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明治元訳新約聖書(大正4年)/路加傳福音書(2)

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第十七章

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………………
14 イエスこれいひけるハゆきおのれ祭司さいしせよ彼等かれらゆくうちきよめられたり
15 その一人己ひとりおのいやされたるを歸來かへりきた大聲おほごゑかみあが
16 イエス足下あしもと俯伏ひれふししゃせりかれサマリアびとなり
17 イエスこたへいひけるハきよめられしもの十人じふにんあらず其九人そのくにん何處いづこある
18 この異邦人いほうじんほかかみほまれせんとてかへりたるものあらざる
19 またかれいひけるハたちゆけなんぢの信仰しんかうなんぢをすくへ
20 かみくにいづれとききたるとパリサイのひととはれけれバイエスこたへいひけるハかみくにあらはれてきたるものにあら
21 こゝかしこよとひといふべきものにもあら夫神それかみくに爾曹なんぢらうちあり
22 また弟子でしいひけるハ爾曹人なんぢらひと一日いちにちたくおもきたらんされどもざるべし
23 人々ひとゞゝなんぢらにこゝかしこよといはされどもゆくなかれしたがなか
24 それ電光いなづまてん彼處あなたよりひらめてん此處こなたひかるごとひと其日そのひ如此かくあるべし
25 されひとかならずまづおほくのくるしみうけまた此世このよひとすてられん
26 ノアときありごとひとときにもしかあるべし
27 すなはノア方舟はこぶねいりまで衆人食飮 嫁 娶ひとゞゝのみくひ、とつぎ、めとりなどたりしがこう
[千七百七十九] ずいきたりて彼等かれらほろぼせり
28 またロトときにも如此かくありき衆人食飮、貿易、樹藝、構造ひとゞゝくひのみ、うりかひ、たがやし、しゃづくりなどたりしに
29 ロトソドムよりいで日天ひてんより硫磺いわうふらせて彼等かれらをみなほろぼせり
30 ひとあらはるゝにもまたかくあるべし
31 其日そのひにハ人屋上ひといへのうへあら其器具室そのうつはものいへあるともこれたらんとてくだるなかれ亦田畑またたはたにあるものおなじかへるなかれ
32 ロトつまおも
33 おほよ其生命そのいのちたすけんとするものこれうしなもしその生命いのちうしなはんものこれたもつべし
34 われなんぢらにつげ其夜そのよふたり同床ひとつどこあらんに一人ひとりとら一人ひとりのこさるべし
35 二人ふたりをんなともにうすひきおらんに一人ひとりとら一人ひとりのこさるべし
36 かれらこたへいひけるハしゅ此事何處このこといづこある彼等かれらいひけるハしかばねあるところにハわしあつまらん


第十八章

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[1] イエスまたひとつね祈禱いのりして沮喪きをおとすまじきためたとえ彼等かれらかたりけるハ
2 或邑あるまちかみおそれひとうやまハざる裁判人さいばんにんありけるが
3 其邑そのまち嫠婦やもめをんなありてわれ我仇わがあだよりすくひたまへといひかれいたりしに
4 かれひさしうけがハざりしかどそののちこゝろうちおもひけるハ我神われかみおそれひとをもうやまハざれど
5 此嫠このやもめわれをわづらはせバかれたえきたりわれなやまさゞるためこれすくハん
6 しゅいひけるハ不義ふぎなる裁判人さいばんにんいひこときけ
7 ましかみ晝夜祈ちゅうやいのところえらびたるものながしのぶともつひすくはざらんや
8 われなんぢらにつげかみすみやか彼等かれらすくハんされひときたらんときしんんや


9 またみづからおもひとかろしむる或人あるひとイエス此譬このたとへかたれり
10 二人祈ふたりいのらんとて殿みやのぼりしが其一人そのひとりハパリサイの人一人ひとひとり税吏みつぎとりなりき
11 パリサイのひとたちてみづか如此かくいのれりかみわれほかひとごと強索、不義、姦淫うばひ、ふぎ、かんいんせずまたこの税吏みつぎとりごとくにもあらざるをしゃ
12 われ七日間ひとまわり二次断食ふたたびだんじきまたすべてうるものゝ十分じふぶんいちさゝげたり
13 税吏みつぎとりはるかたちてんをもあふ其胸そのむねうちかみ罪人ざいにんなるわれあはれたまへいへ
14 われなん
[千七百八十] ぢらにつげ此人このひと彼人かのひとよりハせられていへかへりたりそれすべて自己みづからたかぶものさげられ自己みづからへりくだものあげらるべし


15 イエスさはられんがため人々嬰孩ひとゞゝをさなご携來つれきたりしに弟子でしたちこれいましめたり
16 イエス嬰孩をさなご弟子でしいひけるハ嬰孩をさなごわれきたらせよ彼等かれらいましむなかかみくに居者をるものかくごとものなり
17 まこと爾曹なんぢらつげおほよ嬰孩をさなごごとくかみくにうけざるものこれいることをざるなり


