日本におけるIP編集

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WMFデザイン・ストラテジー 022022

日本におけるIP編集

ウィキメディア財団のために準備された報告書

Ruri Kato

Fujiko Suda

Project Kobo, K.K.

始めに 3

調査手法 3

日本におけるIP編集 5

匿名性と日本文化 5

日本語版ウィキペディアのコミュニティの力学 8

IP編集と荒らし 9

ペルソナ 11

ペルソナの概観 11

ウィキペディアのコミュニティへの参加 12

Ken:知識の探究者 12

Kumiko:門番 13

門番の1変種:自警 14

Yuto:利他主義者 14

ウィキペディアのコミュニティには関係したくない 15

Emi:ホビイスト 15

Taro:現実主義者 16

Kana:ステルス・マーケッター 17

結論 18

追加引用 18

始めに

本報告書は、日本語版ウィキペディアのIP編集の実情を調べたものです。 [訳注:日本の]文化的観点や、日本語版ウィキペディアの編集者から集めたインタビューや調査の回答についても言及しています。

第1章では、文化的貢献、コミュニティの力学、荒らしを通じてIP編集を概観します。第2章は、民族学的なインタビューに基づいて日本語版ウィキペディアの編集者のペルソナについて見ます。ログインするかしないかの決定が、編集者の関与という文脈の中から浮かび上がってきます。

本インタビューが示していることは、ウィキペディアに貢献している日本人ユーザーの中には匿名性が絶対必要で不可欠な人がいると言うことです。この種の人たちに更なるアクセサビリティを与えることが、ウィキペディアの目的を発展させることにつながるだろうことは確かです。ひいては、広くアクセス可能でフリーな百科事典として行動することによって読者に恩恵を与えることになることでしょう。

調査手法[編集]

データは、日本語版ウィキペディアで募集した調査で集められたものです。インタビューへの参加者は、日本のリクルート会社 Unii Research からのものと同様に本調査の回答者の中からリクルートしたものです。

回答者の中から8人を選び、民族学的なインタビューを行いました。編集歴の長さ、巡回の経験、ログインするしないの決定については、広範な回答者を選び、幅のある知見を得ました。

5人の回答者はZoom上で60分間の詳細なインタビューに参加しました。3人の回答者は、テクストベースのQ&A形式のインタビューに参加しました。後者には、5日間に渡って3つのemailを送り、回答者はその質問に対してemailを返送する、という形でインタビューを行いました。[訳注:最後の]セクションに載せてありますが、個々の回答者には関連して複数の質問をしました。

日本語版ウィキペディアで募集した調査には787名からの応募がありました。募集の広報は、「お知らせ」での1人の日本人ボランティア編集者の努力によるものです。うち97の応募はダブっていたので、後で除外しました。

=== 匿名性と日本文化 ===

  • 匿名による貢献は日本文化における恥[訳注:の文化]]と真の寛大さの表れである
  • 日本のインターネット文化において匿名性に人気があるのは、オンライン掲示板の2ちゃんねる[訳注:現在は5ちゃんねる]が大きく影響している。
  • 経験の浅いウィキペディアユーザーはオンラインのコミュニティーを敵意の温床だと感じている。それは、メンバーがログインしていようとそうでなかろうと無関係である。
  • ウィキペディアにおいて匿名性は、(個人の特定につながるような)個人情報を極力出したくないユーザーにとっては特に重要である。
  • インターネットでの匿名性は、対立のあるトピックで気軽に対話したり本音を話すことを促進している。
  • ウィキペディアでは匿名性があるために、ユーザーは論争に巻き込まれることなしに関与することが出来る。これは、典型的な日本人が対立を避けようとするように、日本人のパーソナリティに合致している。

匿名性は、日本人や日本のインターネット文化の、直接的な物言いを避けるという複雑な特性です。文化的には[訳注:露骨な、あるいははっきりとした言い方をしないことが]好まれ、インターネットのコミュニティーではカギとなる特徴です。

現実生活において日本では匿名での貢献が、見返りを求めない無私で謙虚な行為として何度もとりあげられてきました。例えば、2010年代初頭にあった孤児院への匿名での寄付があげられます。これはメディアでずいぶんと持ち上げられました。

IP編集者の中には、ウィキペディアへの貢献を一種の慈善だと見なしている人もいる。彼らはただ良かれと思ってやっている。彼等は自分のやったことに対して見返りを求めない。

善意のIP編集者を好ましいものとして語る、ウィキペディアのあるログインユーザー

匿名性は、日本のインターネット文化の決定的な特徴でもあります。ウィキペディアの編集者の中には、日本語版ウィキペディアコミュニティーの基礎だと言う人もいます。ウィキペディアの編集者は、インターネットで匿名性が標準となった主たる原因としてはっきり、2ちゃんねる(1999年発祥の日本で最大のオンライン掲示板)をあげています。なぜ日本語版ウィキペディアでIP編集が多くみられ、それを問題視しないのかの理由として、編集者たちは、2ちゃんねるのようなサイトをあげます。同時に、多くのインターネットユーザー、特にインターネットコミュニティにあまりなじみのない人たちが匿名性に恐怖感を抱いたり不信感を持つのも、2ちゃんねるのようなサイトのためでもあります。たとえば、2ちゃんねるはしばしば起こる噓の内容や憎悪に満ちた書き込みのために悪名高く、匿名であるがゆえにユーザーは書き込んだ内容に責任を持たずに好き勝手なことができます。直接相手にものを言うのではなく、誰かの後ろに隠れて話すのは、しばしば典型的な日本人の特性だとみなされています。ある回答者は、インターネットの匿名性と、この日本人の習性とは同根だと指摘しています。この種の匿名性に対する恐怖心から、ユーザーの中にはウィキペディアへの貢献に自分で制限をかける人もいます。たとえば、ログインはしない、他の編集者との対立を避けるため井戸端での議論には参加しない、などです。

