明治元訳新約聖書(大正4年)/馬太傳福音書(2)

提供:Wikisource
  • : この文書ではルビが使用されています。ここでは「単語ルビ」の形で再現しています。一部の古いブラウザでは、ルビが正しく見えない場合があります。

第十九章[編集]

…………………………
21 イエスかれいひけるハまったからんことおもハゞゆきなんぢ所 有もちものうり貧 者まづしきものほどこさすれバてんおいたからあらんしかしてきたわれしたが
22 少者わかきものこのことばきゝうれさりかれ産業さんげふおほひなりけれバなり


23 イエスその弟子でしいひけるハまこと爾曹なんぢらつげ富 者とめるもの天國てんこくいることかた
24 また爾曹なんぢらつげ富 者とめるものかみくにいるよりハ駱駝らくだはりあな穿とほるハかへっやす
25 弟子之でしこれきゝいたおどろいひけるハさらたれすくひうくべき
26 イエス彼等かれらいひけるハ是人これひとにハあたハざるところなりされかみにハあたハざるところなし


27 このときペテロこたへイエスいひけるハ我儕一切われらいっさいすてなんぢしたがへりされなにべき
28 イエス彼等かれらいひけるハわれまことに爾曹なんぢらつげわれしたがへる爾曹なんぢら
[千六百八十] あらたまりひと子榮光こえいくわうくらゐするときなんぢらも十二じふにくらゐしてイスラエル十二じふに支派わかれさばくべし
29 すべ我名わがなため家宅いへあるひハ兄弟きゃうだいあるひハ姉妹しまいあるひハちゝあるひハはゝあるひハつまあるひハあるひハ田疇たはたすつもの百倍ひゃくばいうけかつかぎりなきいのちつが
30 おほくさきなるものあとになりあとなるものさきになるべし


第二十章[編集]

それ天國てんこくあさはやくいで葡萄園ぶだうばたけ工 人はたらくものやと主人あるじごと
2 工 人はたらくものにハ一日いちにち銀一枚あたへんと約束やくそくをなし彼等かれら葡萄園ぶだうばたけつかはせり
3 また九時くじごろいでちまたむなしたてもの
4 爾曹なんぢら葡萄園ぶどうばたけにゆけ相當さうたうあたひあたへんと彼等かれらいひけれバすなはゆけ
5 また十二時じふにじ三時さんじごろいでまへごとなせ
6 五時ごじごろいでまたほかのたてものあひいひけるハなにゆゑ終日ひねもすこゝにむなしたつ
7 これこたへいひけるハ我儕われらやとものなきによりてなり
8 日暮ひくるるとき葡萄園ぶどうばたけ主人あるじその家宰いへつかさいひけるハ勞力はたらきたる者等ものどもよびのちやとへる者等ものどもよびのちやとへるものはじめとしさきものにまであたひはらへよ
9 五時ごじごろにやとハれしものどもきたりて銀一枚ぎんいちまいづゝをうけたり
10 さきものどもきたりて我儕われらおほうくるならんとおもひしに亦銀一枚またぎんいちまいづゝをうけたり
11 これをうけ主人あるじうらみつぶやきけるハ
12 この後至者のちのもの勞力はたらきたるハ一時いちじバかりなるに終日ひねもすくるしみをおひあつさにあへ我儕われらひとしくこれをなせり
13 主人あるじその一人ひとりこたへいひけるハともわれなんぢに不義ふぎをせずなんぢ銀一枚ぎんいちまい約束やくそくをなしたるにあらずや
14 なんぢのものをとりゆけわれまたこの後至者のちのものにもなんぢごとあたふべし
15 我物わがものわがおもふごとなすよからずわがよきよりなんぢあしき
16 かくごとあとものさきさきものあとになるべしそれよバるゝものおほしといへどえらばるゝものすくなし


17 イエスエルサレムのぼるとき
[千六百八十一] 途間みちにてひとはな十二弟子じふにでしともなひて彼等かれらいひけるハ
18 我儕われらエルサレムのぼひと祭司さいしをさ學者等がくしゃたちわたされん彼等かれらこれを死罪しざいさだ
19 また凌辱鞭なぶりむちう十字架じふじかつけため異邦人いはうじんわたすべし又第三日またみっかめよみがへるべし


20 其時そのときゼベダイ子等こたちはゝそのともイエスきたはいしてかれもとむることありけれバ
21 これいひけるハなにねがふかイエスいひけるハ此二人このふたり我子わがこなんぢくにおい一人ひとりなんぢ右一人みぎひとりなんぢひだりすわることをめいぜよ
22 イエスこたへいひけるハ爾曹なんぢらねがふところをしら爾曹なんぢらのまんとするさかづきをのみまたわがうけんとするバプテスマを受得うけうるや彼等かれらいひけるハよくすべし
23 イエス彼等かれらいひけるハまこと爾曹なんぢらさかづきのみまたがうくるバプテスマをうくべしされ右左みぎひだりすわることハあたふべきにあらたゞわがちゝそなへられたるものあたへらるべし
24 十人じふにん弟子でしこれをきゝ二人ふたり兄弟きゃうだいいきどほれり
25 イエス彼等かれらよびいひけるハ異邦いはう領主りゃうしゅハそのたみつかさどり大 人おほいなるものどもハ彼等かれらうへけんとるこれ爾曹なんぢらしるところなり
26 され爾曹なんぢらうちにてハしかすべからず爾曹なんぢらのうちおほいならんとおももの爾曹なんぢらつかはるゝものとなるべし
27 また爾曹なんぢらのうちかしらたらんとおももの爾曹なんぢらしもべとなるべし
28 かくごとひときたるもひとつかためにハあらかえっひとつかハれまたおほくのひとかはり生命いのちあたへそのあがなひとならんためなり


29 彼等かれらエリコいでときおほくの人々ひとゞゝイエスしたがへり
30 二人ふたり瞽者路めしひみちかたはらすわりをりしがイエスすぐるときゝ呼叫さけびいひけるハダビデ裔主こしゅ我儕われらあはれたま
31 衆人ひとゞゝこれにしづまれといましむれどもいよゝゝさけびいひけるハダビデ裔主こしゅ我儕われらあはれみたまへ
32 イエス立止たちどまりこれよびいひけるハ爾曹なんぢらわれになにられんとねがふや
33 イエスいひけるハしゅ我儕われらひらかんことをねが
34 イエスあはれみて其目そのめつけけれバたゞちみることをイエス
[千六百八十二] したがへり


第二十一章[編集]

かれら橄欖山かんらんざんベテパゲいたエルサレムちかづけるときイエス二人ふたり弟子でしつかはさんとして
2 彼等かれらいひけるハ爾曹なんぢらむかふのむらゆきやがてつなぎたる驢馬ろば其子そのこともにあるにあはそれときわれひききたれ
3 もしなんぢらになにとかいふものあらバしゅようなりといへさらバたゞちこれつかはすべし
4 預言者よげんしゃことばなんぢわう柔和にゅうわにして驢馬ろばすなハち驢馬ろばのりなんぢにきたるとシヲンむすめつげよと
5 いへるにかなはせんため如此かくなせるなり
6 弟子でしゆきてイエスめいぜしごとくなし
7 驢馬ろば其子そのこひききたりおのれころもをそのうへおきけれバイエスこれにのれ
8 衆人ひとゞゝおほくハ其衣そのころもみちしきあるひハ樹枝きのえだきりみちしき
9 かつまへにゆきあとしたが人々呼ひとゞゝよびいひけるハダビデホザナよしゅよりきたものさいはひなり至上處いとたかきところにホザナよ


