平成26(行コ)5

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島根県条例第36号無効確認等請求控訴事件[編集]

広島高等裁判所松江支部平成26年(行コ)第5号

平成26年7月7日判決

判   決[編集]

控訴人 A

被控訴人 島根県

同代表者知事 B

主   文[編集]

1 本件控訴を棄却する

2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由[編集]

第1 控訴の趣旨[編集]

1 原判決を取り消す。

2(1)主位的請求

被控訴人が平成17年3月25日公布した島根県条例第36号が無効であることを確認する。

(2)予備的請求

被控訴人が平成17年3月25日公布した島根県条例第36号を取り消す。

第2 事案の概要[編集]

本件は,島根県議会が「竹島の日を定める条例」(平成17年3月25日島根県条例第36号。以下「本件条例」という。)を制定したことについて、控訴人が本件条例を公布した被控訴人に対し,本件条例は,韓国領である独島を日本国の領土として竹島と命名し,島根県に編入したことを根拠とするもので違法無効であると主張し,主位的に本件条例が無効であることの確認を求め,予備的に本件条例の取消しを求める事案である。

原審は,本件各請求に係る訴えは,訴訟要件を欠き,不適法であって,かつ,その不備を補正することはできないとして,口頭弁論を経ないで,本件各請求に係る訴えをいずれも却下した。 

そこで,控訴人は,これを不服として,原審におけるのと同旨の判決を求めて控訴した。

1 前提事実[編集]

 次のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」欄の第2の2に記載のとおりであるから,これを引用する。

(1)原判決2頁1行目の「と命名し,」の前に「を『竹島』」を加える。

(2)同19行目の次に行を改め,「(3)被控訴人は,平成17年3月25日,本件条例を公布した。」を加える。

2 控訴人の主張[編集]

原判決「事実及び理由」欄の第2の3に記載のとおりであるから,これを引用する。

3 当審における控訴人の主張[編集]

(1)本件条例は,控訴人を含め条例の内容に反対する見解を持つ者に対し,どのような公権力の行使よりも強力な影響を与えているから,公権力の行使に当たり,処分性が認められる。

(2)本件条例は,不特定多数人を対象にしたものであっても,個人に対して一定の義務を課すものであるから,処分性が認められる。

(3)本件条例は,日本国憲法前文で宣言している控訴人及び島根県民の平和に生存する権利を制限しているから,処分性が認められる。

(4)控訴人に他に不服申立ての方法がないことからすれば,その権利救済を図るため,本件各請求に係る訴えについて,法定外抗告訴訟として,その適法性を肯定すべきである。

(5)本件各請求のうち主位的請求に係る訴えは,控訴人の法律上の地位の不安,危険を除くために有効適切な手段であり,確認の利益が認められるから,当事者訴訟としての無効確認の訴え(行訴法4条)として適法である。

第3 当裁判所の判断[編集]

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当裁判所も,本件各請求に係る訴えは,いずれも不適法でその不備を補正することはできないと判断する。その理由は,2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の第3の1ないし3に記載のとおりであるから,これらを引用する。

2 当審における控訴人の主張に対する判断[編集]

(1)当審における控訴人の主張(1)について[編集]

本件条例の概要は,竹島問題についての国民世論の啓発を図るため,竹島の日として2月22日を定め,島根県は,竹島の日の趣旨にふさわしい取組を推進するため,必要な施策を講ずるよう努めるものとするというものであり,本件条例の内容に反対する見解を持つ者の権利義務や法的地位に何ら影響を及ぼす内容ではないことが明らかであるから,本件条例の制定行為をもって,公権力の行使に当たるものとはいえない。

したがって,当審における控訴人の主張(1)は採用することができない。

(2)当審における控訴人の主張(2)について[編集]

上記本件条例の概要に照らせば,本件条例は,個人に対して何ら義務を課すものでないことが明らかであるから,当審における控訴人の主張(2)は採用することができない。

(3)当審における控訴人の主張(3)について[編集]

本件条例が個人の権利義務や法的地位に何ら影響を及ぼすものでないことは上記のとおりであるから,本件条例は,控訴人が主張する「平和に生存する権利」を何ら制限するものでないことも明らかである。

したがって,当審における控訴人の主張(3)は採用することができない。

(4)当審における控訴人の主張(4)について[編集]

本件条例が個人の権利義務や法的地位に何ら影響を及ぼすものでないことは上記のとおりであるから,仮に,法定外抗告訴訟を解釈上認め得る余地があると考えたとしても,個人の権利救済のために本件各請求に係る訴えを適法な法定外抗告訴訟として肯認する余地はない。

したがって,当審における控訴人の主張(4)は採用することができない。

(5)当審における控訴人の主張(5)について[編集]

上記のとおり,本件条例は,個人の権利義務や法的地位に何ら影響を及ぼすものでないから,本件条例によって控訴人の法律上の地位に不安,危険が生ずることは想定できず,結局のところ,本件各請求に係る訴えは,具体的に紛争を離れて,抽象的に本件条例の違憲あるいは違法性等に関する判断を求めるものであって,「法律上の争訟」(裁判所法3条)に当たらず,本件条例の無効確認が紛争解決にとって有効適切な手段であるという余地はない。

そうすると,本件各請求のうち主位的請求に係る訴えが当事者訴訟としての無効確認の訴え(行訴法4条)であったとしても,これに確認の利益がなく,不適法であることは明らかである。

したがって,当審における控訴人の主張(5)は採用することができない。

第4 結論[編集]

よって,本件各請求に係る訴えをいずれも口頭弁論を経ないで却下した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを口頭弁論を経ないで棄却することとし,主文のとおり判決する。

広島高等裁判所松江支部

裁判長裁判官 塚本伊平 裁判官 内田貴文 裁判官 堀田匡

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