やりかたがネガティブだという点で、ウィキペディアのコミュニティーは2ちゃんと同じだと思います。本当に敵意に満ちているのです。書いた内容に対して悪意に満ちた攻撃を受けるのです。

他の編集者とのコミュニケーションを避ける、あるウィキペディアの編集者

特筆すべきは、この観点からは、インターネットのコミュニティは敵対的であるという固有のネガティブなイメージがあるようだということです。インターネット上のペルソナと現実世界のその人とは別の人格だという意味で、IPユーザーと同様、ログインユーザーも匿名だという考えの上に、このようなイメージは形成されています。ログインユーザーであっても、自分の行動に責任を持つことなく有害なことを自由に行えると仮定すればですが。

ネガティブな面があるにしても、匿名性はインターネットでのコミュニケーションにおいて必要な手段だとも考えられています。個人情報が収集されることを警戒して、オンライン上で個人情報を出すことに慎重な人たちにとって、匿名性は必要不可欠なものです。このような警戒感は、日本のインターネットユーザーの間で蔓延していると言われています。ウィキペディアの場合で言えば、たとえユーザーネームだけでは、それがすぐにその人の身元を明かすわけではないとしても、アカウントと編集履歴を紐づけすることで、編集記事の傾向に基づいて[訳注:その人が誰かなのかの]ヒントを見つけ出せるでしょう。このように、インターネット上での仮名と関連する情報を少なくすれば、IP編集と同様、それだけうまく、かつ安全に[訳注:インターネット上の]ペルソナを始めることができるのです。

以下で書くように、あるログインユーザーはユーザーネームに自分の本名を含めていないと言っています。その説明では、「編集に使った情報源が、ある図書館でしか見つからなかったとすると、その人がどこに住んでいるかがわかるかもしれない。もし、ユーザーネームに本名を含めていれば、これらの情報をヒントにして誰なのかを特定し、将来嫌がらせをしてくるかもしれない」

その人の社会的なポジションにとらわれることなく、また、検閲を受けることもなく自由な発言ができる、というのが、インターネットの匿名性による別の恩恵でもあります。匿名でも、また本名ででもインターネットコミュニティで活動した経験のある、あるログイン編集者は述べています。匿名性の良い面は、「安全に気軽なチャットができたり、論争のあるトピックについて対話ができること」だと。「自分の本当のアイデンティティについて言わなければならないのは、敷居が高すぎます(日本人には)。」このような行動は、衝突を避け調和を好む、日本人の特性に根差しています。私たちがインタビューした8人の編集者のうち5人が、論争に関わることなく記事に貢献したい人たちにとってIP編集は必要なオプションだと述べています。あるIP編集者は、こう言っています。「ウィキペディアでの論争を見ると嫌悪感しかわかない。(人目にさらされる場所で)こんなことはすべきではない。」

日本で匿名性がどれほど好まれているかの顕著な例として、TwitterとFacebookの比較があげられるでしょう。Fujiko Suda[訳注:ウィキメディア財団からの委嘱を受けて今回実施した調査の責任者。本報告書の著者の一人。] は日本のTwitterとFacebookの研究プロジェクトに多く参加してきました。これらの研究では、日本におけるTwitterの人気は他国に比べると、ずば抜けて高いことが示されています。2021年のTwitterのユーザー数は5千8百万人ですが、Facebookは2千2百4十万人であまり広く使われていはいません。 Facebookはユーザーに対して、自分の身元を公開するよう求めていますが、一方Twitterは匿名で使えます。Twitterのユーザーは、本名のような自分の個人情報を公開する必要がありません。日本のユーザーは、オフラインで生じるような結果を心配することなく自由にコミュニケーションのできる安全なスペースとして、Twitterはより快適に使えると考えています。それとは対照的に、Facebookは個人情報をあまりにも多く公開しなければならず、コミュニケーションをとるには窮屈だと見ています。

日本語版ウィキペディアのコミュニティの力学[編集]

  • 経験を積んだ編集者たちは、日本語版ウィキペディアのコミュニティは敵対的であると考えている。
  • ある記事の内容について複数のログインユーザー間で合意が成立しないと衝突が起こりがちである。
  • 衝突は、ログインユーザーとIP編集者との間では生じない。これは、IP編集の特性によるものである。ログインユーザーはIP編集者とは直接コミュニケーションをとることが出来ないからである。
  • コミュニティー内ではしばしば党派が形成される。また、その党派の目標を実現しようと操作が行われる。
  • 多くの編集者が対立に巻き込まれることを避けようとしてIP編集に走る。
  • ログインユーザーはIP編集者の言うことを信用していない。

経験を積んだログインユーザーたちは、日本語版ウィキペディアのコミュニティーは敵対的であると見ています。[訳注:ユーザー間の]衝突は、ログインユーザーとIP編集者との間では生じません。これは、ログインユーザーがIP編集者と直接コミュニケートすることができないからです。そのため、彼らの関係は片務的になってしまうので、ログインユーザーはフラストレーションがたまる一方なのに対して、IP編集者はお構いなしのままです。

コミュニティー内の敵対性に関しては、主にログインユーザー間で生じる衝突に起因しています。記事の内容について複数の編集者間で合意が形成されない場合、論争に発展する傾向があります。今回のインタビューや調査では、何人かが他の編集者の編集に対して不満を表しています。彼らは、論争が生じた記事の編集をコントロールしようとしてアンフェアな手口が使われ、様々なやり口で仲間の編集者に嫌がらせをしていると信じています。