10 イエス エルサレムいたれるとき都城みやここぞりて竦動さわだちいひけるハ是誰これだれぞや
11 衆人ひとゞゝいひけるハガリラヤナザレよりいでたる預言者よげんしゃイエスなり


12 イエスかみ殿みやいり其中そのうちなるすべて賣買うりかひするもの逐出おひいだ兌 銀 者りゃうがへするもの案鴿だいはとをうるもの椅子こしかけたふ
13 彼等かれらいひけるハ我家わがいへ祈禱いのりいへとなへらるべしとしるさるしかるに爾曹なんぢらこれを盗賊ぬすびととなせり
14 瞽者めしひ跛者あしなへ人々ひとゞゝ殿みやいりイエスきたりけれバこれいやしぬ
15 祭司さいしをさ學者がくしゃたち其行そのなしたまへる奇 事ふしぎなわざまた兒童輩こどもら殿みやにてよばハりダビデホザナよといふきゝいかりふくみ
16
イエスいひけるハ彼等かれらいふことをきくイエスこたへいひけるハしか嬰兒乳哺者をさなごちのみごくち讃美さんびそなへたりとしるされしをいまよまざる
17 つひ彼等かれらはな都城みやこいでベタニヤゆきそこに宿やどれり


18 あくるあさ都城みやこかへるときうゑけれバ
19 みちほとりにあるひとつ無花果いちじく其處そのところきたりしにほか
[千六百八十三] なにみえざりしかバいまよりのち永久いつまでむすぶことをざれどこれいひたまひけれバ無花果立刻いちじくたちどころかれ
20 弟子でしこれをあやしいひけるハ無花果いちじくかるることいかはやき
21 イエスこたへ彼等かれらいひけるハわれまことに爾曹なんぢらつげんもし信仰しんかうありてうたがハずバ此無花果このいちじくおけるが如耳ごときのみならず此山このやまめいこゝよりうつされてうみいれよといふとも亦成まらなら
22 かつなんぢらしんじていのらバねがところことゞゝくべし
23
イエス殿みやいりをしへたるとき祭司さいしをさおよびたみ長老としよりたちきたいひけるハなに權威けんゐ此事このことをなすやたがこの權威けんゐなんぢあたへしや
24 イエスこたへ彼等かれらいひけるハわれ一言ひとことなんぢらにとはわれにそのことつげなバわれなに權威けんゐをもてこれなすといふことを爾曹なんぢらいふべし
25 ヨハ子のバプテスマハ何處いづこよりぞてんよりかひとよりか彼等かれらたがひにろんいひけるハてんよりといはなにゆゑしんぜざるかといは
26 もしひとよりといは我儕民われらたみおそそはみなヨハ子預言者よげんしゃすれバなり
27 つひこたへしらずといふイエス彼等かれらいひけるハわれなに權威けんゐこれなす爾曹なんぢらかたらじ
28 爾曹なんぢらいかにおもふや或人あるひと二人ふたりありしが長子あにきたりていひけるハ今日けふわが葡萄園ぶどうばたけゆきはたら
29 こたへいないひしがのちくいゆきたり
30 また次子おとうとにもまへごといひけるにこたへきみ我往われゆくべしといひしがついゆかざりき
31 此二人このふたりのものいづれちゝむねしたがひし彼等かれらいひけるハ長子あになりイエス彼等かれらいひけるハまこと爾曹なんぢらつげ税吏みつぎとりおよび娼妓あそびめ爾曹なんぢらよりさきかみくにいるべし
32 それヨハ子義 道たゞしきみちをもてきたりしに爾曹なんぢらこれをしんぜず税吏娼妓みつぎとりあそびめこれしんじたり爾曹なんぢらこれをてなほ悔改くいあらためずかれしんぜざりき


33 またひとつたとへきけあるいへ主人あるじ葡萄園ぶどうばたけつくまがきめぐらし其中そのなか酒榨さかぶねをほりものみをたて農夫のうふかしほかくにゆきしが
34 果 期みのりどきちかづきけれバ其果そのみとらためしもべ農夫のうふのもとにつかはせり
35 農夫のうふども其僕等そのしもべたち
[千六百八十四] をとら一人ひとりむちう一人ひとりころ一人ひとりいしにてうて
36 またほかしもべまへよりもおほくつかはしけるにこれにもまへごとくなせり
37 我子わがこうやまふならんといひつひ其子そのこつかはしゝに
38 農夫等のうふどもそのたがひいひけるハ嗣子あとつぎなりいざこれをころして其産業そのさんげふをもとるべしと
39 すなはこれとら葡萄園ぶどうばたけより逐出おひいだしてころせり
40 され葡萄園ぶどうばたけ主人あるじきたらんときにこの農夫のうふなになすべき
41 彼等かれらイエスいひけるハ此等これら惡 人あしきものいた討滅うちほろぼしときおよびてそのをさむほか農夫のうふ葡萄園ぶどうばたけ貸予かしあたふべし
42 イエス彼等かれらいひけるハ聖書せいしょ工匠いへつくりすてたるいしすみ首石おやいしとなれり是主これしゅ行給なしたまへることにして我儕われらあやしとするところなりとしるされしをいまよまざる
43 是故このゆゑわれなんぢらにつげかみくに爾曹なんぢらよりうばひそのむすたみあたへらるべし
44 このいしうへおつれバそのものくだかるべし
45 祭司さいし長等をさたちおよびパリサイのひとかれのたとえきゝおのれらをさしいへるをしり
46 イエスとらへんとおもはかりしかど唯民たゞたみおそれたり蓋人々そはひとゞゝかれを預言者よげんしゃとすれバなり

第二十二章[編集]

イエス彼等かれらこたへてまたたとへかたりけるハ
2 天國てんこく或王あるわうそのため婚筵こんえんまうくるがごと
3 婚筵こんえんまねきおけるものむかへためしもべたちをつかはしゝかど彼等かれらきたることをこのまず
4 またほかのしもべつかはさんとしていひけるハふるまひすでにそなはれりうしまた肥 畜こえたるけものをもほふりてことゞゝそなはりたれバ婚筵こんえんきたれとまねきたるものいへ
5 しかれども彼等かれらかへりみずしてさり其一人そのひとりおのれはたけにゆき一人ひとりおのれ貿易あきなひゆけ
6 ほか者等ものどもハそのしもべとらはずかしめてころせり
7 わうこれをきゝいか軍勢ぐんぜいつかはして其殺そのころせるものほろぼまたそのまちやきたり
8 こゝおいてその僕等しもべどもいひけるハ婚筵こんえんすでにそなはれどもまねきたるものきゃくとなるにたへざるものなれバ
9 ちまたゆきあふほどのもの婚筵こんえんまね
10 その僕途しもべみちいで善者よきものをもあしき
[千六百八十五] ものをもあふほどのものことゞゝあつめけれバ婚筵こんえん客 充 滿きゃくじゅうまん
11 王客わうきゃくんとてきたりけるにこゝ一人ひとり禮服れいふくざるものあるを
12 これいひけるハとも如何いかなれバ禮服れいふくずして此處こゝきたかれ黙 然もくねんたり
13 つい王 僕わうしもべいひけるハかれ手足てあししばりてそと幽暗くらきなげいだせ其處そこにて哀哭かなしみまた切齒はがみすることをあら
14 それよばるゝものおほしといへどえらばるゝものすくなし