18 或宰あるつかさとふていひけるハ善師よきし永 生かぎりなきいのちつぐためにわれなにをなすべき
19 イエスかれいひけるハなにわれよしいふひとつほか善者よきものハなしすなはかみなり
20 いましめなんぢしるところなり姦淫かんいんするなかころすなかれぬすむなかれ妄 證いつはりのあかしたつなかなんぢちゝはゝとをうやま
21 こたへけるハこれみな我幼わがをさなきよりまもれるものなり
22 イエスこれきゝいひけるハなんぢなほひとつかくその所有もちものことゞゝうり貧者まづしきものほどこさらてんおいたからあらんしかしてきたわれしたが
23 かれおほいとめものなりしかバこれきゝいたうれへたり
24 イエスそのいたうれへしをいひけるハとめものかみくにいる如何いかかたいかな
25 とめものかみくにいるより駱駝らくだはりあな穿とほるかえっやす
26 これきけものどもいひけるハさらたれすくひうくべき
27 イエスいひけるハひと爲得なしえざるところかみ爲得なしうるところなり
28 ペテロいひけるハ我儕一切われらいっさいすてなんぢしたがへり
29 イエス彼等かれらいひけるハまこと爾曹なんぢらつげおほよかみくにためいへあるひハ父母ふぼあるひハ兄弟きゃうだいあるひハつまあるひハ兒女こどもすつもの
30 今世このよにて幾倍いくばいをうけ來世のちのよにハ永 生かぎりなきいのちうけざるものなし


31 イエス十二じふに弟子でしともなひてこれいひけるハ我儕われらエルサレムのぼひとつい預言者よげんしゃしるされしことハみなとげらるべし
32 夫人それひと異邦人いほうじんわたされ戯弄凌辱なぶられくるしめられつばきせらるべし
33 かつかれら鞭撲むちうちこれころさん又第三日またみっかめよみがへるべし
34 弟子でしこのことすこしさとらまたこのいへことかれらにかくれたりまたそのかたれること
[千七百八十一] をしらざりき
35 イエスエリコちかよれるときある瞽者道めしひみちかたはらしてこひたりしが
36 大衆おほぜいすぐるきゝ何事なにごとぞといひけれバ
37 人々ひとゞゝナザレイエスすぐるなりとつぐ
38 瞽者めしひよバゝりいひけるハダビデイエスわれ衿恤あはれみたまへ
39 さきだち行者ゆくものども黙止だまれこれいましむれどもますゝゝダビデわれ衿恤あはれみたまへとよばはれり
40 イエス立止たちどまかれ携來つれきたれめい瞽者めしひちかよりけれバ
41 イエスかれとひけるはなんぢわれになにせられんとねがふやこたへけるハしゅみえなんことねが
42 イエスかれいひけるハみることをうけなんぢしんなんぢをすくへり
43 かれやがてかみあがめイエスしたがひぬたみみなこれかみ讃美ほめたり


第十九章

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[1] イエスエリコいり經往すぎゆくとき
2 ザアカイいへひとあり税吏みつぎとりかしらにてとめものなり
3 イエス如何いかなるひとなるかんとおもへども身量みのたけひくけれバ大衆おほぜいなるによりみることを
4 かれんとてはしりゆき桑樹くはのきのぼれりイエスそのみちとほらんとするゆゑなり
5 イエスこゝきたあふぎかれいひけるハザアカイいそくだ我今日われけふかならずなんぢいえ宿やどらん
6 かれいそぎくだよろこびイエスむかへたり
7 衆人ひとゞゝこれをてみな怨言つぶやきいひけるハかれゆきつみあるひときゃくれり
8 ザアカイたちしゅ我所有わがもちものなかば貧者まづしきものほどこさんもしわれ誣訴しひうったへひとよりとりたるところあらバ四倍しばいにしてこれつくのふべし
9 イエスかれいひけるハ今日けふこのいへすくはるゝことをたりそはこのひとアブラハムなれバなり
10 それひとうしなひしものたづねすくはためきたれり
11 衆人ひとゞゝこのこときけときまたたとへまうけいへエルサレムちかくかつ衆人神ひとゞゝかみくにたゞちに顯明あらはるべしとおもふゆゑなり
12 ある貴者たふときひとみづから領地りゃうちうけかへらんとて遠國とほきくに往時ゆくとき
13 十人じふにんしもべよび彼等かれら金十斤きんじふきんあたへいひけるハ我來わがくるまで商賣しょうばい
[千七百八十二] よ
14 その國民くにびとかれをうらみあとより使つかひつかはいひけるハ我儕われらこのひときみとすることこのま
15 領地りゃうちうけかへりときおのゝゝ商賣しょうばいして幾何なにほどたるかをしらんとてかねあたへおきたる僕等しもべどもよべめいじぬ
16 はじめ一人ひとりきたりていひけるハしゅなんぢ一斤いっきん十斤じっきんたり
17 主人しゅじんいひけるハ兪善僕よしよきしもべなんぢ少者わづかなものちゅうなれバとをまちつかさどるべし
18 またつぎ一人ひとりきたりていひけるハしゅなんぢ一斤いっきん五斤ごきんたり
19 主人しゅじんいひけるハなんぢいつゝまちつかさどるべし
20 また一人ひとりきたりていひけるハしゅなんぢ一斤いっきんこゝありわれ手巾ふくさつつみ藏置をさめおきたりき
21 そはなんぢ嚴 人きびしきひとなるがゆゑわれおそれたり爾置なんぢおかざるものをとりまかざるものをかるひとなれバなり
22 主人しゅじんいひけるハ惡 僕あしきしもべわれなんぢのくちよりなんぢさばくべしなんぢわれハ嚴 者きびしきものにておかざるものとりまかざるものかるしる
23 しかるなん我來わがきたるときもとんがため我金わがかね兌錢肆かはせざあづけざりしや
24 つひかたはらたてものいひけるハ此人このひと一斤いっきんとり十斤有じふきんもてものあたへ
25 衆人主人ひとゞゝしゅじんいひけるハしゅ其人そのひとすでに十斤じふきんもて
26 主人しゅじんいひけるハわれなんぢらにつげ夫有者それもつものあたへられ不有者もたぬもの其所有そのもてるものまでもとらるべし
27 かつわがかたきすなハち我支配わがしはいこのまざるものこゝ曳來つれきたりて我前わがまへころ
28 イエス此事このこといひしのち衆人ひとゞゝさきだちてエルサレムのぼれり
29 橄欖かんらんなづくやまよれベテパゲベタニヤちかづけるときその弟子二人でしふたりつかはさんとていひけるハ
30 對面むかふむらにゆけ彼處かしこいらひといまのらざるところつなぎたる驢駒ろばのこあふべしそれとき牽來ひききた
31 もしたれ爾曹なんぢらなにゆゑとくやと問者とふものあらバ如此かくこたふべししゅ用也ようなり
32 つかはされたる者往ものゆきけれバはたし其語そのかたりたまへるごとあひ
33 かれら驢駒ろばのことくとき其主等そのぬしどもかれらになん驢駒ろばのことくやといひしかバ
34 こたへしゅようなりといひ
35 これイエス牽來ひききたおのころも驢駒ろばのこおきイエス其上そのうへのす
36 イエスゆきける
[千七百八十三] とき衆人ひとゞゝそのころも路上みちしけ
37 イエスエルサレムちかづき橄欖山かんらんざんくだらんとする時大衆ときおほぜい弟子でしみなよろこ其見そのみところ奇跡ふしぎなるすべてわざより大聲おおごゑかみほめいひけるハ
38 しゅよりきたわうさいはひなりてんおいてハ和平おだやか至上所いとたかきところにハ榮光えいくわうあるべし
39 大衆おほぜいうちよりあるパリサイのひとイエスいひけるハなんぢ弟子でしいましめよ
40 彼等かれらこたへけるハわれなんぢらにつげ此輩このともがらもし黙止だまりなバ石號叫いしさけぶべし
41 すでちかづけるとき城中じょうちゅうこれためなきいひけるハ
42 もしなんぢだにもいまこのなんぢおいなんぢ平安おだやかかゝはれることしらさいはひなるにいまなんぢのかくれたり
43 なんぢてきなんぢの周邊まはりるいきづ四方しほうより圍攻かこみせめ
44 なんぢ其中そのうちなる兒女こども擊滅うちほろぼいしをもいしうへのこさざるきたらんこれなんぢ其眷顧そのかへりみたまふのときしらざれバなり
45 イエス殿みやいりそのうちにて貿易あきないせるもの逐出おいいだ
46 彼等かれらいひけるハ我室わがいへ祈禱いのり殿いへなりとしるされたるに爾曹なんぢらこれをぬすびとなせ
47 イエス日々ひごと殿みやにてをし祭司さいし長學者民をさがくしゃたみ尊 者たふときものどもかれころさんとはかれどもたみみなこゝろかたむけて其教そのをしへきけるがゆゑ
48 なすべきかたしらざりき