明確な証拠があるわけではありませんが、日本語版ウィキペディアで党派が形成されるため、意思決定にも影響を与えているようです。ある回答者は、日本語版ウィキペディアのスケールや心性を「村社会」に求めたがっていました。(日本で、「村社会」とはある種の伝統的農村社会を差して使う言葉で、小規模で孤立しており排他的に結びついていることを特徴としています。)この理解によれば、コミュニティーのメンバーは、継続的に編集に寄与するログインユーザーだということになります。このようなコミュニティーの特性、ユーザー同士が互いに深く結びついていて、お互いのことをよく知るようになるという特性が、党派形成の温床となっており、彼らの見解を実現しようとする温床になっています。(回答者のうち2人が、ウィキペディアの外部で関係を持っている編集者〈Twitterのようなソーシャルメディア〉について言及しています。)この回答者は、ある特定のケースについて回想しています。 その事例とは、最近ある有名な編集者(兼管理者)が、自分に有利になるように党派を操作して、コミュニティー全体に及ぶ論争を巻き起こしたものです。この編集者は多重アカウントを持っていて、ユーザー間の衝突を引き起こしていました。この衝突がきっかけで、何人もチェックユーザーや管理者が辞任する事件が続きました。この回答者は、状況は非常に深刻なのだから、ウィキメディア財団はチェックするべきだと言っています。

前述の、日本語版ウィキペディアの敵対的な特質については、なぜログインしないという選択をするのかの本質的な理由として、嫌がらせを避ける、論争に巻き込まれることを避けるためだと多くの編集者が述べています。実際、あるIP編集者(現在もIP編集をしている)は、[訳注:ユーザー間の]様々な対立を解消しようとしたが疲れ切ってしまい、今はログイン編集を辞めて、匿名のIP編集しかしていないと述べています。 この編集者は、二度とログインして編集するつもりはないと言っています。

論争が生じた際、ログインユーザーがIP編集者と実りあるコミュニケーションを継続してとることが困難だという点では、対立はIP編集者に起因するものです。可変IPアドレスという特性からIP編集者は自分の発言に責任を持たなくてよいのです。したがって、ほとんどのログインユーザーが、議論ではIP編集者の発言を真面目に受け取っていないと述べています。あるログインユーザーは、「議論に参加しようという編集者は普通、ウィキペディアでかなりの経験を積んでいます。しばらくウィキペディアに参加していれば、[訳注:IP編集者が]アカウントを作るように促されることがあるのを知ることになるでしょう。もしアカウント作成を拒絶すれば、私は、そのユーザーには何か悪意があるのだろうと考えるでしょう。」と述べています。また、別のログインユーザーは「議論を良い方向にもっていこうとするIP編集者の発言を見たことがあるとは思えない」と言っています。

IP編集と荒らし[編集]

  • 編集者間では、荒らしがIP編集者によって行われがちであることが共通認識として一致している
  • 荒らしには明快な荒らしとわかりにくい荒らしの2つがある
  • 荒らしは、多くのユーザーの注目を集めるトピックや意見が両極に分かれるもので起こりやすい
  • [訳注:一般の]編集者は主として明白な荒らしに対処している。一方、わかりにく荒らしは管理者の分野である。しかし、[訳注:荒らしに対処するには]管理者の数が足りていない。
  • 過去に、IP編集の規制に関して何度も議論が持ち上がった。しかし、合意には至らなかった。

ログインユーザーのうち何人かが、荒らしの主たる発信源だとしてIP編集者を強く非難しています。一方で、他のユーザーは、IP編集は必要である、[訳注:IP編集者を受け入れることはウィキペディアの方針に]かなっていると考えています。[訳注:IP編集を否定するにしろ肯定するにしろ]いずれの側でも、匿名性と言う点で有利なIP編集者によって荒らしが行われがちであることでは認識が一致してます。[訳注:今回]私たちがインタビューした巡回者たちは、IP編集による荒らしの特徴を次のように見ています。

  • 明白な荒らし:中傷や記事破壊
    • 主としてIP編集者や捨てアカウントで行われる。
  • わかりにく荒らし:嘘の情報や、特定の編集者が編集した記事への嫌がらせ
    • 主にログインユーザーが行う。ソックパペットや捨てアカウントを含む。
      • 特定のトピックや特定のユーザーへの粘着
      • ブロックされたユーザーのソックパペット、しばしば、[訳注:自分を]ブロックした者への報復が目的
    • 実行者が誰なのかは特定できない

荒らしは、多くの人を引き付ける記事で起こりがちです。荒らしは、最近メディアで取り上げられたトピックや、見解が両極端に分かれているトピックでしばしば生じます。たとえば、政治やセレブの記事が挙げられます。最近ひどく荒らされた記事としては、石原慎太郎(元東京都知事、2022年1月死去)がよい例です。[訳注:この記事では]例えば、石原の顔写真が金正恩のものに替えられるといういたずらがありました(現在はリバートされています)。それ以外にも、狂信的なファンのついているトピック(日本の鉄道のような)も荒らしを引き付けやすいトピックです。

[訳注:ウィキペディアの]コミュニティは2通りのやり方で荒らしに対処しています。明らかな荒らしには、普通は見つけた[訳注:一般の]編集者が対処しています。荒らしがひどければ、管理者が記事を保護し、実行者のアカウントや[訳注:実行者がIP編集者であれば]IPアドレスをブロックします。もっとわかりにく荒らしやしつこい荒らしは管理者へ報告されます。これは、大部分の編集者にはどのように処置すべきかよくわからないからです。しかしながら、私たちがインタビューした編集者たちによれば、リソースが不足しており、対処のスピードが遅いということです。ある回答者は、この問題が生じるのは、管理者になるにはコミュニティの信任を得るためにあまりに多くの努力が必要であるためだ、と指摘しています。加えて、その作業の特性から管理者は他の編集者から恨まれやすいのです。IP編集の規制に関する議論は既にコミュニティで広く数多く議論されてきました。しかし、これまでのところ意見は両極に分かれていて、合意に達することは不可能だということが、編集者の間で認識されています。たとえば、編集者の中には、荒らしを減らすためにIP編集は禁止されなければならないと考える人がいます。それとは対照的に、他の編集者たちは、IP編集は大切なオプションであり、ログインのネガティブな面を避けたがる編集者が利用できるようにしておくべきだと信じています。

