平成26(行ウ)2

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島根県条例第36号無効確認等請求事件[編集]

松江地方裁判所平成26年(行ウ)第2号

平成26年3月31日民事部判決

判   決[編集]

原告 A

被告 島根県

同代表者知事 B

主   文[編集]

1 本件訴えをいずれも却下する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。


事実及び理由[編集]

第1 請求[編集]

1 主位的請求[編集]

原,被告間で,被告が平成17年3月25日公布した島根県条例第36号が無効であることを確認する。

2 予備的請求[編集]

被告が,平成17年3月25日公布した島根県条例第36号を取り消す。

第2 事案の概要[編集]

1 請求の類型(訴訟物)[編集]

本件は,原告が,被告に対し,主位的に,平成17年3月25日公布した島根県条例第36号(以下「本件条例」という。)が無効であることの確認を求め,予備的に,本件条例の取消しを求める事案である。

2 一件記録,審理の全趣旨及び公知の事実によって認められる事実[編集]

(1)日本政府は,明治38年(1905年)1月28日,閣議において,竹島と命名し,島根県隠岐島司の所管とする旨を決定(以下「本件閣議決定」という。)した。島根県知事は,同年2月22日,島根県告示第40号(以下「本件告示」という。)をもって,その内容を公示し,竹島を島根県に編入した。

(2)島根県議会は,本件条例を制定した。本件条例は,「竹島の日を定める条例」(平成17年3月25日島根県条例第36号)であり,その内容は,下記のとおりである。

       記

(趣旨)
第1条 県民,市町村及び県が一体となって,竹島の領土権の早期確立を目指した運動を推進し,竹島問題についての国民世論の啓発を図るため,竹島の日を定める。
(竹島の日)
第2条 竹島の日は,2月22日とする。
(県の責務)
第3条 県は,竹島の日の趣旨にふさわしい取組を推進するため,必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

附則

この条例は,公布の日から施行する。

3 原告の主張[編集]

本件閣議決定及び本件告示は,その当時,日本が朝鮮(韓国)を実質的に武装解除させた状態で,朝鮮領であった独島を日本に編入させるために不法に作成されたものであって,違法無効である。また,本件閣議決定及び本件告示によって,日本が,韓国領であることが明らかな独島を根拠もなく,日本の島根県の所管の下に置くこととしたのは,他国所有領土に対する明白な不法行為である。

したがって,本件閣議決定及び本件告示を根拠とする本件条例は,違法無効である。仮に,そのようにいえなくとも,本件条例は,取り消されるべきである。

第3 当裁判所の判断[編集]

1 本件の各請求に係る訴えは,本件条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たることを前提に,本件条例の無効又はその取消しを求めるものと解される(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条2項,4項)。しかしながら,抗告訴訟の対象となる行政処分とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいうものであるところ,本件条例は,前記第2の2,(2)のとおり,島根県議会が制定した「竹島の日を定める条例」であり,その概要は,竹島問題についての国民世論の啓発を図るため,竹島の日として,2月22日を定め,島根県は,竹島の日の趣旨にふさわしい取組を推進するため,必要な施策を講ずるよう努める,といったものであって,限られた特定の者に対してのみ適用されるものでも,その者の権利義務,法的地位に直接影響を及ぼす内容でもないから,島根県議会のした本件条例の制定行為をもって,行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできない。

したがって,本件条例の制定行為は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないことは明らかである(もとより,これが行政庁の行う裁決,決定,その他の行為(行訴法3条3項,4項)に当たらないこともまた明らかである。)。 

2 仮に,法定外抗告訴訟を解釈上認め得る余地があると考えたとしても,原告が,無効確認ないし取消訴訟の対象として主張しているのは,自治立法である本件条例の制定行為であり,これが,行政庁において,その優越的な地位に基づき,法の執行として行う権力的意思活動といえないことは,明らかであるから,本件の各請求に係る訴えを法定外抗告訴訟として,適法視する余地はない。

3 なお,本件の主位的請求に係る無効確認の訴えを当事者訴訟としての無効確認の訴え(行訴法4条)であると解する余地がないではないが,本件訴状の記載からそのように解釈することは,困難であり,仮に,そのように解したとしても,前記の本件条例の内容及び性質に照らすと,その無効確認が紛争解決にとって有効適切な手段とはいえず,その確認の利益がないこともまた明らかである。

4 以上の次第で,本件の各請求に係る訴えは,どのように解しても,訴訟要件を欠き,不適法であって,かつ,その不備を補正することはできないものである。

第4 結論[編集]

よって,行訴法7条,民訴法140条により,口頭弁論を経ないで,本件の各請求に係る訴えをいずれも却下することとして,主文のとおり判決する。

松江地方裁判所民事部

裁判長裁判官 河村浩 裁判官 古賀秀雄 裁判官 沼田晃一

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