第二十章

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[1] 一日そのころイエス殿みやにてたみをし福音ふくいんのべしに祭司さいし長學者、長老共をさがくしゃ、としよりともちかよりイエスかたりいひけるハ
2 なに權威けんゐ此事このことなすたがこの權威けんゐあたへたるか我儕われらつげ
3 こたへいひけるハわれ一言ひとことなんぢらにとはまたわれにつげ
4 ヨハ子のバプテスマハてんよりかひとよりか
5 彼等かれらたがひにいひけるハ若天もしてんよりといは何故なにゆゑかれをしんぜざるいは
6 もしひとよりといはたみみなヨハ子預言者よげんしゃしんずれバ我儕われらいしにてうたんとて
7 つひこたへいづれよりなるかしらずといへ
8 イエス彼等かれらいひけるハわれまたなにの權威けんゐなすかを爾曹なんぢらつげ


9 すなは此譬このたとへたみかたれり或人あるひと
[千七百八十四] 葡萄圃ぶだうばたけをつくり農夫のうふ租與かしひさしく他國ほかのくにゆきしが
10 ときいたりけれバ葡萄圃ぶだうばたけ受収うけとらためしもべ農夫のうふもとつかはしけるに農夫等のうふどもこれをうちたゝきてむなしかへらせたり
11 またほかしもべつかはしゝにこれをもうちたゝきはづかしめてむなしかへらせたり
12 又三次僕またみたびしもべつかはしゝにこれをもきずつけて逐出おひいだしけれバ
13 葡萄圃ぶだうばたけ主曰あるじいひけるハわれいかになさ我愛子わがあいしつかはすべしこれ恭敬うやまふならん
14 農夫のうふどもこれたがひはかりいひけるハこれ嗣子あとつぎなりいざかれをころさんなりはひ我儕われら所有ものになるべしとて
15 かれ葡萄圃ぶだうばたけそといだしてころせりしから葡萄圃ぶだうばたけあるじいかに彼等かれらなすべき
16 かれきたり此農夫等こののうふどもほろぼ葡萄圃ぶだうばたけ他人ほかのひとあづくべし人々ひとゞゝこれをきゝいひけるハしかあらざれ
17 イエス彼等かれらいひけるハ匠人いへつくりすてたる石是いしこれこそ屋隅いへのすみ首石おやいしとなれとしるされしはなんぞや
18 此石このいしうへおつるものハやぶれこの石上いしうへおつれバそのものくだかるべし
19 祭司さいし長、學者等をさ、がくしゃどもそのおのれさし此譬このたとへかたりたるをしりこのときイエスとらへんとしかどもたみおそれたり
20 すなはこれうかゞひそのことばとり方伯つかさ政事せいじ權威けんゐわたさんとしてみづか義人ぎじんいつはれる間者かんじゃつかはせり
21 つきイエスとひけるハ我儕われらなんぢのいふところをしふるところたゞしくかつかたよらずまことかみみちをしふるをしる
22 われらみつぎカイザルをさむるハよきいな
23 イエスその詭譎あしきたくみなるをしりいひけるハなんわれこゝろむるや
24 デナリをわれせよ此像このかたちしるしたれなるかこたへカイザルなりといふ
25 イエスいひけるハさらカイザルものカイザルをさかみものかみをさめ
26 かれらたみまへ其言そのことば執得とりえかつそのこたへふしぎおもひ黙然もくねんたり