ペルソナ[編集]

ペルソナの概観[編集]

  • ペルソナには2つのカテゴリがある
    • 知識ベースでもウィキペディアのコミュニティーに参加している編集者:知識の探究者、門番[訳注:原文はgatekeeper]、利他主義者
      • 他の編集者から「自警」と呼ばれているタイプの荒らしは門番と特性が似ているようである。
    • コミュニティーには関与したくない編集者:ホビイスト、現実主義者、ステルス・マーケッター

インタビューの内容を分析すると、日本語版ウィキペディアの編集者は2つのタイプに分かれることがわかります。1つは、ウィキペディアのコミュニティーに参加しており、知識ベースで[訳注:ウィキペディアに]貢献している人たち。もう1つは、コミュニティーとはかかわりあいになりたくなく、もっぱら自分の興味のある記事のみを編集するタイプです。コミュニティーに参加している人たちは、[訳注:更に]3つの型に分類できます。知識の探究者、門番、利他主義者、です。コミュニティーに参加したくない人たちは、3タイプのペルソナに分類されます。ホビイスト、現実主義者、ステルス・マーケッター。彼等は、ウィキペディアへの関与の主たる目的やその他の重要な特性から、際立った違いを見せています。

コミュニティへの参加形態は、巡回、井戸端の議論やウィキペディアのイベントへの参加を含んでいます。

[訳注:以下の説明で現れる]ジェンダーは便宜上のもので、実際の回答者の性別とは一致していません。

ペルソナのチャート図:承認欲求の傾向と編集傾向から測ったペルソナの特徴

ウィキペディアのコミュニティへの参加[編集]

Ken:知識の探究者

  • ログインユーザー
  • 参加の主たる理由は知識の共有と獲得
  • 巡回はしていない
  • 仲間の編集者と会うためにウィキメディアのイベントに参加している
  • IP編集者には寛容

私たちがインタビューしたこの方は、15年以上ウィキペディアの編集に携わっています。また、ウィキペディアの翻訳にもボランティアとしてかかわっています。自分の編集について仲間の編集者から直接感想を聞きたいので常にログインして編集しています。ウィキペディアの方針を尊重しながら知識の獲得と共有することが主たる目的なので、[訳注:他の編集者から]ポジティブな評価を受けています。しかし、巡回はめったにやりません。間違いや読んだ[訳注:記事の]情報にギャップがあるときだけ編集します。

この方は定期的に、オンラインでもオフラインでもウィキペディアのイベントに参加しています。イベントでは、コミュニティをどう拡げていくかで編集者同士が議論しています。イベント参加を始めたのは、[訳注:記事にかかれている]大量の知識に引き付けられて、その裏にどんな人たちがいるのかもっと知りたくなったからだと言うことです。

この方は、IP編集者を含めて、広範な[訳注:タイプの]編集者がいることには寛容です。一定の数の荒らしがIP編集者によるものだと認めてはいますが、IP編集者は、多様性を保証するコミュニティのメンバーとして本質的[訳注:に重要]だと強調しています。

Kumiko:門番[編集]

  • ログインユーザー
  • 主たる参加目的は、理想的なウィキペディアのコミュニティーを作ること
  • 頻繁に巡回している
  • 仲間の編集者からは、無遠慮で脅迫的だと思われている
  • 高い信用を受けている。すべてのインターネットアカウントで同じユーザーネームを使っており、かかわった編集すべてが1つのアカウントと結びついている
  • IP編集には不賛成

私達がインタビューしたこの方は15年以上に渡って編集と巡回を毎日続けています。荒らしを監視するため、この方は最近編集したページと頻繁に編集したページ、自分が過去に編集したページをウォッチリストに入れています。自分の専門分野のトピックも入れています。

この方が最初に編集を始めたのは、自分が専門としている分野で見つけた誤りを訂正しなければならないと感じたからです。この方は、ウィキペディアに参加して、コミュニティを正しい方向に向かわせていると感じており、他の編集者が誤りを犯せばためらいなくそのことを指摘しています。このような態度が原因で、過去に他の編集者との間に対立を生じさせました。たとえば、ある仲間の編集者が間違ったことを書いたとき、議論の中でこの方はそれを「うそ」だと言いました。この編集者は後に、会話ページの中で、攻撃的で中傷的だと言って不満を述べています。なぜなら、本当に単なる誤りだったからです。この方は、ある編集者が書いた記事で何が間違っているかについて[訳注:その編集者宛てに]長々としたメッセージを送った時には、「脅迫的だ」とも言われました。

[訳注:今回の調査における質問の中で]ウィキペディアのコミュニティが敵対的だと思いますかと質問された時、この方は次のように答えています。

私[訳注:のやりかた]が無遠慮だということは認めます。 それは、私のプライオリティがウィキペディアの方針を順守させることや、砂糖で覆った言葉を使いもっとよいコミュニティを作ったり仲間の編集者との楽しい関係を保ったりすることにあるからです。

Kumiko, 門番

この方は、ウィキペディアで自分がかかわった仕事にプライドをもっています。この方のユーザーページには、自分の貢献や達成に関する詳細がびっしりと書かれています。ウィキペディアやTwitterを含めて、オンラインアカウントはすべて同じユーザーネームを使っており、オンライン上の活動はすべて一つのプロファイルとリンクしています。この方のユーザーネームは[訳注:本名とは]別の名前ですが、この意味では、 この方が認めているように本質的には自分の本名を言っているようなものです。

