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明治元訳新約聖書(大正4年)/馬太傳福音書 (3)

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第十三章

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47 また天国(てんこく)ハ海(うみ)に投(うち)て各様(さまゞゝ)の魚(うを)をとる網(あみ)の如(ごと)し
48 既(すで)に盈(みつ)れバ岸(きし)に曳(ひき)あげ坐(すわり)てその嘉(よき)ものを器(うつは)にいれ惡(あしき)ものを棄(すつ)るなり
49 世(よ)の末(をはり)に於(おい)ても此(かく)の如(ごと)くならん天(てん)の使等(つかひら)いでゝ義者(ただしきもの)の中(うち)より惡者(あしきもの)を取(とり)わけ
50 之(これ)を爐(ろ)の火(ひ)に投入(なげいる)べし其處(そこ)にて哀哭切齒(かなしみはがみ)すること有(あら)ん


51 イエス彼等(かれら)に
[千六百七十]曰(いひ)けるは此事(このこと)をみな悟(さとり)しや彼(かれ)に曰(いひ)けるは主(しゅ)よ然(しかり)
52 イエス彼等(かれら)に曰(いひ)けるは然(され)バ天国(てんこく)について教(をしへ)られたる學者(がくしゃ)ハ新(あたら)しき物(もの)と舊(ふる)き物(もの)とを其庫(そのくら)より出(いだ)す家(いへ)の主(あるじ)の如(ごと)し


53 イエスこの譬(たとへ)を言畢(いひをはり)て此(ここ)を去(さり)ぬ
54 その故土(ふるさと)にいたり会堂(くわいだう)にて教(をしへ)しに人々奇(ひとゞゝあやし)み曰(いひ)けるハ此人(このひと)の智慧(ちえ)と異(ふしぎ)なる能(わざ)ハ何處(いづこ)より来(きた)るや
55 これ木匠(たくみ)の子(こ)にあらずや其母(そのはゝ)ハマリアその兄弟(きゃうだい)はヤコブ、ヨセ、シモン、ユダに非(あら)ずや
56 その妹等(いもうとたち)ハみな我儕(われら)と偕(とも)に在(ある)に非(あら)ずや然(しか)るに此人(このひと)の凡(すべ)て此等(これら)の事(こと)ハ何處(いづこ)より来(きたり)しや
57 遂(つひ)に厭(いとふ)て之(これ)を棄(すつ)イエス彼等(かれら)に曰(いひ)けるは預言者(よげんしゃ)はその故土(ふるさと)その家(いへ)の外(ほか)に於(おい)て尊(たふと)まれざることなし
58 彼等(かれら)が信(しん)ずることなきに由(より)て多(おほく)の異(ふしぎ)なる能(わざ)を此(こゝ)に行給(なしたま)ハざりき


第十四章

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[1] 其(その)ころ分封(わけもち)の君(きみ)ヘロデ、イエスの聲名(うはさ)を聞(きゝ)て
2 その僕(しもべ)に曰(いひ)けるは是(これ)バプテスマのヨハ子なり彼死(かれし)より甦(よみがへ)りたり故(ゆゑ)に異(ふしぎ)なる能(わざ)を行(おこな)ふなり
3 前(さき)にヘロデその兄弟(きゃうだい)ピリポの妻(つま)ヘロデヤの事(こと)に由(より)てヨハ子を捕(とら)へ縛(しば)りて獄(ひとや)に入(いれ)たり
4 此(こ)ハヨハ子、ヘロデに此婦(このをんな)を娶(めとる)のは宜(よろ)しからずと云(いひ)しに因(よる)
5 彼(かれ)ヨハ子を殺(ころ)さんと欲(おもへ)ど民(たみ)これを預言者(よげんしゃ)とするにより彼等(かれら)を懼(おそれ)たりしが
6 ヘロデ誕生(たんじゃう)の日(ひ)を祝(いは)える時(とき)ヘロデヤの女(むすめ)その座上(ざじゃう)にて舞(まひ)をなしヘロデを悦(よろこ)バせけれバ
7 何(いか)なる物(もの)にても求(もとめ)に任(まかせ)て予(あたへ)んとヘロデ之(これ)に誓(ちかひ)たり
8 女(むすめ)その母(はゝ)の勸(すゝめ)ありしに由(より)バプテスマのヨハ子の首(くび)を盆(ぼん)に載(のせ)て此(こゝ)に賜(たまは)れと曰(いふ)
9 王憂(わううれヘ)けれども既(すで)に誓(ちかひ)たると席(せき)に列(つらな)れる者(もの)の爲(ため)に予(あたふ)ることを命(めい)じ
10 即(すなは)ち人(ひと)を遣(つかは)し獄(ひとや)に於(おい)てヨハ子の首(くび)を斬(きら)せ
11 その首(くび)を盆(ぼん)に載(のせ)て女(むすめ)に予(あたへ)ければ女(むすめ)ハ之(これ)をその母(はゝ)に捧(さゝげ)たり
12 ヨハ子の弟子等(でしたち)きたりて屍(しかばね)を取(とり)これを葬(はうむ)り往(ゆき)てイエスに告(つぐ)
13 イエスこれを聞(きゝ)て人(ひと)をさけ舟(ふね)に登(のり)て其處(そこ)を去(さり)さびしき處(ところ)に往給(ゆきたま)ひしが衆人(ひとゞゝ)きゝて歩行(かち)にて彼(かれ)に從(したが)へり


