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明治元訳新約聖書(大正4年)/馬太傳福音書 (3)

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第十三章

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47 また天国てんこくうみうち各様さまゞゝうををとるあみごと
48 すでみつれバきしひきあげすわりてそのよきものをうつはにいれあしきものをすつるなり
49 をはりおいてもかくごとくならんてん使等つかひらいでゝ義者ただしきものうちより惡者あしきものとりわけ
50 これ投入なげいるべし其處そこにて哀哭切齒かなしみはがみすることあら


51 イエス彼等かれら
[千六百七十]いひけるは此事このことをみなさとりしやかれいひけるはしゅしかり
52 イエス彼等かれらいひけるはされ天国てんこくについてをしへられたる學者がくしゃあたらしきものふるものとを其庫そのくらよりいだいへあるじごと


53 イエスこのたとへ言畢いひをはりここさり
54 その故土ふるさとにいたり会堂くわいだうにてをしへしに人々奇ひとゞゝあやしいひけるハ此人このひと智慧ちえふしぎなるわざ何處いづこよりきたるや
55 これ木匠たくみにあらずや其母そのはゝマリアその兄弟きゃうだいヤコブヨセシモンユダあらずや
56 その妹等いもうとたちハみな我儕われらともあるあらずやしかるに此人このひとすべ此等これらこと何處いづこよりきたりしや
57 つひいとふこれすつイエス彼等かれらいひけるは預言者よげんしゃはその故土ふるさとそのいへほかおいたふとまれざることなし
58 彼等かれらしんずることなきによりおほくふしぎなるわざこゝ行給なしたまハざりき


第十四章

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[1] そのころ分封わけもちきみヘロデイエス聲名うはさきゝ
2 そのしもべいひけるはこれバプテスマのヨハ子なり彼死かれしよりよみがへりたりゆゑふしぎなるわざおこなふなり
3 さきヘロデその兄弟きゃうだいピリポつまヘロデヤことよりヨハ子とらしばりてひとやいれたり
4 ヨハ子ヘロデ此婦このをんなめとるのはよろしからずといひしによる
5 かれヨハ子ころさんとおもへたみこれを預言者よげんしゃとするにより彼等かれらおそれたりしが
6 ヘロデ誕生たんじゃういはえるときヘロデヤむすめその座上ざじゃうにてまひをなしヘロデよろこバせけれバ
7 いかなるものにてももとめまかせあたへんとヘロデこれちかひたり
8 むすめそのはゝすゝめありしによりバプテスマのヨハ子くびぼんのせこゝたまはれといふ
9 王憂わううれヘけれどもすでちかひたるとせきつらなれるものためあたふることをめい
10 すなはひとつかはひとやおいヨハ子くびきら
11 そのくびぼんのせむすめあたへければむすめこれをそのはゝさゝげたり
12 ヨハ子弟子等でしたちきたりてしかばねとりこれをはうむゆきイエスつぐ
13 イエスこれをきゝひとをさけふねのり其處そこさりさびしきところ往給ゆきたまひしが衆人ひとゞゝきゝて歩行かちにてかれしたがへり


14 イエスいでおほく
[千六百七十一]のひとこれあはれ其病そのやめものいやせり
15 くるゝときその弟子でしきたりていひけるハこゝ寂寞さびしきところにしてときもハやおそ諸邑むらゝゝゆきみづかしょくもとめさせんため人々ひとゞゝさらしめよ
16 イエス彼等かれらいひけるハ人々往ひとゞゝゆかずともよしなんぢらこれしょくあたへ
17 こたへけるハ我儕此われらこゝにたゞいつゝのパンとふたつうをあるのみ
18 イエスいひけるハそれこゝ携來もちきた
19 つひ衆人ひとゞゝめいじてくさうへすわらしめいつゝのパンとふたつうををとりてんあふぎしゃしパンをわり弟子でしあた弟子でしこれを衆人ひとゞゝあたへ
20 みなくらひあきそのあまりたるくづひろひしに十二じふにかごみちたり
21 くらひものをんな幼童こどもほかおほよそ五千人ごせんにんなりき


22 やがイエス衆人ひとゞゝかヘさんとして其弟子そのでししひふねにのせむかふきしさきわたらしむ
23 かく衆人ひとゞゝかへしけれバ祈禱いのりせんとてひそかやまのぼくれてひとりそこにいませり
24 ふね海中わだなかあり逆風ぎゃくふうためなみたゞよハさる
25 四時よじごろイエスうみうへあゆみこれいたりしに
26 弟子でしそのうみうへあゆめるをおどろ變化へんげものならんといひおそさけびたり
27 イエスやが彼等かれらいひけるハ心安こゝろやすかれわれなりおそるゝなか
28 ペテロこたへいひけるはしゅなんぢならバわれめいみづふみなんぢもといたらしめよ
29 きたれ曰給いひたまひけれバペテロふねよりおりイエスもといたらんとてなみうへあゆみたれど
30 かぜはげしきをおそしづみかゝりけれバしゅわれたすけたまへといふ
31 イエスやがのべこれをとらへいひけるハ信仰しんかううすきものなんうたがふや
32 ともふねのりけれバかぜしづまりぬ
33 ふねおりものちかよりてかれはいいひけるハまことなんぢかみなり