この方は、IP編集者には懸念を示しています。IP編集者はウィキペディア内で生じる混乱の元凶だと言っています。


門番の変種:自警[編集]
  • 主たる目的は[訳注:他の編集者や記事を]自分たちの基準に合わせるために、ウィキペディアの記事をコントロールすること

2人の編集者が、インタビューの中で「自警」の存在について述べています。回答者の1人によると、巡回者の中には、他の編集者の編集が、巡回者の考えるウィキペディアの方針の解釈にあわないと、嫌がらせや粘着をする人がいるということです。これらの「自警」はあまりにも熱心に巡回し、自分たちの基準に基づいて行動するので、誤った編集をする不慣れな新参の編集者を、「新参者」ではなく「荒らし」呼ばわりしてブロックしようとします。「自警」の中には、自分たちが認めない編集者たちに粘着し嫌がらせをする者もいます。別の編集者によれば、編集者の中には、自分が不当だと思うと、記事の編集者と接触せずに、すぐにリバートに訴えようとする者がいると言います。たとえば、編集者に観点を改善するように助言するのではなく、偏向している、煽情的だと[訳注:断定]して即リバートしようとします。もっと平和的なコミュニケーション手段を望んでいる編集者たちは、論争になれば消耗してしまうので、しばしば、この種の強制が、事実上の最終判決として受け入れられてしまいます[訳注:論争で疲弊することを避けるため、しぶしぶ相手に従い、リバートを容認するという意味]。自警が1つのペルソナを形成するのか、そのプロファイルに関して十分な証拠を持っているわけではありませんが、自警は門番の中に含まれる1形態だと見ています。理由は、彼らが頻繁に巡回を行っていて、自分たちがウィキペディアにふさわしいと信じるものを成し遂げようとするからです。

Yuto:利他主義者[編集]

  • IP編集者
  • 主たる目的は、論争に関与せずにウィキペディアのコミュニティを発展・保護すること
  • 論争に巻き込まれてからはログイン編集をやめた
  • [訳注:自分が編集した記事に自分のユーザー名を]クレジットするのは不必要と考えている

この方は、15年以上ウィキペディアで編集、巡回を続けています。最初は、自分の専門分野のトピックの編集から始めました。ウィキペディアを始めてから半分の期間はログイン編集者でしたが、論争に巻き込まれたため、しばらくの間編集をやめていました。その後は、[訳注:ウィキペディアに復帰して]IPユーザーとして編集しています。問題となった議論では、ある別の編集者がこの方の編集内容に物言いをつけてきたのです。[訳注:自分の]主張を支える証拠を全面的に示した他、多くの編集者もこの人を支持したのですが、最終的には、別の党派の意見が通ってしまいました。議論がアンフェアだと感じ、ウィキペディアに貢献しようという意欲が著しく削がれたそうです。この出来事の後、2年間ウィキペディアの編集をやめています。

論争の結果に非常に失望しました。だから、数年編集をやめていました。自分の専門分野の記事が荒らされていたり、 内容に間違いがあった時でさえ、[訳注:記事を]ケアすることもやめました。元のアカウントに戻ってログインすることは絶対にありません。

Yuto, 利他主義者

この方は、ウィキペディアを閲覧していた時に、不慣れな編集者が自警から嫌がらせを受けていたのをたまたま見つけて以来、IP編集者としてウィキペディアに復帰しました。自分の専門分野の知識を使って介入し、くだんの編集者を助けました。以来、IP編集者として頻繁に編集・巡回をしていますが、ログイン編集に戻る計画はありません。この方は、加筆した記事に自分の名前がクレジットされる必要性を感じていません。それは、この方の目的が、自分の知識でウィキペディアに貢献するという点だけにあるからです。したがって、ログインする必要がないのです。

ウィキペディアのコミュニティとは関係したくない[編集]

Emi:ホビイスト

  • ログイン編集とIP編集とを行ったり来たりしている。他の編集者から何か言われたくない時にはIP編集を選ぶ。
  • 主たる目的は、他の編集者との衝突を避けられる範囲内で記事を書いて楽しむこと
  • インターネットのコミュニティは敵意に満ちていると信じているので、ウィキペディアのコミュニティには参加しない
  • IP編集によるセキュリティ上のリスクは何とも思っていない

この方は、過去2年間時々複数のウィキペディアの記事を編集していました。趣味として書くのがいつも楽しかったからです。巡回はしませんが、ブラウジングして見ていた記事の編集はします。

この人の最も特徴的な点は、ログインとIP編集を行ったり来たりしていることです。ささいな編集、生年月日や名前と言った具体的な事実の編集をするときにはログインユーザーとして編集し、もっと大規模に編集するときには、匿名で編集しています。理由は、加筆の規模が大きくなるほど誤りを含みがちになり、[訳注:それを理由にした]他の編集者からの攻撃を受けやすくなるためです。ホビイストとしては、自分の貢献がクレジットされることよりも、他者から批判されないことの方がプライオリティがはるかに高いのです。この方は、自分の書いた記事が表立って非難されることはひどく恥ずかしいことだと考えています。オンライン・オフラインにかかわらずホビイストは対立を避ける傾向があります。この方は、オンラインで嫌がらせを受けた経験はまったくありませんが、ウィキペディアで攻撃を受けるかもしれないという恐怖感は、(2ちゃんねるやYahoo!Japanのコメント欄のような)敵意に満ちたネチズンで悪名高い他の多くのインターネットコミュニティで見かけた嫌がらせに起因しています。この方は、ウィキペディアもまったく同じだと信じています。 そのため、ウィキペディアのコミュニティに参加する気がありません。