14 イエス出(いで)て多(おほく)
[千六百七十一]の人(ひと)を見(み)て之(これ)を憫(あはれ)み其病(そのやめ)る者(もの)を醫(いや)せり
15 日(ひ)くるゝ時(とき)その弟子(でし)きたりて曰(いひ)けるハ此(こゝ)ハ寂寞(さびしき)ところにして時(とき)もハや遅(おそ)し諸邑(むらゝゝ)に往(ゆき)て自(みづか)ら食(しょく)を求(もとめ)させん爲(ため)に人々(ひとゞゝ)を去(さら)しめよ
16 イエス彼等(かれら)に曰(いひ)けるハ人々往(ひとゞゝゆか)ずとも可(よし)なんぢら之(これ)に食(しょく)を予(あたへ)よ
17 答(こたへ)けるハ我儕此(われらこゝ)にたゞ五(いつゝ)のパンと二(ふたつ)の魚(うを)あるのみ
18 イエス曰(いひ)けるハ其(それ)を此(こゝ)に携來(もちきた)れ
19 遂(つひ)に衆人(ひとゞゝ)に命(めい)じて草(くさ)の上(うへ)に坐(すわら)しめ五(いつゝ)のパンと二(ふたつ)の魚(うを)をとり天(てん)を仰(あふぎ)て謝(しゃ)しパンを擘(わり)て弟子(でし)に予(あた)ふ弟子(でし)これを衆人(ひとゞゝ)に予(あたへ)ぬ
20 みな食(くらひ)て飽(あき)その餘(あまり)たる屑(くづ)を拾(ひろひ)しに十二(じふに)の筐(かご)に盈(みち)たり
21 食(くらひ)し者(もの)は婦(をんな)と幼童(こども)の外(ほか)おほよそ五千人(ごせんにん)なりき


22 頓(やが)てイエス衆人(ひとゞゝ)を歸(かヘ)さんとして其弟子(そのでし)を強(しひ)て船(ふね)にのせ向(むかふ)の岸(きし)へ先(さき)に渡(わたら)しむ
23 斯(かく)て衆人(ひとゞゝ)を歸(かへ)しけれバ祈禱(いのり)せんとて密(ひそか)に山(やま)に上(のぼ)り日(ひ)くれて獨(ひとり)そこに在(いま)せり
24 舟(ふね)ハ海中(わだなか)に在(あり)て逆風(ぎゃくふう)の爲(ため)に浪(なみ)に漂(たゞよ)ハさる
25 夜(よ)の四時(よじ)ごろイエス海(うみ)の上(うへ)を歩(あゆみ)て之(これ)に至(いたり)しに
26 弟子(でし)その海(うみ)の上(うへ)を歩(あゆめ)るを見(み)て驚(おどろ)き此(こ)ハ變化(へんげ)の物(もの)ならんと曰(いひ)て懼(おそ)れ叫(さけび)たり
27 イエス頓(やが)て彼等(かれら)に曰(いひ)けるハ心安(こゝろやす)かれ我(われ)なり懼(おそ)るゝ勿(なか)れ
28 ペテロ答(こたへ)て曰(いひ)けるは主(しゅ)よ若(も)し爾(なんぢ)ならバ我(われ)に命(めい)じ水(みづ)を履(ふみ)て爾(なんぢ)の所(もと)に至(いたら)しめよ
29 來(きたれ)と曰給(いひたま)ひけれバペテロ舟(ふね)より下(おり)てイエスの所(もと)に至(いたら)んとて浪(なみ)の上(うへ)を歩(あゆみ)たれど
30 風(かぜ)の烈(はげし)きを見(み)て懼(おそ)れ沈(しづみ)かゝりけれバ主(しゅ)よ我(われ)を救(たすけ)たまへと曰(いふ)
31 イエス頓(やが)て手(て)を伸(のべ)これを執(とらへ)て曰(いひ)けるハ信仰(しんかう)うすき者(もの)よ何(なん)ぞ疑(うたが)ふや
32 偕(とも)に舟(ふね)に登(のり)けれバ風(かぜ)しづまりぬ
33 舟(ふね)に居(おり)し者(もの)ちかよりて彼(かれ)を拝(はい)し曰(いひ)けるハ誠(まこと)に爾(なんぢ)ハ神(かみ)の子(こ)なり