27 よみがへことなしといふサドカイのひときたりてイエスとひけるハ
28 モーセ我儕われら書遺かきおける若人もしひと兄弟妻きゃうだいつまありなくしてしな兄弟きゃうだいそのつまめとうみ其嗣そのあとつがすべしと
29 され七人しちにん兄弟きゃうだいあらんに長子妻あにつまめとなくしてしに
30 第二だいに
[千七百八十五] ものこのをんなめとなくしてしに
31 第三だいさんこれめと七人同しちにんおなじこれめとなくしてしに
32 つひをんなしにたり
33 さら七人しちにんともに此婦このをんなつまとせしゆゑよみがへりたるときたれつまなるべき
34 イエスこたへいひけるハ此世このよ娶嫁めとりとつぐことあり
35 彼世かのよより復生よみがへるたるものハ娶嫁めとりとつぐことなし
36 これまたしぬることあたはざるがゆゑなり蓋天そはてん使つかひひとし復生よみがへりにてかみなれバなり
37 さてしにものよみがへることにつきてハモーセ棘中しばまきしゅアブラハムかみイサクかみヤコブかみいひこれ明白あらはせり
38 それかみしにたるものかみあらいけものかみなり蓋神そはかみまへにハ皆生みないけものなれバなり
39 その學者等がくしゃたちこたへいひけるハよくいへり
40 こののちあえイエス問者とふものなかりき


41 イエス彼等かれらいひけるハ人々如何ひとゞゝいかなれバキリストダビデいふ
42-43 ダビデみづかまきしゅわがしゅいひけるハわれなんぢのてきなんぢ足凳あしだいなすまでみぎすべしといへ
44 されダビデこれしゅとなへたれバ如何いかそのならん
45 たみみなこれきけときその弟子でしにいひけるハ
46 長服ながきころも遊行あるくことをこの市上ちまたにてひと問安會堂あいさつくわいだう高座筵間かうざふるまひ上座じゃうざよろこ學者がくしゃつゝしめよ
47 彼等かれら嫠婦やもめをんないへのみいつハりて長祈ながきいのりをなすさばかるゝこともっとおも


第二十一章

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[1] イエスをあげとめ人々ひとゞゝ捐輸をさめもの賽錢箱さいせんばこいるるを
2 またあるまづし嫠婦やもめをんなのレプタふたついれたるをいひけるハ
3 われまこと爾曹なんぢらつげ此貧このまづしやもめすべてものよりもおほいれたり
4 そはかれらはみなその羨餘あまりあるところより捐輸をさめものかみにさゝげ此婦このをんな不足ともしきところより其所有そのしんだいことゞゝさゝげたれバなり


5 また或人殿あるひとみや美石よきいし奉納物ほうなふもの修飾かざれることをかたりしに
6 イエスいひけるハ爾曹なんぢらところのものいしいしうへにものこさくづさるゝいたらん
7 彼等かれらとふていひけるハいづれときこのこと
[千七百八十六] あらんまさこときたらんとき如何いかなるしるしある
8 イエスいひけるハ爾曹なんぢらつゝしみてまどはさるゝことなかれそはおほくのものわがをかしきたりわれキリストなりときちかよれりといはされ爾曹從なんぢらしたがなか
9 戦 亂たたかひみだれきくときおそるゝなか此等これらことさきあるやむざること也然なりされ末期をはりいますみやかならず
10 またいひけるハたみたみをせめくにくにせめ
11 各處ところゞゝゝおほいなる地震、餓饉、疫病じしん ききん えきびょうおこりまたおそるべきことおほいなる休徴天しるしてんよりあらはるべし
12 此事このことよりさき人々爾曹ひとゞゝなんぢらとらくるし會堂くわいだうおよびひとやわた我名わがなためわうおよびつかさまへ曳往ひきゆくべし
13 されども爾曹なんぢら此事このことあふあかしとなるなり
14 ゆゑ爾曹なんぢらまづなにこたへんと思慮おもひはかるまじきことこゝろさだめ
15 そはすべて爾曹なんぢらあだするもの辨駁いひふせぎまた敵對もとることをなしえざるべきくちちゑとをわれなんぢらにあたへん
16 またなんぢら父母、兄弟、親戚、朋友等ちゝはゝきゃうだいしんせきほうゆうなどよりわたされかつなんぢらのうちあるものころさるべし
17 爾曹なんぢらわがため人々ひとゞゝにくまれん
18 されども爾曹なんぢら首髪一縷かみのけひとすぢうしなハじ
19 なんぢら忍耐たへしのび其生命そのいのちまったうせよ
20 なんぢら軍勢ぐんぜいエルサレムかこまるゝをなバ其亡そのほろびちかきにあるしれ
21 そのときユダヤ在者をるものやまのがれエルサレム在者をるものいで郷下ゐなか在者をるものエルサレムいるなかれ
22 これ刑罰けいばつにしてしるされたることのみなとげらるゝなり
23 其日そのひにハはらみたるもの哺乳兒ちのみごあるものわざはひなるかなこれおほいなるわざはひありていかりこのたみおよぶべければなり
24 人々刀刃ひとゞゝつるぎのはたふまたとらハれて諸國しょこくひかエルサレム異邦人いはうじん時滿ときみつるまで異邦人いはうじん蹂躙ふみあらさるべし
25 また日月星ひつきほし異象しるしあるべしにてハ諸國しょこく人哀ひとかなしうみなみとの漰涛なりとどろくより顚沛うろたへ
26 人々危懼ひとゞゝおそれつつ世界せかいきたらんとすること俟惱まちなやむべし是天これてんいきほ震動しんどうすべけれバなり
27 その時人々ときひとゞゝひと權威けんゐおほいなる榮光えいくわうくも乘來のりきたるをるべし
28 此等これらこと成初なりはじめときにハおき爾曹なんぢらかうべあげよなんぢらのすくひちかづけバなり
29 イエスたとえ彼等かれらかたりけるハ無花果いちじくすべて
30 すでめざせ爾曹なんぢらこれをみづかなつハはやちかししる
31 かくごと爾曹なんぢら此等これら事成ことなるかみくにちかきしれ
32 まことわれなんぢらにつげ此事このことみななるまでハ此世このよすぎざるべし
33 天地てんちすたるべしされども我言わがことばすたべからず
34 爾曹なんぢらみづからをつゝしめおそらくハ飮食いんしょくふけ世事よのことまどは爾曹なんぢら心昏迷こゝろにぶくなりておもひよらざるとき此日このひなんぢらにのぞま
35 これ機檻わなごとあまねうへ居者すむもののぞむべし
36 是故このゆゑ爾曹敞醒なんぢらつゝしみ此臨こののぞまんとするすべてことのがれまたひとまへ立得たちうるやうにつねいの
37 イエスひる殿みやにてをしよるいで橄欖かんらんいへやま宿やどり
38 たみみなかれきかんとてあさはやく殿みやきたれり