15 此時このときパリサイのひといでゝ如何いかにしてかかれ言誤いひあやまらせんと相謀あひはか
16 その弟子でしヘロデともがらつかはしていはせけるハなんぢまことなるものなりまことをもてかみみちをしふまたたれにもかたよらざることを我儕われらしるそハかたちよりひととらざれバなり
17 されみつぎカイザルをさむるハよきあしきなんぢいかにおもふか我儕われらつげ
18 イエスそのあくしりいひけるハ僞善者ぎぜんしゃなんわれこゝろむるや
19 みつぎ銀錢かねわれせよ彼等かれらデナリひとつイエス携來もちきたりしに
20 これいひけるハ此像このかたしるしたれ
21 こたへカイザルなりといふこゝおいイエス彼等かれらいひけるハさらカイザルものカイザルかへしまたかみものかみかへすべし
22 彼等之かれらこれをきゝとしてイエスさりゆけり


23 復 生よみがへりなしといひなせるサドカイのひとこのイエスにきたりとふ
24 いひけるハモーセいへるにひともしなくしてしな兄弟きゃうだいそのつまめとりてをうみ兄弟きゃうだいあとつがすべしと
25
こゝ我儕われらうち兄弟きゃうだい七人しちにんありしがあにめとりて死子しにこなきがゆゑ其妻そのつま次子おとうとおくれり
26 そのそのさんそのしちまで皆然みなしか
27 のちつひにをんなもまたしにたり
28 よみがへるときハ此 婦 七 人このをんなしちにんのうちたれつまなるべきかこれみなかれめとりしものなれバなり
29 イエスこたへ彼等かれらいひけるハ爾 曹 聖 書なんぢらせいしょかみ能力ちからをもしらざるによりあやまれり
30 それよみがへるときハめとらずとつがてんにあるかみ使等つかひたちごと
31 しにものよみがへることにつきてハ爾曹なんぢらつげたまひしことば
32 われアブラハムかみイサクかみヤコブかみなりとあるを
[千六百八十六] いまよまざるそもゝゝかみしにものかみあらいけものかみなり
33 人々ひとゞゝこれをきゝ其訓そのをしへおどろけり


34 イエスサドカイのひとをしてくちふさがしめたりときゝてパリサイの人 一 處ひとひとつところあつまりけるが
35 そのうちなる一人ひとり教法師けうはうしイエスこゝろみんためとふいひけるハ
36 律法おきてのうちいづれいましめおほいなる
37
イエスこたへけるハ爾 心なんぢこゝろつく精神せいしんつくこゝろばせつくしゅなるなんぢかみあいすべし
38 これ第一だいいちにしておほいなるいましめなり
39 第二だいにまたこれにおなおのれごとなんぢとなりあいすべし
40 すべて律法おきて預言者よげんしゃ此二このふたついましめよれ


41 パリサイのひとあつまれるときイエス彼等かれらとふいひけるハ
42 爾曹なんぢらキリストについて如何いかにおもふこれたれなるか彼等かれらイエスいひけるハダビデなり
43 彼等かれらいひけるハさらダビデみたまかんじて何故なにゆゑこれをしゅとなへしダビデいふ
44 しゅわがしゅいひけるハわれなんぢのてきなんぢ足凳あしだいとなすまでわがみぎにすべしと
45 されダビデすでこれしゅとなへたれば如何いかでそのならん
46 誰一言たれひとことこれにこたふることあたハず此日このひよりあへまたとふものなかりき

第二十三章[編集]

厥時そのときイエス人々ひとゞゝ弟子でしとにつげいひけるハ
2 學者がくしゃとパリサイのひとモーセくらゐ
3 ゆゑすべ彼等かれら爾曹なんぢらいふところをまもりおこなふべしされ彼等かれらおこなところなすことなかそはかれらハいふのみにしておこなハざれバなり
4 また彼等かれらおもくかつおひがたきくくりひとかたおはおのれひとつゆびをもてこれうごかすことすらこのま
5 彼等かれらおこなひすべひとみられんがためにするなりその偑經ふだ幅濶はゞひろく其衣そのころもすそおほいにし
6 また筵席ふるまひ上座會堂かみざくわいだう高座かうざ
7 市上まち問安あいさつ人々ひとゞゝよりラビラビととなへられんことをこの
8 爾曹なんぢらハラビのとなへうくることなかそはなんぢらの一人ひとりすなはちキリストなり爾曹なんぢらハみな兄弟きゃうだいなり
9 またにあるものちゝとなふることなか爾曹なんぢらちゝ一人ひとりすなはちてんいまものなり
[千六百八十七] 10 また導師だうしとなへうくることなかそはなんぢらの導師だうし一人ひとりすなはちキリストなり
11 爾曹なんぢらのうちおほいなるもの爾曹なんぢらしもべなるべし
12 おほよ自己みづからたかうするものひくゝせられ自己みづからひくゝするものたかくせられん


13 あゝなんぢらわざはひなるかな僞善ぎぜんなる學者がくしゃとパリサイのひとそはなんぢら天國てんこくひとまへとぢみづかいらかついらんとするものいるをもゆるさゞれバなり
14 あゝなんぢらわざはひなるかな僞善ぎぜんなる學者がくしゃとパリサイのひとそはなんぢら嫠婦やもめいへのみいつハりてながいのりをなすこれより爾曹最なんぢらもっとおも審判さばきうくべければなり
15 あゝわざはひなるかな僞善ぎぜんなる學者がくしゃとパリサイのひとそはなんぢらあまね水陸うみやま歷巡へめぐ一人ひとりをもおの宗旨しゅうし引入ひきいれんとすすで引入ひきいるれバこれ爾曹なんぢらよりもばいしたる地獄ぢごくなせ
16 あゝなんぢらわざはひなるかな瞽者めしひなるてびき爾曹なんぢらハいふひともし殿みやさしちかハゞことなし殿みやこがねさしちかハゞそむくべからずと
17 おろかにしてめしひなるものこがねこがねきよからしむる殿みやとハいづれたふと
18 またいふひともしまつりだんさしちかハゞことなし其上そのうへ禮物そなへものさしちかハゞそむくべからず
19 おろかにしてめしひなるもの禮物そなえもの禮物そなへものきよからしむるまつりだんとハいづれたふと
20 それまつりだんさしちかものまつりだんおよび其上そのうへすべてものさしちかふなり
21 また殿みやさしちかもの殿みやおよび其内そのうちいまものさしちかふなり
22 またてんさしちかものかみ實座みくらゐおよび其上そのうへするものさしちかふなり