34 遂(つひ)に渡(わたり)てゲネサレの地(ち)に到(いたり)しかバ
35 其處(そこ)の人々(ひとゞゝ)イエスを識(しり)て遍(あまね)く四方(しほう)に人(ひと)を遺(つかは)し凡(すべ)ての病(やまひ)の者(もの)を携(たづさ)へ來(きた)らしむ
36 只(たゞ)その衣(ころも)の裾(すそ)に捫(さは)らんことをイエスに願(ねが)へり捫(さはり)し者(もの)は即(すなは)ちみな愈(いや)されたり

第十五章

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[1] 時(とき)にヱルサレムの學者(がくしゃ)とパリサイの人(ひと)イエスに來(きたり)て曰(いひ)けるハ
2 爾(なんぢ)の弟子古(でしいにしへ)の人(ひと)の
[千六百七十二] 遺傳(つたへ)を犯(をかす)ハ何故(なにゆゑ)ぞ蓋食(そはしょく)する時(とき)に其手(そのて)を洗(あらは)ざれバ也(なり)
3 答(こたへ)て彼等(かれら)に曰(いひ)けるハ爾曹(なんぢら)ハ亦(また)なんぢらの遺傳(つたへ)によりて神(かみ)の誡(いましめ)を犯(をかす)ハ何故(なにゆゑ)ぞ
4 それ神(かみ)いましめて爾(なんぢ)の父母(ちちはゝ)を敬(うやま)へ又父母(またちちはは)を詈(ののし)る者(もの)ハ殺(ころ)さるべしと宣給(のたま)へり
5 然(しか)るに爾曹(なんぢら)は曰(いひ)て凡(すべ)て人父母(ひとちちはゝ)に對(むかひ)なんぢを養(やしな)ふ可(べき)ものは禮物(そなへもの)なりと云(いわ)バ
6 その父母(ちちはは)を敬(うやま)ハずとも可(よし)とす斯(かく)て爾曹遺傳(なんぢらつたへ)により神(かみ)の誡(いましめ)を廢(むなし)くせり
7 偽善者(ぎぜんしゃ)よイザヤハ能(よく)なんぢらに就(つい)て預言(よげん)し
8 此民(このたみ)ハ口(くち)にて我(われ)に近(ちかづ)き唇(くちびる)にて我(われ)を敬(うやま)へども其心(そのこゝろ)はハ我(われ)に遠(とほざ)かり
9 人(ひと)の誡(いましめ)を教(をしへ)となして從(いたづ)らに我(われ)を拝(はい)すと云(いへ)り
10 イエス人々(ひとゞゝ)を召(よび)て彼等(かれら)に曰(いひ)けるハ聴(きゝ)て悟(さと)れ
11 口(くち)に入(い)るものハ人(ひと)を汚(けが)さず口(くち)より出(いづ)るものハ是人(これひと)を汚(けが)すなり
12 弟子(でし)きたりてイエスにい曰(いひ)けるハパリサイの人(ひと)この言(ことば)を聞(きゝ)て厭棄(いとすつ)るを爾知(なんぢしる)か
13 答(こたへ)て曰(いひ)けるハ我(わ)が天(てん)の父(ちち)の植(うゑ)ざる者(もの)ハみな抜(ぬか)るべし
14 彼等(かれら)を棄(すて)おけ瞽者(めしひ)の相(てびき)する瞽者(めしひ)なり若(もし)めしひのもの瞽者(めしひ)を相(てびき)せバ二人(ふたり)とも溝(みぞ)に落(おつ)べし
15 ペテロ、イエスに答(こたへ)て曰(いひ)けるハ此譬(このたとえ)を我儕(われら)に解(とき)たまへ
16 イエス曰(いひ)けるハ爾曹(なんぢら)も未(いま)だ悟(さとら)ざる乎(か)
17 凡(すべ)て口(くち)に入(いる)るものハ腹(はら)を通(とほり)て厠(かはや)に落(おつ)るを未(いま)だ知(しら)ざるか
18 口(くち)より出(いづ)るものハ心(こゝろ)より出(いづ)これ人(ひと)を汚(けが)すもの也(なり)
19 蓋心(そはこゝろ)より出(いづ)る所(ところ)の惡念(あくねん)、凶殺(きょうさつ)、姦淫(かんいん)、苟合(こうがう)
20 此等(これら)ハ人(ひと)を汚(けがす)ものなり然(され)ども手(て)を洗(あらは)ずして食(くら)ふハ人(ひと)を汚(けが)さず
21 イエス此(こゝ)を去(さり)てツロとシドンの地(ち)に往(ゆき)けるに
22 其地(そのち)に往(すめ)るカナンの婦(をんな)いでゝ呼(よば)ハり曰(いひ)けるハ主(しゅ)よダビデの裔(こ)よ我(われ)を憫(あはれ)み給(たま)へ我(わが)むすめ鬼(おに)に憑(つか)れて甚(いた)く苦(くるし)めり
23 イエス一言(ひとこと)も彼(かれ)に答(こたへ)ざりしかバ其弟子(そのでし)きたりて請(こふ)て曰(いひ)けるハ我儕(われら)の後(あと)より呼(よば)ハるが故(ゆゑ)に彼(かれ)を去(さら)せ給(たま)へ
24 答(こたへ)て曰(いひ)けるハイスラエルの迷(まよ)へる羊(ひつじ)の外(ほか)に我(われ)ハ遺(つかは)されず
25 婦(をんな)きたりて拜(はい)して曰(いひ)けるハ主(しゅ)よ我(われ)を助(たすけ)たまへ
26 答(こたへ)けるハ兒女(こども)のパンを取(とり)て犬(いぬ)に投與(なげあた)ふるハ宜(よろし)からず