第二十二章

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[1] 逾越すぎこしいへ除酵節たねいれぬぱんのまつりちかづけり
2 祭司さいし長學者をさがくしゃたち如何いかにしてかイエスころさんとうかゞ但民ただたみおそれたり
3 さてサタン十二じふにうちイスカリオテとなふユダいり
4 かれ祭司さいしをさたちと殿司等みやもりども往如何ゆきいかにしてかイエスわたさんとかたりけれバ
5 彼等喜かれらよろこびて銀子ぎんすあたへんとやく
6 ユダうけがひて人々ひとゞゝざるときイエスわたさんとをりうかゞへり


7 さて除酵節たねいれぬぱんのいはひなる逾越すぎこしこひつじころすべきになりけれバ
8 イエスペテロヨハ子つかはさんとていひけるハゆき我儕われらしょくせんため逾越すぎこしそなへ
9 かれらこたへけるハ何處いづここれそなへんとする
10 イエスいひけるハ城下じょうかいらみづいれたるかめもてひとなんぢらにあふべし其入そのいるところのいへしたがゆき
11 いへあるじなんぢにいふわれ弟子でしとも逾越すぎこししょくすべき客房きゃくざしき何處いづこあるやといへ
12 すれバかれそなへたるおほいなる樓房にかひざしきすべし其處そこそなへ
13 彼等かれらゆきてイエス曰給いひたまひたるごとあひしかバ逾越すぎこしそなへなせ
14 時至ときいたりけれバイエスしょくつき又使徒またしとともつきたり
15 イエス彼等かれらいひけるハ我苦難われくるしみうくまへ爾曹なんぢらとも此逾このすぎ
[千七百八十八] こししょくすることおほいねがへり
16 われ爾曹なんぢらつげこれかみくにまでハまたこれをしょくせじ
17 イエスさかづきをとりしゃしていひけるハこれとりたがひわかて
18 われなんぢらにつげかみくにきたるまでハ葡萄ぶだうよりつくりしものをのま
19 またパンをとりてしゃしてさきかれらにあたへいひけるハこれ爾曹なんぢらにためあたふるわが身體からだなりわれおぼえためこれなせ
20 またしょくしてのちさかづきをとりいひけるハ此杯このさかづき爾曹なんぢらためなが我血わがちにしてたつところ新約しんやくなり
21 それわれをわたものわれともだいにあり
22 ひとはたしさだめられたるごとゆかされどもひとわたひとわざはひなるかな
23 かれら此事このことものたれなるたがひとひ
24 また彼等かれらうちにてをさたるものたれなるかとたがひあらそひありき
25 イエス彼等かれらいひけるハ異邦人いはうじんわう其民そのたみ支配しはいするまたそのうへけん秉者とるものめぐみほどこものとなへらる
26 されども爾曹なんぢら如此かくすべからず爾曹なんぢらのうちおほいなるものわかきごとかしらたるものつかふものごとくなるべし
27 しょくつけものつかふものいづれおほいなるしょくつけものならずやされどもわれ爾曹なんぢらうちつかふものごと
28 わが患難くわんなんおいわれともをりもの爾曹なんぢらなり
29 我父わがちゝわれにんぜしごとわれ爾曹なんぢらくににんずべし
30 これ爾曹なんぢらわがくにおい我案わがだい食飮くいのみ且位かつくらゐしてイスラエル十二じふに支派わかれさばかんがためなり
31 しゅまたいひけるハシモンシモンサタン爾曹なんぢらもとめむぎごとふるはんとす
32 されどもなんぢ信仰絶しんこうたえざるやうなんぢためいのれり爾歸なんぢかへらときその兄弟きゃうだいかたくせよ
33 シモンいひけるハしゅ我獄わがひとやにまでもにまでもなんぢともゆかんとこゝろさだめたり
34 イエスいひけるハペテロ我爾われなんぢつげ今日けふにはとりなかざるまへなんぢ三次みたびわれしらずといは