23 あゝなんぢらわざはひなるかな僞善ぎぜんなる學者がくしゃとパリサイのひとそはなんぢら薄荷はくかう茴香いきゃう馬芹まきん十分じふぶんいち取納とりおさめ律法おきてもっとおもじんしんとを爾曹なんぢらすつこれおこなべきもの也彼なりかれ亦廢またすつべからざるものなり
24 瞽者めしひなる相者てびき爾曹なんぢらほうふり漉出こしいだして駱駝らくだのむものなり
25 あゝわざはひなるかな僞善ぎぜんなる學者がくしゃとパリサイのひと爾曹なんぢらさかづきさらそときよくしてうちにハ貪欲むさぼり淫欲いんよくとをみたせり
26 めしひなるパリサイのひと爾曹なんぢらまづさかづきさらうちきよくせよさら
[千六百八十八] バそのそとまたきよまるべし


27 あゝなんぢらわざはひなる哉僞善かなぎぜんなる學者がくしゃとパリサイのひと爾曹なんぢらしろぬりたるはかたりそとうるはしくみゆれどもうち骸骨がいこつさまゞゝ汚穢けがれにてみつ
28 かくごと爾曹なんぢらもまたそとたゞしひとみゆれどもうち僞善ぎぜん不法ふはうにてみつ
29 あゝなんぢらわざはひなるかな僞善ぎぜんなる學者がくしゃとパリサイのひと爾曹なんぢら預言者よげんしゃはかをたて義人ぎじんかざれり
30 またいふ我儕われらもし先祖せんぞときにあらバ預言者よげんしゃながすことにくみせざりしをと
31 され爾曹なんぢら預言者よげんしゃころしものすゑなることをみづかあかし
32 なんぢら先祖せんぞますめみた
33 蛇蝮へびまむしたぐひ爾曹なんぢらいかで地獄じごく刑罰けいばつまぬかれんや
34 是故このゆゑ我爾曹われなんぢら預言者よげんしゃ智者ちしゃ學者がくしゃつかはさんにあるひこれころ又十字架またじふじか釘或つけあるひ其會堂そのかいだうにてこれむちうあるいまちよりまち逐苦おほくるしめん
35 そハなるアベルより殿みやまつりだんあいだにて爾曹なんぢらころしバラキアザカリアいたるまでながしたる義人ぎじんすべ爾曹なんぢら報來むくいきたらんがためなり
36 われまこと爾曹なんぢらつげ此事このことみな此代このよ報來むくいきたるべし
37 あゝエルサレムエルサレム預言者よげんしゃころなんぢつかはさるゝものいしにてうつものよ母鷄めんどりひなつばさしたあつむごとわれなんぢらの赤子こどもあつめんとせしこと幾次いくたびぞやされ爾曹なんぢらこのまざりき
38 爾曹なんぢらいへ荒地あれちとなりてのこされん
39 われ爾曹なんぢらつげしゅよりきたものさいはひなりと爾曹なんぢらいはんときいたるまでハいまよりわれざるべし

第二十四章[編集]

イエス殿みやよりいでけれバ其弟子そのでしすゝみて殿みや構造かまへかれせんとしたりしに
2 イエス彼等かれらいひけるハ爾曹なんぢらすべて此等これらざるかわれまことに爾曹なんぢらつげ此處このところひとついしいしうへくずされずしてハのこらじ
3 イエス橄欖山かんらんざんたまへるとき弟子でしひそかにきたりていひけるハいづれときこのことある又爾またなんぢきたしるしをはりしるし如何いかなるぞや我儕われらつげたまへ
4 イエスこたへ彼等かれらいひ
[千六百八十四] けるハ爾曹人なんぢらひとあざむかれざるやうつゝめ
5 そはおほくのひとわがをかしきたりわれキリストなりといひおほくひとあざむくべし
6 またなんぢらいくさいくさ風聲うはさをきかんされつゝしみおそるゝなか此等これらことみなあるべきなりしかれども末期をはりいまいたらず
7 たみおこりてたみをせめくにくにをせめ餓饉ききん疫病えきびょう地震じしんところどころにあるならん
8 これみなわざはひはじめなり
9 そのときひとなんぢらを患難なやみわた爾曹なんぢらころすべしまたなんぢら我名わがなため萬民ばんみんにくまれん
10 このとき許多おほくのものつまづきかつたがひわたたがひうらむべし
11 また僞預言者にせよげんしゃおほくおこりおほくひとあざむかん
12 また不法ふはふみつるによりおほくひと愛情あいじゃうひやゝかになるべし
13 されをはりまでしのものすくはるゝことを
14 また天國てんこく此福音このふくいん萬民ばんみんあかしせんためあまね天下てんか宣傳のべつたへられんしかるのち末期をはりいたるべし
15 是故このゆゑ預言者よげんしゃダニエルよりいはれたるところ殘暴あらすにくむべきものの聖所せいしょたつバ(読者よむものよくおもふべし)
16 厥時そのときユダヤにをるものやまのがれよ
17 屋上やのうへをるものは其家そのいへものとらんとておるなか
18 はたにをるもの其衣そのころもとらんとてかへなか
19 其日そのひにははらめるもののまするをんなわざはひなるかな
20 爾曹冬なんぢらふゆまたは安息日あんそくにちにぐることをまぬかれんためいの
21 そのときおほいなる患難なやみありかくごと患難なやみはじめよりいまいたるまであらざりき又後またのちにもあら
22 もしそのすくなくせられずバ一人ひとりだにすくはるゝものなからんされえらばれしものため其日そのひすくなくせらるべし
23 其時そのときもしキリスト此處こゝにあり彼處かしこにありと爾曹なんぢらにいふものあるともしんずるなか
24 そはにせキリスト僞預言者にせよげんしゃたちおこりおほいなる休徴しるし異 能ふしぎなるわざおこなえらばれたるものをもあざむくことをこれあざむべけれバなり
25 われあらかじめ爾曹なんぢらこれつぐ
26 もしキリストありといふものあるともしんずるなか
27 そはいなづまひがしよりいで西にしにまでひらめくがごとひときたるべければなり
28 それしかばねのあるところ
[千六百九十] はわしあつまらん
29 此等これら患難なやみのちたゞちにくらつきひかりうしなほしそらよりおちてんいきほふるふべし
30 そのときひと兆天しるしてんあらはるまた地上ちじょうにある諸族しょぞく哭 哀なげきかなし且人かつひと權威けんゐおほいなる榮光えいくわうをもててんくも乘來のりきたるを
31 またその使等つかひたちつかはらっぱおほいなるこゑいださしめててん此極このはてより彼極かのはてまで四方しはうより其選そのえらばれしものあつむべし