27
[千六百七十三] 婦(をんな)いひけるハ主(しゅ)よ然(しかり)されども犬(いぬ)もその主人(しゅじん)の膳(ぜん)より落(おつ)る屑(くづ)を食(くらふ)なり
28 遂(つひ)にイエス答(こたへ)て曰(いひ)けるハ婦(をんな)よ爾(なんぢ)の信仰(しんかう)ハ大(おほい)なり願(ねがひ)の如(ごと)く爾(なんぢ)に成(なる)べし此時(このとき)より其女(そのむすめ)いえたり


29 イエス此(こゝ)を去(さり)ガリラヤに海邊(うみべ)にゆき山(やま)に登(のぼ)りて坐(ざ)せり
30 多(おほく)の人々跛者(ひとゞゝあしなへ)、瞽者(めしひ)、瘖者(おふし)、殘缺者(かたは)および各様(さまゞゝ)の疾病(やまひ)ある者(もの)を伴(ともな)ひきたりイエスの足元(あしもと)に置(おき)ければバ即(すなは)ち之(これ)を醫(いや)しぬ
31 是(こゝ)に於(おい)て瘖者(おふし)ハものいひ殘疾(かたは)ハいえ跛者(あしなへ)ハあゆみ瞽者(めしひ)は見(みえ)たるを人々見(ひとゞゝみ)て奇(あやし)みイスラエルの神(かみ)を榮(あがめ)たり