この方はIPアドレスが公開されてもよいと言っています。それ自体では、名前や住所、銀行口座などの重要な個人情報を公開しているわけではないと信じているからです。

Taro:現実主義者[編集]

  • IP編集者
  • 主たる目的は、自分がよく知っているトピックについてウィキペディアに貢献することを楽しむこと、しかし、[訳注:金銭的]補償を受けられないなら無理してまでやりたくないので、[訳注:ウィキペディアへの]参加の規模は限られている
  • 金銭的補償を受けられないなら、ウィキペディアのコミュニティに関与することは時間の無駄だと考えている
  • IP編集によるセキュリティ上のリスクは懸念していない

この方は、10年に渡って約10個の記事にしかかかわっていませんが、 自分が知識をもっているトピックについてウィキペディアで編集しています。例えば、厚意から、公人だった親戚についての記事を作成しました。この方は編集の際にログインしません。アカウントを作るのが大変だと思っているからです。匿名で編集すると自分のIPアドレスが公開されることを、[訳注:前述の]ホビイストと同様、気にしていません。公開されても、重要な個人情報にはつながらないと信じているからです。

この方は、巡回も議論への参加もしません。そうするにはあまりに労力がかかると考えているからです。論争は見苦しく時間の無駄だと思っているので、背を向けています。アカウントを作成することやコミュニティと係わることで得られる恩恵について理解していません。

この方は、自分が書いた記事に何らかの金銭的補償を受けられるのならウィキペディアのコミュニティにもっと投資するかもしれないと[訳注:次のように]提案しています、

多く見られている記事の作者にはウィキペディアが金を払うようにしてはどうですか?

Taro, 現実主義者

それにもかかわらず、この方は、仲間の編集者から批評を受けることに感謝しています。自分がウィキペディアの方針をよく理解していないことに気づかされるというのです。

Kana:ステルス・マーケッター[編集]

  • 主たる目的は、自分の仕事として所属する会社やブランドの宣伝だけのためにウィキペディアを編集している
  • 仕事以外ではウィキペディアに貢献したことが全くない
  • IP編集でのセキュリティリスクへの懸念はない

この人は、ある特定の商品や人物、ブランドの宣伝のためにウィキペディアで編集しています。もっぱら、それがこの人の仕事の一部だからという理由で。仕事以外でウィキペディアに貢献したことはまったくありません。宣伝したいテーマのページを作成し、それらが荒らされていないかを確認しています。その手のウィキペディアのページを作成することは、[訳注:売りたい商品を]広く知られるようにし、ポジティブなイメージを維持するためには重要なことです。

自発的にウィキペディアに貢献している人がいるのを見て驚いた。私には彼らが理解できません。私は自分の仕事だからやっているだけです。

Kana, ステルス・マーケッター

この人は、匿名[訳注:IP編集のこと]で編集しています。理由は、仕事で毎回ログインするのが面倒だからです。ユーザーアカウントをとって頻繁にページの編集をすると、ページにユーザー名の記録が残るのでステルス・マーケティングの一形態として、匿名編集のほうが[訳注:目的外利用者だと]わかりにくいというのもあります。ホビイストや現実主義者と同様に、IPアドレスが公開されることで自分のプライバシーに直接害が及ぶとは考えていません。加えて、加筆した記事に自分の名前がクレジットされる必要を感じていません。それは、もっぱらこの人が仕事として加筆しているからで、加筆にはこだわりなどないのです。

結論[編集]

インタビューした編集者たちは、IP編集が荒らしの主たる源の1つであることを認めてはいますが、その中の[訳注:インタビューした]IP編集者たちは、IP編集があるからウィキペディアに貢献することが出来ると強く感じていました。彼等は、自分のIPアドレスが公開されることで生じるプライバシーのリスクには、無頓着でした。

ログインユーザーでもIP編集者でも同様に、コミュニティーで生じる対立は極めてストレスのかかるものです。ログインユーザーがIP編集に切り替えたり、編集をまったくやめてしまうこともあります。しかしながら、ウィキメディア[訳注:財団]が日本のIP編集者をサポートする方法を見つけることができるなら、日本語版ウィキペディアが堅調に拡大・発展していくことは確かでありましょう。

(了)

追加引用[編集]

Q:コミュニティに参加するようになった理由は何ですか。

「私は記事をいくつも新規作成していますが、他の人が書いた記事にコメントはしません。議論には参加したくないのです。」

「オンライン、オフライン共にウィキペディアのイベントに参加しています。編集するだけでは、記事の背後にいる人たちのことはわかりません。 記事の裏にいる人たちについてもっと知りたかったのでイベントに参加するようになりました。最初は記事を書く時のコツを聞いていましたが、編集に慣れてからはコミュニティを拡大する議論を熱心に始めるようになりました。」

「自分で調べ物をしてブログに書いたとしても、サイトはいつかなくなるだろうし、それでは努力が水泡に帰すので、ウィキペディアに書いたほうがましだと思ったから。」

「興味のあったトピックが不十分にしか書かれていなかったから。」

「1人の人間だけでは記事を完成することは無理だから。編集者が協力することが必要です。」

「自分の専門分野のトピックで誤った情報が書かれているのがいやだから。」

Q:日本語版ウィキペディアでログインしたがらない理由として他にどんなことが考えられますか?