32 それなんぢら無花果樹いちじくよりたとへまな其枝そのえだすでにやはらかにして葉萌はめぐめバなつちかきをしる
33 かくごと爾曹なんぢらすべ此等これらことときちかく門口かどぐちいたるとしれ
34 われまこと爾曹なんぢらつげ此等これらことことゞゝくなるまで此民このたみうせざるべし
35 天地てんちうせされ我言わがことばうせ
36 そのそのときしるものはたゞわがちゝのみてん使者つかひたれもしるものなし
37 ノアときごとひときたるも亦然またしからん
38 それ洪水こうずゐまへノア方舟はこぶねにいるまでは人々ひとゞゝ飮食娶嫁のみくひめとりとつぎなどして
39 洪水こうずゐきたことゞゝこれほろぼすまでしらざりきかくごとひとまたきたらん
40 そのとき二人田ふたりはたあらんに一人ひとりとら一人ひとりのこさるべし
41 二人ふたり婦磨をんなひきうすひきおらんに一人ひとりはとられ一人ひとりのこさるべし
42
是故このゆゑ爾曹なんぢらしゅいづれのとききたるかをしらざればおこたらずしてまも
43 爾曹なんぢらこれをしれもしいへ主人あるじぬすびといづれとききたるかをしら其家そのいへまもりやぶらすまじ
44 され爾曹なんぢらもまた預備そなへせよおもはざるときひときたらんとすればなり
45 ときおよびかて彼等かれらあたへさするため主人あるじがその僕等しもべどもうへたてたる忠義ちゅうぎにして智 僕さときしもべたれなる
46 その主人あるじきたらんときかくのごとつとむるをみらるゝしもべさいはひなり
47 われまことに爾曹なんぢらつげ其所有そのもちものをみなかれつかさどらすべし
48 もしその惡 僕あしきしもべおのがこゝろ主人あるじきたるはおそからんとおも
49 その朋輩ぼうはい打撻うちたゝきてさけゑひたるものどもととも飮食のみくひはじめなば
50 そのしもべ主人しゅじんおもはざるのしらざるのとききたりて
51 これ斬殺きりころ其報そのむくい僞善者ぎぜんしゃおなじうすべし其處そこにて哀哭切かなしみはが
[千六百九十一] することあら

第二十五章[編集]

そのとき天國てんこくともしびとり新郎はなむこむかへいづ十人じふにん童女むすめなぞらふべし
2 そのうち五人ごにんかしこ五人ごにんおろかなり
3 おろかなるもの其燈そのともしびをとるにあぶらたづさへざりしが
4 かしこもの其燈そのともしびともあぶらうつはたづさへたり
5 新郎はなむこおそかりければ皆暇寢みなかりねしてねむれり
6 夜半よなかばにさけびて新郎はなむこきたりぬいでむかへよと呼聲よぶこえありければ
7 この童女むすめどもみなおきて其燈そのともしびとゝのへたるに
8 おろかなるものかしこものいひけるは我儕われら燈熄ともしびきえんとすねがはくは爾曹なんぢらあぶら我儕われら分子わけあたへ
9 かしこきものこたへいひけるは我儕われら爾曹なんぢらおそらくはたるまじ爾曹賣者なんぢらうるものゆきおのためかへ
10 かれらかはんとてゆきしとき新郎はなむこきたりければすでそなへたるものこれとも婚筵こんえんいりしかばもんとぢられたり
11 かくのちそのほか童女むすめきたりていひけるはしゅしゅ我儕われらためひらきたまへ
12 こたへわれまことに爾曹なんぢらつげわれ爾曹なんぢらしらずといへ
13 されおこたらずしてまも爾曹なんぢらそのそのときしらざればなり


14 また天國てんこく或人あるひと旅行たびだちせんとして其僕そのしもべをよび所有もちもの彼等かれらあづくるがごと
15 各人おのゝゝ智慧ちゑしたがひて或者あるものには銀五千ぎんごせん或者あるものには二千或者にせんあるものには一千いっせんあたへおきたゞち旅行たびだちせり
16 五千ごせんぎんうけものゆきこれ貿易はたらかほか五千ごせんたり
17 二千にせんうけものもまたほか二千にせんたり
18 しかるに一千いっせんうけものゆきほりそのしゅかねかくせり
19 歷久ほどへのちその僕等しもべたちしゅかへりて彼等かれら會計くわいけいせしに
20 五千ごせんかねうけものそのほか五千ごせんぎん携來もちきたりてしゅわれ五千ごせんぎんあづけしがほか五千ごせんぎんまうけたりといひけれバ
21 しゅかれにいひけるはあゝぜんかつちゅうなるしもべ爾 寡なんぢわづかなることちゅうなりわれなんぢにおほきものをつかさどらせんなんぢ主人あるじ歡樂よろこびいれ
22 二千にせんぎんうけものきたりてしゅわれ二千にせんぎんまうけたりといひけれバ
23 しゅかれ
[千六百九十二] にいひけるはあゝ善 且 忠ぜんかつちゅうなるしもべぞなんぢわづかなることちゅうなりわれなんぢにおほきものをつかさどらせんなんぢ主人あるじ歡樂よろこびいれ
24 また一千いっせんぎんうけものきたりていひけるはしゅなんぢ嚴 人きびしきひとにてまかざるところよりかりちらさゞるところよりあつむることをわれしる
25 ゆゑ我懼われおそれてゆきしゅ一千いっせんぎんかくおけいまなんぢなんぢものたり
26 そのしゅこたへていひけるはあしくかつおこたれるしもべなんぢわがまかざるところよりかりちらさざるところよりあつむることをしる
27 しからバかね兌換舗りゃうがへや預置あづけおくべきなりさらかへりたるときもととをうくべし
28 是故これゆゑかれ一千いっせんぎんとり十千じふせんぎんあるものあたへ
29 それもてものあたへられてなほあまりあり無有者もたぬものはそのもてものをもとらるゝなり
30 無益むえきなるしもべそと幽暗くらきおひやれ其處そこにて哀哭切齒かなしみはがみすることあら


31 ひとおのれの榮光えいくわうをもてもろゝゝ聖 使きよきつかひ率來ひききたときはその榮光えいくわうくらゐ
32 萬國ばんこくたみをそのまへあつひつじ牧者かふもの綿羊めんやう山羊やぎとをわかつごと彼等かれらわか
33 綿羊めんやうをそのみぎ山羊やぎをそのひだりおくべし
34 かくわうそのみぎにをるものいは我父わがちゝめぐまるゝものきたりて創 世よのはじめより以來このかたなんぢらのためそなへられたるくにつげ
35 そはなんぢらうゑときわれにくはかはきしときわれのまたびせしときわれを宿やどらせ
36 はだかなりしときわれにやみしときわれをみまひひとやありしときわれきたればなり
37 こゝおい義 者たゞしきものかれにこたへいはしゅ何時いつなんぢのうゑたるをくはせまたかわきたるにのましゝ
38 何時主いつしゅたびしたるを宿やどらせ又裸またはだかなるにきせしや
39 何時主いつしゅやみまたひとやあるなんぢいたりし
40 わうこたへて彼等かれらいはわれまことに爾曹なんぢらつげすで爾曹なんぢらわが此兄弟このきゃうだい最 微 者いとちいさきもの一人ひとりおこなへるはすなはわれおこなひしなり
41 つひにまたひだりにをるものいはつみせらるべきものわれはなれて惡魔あくま其使者そのつかひためそなへたるきえざるいれ
42 そはなんぢらうゑときわれにくはせずかわきしときわれ
[千六百九十三] のませず
43 たびせしときわれを宿やどらせずはだかなりしときわれにきせやみまたひとやありときわれをみまはざればなり
44 こゝおい彼等かれらまたこたへいはしゅ何時いつなんぢのうゑまたかわきまたたび又裸またはだかまたやみまたひとやあるしゅつかへざりしや
45 そのときわうこたへて彼等かれらにいはんわれまことに爾曹なんぢらつげ此 最 微 者このいとちいさきもの一人ひとりおこなはざるはすなはわれおこなはざりしなり
46 此等これらものかぎりなき刑罰けいばつにいり義 者たゞしきものかぎりなき生命いのちいるべし