32 イエスその弟子(でし)を呼(よび)て曰(いひ)けるハ我(われ)この衆人(ひとゞゝ)を憫(あはれ)む彼等(かれら)われと偕(とも)に居(おる)こと三日(みっか)にして食(くら)ふものなし飢(うゑ)させて去(さら)しむることを欲(このま)ず恐(おそら)くハ途間(みち)にて腦(なやま)ん
33 その弟子(でし)かれに曰(いひ)けるハ野(の)にて此(この)おほくの人(ひと)に飽(あか)するほどのパンを何處(いづこ)より得(え)んや
34 イエス彼等(かれら)に曰(いひ)けるハパン幾何(いくつ)あるや答(こたへ)けるハ七(なゝつ)と些少(すこし)の魚(うを)あり
35 七(なな)つのパンを取(とり)て謝(しゃ)し之(これ)を擘(わり)て其弟子(そのでし)に予(あたへ)しかバ弟子(でし)これを人々(ひとゞゝ)に予(あた)ふ
36 食(くらひ)てみな飽(あき)たり餘(あまり)の屑(くづ)を拾(ひろひ)しに七(なな)つの籃(かご)に盈(みて)り
38 之(これ)を食(くらへ)るもの婦(をんな)と孩子(こども)の外(ほか)に四千人(しせんにん)ありき
39 イエス人々(ひとゞゝ)を去(さら)しめ舟(ふね)に登(のり)てマケダラの境(さかひ)に至(いた)れり


第十六章

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[1] パリサイとサドカイの人(ひと)きたりてイエスを試(こゝろ)みんとて天(てん)の休徴(しるし)を我儕(われら)に見(み)せよと曰(いひ)けれバ
2 彼等(かれら)に答(こたへ)けるハ爾曹暮(なんぢらゆふべ)にハ夕紅(ゆうやけ)に由(より)て晴(はれ)ならんと言(いひ)
3 晨(あした)にハ朝紅(あさやけ)また曇(くもり)に由(より)て今日(けふ)ハ雨(あめ)ならんといふ偽善者(ぎぜんしゃ)よ空(そら)の景色(けしき)を別(わかつ)ことを知(しり)て時(とき)の休徴(しるし)を別(わか)ち能(あた)ハざる乎(か)
4 姦惡(かんあく)なる世(よ)ハ休徴(しるし)を求(もとむ)るとも預言者(よげんしゃ)ヨナの休徴(しるし)のほか休徴(しるし)を予(あたへ)られじ遂(つひ)に彼等(かれら)を離(はな)れて去(さり)ぬ


5 その弟子(でし)むかふの岸(きし)に到(いたり)しにパンを携(たづさ)ふることを忘(わすれ)たり
6 イエス彼等(かれら)に曰(いひ)けるハ戒心(こゝろ)してパリサイとサドカイの人(ひと)の麪酵(ぱんだね)を愼(つゝし)めよ
7 弟子(でし)たがひに論(ろん)じて曰(いひ)けるハ是(これ)パンを携(たづさ)へざりし故(ゆゑ)ならん
8
[千六百七十四] イエスこれを知(しり)て曰(いひ)けるハ信仰(しんかう)うすき者(もの)よ何(なん)ぞ互(たがひ)にパンを携(たづさ)へざりしことを論(ろん)ずる乎(や)
9 未(いま)だ悟(さと)らざるか五千人(ごせんにん)に五(いつゝ)のパンを予(あたへ)しとき幾籃(いくかご)ひろひし乎(や)
10 また四千人(しせんにん)に七(なゝつ)のパンを予(あたへ)しとき幾籃(いくかご)ひろひしや爾曹(なんぢら)これを記(おぼえ)ざるか
11 パリサイとサドカイの人(ひと)の麪酵(ぱんだね)を愼(つゝし)めとハパンにつきて言(いへ)るに非(あら)ざるを何(なん)ぞ悟(さと)らざる
12 是(こゝ)に於(おい)て弟子(でし)その麪酵(ぱんだね)にハあらでパリサイとサドカイの人(ひと)の教(をしへ)を愼(つゝし)めと言(いへ)るなるを悟(さと)れり