「編集で何か訂正されると恥ずかしかったり、不利だったりするから」

「情報流出を避けるため」

「ログインするのに手間がかかりすぎる」

「他の編集者との対立を避けるため」

「ある程度の経験のある編集者の多くは、編集に人目を気にするようになるように感じます。トラブルになる状況を避けたいのが原因です。」

Q:日本語版ウィキペディアについて何か知っておくべきことはありますか?日本の文化における匿名性について教えてください。

「日本のインターネット文化では、インターネットの匿名性について2ちゃんが基礎を築いたのです。」

「匿名であれば、インターネットでネガティブな内容を投稿するのはより簡単になります。」

「Youtubeであれば、普通は嫌がらせをするユーザーはいないのでコメント欄でユーザーネームが見えても抵抗はありません。しかし、ウィキペディアの場合、ログインすると他のユーザーが攻撃しやすくなると思います。」

Q:ウィキペディアで匿名性とは何を意味しているでしょうか?

「私の理解では、方針に従い他の人に敬意を払う限り、自由に編集、発言し、かつ安全に暮らせるために必要なシステムです。しかし、同時に乱用されるシステムでもあり、メリットとデメリットのバランスはとりがたいです。」

「匿名で記事を編集すれば、編集者とアカウントとを関連付けることは出来なくなるでしょう。これが意味するところは、現実生活の個人と関係づけられたくないということです。」

「多くのユーザーは継続的にウィキペディアに貢献するつもりはないのでアカウントを作ろうとはしません。」

Q:コミュニティの力学について何か知っていることがありますか?コミュニティは協力的でしょうか、それとも競争的[訳注:原文はcompetitive]でしょうか?

「他のユーザーと接触したことがないので、わかりません。」

「記事に関わる編集者の数が増えればそれだけ対立が増えます。」

「問題を引き起こしやすい記事では、編集者間で意見の不一致が見られるため敵対関係が生じやすいです。」

「熱心なファンがいるセレブに関する記事では、対立がよく起こります。」

「一部の編集者が党派を作っていて、対立を引き起こしています」

Q:敵対的なコミュニティの力学とIP編集との間に関係があると思いますか?

「まったくないと思います」

「コミュニティが敵対的なのはIP編集と深く関係していると思います。前向きな議論をしたくても、可変IPアドレスのために、ログインユーザーに比べて[訳注:他の]編集者がコミュニケーションを取りにくい。また、多くの場合、IP編集者は一度だけウィキペディアに書いてそれでやめてしまうということが普通です。IP編集者のためにコミュニケーションは不十分で、そのために対立が生じています。」

「はい。無視できないほど多くのIP編集者がいます。」

Q:編集の際にログインを強制することに意味があると思いますか?

「ログインを必須にすれば、自分は編集をためらうだろうと思います。」

「ウィキペディアに貢献する量が減るだろうと思います。」

「ウィキペディアに新たに参加しようという編集者にはハードルが高くなるかもしれません。参加することに後ろ向きになるかもしれません。」

「無意味です。日本語版ウィキペディアは意義ある編集を失うことになるでしょう。」

「内容の改善のためには必要かもしれません。」

Q:編集することのモティベーションは何ですか?

「私の場合、多くの人が記事を読んでくれたり材料を利用してくれることです。悪意のある編集者に悩まされることなく編集できることは、モティベーションを維持するうえで重要なファクターだと思います。」

「私の貢献に感謝する人たちがいることを知っています。私の持っている知識で他の人たちを助けることができることを知っています。」

「自分の専門分野で誤った情報があるのが嫌いなので、直しています。」

Q:日本の[訳注:ウィキペディアの]コミュニティに役立つと思われる、荒らし対策のためのツールについて何か考えられますか?

「日本語版ウィキペディアのユーザーがTwitterや5ちゃんねるに投稿している、荒らしや不適切なユーザーの情報。荒らし対策に多少役に立っています。もちろん、情報が正しいのかのチェックは必要ですが。」

「いいえ。荒らし対策はマンパワーに頼っています。」

「ウォッチリストや、多くのIP編集者が加筆したことを示す、最近加筆された記事の通知」

「そのようなものはありません。現在のAIの発展の状況では、自動翻訳すらあまり精度が高くなく、自動で荒らしに対処できるプログラムを作るのはチャレンジングなことだと思います。たとえそのようなものがあったとしても、判定ミスがあるのは確かで、その被害に遭えばユーザーは気が動転する以上のことになるでしょう。」

Q:日本語版ウィキペディアでログインすることなしに編集できることが、荒らしが生じるファクターに寄与していると思いますか?なぜそのように思うかの理由を聞かせてください。

「寄与するファクターです。目的が荒らしである編集者には確かに便利です。アカウントを作ったり、ログインする面倒がなく、荒らしをすることが出来ます。可変IPアドレスを使えるなら、レンジブロックは効果がなく、荒らしを続けることが出来ます。事実上ペナルティはありません。」

「IP編集のために荒らしが増えているのは確かです。しかし、IP編集がもたらす利点も見逃すべきではありません。」

「ある程度はイエスです。しかしIP編集を禁止すれば、ウィキペディアの発展のスピードは鈍るでしょう。」

Q:他に比べて、IP編集者からの寄与が多いと思うトピックには何がありますか?

「セレブの記事」

「政治的に微妙なトピック。編集者は、自分のアカウントと特定のイデオロギーが結び付けられることを嫌って、匿名で編集しようとします。」

「IP編集者があまり貢献しないものには、専門的な知識が必要なアカデミックな記事があります。」

Q:IP編集者は、IPアドレス[訳注:が公開されること]に関係するプライバシーへの懸念に気が付いていると思いますか?

「プロバイダーに問い合わせない限り、IPアドレスから自宅の住所やその他の情報を特定できるとは思いません。だから、問題はないと思います。」

「その[訳注:IPアドレスのこと]情報だけでは身元特定の可能性はないのだから、IP編集者は気にしていないでしょう。」

「テクノロジーの知識をもっていなければ、[訳注:IPアドレスの情報から個人情報を]知ることができるとは思いません。」

「IPアドレスが公開されたからと言って、それが直ちに重要な個人情報につながるわけではありません。」

Q:他のトピックに比べて荒らされているトピックがあることに気が付いていますか?