第二十六章[編集]

さてイエスこのさまゞゝことば言竟いひをはりて其弟子そのでしいひけるは
2 二日ふつかののち逾 越 節すぎこしのいはいなるは爾曹なんぢらしるところなりそれひと十字架じふじかつけられんためわたさるべし
3 このとき祭司さいしをさおよびたみ長老等としよりたちカヤパいへ祭司さいしをさやしきにはあつま
4 詭計たばかりをもてイエスとらころさんと共々ともゞゝはかりいひけるは
5 まつりにはなすべからずおそらくはたみうちらんおこらん


6 イエスベタニヤ賴病人らいびょうにんシモンいへたまへるとき
7 あるをんな蠟石らふせき器物うつはものあたひたかき香膏にほひあぶらもりイエスしょくするところ携來もちきた其首そのかうべそそぎしかば
8 弟子等でしたちこれをいかりふくみいひけるは此糜費このつひえのことをなす何故なにゆゑぞや
9 もしこれをうれおほくきん貧 者まづしきものほどこすことを
10 イエスしり彼等かれらいひけるはなん此婦このをんななやますやかれわれ善事よきことおこなへるなり
11 貧 者まづしきものつね爾曹なんぢらともにあれどわれつね爾曹なんぢらともあら
12 かれがこの香膏ひほひあぶら我體わがみそゝぎしはわれはうむりためなせなり
13 われまこと爾曹なんぢらつげあめしたいづくにても此福音このふくいん宣傳のべつたへらるゝところには此婦このをんななしこともその記念かたみため言傳いひつたへらるべし


14 そのとき十二弟子じふにでし一人ひとりなるイスカリオテユダいへるもの祭司さいし長等をさたちもとゆきいひけるは
15 われなんぢらにかれわたさば幾何なにほどあたふるかつひ銀三十ぎんさんじふにてやくしたり
16 此時このときよりイエスわたさんとをりうかゞひぬ
17 除 酵たねいれぬぱん
[千六百九十四] のいはひはじめ日弟子ひでしイエスきたいひけるは我儕われらすぎこしのしょくなんぢため何處いづこそなふべき
18 イエスいひけるは京城みやこにいりそれがしいたりていへいふ時 近ときちかづきければ我弟子われでしとも逾越すぎこし節筵いはひなんぢいへなすべしと
19 弟子でしイエスめいぜられしごとくして逾越すぎこししょくそな
20 くるゝときイエス十二弟子じふにでしともせきつき
21 しょくするときいひけるはわれまことに爾曹なんぢらつげ爾曹なんぢらのうち一人我ひとりわれわたすなり
22 彼等かれらいたくうれへおのゝゝイエス曰出いひいでけるはしゅわれなる
23 こたへいひけるハわれともさらつくものすなはわれわたものなり
24 ひとおのれについてしるされたるごとゆかされひとわたものわざはひなるかなその人生ひとうまれざりしならバかえっさいはひなりしならん
25 かれわたユダこたへいひけるハラビわれなるやこれいひけるハなんぢいへごと
26 かれらしょくするときイエスパンをとりしゅくこれをさき弟子でしあたへいひけるハとりくらへこれハ我身わがみなり
27 またさかづきとりしゃ彼等かれらあたへいひけるハ爾曹なんぢらみな此 杯このさかづきよりのめ
28
これ新約しんやく我血わがちにしてつみゆるさんとておほくひとため流 所ながすところのものなり
29 われ爾曹なんぢらつげいまよりのちなんぢらとともあたらしきもの吾父わがちゝくにのままでハふたゝびこの葡萄ぶだうにてつくれるもののま


30 かれらうたうたひてのち橄欖山かんらんざんゆけ
31 其時そのときイエス彼等かれらいひけるハ今夜こよひなんぢらみなわれについつまづかんそはわれ牧者かふものうたむれ綿羊めんやうちらんとしるされたれバなり
32 され我 甦われよみがへりてのちなんぢらにさきだガリラヤゆくべし
33 ペテロこたへイエスいひけるハみななんぢについつまづくともわれつひつまづかじ
34
イエスかれいひけるハわれまことになんぢつげ今 夜 鷄こよひにはとりなかざるまへ爾 三 次なんぢみたびわれをしらずといは
35 ペテロかれいひけるハわれしゅともしぬるともなんぢしらずといは弟子でしみな如此かくいへり


36 厥時そのときイエス彼等かれらともゲツセマ子といふところいたり弟子等でしたちいひけるハ爾曹なんぢらこゝにをれわれ彼處かしこゆきいのらん
[千六百九十五] 37 ペテロおよびゼベダイ二人ふたりたづさうれかなしみをもよふ
38 彼等かれらいひけるハ我心わがこゝろいたくうれへしぬるバかりなりこゝにまちわれともさましをれ
39 すこ進往すゝみゆきてひれふしいのりいひけるハ吾父わがちゝもしかなハゞ此杯このさかづきわれよりはなたまされ我心わがこゝろまゝなさんとするにあら聖旨みこゝろまかたま
40 しかして弟子でしきた其寢そのいねたるをペテロいひけるハ如此一時かくひとときわれともさましをることあたハざる
41 まどひいらぬやうさましかついのれそのたましひにハねがふなれど肉體にくたいよわきなり
42 二次ふたたびゆきてまたいのりいひけるハ吾父わがちゝもしわれに此杯このさかづきのまさではなつことかなはずバ聖旨みこゝろまかたま
43 きたりてまたかれらのいねたるをみるこれ彼等かれら目疲めつかれたるなり
44 彼等かれらはなれてまたゆき第三次みたびめ同言おなじことばをもていのれり
45 つひ其弟子そのでしきたりていひけるハいまいねやすときちかひと子罪人こつみびとわたされん
46 おき我儕われらゆくべしわれわた者近ものちかづきたり


47 如此かくいへるとき十二じふに一人ひとりなるユダつるぎばうとをもちたるおほく人々ひとゞゝとも祭司さいしをさ長老としよりもとよりきた
48 イエスわたものかれらにしるしをなしていひけるハ接吻くちづけするものそれなりこれとらへよ
49 たゞちイエスきたりラビやすきかといひかれ接吻くちつけ
50 イエスかれいひけるハともなにためきたるやつひ彼等かれらすゝみきたイエスかけとらへぬ
51 イエスともありもの一人手ひとりてをのべつるぎぬき祭司さいしをさしもべうちそのみゝそぎおとせり
52 イエスかれいひけるハなんぢつるぎ故處もとをさめすべつるぎをとるものつるぎにてほろぶべし
53 われいま十二じふに軍餘ぐんよ天使つかひ吾父わがちゝこふうくることあたハずと爾曹なんぢらおもふ
54 もししかせば如此かくあるべきことしるし聖書せいしょ如何いかかなハん