35 またかれらにいひけるハ我財布、われさいふ 旅袋、たびぶくろ くつをももたせで爾曹なんぢらつかはしゝときことかけたることありしやこたへけるハなかりき
36 イエス彼等かれらいひけるハいま財布さいふあるものこれをとれ旅袋たびぶくろあるもの亦然またしか此等これらもた
[千七百八十九] ぬもの衣服いふくうりつるぎかふべし
37 われなんぢらにつげかれ罪人つみびとうちかぞへられてありしとしるされたる此言このことわれおいとげらるべしそはわれをさしたることかならとげらるべけれバなり
38 かれらいひけるハ主見しゅみこゝふたつつるぎありイエス彼等かれらいひけるハたれ
39 イエスいで橄欖かんらんやまゆきけるに其弟子そのでししたがへり
40 其處そのところいたり彼等かれらいひけるハ誘惑まどひいらざるやういの
41 イエス彼等かれらはなれいしなげらるるほどへだゝ曲膝ひざまづきいのりいひけるハ
42 ちゝ聖旨みこゝろかなは此杯このさかづきわれよりはなたまされども我意わがこゝろあらずたゞ聖旨みこゝろのまゝになしたまへ
43 使者天つかひてんよりかれあらはれて健壯ちからそへ
44 イエスいたかなししきりいのれり其汗そのあせしたゝりごとおちたり
45 祈禱いのりよりたち弟子でしきた彼等かれらうれへねむれるを
46 いひけるハなんねむるやおき誘惑まどひいらざるやういの
47 如此かくいへるとき許多おほぜい人々ひとゞゝきたる又十二またじふに一人ひとりなるユダいへ者其ものそれさきだちてイエス接吻くちつけせんとちかよれり
48 イエスいひけるハユダなんぢ接吻くちつけをもてひとわた
49 そのかたはらたるものどもことおよばんとするをいひけるハしゅ我儕刃われらつるぎをもてうつべき
50 其中そのうち一人祭司ひとりさいしをさしもべうち其右そのみぎみゝ削落きりおとせり
51 イエスこたへこれゆるせといひそのみゝさはりいやしたり
52 イエスこゝきたり長殿司をさみやもりおよび長老等としよりどもいひけるハ爾曹刃なんぢらつるぎぼうとを持來もちきた強盗ぬすびとむかふごとくする
53 われ日々ひゞ爾曹なんぢらとも殿みやありときわれおくことなかりきしかるにいま爾曹なんぢらときかつ黑暗くらきいきほひなり
54 彼等かれらイエスとらひき祭司さいしをさいへ携往つれゆけペテロはるかしたがひぬ
55 人々中庭ひとゞゝなかにはのうちにたきともしけれバペテロ其中そのなかしたり
56 或婢あるしもめかれがかたはらせるをこれをつらゝゝいひけるハ此人このひとかれともあり
57 ペテロうけがはずしてをんなわれこれをしらずといへ
58 頃刻しばらくしてほかひと亦見またみいひけるハなんぢ彼等かれら一人ひとりなりペテロいひけるハひとわれ
[千七百九十] はしから
59 おほよ一時ひとときほどすぎまたほかの人力言ひといひはりけるハまこと此人このひとかれともありこれガリラヤひとなればなり
60 ペテロいひけるハひとわれなんぢのいふところをしらずといひはてたちまにはとりなき
61 主身しゅみかへしてペテロたまへり今日けふにはとりなくまへ三次みたびわれをしらずといはんとしゅいひたまひしことばペテロおもひいだ
62 そといでいたなけ


63 イエスまもれるものども嘲弄てうろうしてかれうち
64 そのおほとふいひけるはなんぢ撲者うつものたれなるか預言よげんせよ
65 また多端さまゞゝこといひこれそしれり
66 平旦よあけたみ長老としより祭司さいしをさ學者がくしゃどもあつまりてイエス集議所しふぎしょ曳往ひきゆき
67 いひけるはなんぢもしキリストならバ我儕われらつげイエスいひけるは假令たとへわれ爾曹なんぢらいふともしんぜざるべし
68 またたとひわれなんぢらにとふともこたへざるべし
69 いまより後人のちひと大權ちからあるかみみぎせん
70 みないひけるは猶証據なほしょうこもちゐんや我儕われらみづから其口そのくちよりきけ


第二十三章

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[1] 衆人ひとゞゝみなイエスピラトつれゆき
2 これうったへいひけるは我儕われらこのひとたみまどはみつぎカイザルをさむることをこばみづかわうなるキリストとなふるをたり
3 ピラトイエスとふいひけるハなんぢユダヤびとわうなるかこたへけるハなんぢいへごと
4 ピラト祭司さいし長等をさたち衆人ひとゞゝいひけるハわれこのひとおいつみあるを
5 彼等かれらますゝゝ極力はげみいひけるハかれガリラヤよりはじめあまねユダヤをし此處このところまできたりたみみだせり
6 ピラトガリラヤきゝ此人このひとガリラヤびとなるとひ
7 そのヘロデ所管しはいなるをしりこれヘロデおく此時このときヘロデエルサレムありしが
8 イエスはなはよろこべり蓋各様そはさまゞゝなるかれ風聲うはさきゝひさしこれんことをおもまたその奇異ふしぎなるわざんとのぞみゐたれバなり
9 是故このゆゑ多言おほくのことばとひけれどもイエスなにをもこたへざりき
10 祭司さいし長學者をさがくしゃたちかたはら
[千七百九十一] たちしきりかれうったへ
11 ヘロデその士卒しそつともかれ藐視嘲弄かろしめてうろうして華服うるはしきころもまたピラトおくれり
12 ピラトヘロデさきにハあだたりしが當日このひたがひにしたしみなせ