13 イエス、カイザリヤ、ピリピの方(かた)に到(いたり)しとき其弟子(そのでし)に問(とふ)て曰(いひ)けるは人々(ひとゞゝ)は人(ひと)の子(こ)を誰(たれ)と言(いふ)や
14 彼等曰(かれらいひ)けるハ或人(あるひと)ハバプテスマのヨハ子或人(あるひと)ハエリヤ或人(あるひと)ハエレミヤまた預言者(よげんしゃ)の一人(ひとり)なりと言(いへ)り
15 彼等(かれら)に曰(いひ)けるハ爾曹(なんぢら)ハ我(われ)を言(いひ)て誰(たれ)とする乎(か)
16 シモン、ペテロ答(こたへ)けるハ爾(なんぢ)ハキリスト活神(いけるかみ)の子(こ)なり
17 イエス答(こたへ)て彼(かれ)に曰(いひ)けるハヨナの子(こ)シモン爾(なんぢ)は福(さいはひ)なり蓋血肉(そはけつにく)なんぢに示(しめ)せるに非(あら)ず天(てん)に在(いま)す吾父(わがちゝ)なり
18 我(われ)また爾(なんぢ)に告(つげ)ん爾(なんぢ)はペテロなり我(わ)が教會(けうくわい)をこの磐(いは)の上(うへ)に建(たつ)べし陰府(よみ)の門(もん)ハ之(これ)に勝(かつ)べからず
19 又(また)われ天國(てんこく)の鍵(かぎ)を爾(なんぢ)に予(あた)へん爾(なんぢ)が地(ち)に於(おい)て繋(つなぐ)ことは天(てん)に於(おい)ても繋(つなぎ)なんぢが地(ち)に於(おい)て釋(とく)ことは天(てん)に於(おい)ても釋(とく)べし
20 遂(つひ)に其弟子(そのでし)を戒(いまし)めけるは我(われ)をキリストと人(ひと)に告(つぐ)ること勿(なか)れ


21 此時(このとき)よりイエスその弟子(でし)に己(おのれ)のヱルサレムに往(ゆき)て長老祭司(としよりさいし)の長學者等(をさがくしゃら)より多(おほく)の苦(くるし)みを受(うけ)かつ殺(ころ)され第三日目(みっかめ)に甦(よみがへ)る等(など)なすべき事(こと)を示(しめ)し始(はじ)む
22 ペテロ、イエスを援(ひき)とめて主(しゅ)よ宜(よか)らず此事(このこと)なんぢに来(きた)るまじと曰(いひ)けれバ
23 イエス反顧(ふりかへり)てペテロに曰(いひ)たまいけるはサタンよ我後(わがうしろ)に退(しりぞ)け爾(なんぢ)ハ我(われ)に礙(つまづ)く者(もの)なり夫(それ)なんぢらハ神(かみ)の事(こと)を思(おも)はず人(ひと)の事(こと)を思(おも)へり
24 此時(このとき)よりイエス其弟子(そのでし)に曰(いひ)けるハ若(もし)われに従(した)がハんと欲(おも)ふ者(もの)ハ己(おのれ)を棄其十字架(すてそのじふじか)を負(おひ)て我(われ)に從(したが)へ
25 蓋生命(そはいのち)を保全(まったう)せんとする者(もの)ハ之(これ)を失(うしな)ひ我(わが)ために其生命(そのいのち)を失(うしな)ふ者(もの)ハ之(これ)を得(う)べけ
[千六百七十五]れバ也(なり)
26 若人全世界(もしひとぜんせかい)を得(うる)とも其生命(そのせいめい)を失(うしな)ハば何(なん)の益(えき)あらん乎(や)また人何(ひとなに)を以(も)て其生命(そのいのち)に易(かへ)んや
27 それ人(ひと)の子(こ)ハ父(ちち)の栄光(えいくわう)を以(も)てその使等(つかひたち)と偕(とも)に來(きた)らん其時各(そのときおのゝゝ)の行(おこなひ)に由(より)て報(むく)ゆべし
28 誠(まこと)に爾曹(なんぢら)に告(つげ)ん人(ひと)の子(こ)その國(くに)を以(も)て来(きた)るを見(みる)までハ此(こゝ)に立(たつ)ものの中(うち)に死(しな)ざる者(もの)あるべし


第十七章

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[1] 六日(むいか)の後(のち)イエス、ペテロ、ヤコブその兄弟(きゃうだい)ヨハ子を伴(ともな)ひ人(ひと)を避(さけ)て高山(たかきやま)に登(のぼ)り給(たまひ)しが
2 彼等(かれら)の前(まへ)にて其容貌(そのすがた)かハり其面日(そのかほひ)の如(ごと)く輝(かゞや)き其衣(そのころも)ハ白(しろ)く光(ひか)れり
3 モーセとエリヤ現(あらは)れてイエスと偕(とも)に語(かたり)ぬ
4 ペテロ答(こたへ)てイエスに曰(いひ)けるは主(しゅ)よ我儕(われら)こゝに居(をる)ハ善(よし)もし尊旨(みこゝろ)に適(かな)ゝゞ我儕(われら)に三(みつ)の廬(いほり)を建(つくら)せたまへ一(ひとつ)ハ主(しゅ)のため一(ひとつ)はモーセのため一(ひとつ)はエリヤの爲(ため)にせん