55 此時このときイエス人人ひとびといひけるハつるぎぼうとをもち盗賊ぬすびととらふるごとくしてわれとらへにきたるわれ日々ひゞ爾曹なんぢらとも殿みやしてをしへしに爾曹なんぢらわれをとらへざりし
56 されかくごとくなるハ皆預言者みなよげんしゃしるしたるところ應成かなはせんためなり
[千六百九十六] つひ弟子等でしたちみなイエスはなれて逃去にげさり
57 イエスとらへたるものこれをひき學者がくしゃ長老としよりあつまれるところ祭司さいしをさカヤパつれゆく
58 ペテロとほはなれてイエスしたが祭司さいしをさにはにまでいたりその結局なりゆきんとてうちにいりしもべともせり
59 祭司さいし長等をさたちおよび長老としよりすべての議員ぎゐんともにイエスころさんとして妄證いつはりのあかしもとむれども
60 おほくいつはりの證人あかしびときたれどもまたえずのちまたいつはりの證人あかしびと二人ふたりきたりていひけるハ
61 この人曩ひとさきいへることありわれよくかみ殿みやこぼちて三日みっかうちこれたてうべしと
62 祭司さいしをさたちてイエスいひけるハなんぢこたふることなきこの人々ひとゞゝなんぢたつ證據しょうこ如何いかに
63 イエス黙然もくねんたり祭司さいしをさこたへてかれいひけるハなんぢキリストかみなるかわれなんぢを活神いけるかみちかはせてこれつげしめん
64 イエスかれいひけるハなんぢいへごとかつわれ爾曹なんぢらこののちひと子大權こちからみぎてんくものりきたるを爾曹なんぢらみるべし
65 こゝおい祭司さいし長其衣をさそのころもさきいひけるハ此人このひと褻瀆けがすことをいへなんほか證據しょうこもとめんや爾曹なんぢらいまその褻瀆けがしたることをきく
66 なんぢら如何いかにおもふかれらこたへいひけるハかれあたれり
67 こゝおい彼等かれらそのかほつばき且拳かつこぶしにてうてりまた或人あるひとかれをたゝきいひけるハ
68 キリストなんぢ擊者うつものたれ我儕われら預言よげんせよ


69 ペテロにはすわりゐけるに或婢あるしもめきたりてなんぢガリラヤイエスともなりといひければ
70 ペテロすべてひとまへ此言このことばうけがハずしてわれなんぢがいふところをしらずといへ
71 いで門口かどぐちいたれるときまたほかしもめこれを其處そこにをるものいひけるハ此人このひとナザレイエスともあり
72 ペテロまたうけがハずしてちかわれこのひとしらずと
73 しばらくありてかたはらにたちたるものすゝみよりペテロいひけるハまことなんぢもそのともがら一人いちにんなりそはなんぢの方言くになまりなんぢをあらはせり
74 こゝおいペテロのゝし且誓かつちかひわれそのひとしらずといひしがやが鷄 鳴にはとりなき
[千六百九十七] ぬ
75 ペテロイエスにはとりなかざるまへなんぢ三次みたびわれをしらずといハんといひたまへること憶起おもひいだそといでかなしなけ


第二十七章[編集]

平旦よあけになりてすべて祭司さいしをさたみ長老としよりともにはかりイエスころさんとし
2 すでかれしばりひきゆきて方伯つかさポンテオ ピラトわたせり
3 こゝおいイエスわたしゝユダかれさだめられしをくやみその銀三十ぎんさんじふ祭司さいし長長老等をさとしよりたちかへして
4 いひけるハ無辜つみなきわたわれつみをかしぬ彼等かれらいひけるハ我儕われらおいなんあづからんやなんぢみづからあたるべし
5 ユダそのぎん殿みや投棄なげすて其處そこさりゆきてみづかくびれたり
6 祭司さいし長等をさたちこのぎんとりいひけるハあたひなれバ賽銭さいせんはこいるべからずとて
7 ともはかりこのぎんをもて旅客たびゞとはうむため陶工やきものしはたけかへ
8 ゆゑ其田そのはたけいまいたるまで血田ちのはたけなづけらる
9 こゝおい預言者よげんしゃエレミヤよりいはれたることばイスラエルたみねづもられねづもられしものあたひ銀三十ぎんさんじふとり
10 しゅわれめいぜしごと陶工やきものしはたけかいぬとあるかなへり


11 さてイエス方伯つかさまへにたつ方伯つかさイエスとふいひけるハなんぢユダヤびとわうなるかイエスこれいひけるハなんぢいへごと
12 祭司さいし長長老をさとしよりたちかれうったふれどもなにこたへもせず
13 こゝおいピラトかれいひけるハ此人々このひとゞゝなんぢたつあかしのかくおほいなるをなんぢきかざる
14 方伯つかさ甚奇いとあやしとするまでにイエス一言ひとことこたへせざりき
15 このまつりにハ方伯つかさよりたみねがひまかせて一人ひとり囚人めしうどゆるすれいあり
16 ときバラバいへ一人ひとり名高なだか囚人めしうどありけれバ
17 ピラトたみあつまりしとき彼等かれらいひけるハバラバまたキリストとなふるイエスなるなんぢらたれゆるさんとおもふや
18 これ娟嫉ねたみよりイエスわたしたりとしれバなり


19 方伯審判つかささばきすわりたるときそのつまいひけるハ此 義 人このたゞしきひと爾 干なんぢかゝはることなかそはわれ
[千六百九十八] 今日夢けふゆめうちかれにつきておほうれへたり
20 祭司さいし長長老をさとしよりたちバラバゆるイエスころさんことをねがへたみすゝ
21 方伯つかさこたへて彼等かれらいひけるハ二人ふたりのうちいづれわがなんぢらにゆるさんことをのぞむや彼等かれらバラバこた
22 ピラトいひけるハさらキリストとなふるイエスわれなにをなすべきかみないふ十字架じふじかつけよと
23 方伯つかさいひけるハかれなにの惡事あくじなししや彼等かれらますゝゝ喊叫さけび十字架じふじかつけよといふ
24 ピラトそのことえきなくして唯亂たゞらんおこらんとするをしりみづとり人々ひとゞゝまへをあらひいひけるハ此 義 者このたゞしきものわれつみなし爾曹なんぢらみづからこれあた
25 たみみなこたへいひけるハ其血そのち我儕われら我儕われら子孫すゑかゝはるべし
26 こゝおいバラバ彼等かれらゆるイエスむちうちてこれ十字架じふじかつけためわたしたり
27 方伯つかさ兵卒へいそつイエスたづさ公廳やくしょいた全營くみぢゅうそのもとにあつ
28 かれころもはぎ綠色あかいろうはぎ
29 いばらにてかんむりあみそのかうべかむらしめ又葦またよし右手みぎのてもたかつそのまへひざまづき嘲弄てうろうしていひけるハユダヤびと王安わうやすかれ
30 またかれつばき其葦そのよしとり其首そのかうべうて
31 嘲弄てうろうをはりて其袍そのうはぎをはぎ故衣もとのころもをきせ十字架じふじかつけんとてかれひきゆく
32 そのいでときクレ子びとシモンといふものあひければしひこれ其十字架そのじふじかおはせたり