13 ピラト祭司さいし長有司をさつかさおよび民等たみどもよびあつめて
14 いひけるハ爾曹なんぢらこのひとわれ携來つれきたりてたみみだしたるものなりとせりわれなんぢらがうったふところ爾曹なんぢらまへさばけども其罪そのつみあるを
15 ヘロデ亦然またしか爾曹なんぢらヘロデつかはせどかれイエス行事せしこと死罪しざいあたるざりき
16 ゆゑわれむちうちてこれゆるさん
17 そはこの節期いはひかなら一人ひとりゆるすことあれなり
18 彼等かれらみな一斉ひとしくよバはりて此人このひとのぞバラバ我儕われらゆるせといふ
19 かれ城下じゃうか一揆いっきおこひところしてひとやいりものなり
20 ゆゑピラトイエスゆるさんとおもまたかれらにいひしかど
21 かれらよばはりてこれ十字架じふじかつけ十字架じふじかつけよといふ
22 ピラト三次みたびいひけるハかれなに惡事あくじしやわれいまだかれ死罪しざいあるをざれバむちうちてゆるさん
23 彼等厲かれらはげしこゑをたてゝかれ十字架じふじかつけんと言募いひつのれりつひ彼等かれら祭司さいしをさ聲勝こゑかちたり
24 ピラトそのねがひごとさだめ
25 彼等かれらねがへ一揆いっきおこひところしてひとやいりたるものゆる其意そのこゝろまかせてイエスわたせり
26 彼等かれらイエス曳往ひきゆくとき田間ゐなかより出來いできたれるクレ子シモンいへものとらそれ十字架じふじかおはせてイエスしたがハせたり
27 おほくたみおよび婦等をんなたちしたが婦等をんなたちかれ哭哀なきかなしめり
28 イエス彼等かれらかへりみいひけるハエルサレム女子むすめ我爲わがためなくなかれたゞおのれとおのためなけ
29 うまざるものいまだはらまざるのたいいまだのませざるのさいはひなりといはきたらん
30 當時人々山そのときひとゞゝやまむかひ我儕われらうへたふれをかむかひ我儕われらおほへといは
31 もし青木あをきにさへ如此かくなさバ枯木かれき如何いかゞせられん
32 またほか二人ふたり罪人つみびとイエスとも死罪しざいおこなはんとて曳往ひきゆけ
33 彼等かれらクラニオンいへところいたりてこゝイエスおよ罪人つみびと十字じふじ
[千七百九十二] つけ一人ひとりイエス右一人みぎひとりひだりおく
34 イエスいひけるハちゝ彼等かれらゆるたま其爲そのなすところをしらざるがゆゑなり彼等鬮かれらくじをしてイエス衣服いふくわか
35 人々立ひとゞゝたちイエスたり有司やくにん亦嘲哂またあざわらふていひけるハかれ他人たにんすくへりもしキリストかみえらびたるものならバ自己みづからすくふべし
36 兵卒へいそつまたかれを嘲弄てうろうきたあたへ
37 なんぢもしユダヤびとわうならバ自己みづからすくへといへ
38 またギリシャロマヘブル文字もじにてこれユダヤびとわうなりとかけ罪標すてふだ其上そのうへたてたり


39 かけられたる罪人つみびと一人ひとりイエスそしりいひけるはなんぢもしキリストならばおのれ我儕われらすく
40 ほか一人ひとりこたへてかれいましいひけるはなんぢおなじく審判さばきうけながらかみおそれざる
41 我儕われら當然たうぜんなりせしことのむくいうくるなれど此人このひとなに不是事よからぬことなさざりしなり
42 かくイエスいひけるはしゅ御国みくにきたら時我ときわれおもひたまへ
43 イエスこたへけるはまことわれなんぢにつげん-なんぢはわれとも楽園パラダイスあるべし


44 時約ときおよ十二時じふにじごろより三時さんじいたるまであまねのうへ黑暗くらやみれり
45 日光ひのひかりくらみ殿みやうち幔眞中まくもなかよりさけたり
46 イエス大聲おほごゑよばゝいひけるはちゝ我靈わがたましひなんぢあづ如此かくいひて氣絶いきた
47 百夫ひゃくにんかしらこのなりことかみあがいひけるはまこと此人このひと義人ぎじんなりき
48 これんとてあつまれる衆人ひとゞゝみなこのありし事等ことどもむねうちかへれり
49 イエス相識しるべひとゞゝおよびガリラヤよりしたがひしをんなどもとほたち此等これらことたり


50 議員ぎいんなるヨセフいへぜんかつなるひとあり
51 彼等かれら評議ひゃうぎ行爲しわざうけがはざりきこれユダヤアリマタヤ邑人むらひとにてかみくにまてものなり
52 此人このひとピラトゆきイエスしかばねこひ
53 これ取下とりおろぬのにてつゝみいまだひとはうむりことなきいしほりたるはかおけ
54 此日このひ備節日そなへびなり且安息日近かつあんそくにちちかづきぬ
55 ガリラヤよりイエスともきたりしをんなたちあとしたがひて其墓そのはかしかばねおかれたるさまたり
56 彼等かれらかへ
[千七百九十三] りて香物かうもつ香膏にほひあぶらとゝのおきいましめしたが安息日あんそくにちやすめり