34 つひわたりゲネサレいたりしかバ
35 其處そこ人々ひとゞゝイエスしりあまね四方しほうひとつかはすべてのやまひものたづさきたらしむ
36 たゞそのころもすそさはらんことをイエスねがへりさはりものすなはちみないやされたり

第十五章

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[1] ときヱルサレム學者がくしゃとパリサイのひとイエスきたりいひけるハ
2 なんぢ弟子古でしいにしへひと
[千六百七十二] 遺傳つたへをかす何故なにゆゑ蓋食そはしょくするとき其手そのてあらはざれバなり
3 こたへ彼等かれらいひけるハ爾曹なんぢらまたなんぢらの遺傳つたへによりてかみいましめをかす何故なにゆゑ
4 それかみいましめてなんぢ父母ちちはゝうやま又父母またちちははののしものころさるべしと宣給のたまへり
5 しかるに爾曹なんぢらいひすべ人父母ひとちちはゝむかひなんぢをやしなべきものは禮物そなへものなりといわ
6 その父母ちちははうやまハずともよしとすかく爾曹遺傳なんぢらつたへによりかみいましめむなしくせり
7 偽善者ぎぜんしゃイザヤよくなんぢらについ預言よげん
8 此民このたみくちにてわれちかづくちびるにてわれうやまへども其心そのこゝろはハわれとほざかり
9 ひといましめをしへとなしていたづらにわれはいすといへ
10 イエス人々ひとゞゝよび彼等かれらいひけるハきゝさと
11 くちるものハひとけがさずくちよりいづるものハ是人これひとけがすなり
12 弟子でしきたりてイエスにいいひけるハパリサイのひとこのことばきゝ厭棄いとすつるを爾知なんぢしる
13 こたへいひけるハてんちちうゑざるものハみなぬかるべし
14 彼等かれらすておけ瞽者めしひてびきする瞽者めしひなりもしめしひのもの瞽者めしひてびきせバ二人ふたりともみぞおつべし
15 ペテロイエスこたへいひけるハ此譬このたとえ我儕われらときたまへ
16 イエスいひけるハ爾曹なんぢらいまさとらざる
17 すべくちいるるものハはらとほりかはやおつるをいましらざるか
18 くちよりいづるものハこゝろよりいづこれひとけがすものなり
19 蓋心そはこゝろよりいづところ惡念あくねん凶殺きょうさつ姦淫かんいん苟合こうがう
20 此等これらひとけがすものなりされどもあらはずしてくらふハひとけがさず
21 イエスこゝさりツロシドンゆきけるに
22 其地そのちすめるカナンのをんないでゝよばハりいひけるハしゅダビデわれあはれたまわがむすめおにつかれていたくるしめり
23 イエス一言ひとことかれこたへざりしかバ其弟子そのでしきたりてこふいひけるハ我儕われらあとよりよばハるがゆゑかれさらたま
24 こたへいひけるハイスラエルまよへるひつじほかわれつかはされず
25 をんなきたりてはいしていひけるハしゅわれたすけたまへ
26 こたへけるハ兒女こどものパンをとりいぬ投與なげあたふるハよろしからず

27
[千六百七十三] をんないひけるハしゅしかりされどもいぬもその主人しゅじんぜんよりおつくづくらふなり
28 つひイエスこたへいひけるハをんななんぢ信仰しんかうおほいなりねがひごとなんぢなるべし此時このときより其女そのむすめいえたり


29 イエスこゝさりガリラヤ海邊うみべにゆきやまのぼりてせり
30 おほく人々跛者ひとゞゝあしなへ瞽者めしひ瘖者おふし殘缺者かたはおよび各様さまゞゝ疾病やまひあるものともなひきたりイエス足元あしもとおきければバすなはこれいやしぬ
31 こゝおい瘖者おふしハものいひ殘疾かたはハいえ跛者あしなへハあゆみ瞽者めしひみえたるを人々見ひとゞゝみあやしイスラエルかみあがめたり


32 イエスその弟子でしよびいひけるハわれこの衆人ひとゞゝあはれ彼等かれらわれとともおること三日みっかにしてくらふものなしうゑさせてさらしむることをこのまおそらくハ途間みちにてなやま
33 その弟子でしかれにいひけるハにてこのおほくのひとあかするほどのパンを何處いづこよりんや
34 イエス彼等かれらいひけるハパン幾何いくつあるやこたへけるハなゝつ些少すこしうをあり
35 ななつのパンをとりしゃこれわり其弟子そのでしあたへしかバ弟子でしこれを人々ひとゞゝあた
36 くらひてみなあきたりあまりくづひろひしにななつのかごみて
38 これくらへるものをんな孩子こどもほか四千人しせんにんありき
39 イエス人々ひとゞゝさらしめふねのりマケダラさかひいたれり