33 彼等かれらゴルゴダとけすなは髑髏されかうべいへところきた
34 あはせてイエスのませんとたりしになめのむことをせざりき
35 かくイエス十字架じふじかつけしのちくじとり其衣そのころもわかつこれ預言者よげんしゃことば彼等互かれらたがひころもわけわが裏衣したぎくじにすといひしにかなへり
36 兵卒へいそつこゝにしてイエスまもれり
37 また罪標すてふだこれユダヤびとわうイエスなりとしるして其首そのかうべうへおけ
38
そのとき二人ふたり盗賊ぬすびとイエスとも一人ひとり其右一人そのみぎひとり其左そのひだり十字架じふじかつけらる


39 往來ゆきゝものイエスのゝしかうべふりいひけるハ
40 殿みやこぼちて三日みっかこれたつもの自己みづからすくなんぢもしかみならばじふ
[千六百九十九] 字架じかよりおり
41 祭司さいし長學者をさがくしゃ長老等としよりたちまたおなじく嘲弄てうろうしていひけるハ
42 ひとすくひおのすくひあたはずもしイスラエルわうたらば今十字架いまじふじかよりくだるべしさら我儕われらかれをしんぜん
43 かれかみ依賴よりたのめりかみもしかれいつくしまバ今救いますくふべしそはかれわれかみなりといひなり
44 とも十字架じふじかつけられたる盗賊ぬすびとおなじイエスのゝしれり


45 ひる十二時じふにじより三時さんじいたるまで其地そのちあまねく黑暗くらやみとなる
46
三時さんじごろイエス大聲おほごゑにエリ、エリ、ラマ、サバクタニとよばゝりぬこれとけ吾神わがかみわがかみなんぞわれすてたまふいへなり
47 かたはらにたちたるもののうち或人あるひとこれをきゝかれエリヤよべるなりといふ
48 そのうち一人直ひとりたゞちはしゆき海綿うみわたをとりふくまこれよしにつけてイエスのましむ
49 他 人 曰ほかのものいひけるハまてエリヤきたりてかれすくふや否 試いなこゝろむべし


50 イエスまた大聲おほごゑよばゝりて気絶いきたえたり
51 殿みや幔上まくうへよりしたまでさけふたつとなり又地またちふるひいはさけ
52 はかひらけてすでいねたる聖徒せいとおほくよみがへりイエスよみがへれるのち
53 はかいで聖城みやこいりおほくのひとあらはれたり


54 百夫ひゃくにんかしらともイエスまもりたるもの地震ぢしんおよび其有そのありこといたおそまことかみなりといへ


55 此處このところはるかのぞみゐたるおほくおんなありし彼等かれらガリラヤよりイエスしたがつかへ者等ものどもなり
56 其中そのうちをりものマグダラマリアヤコブヨセはゝなるマリアゼベダイ子等こたちはゝとなり


57 くれてイエス弟子でしなるヨセフいへアリマタヤ富人とめるひときたりてピラトゆきイエスしかばねこひしかバ
58 ピラトそのしかばねわたせとめい
59 ヨセフしかばねとりきよ枲布ぬのつゝ
60 これいはほりたるおのあたらしきはかにおきいしはかもんまろばしてさる
61 マグダラマリアほかマリアはかむかひ其處そこおれ


62 預備日そなへび翌日祭司よくじつさいしをさとパリサイの人等ひとたちピラトもと集来つどひきたいひけるハ
63 しゅ我儕憶起われらおもひいだせり僞者いつはりもの
[千七百] きてありしとき三日みっかののちよみがへらんといひ
64 是故このゆゑめいじて三日みっかいたるまではか固守かためしめよおそらくハ其弟子夜そのでしよるきたりてこれぬすよりよみがへりたりとたみいはしからのちまどひさきよりも愈勝いやまさるべし
65 ピラト彼等かれらいひけるハ守兵まもるもの爾曹なんぢらにありゆきおもひのまゝに固守かためしめよ
66 こゝおい彼等かれらゆきていし封印ふういん守兵まもるものをしてはか固守かためしめたり

第二十八章[編集]

安息日終あんそくにちをはりてのち七日なぬかはじめ日黎明ひよあけがたマグダラマリアおよほかマリアそのはかんとてきたりしに
2 おほいなる地震ぢしんありてしゅ使者天つかひてんよりくだはかもんよりいしまろば其上そのうへ
3 その容貌かたち閃電いなびかりのごとく其衣そのころもゆきのごとくしろ
4 守兵まもるものかれを懼戰おそれおのゝしにたるものごとくなりぬ
5 天使つかひこたへてをんないひけるハ爾曹なんぢらおそるゝなかわれなんぢらが十字架じふじかつけられしイエスたずぬることをしる
6 かれこゝあら其言そのいへごとよみがへりたり爾曹なんぢらきたりてしゅおかれしところ
7 かつゆきて其弟子そのでしつげかれよりよみがへ爾曹なんぢらさきだちてガリラヤゆけ彼處かしこおい爾曹なんぢらかれをるべしわれこれを爾曹なんぢらつぐ
8 婦懼をんなおそれながらもいたよろこびて急墓とくはかをさり其弟子そのでしつげんとはしりゆけ
9 弟子でしつげんとてゆくときイエス彼等かれらあひやすかれと曰給いひたまひけれバをんなすゝみ其足そのあしいだきはいしぬ
10 イエス彼等かれらいひけるハおそるゝなかさり兄弟きゃうだいガリラヤゆけつげ彼處かしこにてわれみるべし


11 をんなさりしのち守兵まもるもののうち或者あるものどもみやこいたすべありこと祭司さいし長等をさたちつげしかバ
12 彼等かれら長老としよりあつまりてともはかりおほくの銀子かね兵卒へいそつあたへいひけるハ
13 爾曹なんぢらいへ我儕われらいねたるときその弟子夜でしよるきたりてかれぬすめりと
14 此事このこともし方伯つかさきこゆるとも我儕われらかれにすゝめ爾曹なんぢらうれへなからしめん
15 かれら銀子かねとりいひふくめられたるごとくしたりしこゝおいかくごと話今日はなしこんにちいたるまでユダヤびとうち傳播いひひろめられた
[千七百一] り


16 十一じふいち弟子でしガリラヤゆきイエス彼等かれらめいたまところやまいた
17 イエスはいせりされうたがへるものもありき
18 イエスすゝみ彼等かれらかたりいひけるハてんのうちうへすべてけんわれたまはれり
19 是故このゆゑ爾曹なんぢらゆきて萬國ばんこくたみにバプテスマをほどここれちゝ聖靈せいれいいれ弟子でしとし
20 かつわがすべ爾曹なんぢらめいぜしことまもれと彼等かれらをしへそれわれハをはりまでつね爾曹なんぢらともあるなりアメン


新約全書馬太傳福音書 終