第二十四章

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[1] 七日なぬか首日はじめのひ昧爽よあけ此婦このをんなたち備置とゝのへおきたる香物かうもつもちはかきたりしにほか婦等をんなたちともきたれり
2 彼等石かれらいしはかよりまろびたりしを
3 いりけれバしゅイエスしかばね
4 これため躊躇うろたへをりしにかゞやけ衣服ころもたる二人ふたりそのかたはらたて
5 かれらおそれおもてふせければ其人そのひといひけるは爾曹何なんぢらなんしにたるものたづぬるや
6-7 かれこゝあらよみがへりたりかれガリラヤをりしとき爾曹なんぢらかたりひとかならつみあるひとわたされ十字架じふじかつけられ第三日みっかめよみがへべしいひたりしを憶起おもひいで
8 彼等かれらそのことばおもひいで
9 はかよりかへり此等これらことをみな十一じふいち弟子でしほか弟子等でしたちつぐ
10 此等これらこと使徒しとつげたるものマグダラマリアヨハンナヤコブはゝなるマリアまたほかともあり婦等をんなたちなり
11 使徒しとそのかたれるを虛誕むなしごとおもひてしんぜず
12 ペテロたちはしはかゆきかゞまりて枲布ぬのごろものかたりよせある其遇そのあふところのことあやしみつゝかへれり


13 當日二人このひふたり弟子でしエルサレムより三里さんりバかりへだゝりたるエマヲいへむらゆきけるに
14 たがひ此等これら所遇ありしことどもをかたりあへり
15 かたろんずるときイエスみづかちかづきてともゆけ
16 され彼等かれら目迷めまどはされてしることをざりき
17 イエスいひけるハ爾曹行なんぢらあゆみつゝたがひかなし談論かたりあふことハなん
18 その一人ひとりクレオパいへ者答ものこたへけるハなんぢエルサレム旅人たびびとにしてひとりこのごろありことしらざる
19 こたへけるハ何事なにごとぞやこれいひけるハナザレイエスことなり此人このひとかみ萬民ばんみんまへおいわざことばおほいなるちからある預言者よげんしゃなりしが
20 祭司さいしをさ有司等やくにんたちかれを死罪しざいわたして十字架じふじかつけたり
21 我儕われらイスラエルあがなハんもの此人このひとなりとのぞみたりしまたそれ而已のみならず此等これらことなりしより今日けふ第三日みっかめなるに
22 我儕われらうちなる或婦あるをんなたち我儕われら驚駭おどろか
[千七百九十四] せり彼等朝かれらあさはやくはかゆき
23 そのしかばねずしてきた天使てんのつかひあらハれてかれよみがへれりといへるをたりとつぐ
24 また我儕われらともありものはかゆきたるにをんないへごとくにてかつかれをざりき
25 イエスいひけるハ預言者よげんしゃすべいひたることしんずるこゝろおそおろかなるもの
26 キリスト此等これらなやみうけ其榮光そのえいくわういるべきにあらず
27 ゆゑモーセよりすべて預言者よげんしゃはじめすべての聖書せいしょおいおのれついてのこと解明ときあかされたり
28 彼等かれらゆくところむらちかづきけるにかれゆきすぎんとさまをなせバ
29 彼等かれらすゝめいひけるハ日晨ひかたぶきてくれおよび我儕われらともとゞまかれいりてとゞま
30 ともしょくつけときパンをとりしゃしてさきかれらにあたへけれバ
31 二人ふたりもの目瞭めあきらかになりかれしれ又忽またたちま其目そのめみえなれ
32 彼等かれらたがひにいひけるハ途間みちにて我儕われらかたりかつ聖書せいしょ解開ときひらけるときわれらが心燃こゝろもえしにあらずや
33 此時このときかれらたちエルサレムかへ十一じふいち弟子でしおよびともなるひとあつまをるあふ
34 その人等ひとたちいひけるハ主實しゅじつよみがへシモンあらはれたり
35 二人ふたりもの途間みちにて所遇ありしこととパンをさきたまへるによりしりたることかたれり
36 此事このことかたれるときイエスみづか其中そのうちたちいひけるハ爾曹安なんぢらやすかれ
37 かれらおどろおそれてみるところのものれいならんとおもへ
38 イエスいひけるハ爾曹何なんぢらなんおどろくやなんこゝろうたがおこるや
39 我手わがてわがあしわれなるをしれわれをなでれいある爾曹なんぢらみるごとくにくほねあらざるなり
40 如此かくいひて其手足そのてあしせしに
41 彼等喜かれらよろこべども猶信なほしんぜずあやしめるときイエスこゝ食物しょくもつあるいひけれバ
42 あぶりたるうを蜜房みつぶさあた
43 これとり其前そのまへしょくせり
44 また彼等かれらいひけるハモーセ例預言者おきてよげんしゃふみまたまきしるされたる我事わがことにつくすべてことかならずとぐべきハわれもと爾曹なんぢらともありしときかたれるところなり
45 こゝおい聖書せいしょさとらせんとて其聰そのさとりひら
46 いひけるはすで斯錄かくしるされたり此如かくキリスト苦難くるしみをうけみっ
[千七百九十五] 三日かめよりよみがへるべし
47 またそのより悔改くいあらため赦罪つみのゆるしエルサレムよりはじまり萬國ばんこくたみ宣傳のべつたへられん
48 爾曹なんぢら此等これらこと證人あかしびとなり
49 われわがちゝちかひのものを爾曹なんぢらおくらん爾曹上なんぢらうへよりちからさづけらるゝまでエルサレムとどま
50 イエス彼等かれらみちびベタニヤいたあげ彼等かれらしゅく
51 しゅくするときかれらをはなてんあげられたり
52 彼等かれらこれをはいしていたよろこエルサレムかへ
53 つね殿みやいりかみ頌美ほめまた祝謝しゅくしゃせりアメン



新約全書路加傳福音書 終