第十六章

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[1] パリサイとサドカイのひときたりてイエスこゝろみんとててん休徴しるし我儕われらせよといひけれバ
2 彼等かれらこたへけるハ爾曹暮なんぢらゆふべにハ夕紅ゆうやけよりはれならんといひ
3 あしたにハ朝紅あさやけまたくもりより今日けふあめならんといふ偽善者ぎぜんしゃそら景色けしきわかつことをしりとき休徴しるしわかあたハざる
4 姦惡かんあくなる休徴しるしもとむるとも預言者よげんしゃヨナ休徴しるしのほか休徴しるしあたへられじつひ彼等かれらはなれてさり


5 その弟子でしむかふのきしいたりしにパンをたづさふることをわすれたり
6 イエス彼等かれらいひけるハ戒心こゝろしてパリサイとサドカイのひと麪酵ぱんだねつゝしめよ
7 弟子でしたがひにろんじていひけるハこれパンをたづさへざりしゆゑならん
8
[千六百七十四] イエスこれをしりいひけるハ信仰しんかううすきものなんたがひにパンをたづさへざりしことをろんずる
9 いまさとらざるか五千人ごせんにんいつゝのパンをあたへしとき幾籃いくかごひろひし
10 また四千人しせんにんなゝつのパンをあたへしとき幾籃いくかごひろひしや爾曹なんぢらこれをおぼえざるか
11 パリサイとサドカイのひと麪酵ぱんだねつゝしめとハパンにつきていへるにあらざるをなんさとらざる
12 こゝおい弟子でしその麪酵ぱんだねにハあらでパリサイとサドカイのひとをしへつゝしめといへるなるをさとれり


13 イエスカイザリヤ、ピリピかたいたりしとき其弟子そのでしとふいひけるは人々ひとゞゝひとたれいふ
14 彼等曰かれらいひけるハ或人あるひとハバプテスマのヨハ子或人あるひとエリヤ或人あるひとエレミヤまた預言者よげんしゃ一人ひとりなりといへ
15 彼等かれらいひけるハ爾曹なんぢらわれいひたれとする
16 シモン、ペテロこたへけるハなんぢキリスト活神いけるかみなり
17 イエスこたへかれいひけるハヨナシモンなんぢさいはひなり蓋血肉そはけつにくなんぢにしめせるにあらてんいま吾父わがちゝなり
18 われまたなんぢつげなんぢペテロなり教會けうくわいをこのいはうへたつべし陰府よみもんこれかつべからず
19 またわれ天國てんこくかぎなんぢあたへんなんぢおいつなぐことはてんおいてもつなぎなんぢがおいとくことはてんおいてもとくべし
20 つひ其弟子そのでしいましめけるはわれキリストひとつぐることなか


21 此時このときよりイエスその弟子でしおのれヱルサレムゆき長老祭司としよりさいし長學者等をさがくしゃらよりおほくくるしみをうけかつころされ第三日目みっかめよみがへなどなすべきことしめはじ
22 ペテロイエスひきとめてしゅよからず此事このことなんぢにきたるまじといひけれバ
23 イエス反顧ふりかへりペテロいひたまいけるはサタン我後わがうしろ退しりぞなんぢわれつまづものなりそれなんぢらハかみことおもはずひとことおもへり
24 此時このときよりイエス其弟子そのでしいひけるハもしわれにしたがハんとおもものおのれ棄其十字架すてそのじふじかおひわれしたが
25 蓋生命そはいのち保全まったうせんとするものこれうしなわがために其生命そのいのちうしなものこれべけ
[千六百七十五]れバなり
26 若人全世界もしひとぜんせかいうるとも其生命そのせいめいうしなハばなんえきあらんまた人何ひとなに其生命そのいのちかへんや
27 それひとちち栄光えいくわうてその使等つかひたちともきたらん其時各そのときおのゝゝおこなひよりむくゆべし
28 まこと爾曹なんぢらつげひとそのくにきたるをみるまでハこゝたつもののうちしなざるものあるべし


第十七章

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[1] 六日むいかのちイエスペテロヤコブその兄弟きゃうだいヨハ子ともなひとさけ高山たかきやまのぼたまひしが
2 彼等かれらまへにて其容貌そのすがたかハり其面日そのかほひごとかゞや其衣そのころもしろひかれり
3 モーセエリヤあらはれてイエスともかたり
4 ペテロこたへイエスいひけるはしゅ我儕われらこゝにをるよしもし尊旨みこゝろかなゝゞ我儕われらみついほりつくらせたまへひとつしゅのためひとつモーセのためひとつエリヤためにせん