔(あくま)の子類(こどもら)なり
39 之(これ)をまく敵(あだ)は悪魔(あくま)なり収穫(かりいれ)は世(よ)の末(をはり)なり刈者(かるもの)は天(てん)の使等(つかひたち)なり
40 稗子(からすむぎ)の斂(あつめ)て火(ひ)に焚(やかる)る如(ごと)く此世(このよ)の末(をはり)に於(おい)ても此(かく)の如(ごと)くなるべし
41 人(ひと)の子(こ)その使者(つかひ)たちを遺(つかは)して其國(そのくに)の中(うち)より凡(すべ)て躓礙(つまづき)となる者(もの)また惡(あく)をなす人(ひと)を斂(あつめ)て
42 之(これ)を爐(ろ)の火(ひ)に投入(なげいる)べし其處(そこ)にて哀哭切齒(かなしみはがみ)すること有(あら)ん
43 此(この)とき義人(ただしきひと)は其父(そのちち)の國(くに)に於(おい)て日(ひ)の如(ごと)く輝(かがや)かん耳(みゝ)ありて聽(きこ)ゆる者(もの)は聽(きく)べし


44 また天國(てんこく)は畑(はたけ)に藏(かくれ)たる寶(たから)の如(ごと)し人(ひと)みいださば之(これ)を秘(かく)し喜(よろこ)び歸(かへ)り其所有(そのもちもの)を悉(ことゞゝ)く賣(うり)てその畑(はたけ)を買(かふ)なり


45 また天國(てんこく)は好眞珠(よきしんじゅ)を求(もとめ)んとする商人(あきびと)の如(ごと)し
46 一(ひとつ)の値(あたひ)たかき眞珠(しんじゅ)を見出(みいだ)さバその所有(もちもの)を盡(ことゞゝ)く賣(うり)て之(これ)を買(かふ)なり


47 また天國(てんこく)ハ海(うみ)に投(うち)て各様(さまゞゝ)の魚(うを)をとる網(あみ)の如(ごと)し