「メディアで議論されたトピックは荒らされやすいです。」

「普段はウィキペディアを使っていない人たちにまで届くトピック」

Q:最も荒らされやすいトピックはどのようなものでしょうか?

「セレブ、スキャンダル、ゴシップ」

「テレビだけでなくインターネットニュースを含めて、ニュースや新聞で報道されたトピックはしばしば荒らされます。その他、政治関連のトピック、イデオロギーに関連したトピック(右派対リベラル、宗教や人権のトピック、ラジカルフェミニストがかかわっている記事)もまた荒らされやすいようです。」

Q:コミュニティはどのように荒らしに対処していますか?

「可能な場合はIPブロック。多くの場合、ピンポイントでIPアドレスをブロックするのは難しいです。」

「ログインユーザーであれば、その人の会話ページに警告を書き込みます。」

「ひどい荒らしの場合は、システムが自動的に検知できるのかもしれません。」

「管理者や有意のユーザーが荒らしをリバートしています。が、問題の根本対策にはなっていません。」

「最初は気が付いた編集者(ログイン編集者か否かは無関係に)が荒らしをリバートしています。問題が続くようであれば、管理者やその種の権限を持った誰かが対処することになるでしょう。」

Q:他の言語版でも編集経験があった場合ですが、日本語版と他国語版のウィキペディアの違いというのは何でしょうか?

「日本語版は記事のアップデートの回数や、百科事典として当然書かれているべき基本的な項目の内容の両方で、[訳注:他国語版〈それとも英語版か?〉に比べて]貧弱です。」

「日本語版に比べると、ユーザーの多さ、アップデートされる頻度、内容の点で外国語版の方が優秀です。テンプレートやデザインに関しては、フランス語版やイタリア語版のほうがもっと洗練されていて、使いやすく、魅力的です。」

「日本の研究者による最新研究があっても、英語版の記事には古い誤った研究に基づいた記事が掲載されています。」

Q:巡回する際にはどのようなことに気をつけていますか?

「どの記事が変更されたか、だれが変更したか、どのように変更されたかという点。特に、嫌がらせをするユーザーがいないかをチェックしています。」

「荒らしがないかとか、それに類似したことがないかとか、新参の編集者による不必要な修正とかを確認しています。」

Q:日本語版ウィキペディアが、他国語版のウィキペディアに比べてIP編集を受け入れているのはなぜだと思いますか?

「日本人は匿名で助けることが好きです。たとえば、落とし物を警察に届けるとき[訳注:届け主は]自分の身元を名乗りません。」

「ウィキペディアは百科事典として非常に低レベルです。だから、正確性に関しても[訳注:たとえ内容が間違っていても]寛大なのです。」

「編集に[訳注:自分のユーザー名を]クレジットする必要はありません。気が向いたら編集している人なら特にそうです。」

「日本人は他のひとの後ろに隠れて話したがる。」

「匿名性は長きにわたって、インターネット文化で価値のあるものだったし、インターネット上で本名やそれに類似したものを示すことを多くのユーザーは嫌がっています。だから、匿名で編集するのです。」

「2ちゃんの影響です。」

「IP編集者の編集かなんて誰も気にしていない。」

Q:ログインしていないユーザーで個々のIPユーザーについて[訳注:何か]知っていますか?

「井戸端の議論では、IP編集者は、しばしばアカウントを取るように言われています。何人かは、そのような意志はないと宣言しています。」

Q:日本語版ウィキペディアではIP編集者による荒らしはどのくらい頻繁ですか?

「頻繁に起こります。荒らしをチェックしてみると、しばしばIP編集がやっています。」

「見たことがありません。」

「最近編集されたセクションでは、10本の記事につき1本はIP編集者による荒らしが見つかるだろうと思います。」

Q:これまでにIP編集のセキュリティリスクについてコミュニティ内で議論されたのを見かけたことがありますか?

「はい、あります。井戸端であったか、お知らせであったか覚えていませんが、IP編集者のIPアドレスを不可視化する議論があったと思います。」

「はい。しかし、[訳注:IP編集者は]リスクについて懸念していませんでした。」

Q:ポルトガル語版ウィキペディアは最近IP編集を禁止しました。このことが日本語版でも議論されたことがありますか?

「いいえ、聞いたことはありません。」

Q:IP編集を禁止することが日本語版ウィキペディアで意味を持つと思いますか?

「編集者の数は顕著に減るだろうと思います。ウィキペディアの美徳は、知識があれば誰でも編集できる点です。アカウントが必要なら、ただのオンライン辞典と同じです。」

「日本はポルトガルを見習ったほうがいいと思います。みんな、身元がわからないのだから何を書いてもよいと考えています。」

「荒らしの数は減るでしょうが、寄与の数も減るでしょう。」

「IP編集を禁止してアカウント取得を必須にすれば、荒らしの数は減るはずです。[訳注:現在必要とされているほどの]管理者の数も減るでしょう。また、管理者の責務も軽減されるでしょう。」

「ウィキは、誰でも編集できるために信頼性が低いです。しかし、編集にアカウントが必要になるなら、記事の多様性は狭まるでしょう。ごくわずかの人しか貢献できないので、タイムリーなトピックの記事は充実しないかもしれません。」

「はい。有意義です。もちろん、悪い面もあります。アカウントを取らなければならないなら、現在IP編集で編集している人はやめてしまうでしょう。しかし、率直に言ってIP編集者の貢献にはあまり価値がないことは否定できません。」

「そのようなことが[訳注:日本語版ウィキペディアで]起こるとは思えません。経験のある編集者なら、井戸端で提案しても努力するだけ無駄であることを知っています。」

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