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官話指南總譯/酬應瑣談

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官話指南第一卷  吳泰壽譯

酬應瑣談

第一章

  • アナタは今度初めて此處コチラへ御イデになつたのですか。
  • 私は以前一度來ましたが[1]數日間滯在して直に歸りました、今度が二度目です。[2]
  • 左樣ですか、此度御イデになりましたのは、此處で何か商賣を御始めになる御積りですか。
  • 私は此度、私共本國の店から派遣せられて參りましたので、當地の商業の情況を視察し、[3]然る後に歸りまして、其の上で將來何の商賣を始めるかを相談するのです。
  • 左樣ですか、それでは汝は幾日程滯在して御歸りになる御積りですか。[4]
  • ほんの二個月許の間です。[5]
  • 今後、若も何か商賣の事を御尋ねになりたければ、[6]私に二人の懇意な友人がありまして[7]商業界の情況は、先づ略ぼ承知して居ます、汝が彼等に御面會を望れますならば、私は御紹介を致しませう。[8]
  • 至極結構です、今後私は御尋ねせねばならぬ事が有らうと存じます。
  1. 從先
    從前
  2. 第二盪
    第二回目
  3. 看一看
    看察スル
  4. 打算
    ツモリ、豫算
  5. 光景
    日數、間
  6. 打聽
    聞キ合ス
  7. 至好的
    至ツテ入魂ナル
  8. 給您
    汝ノ爲ニ

第二章

  • 汝此間、[1]今度は五六個月滯在しなけばならぬと言はれたではありませぬか、[2]何故ナゼ此樣に早く又御歸りになるのですか。[3]
  • 私はもとは永らく逗留しなければならぬといふ積りでしたが、[4]只だ此度私共の店から電報が參りまして、[5]緊要な事件の相談があるから急ぎ歸れとの事ですから、早く歸らなければならないのです。
  • それでは、復た御來になるのは、何時になりますか。
  • 只今から確と言ふことは出來ませぬ、若し私が歸つて、只相談事を爲す計りならば、大抵秋の初には復た來ることになりませうが、[6]若も店で私を他の國へ派出する積であるならば、それはまあ來る事は出來ませぬ。
  • 私共は、矢張汝が早く又御イデになることを望みます。[7]
  • 私も矢張、又來ることを望みますが、私の思わく通りになるかならぬかは分かりませぬ。[8]
  • どうぞ、汝御忘れなく、御手紙を下さいませ。[9]
  1. 上囘
    先般、過般
  2. 這盪
    此度、此次
  3. 怎麽
    何故
    這麽
    如此
  4. モト
  5. 皆因
    只………ノ爲ニ
  6. 上秋
    初秋
  7. 還是
    ヤハリ
    吩望
    希望
    趕緊的
    急イデ、急ニ
  8. 由得我
    自分ノ思ヒ通リニ成ル
  9. 想着
    忘レズニ

第三章

  • 御親類の方が株券を募つて鑛山を御開掘になる事は、[1]少しは目鼻が付きましたか。
  • 全く爲れは爲る程だめです。
  • それは役所が許るしませぬか。[2]
  • 元來役所から開掘する人を募つたのです、何うして許さぬことがありませう。
  • 左樣でなければ、或は株式の募集がムヅカしいのですか。株も固より容易く募集は出來ませぬが、俳し只其の爲ばかりではないです、私が聞きましたには、彼等の彼の數人の重立つた人等が、[3]洋式で開掘しやうといふ者もあり、[4]舊式で開掘しやうと望む者もあつて、[5]意見が悉く一致しない、共故一時取極める事が出來ないのです。
  • 多分株券もマダ募らないのでせう。
  • 方法がマダ相談の調はないのに何うして株券を募れませうか。
  1. 募集
    股份
    株式
  2. 許可
  3. 頭目
    頭分
  4. 洋法
    新式
  5. 土法
    舊式
    開採
    開掘

第四章

  • 近來、金の相場は如何ですか。[1]
  • 先づ矢張昻るばかりで、下りますまい。[2]
  • 先頃は金の値段の少し下落したさうではありませぬか。
  • 先頃下落しましたのは僅かです、此頃又昻りました。
  • 私の考へでは、金の値段が下落するとゆうことは、何うしても困難だらうと思ひます。
  • 左樣です、當時は各國共都て金を用ゐる國が多くて、銀の用途は大變狹い、[3]其故銀の値段はどうしても容易に昻りませぬ。[4]
  • 若も世界の各國が都て金を使用したならば彼の銀といふものは無用の物になりはしますまいか。
  • つまり銀では彼の五十錢の銀貨や、十錢二十錢の貨幣を鑄するばかりです。[5]
  • 只銀では其等の貨幣のみを造るとしたならば、其の用途はほんの狹いものですな。
  • 全く左樣です。
  1. 行市
    相場
  2. 騰貴
    下落
  3. 用項
    用途
    太窄
    甚ダ狹キ
  4. 往上長
    騰貴スル
  5. 十錢ナリ

第五章

  • 私の二人の友人が、數部の會話書を買ひたいと言つて居りますが、[1]私は天津に有るか、又は上海に有るか知らないのです、私が思ひますに、汝は屹度何處にあるか御存じでせう、どうか私に御話し下さい、私は手紙を認めて友人に買つて吳れるやうに言つて遣るに好都合ですから。[2]
  • 汝支那語の會話書を御買ひになりたいのならば、何も面倒なことはありませぬ、汝は手紙を天津や上海に送つて御友達に賴んで御尋合せになるに及びませぬ、その支那語の會話の書物は、日本の東京の神田區や本鄉區の彼の多くの本屋には皆有ります、東京の方には慥な友人がありますから、[3]私は手紙を書いて友人に近頃新に出來た必要な會話書を汝の爲に數部買つて送つて吳れるやうに賴んで遣りませう、一層手數が省けて確かではありませぬか。[4]
  • 其はまあ寔に結構です、[5]只汝に御厄介を掛けまして、[6]私は真に相濟みませぬ。
  • これ位の事が何ですか、何も面倒な事は有りませぬ。
  • それでは、其の本代はどう致しませうか。
  • それは急ぎませぬ、書物を送越す時に屹度書付を寄越しますから、[7]何程であるか値段が知れます、其の上で汝は私に御渡し下さい而して送つて遣るが宜いではありませぬか。
  • 左樣ですか、それでは仰に從つて置きます。

第六章

  • 私は来月一度日本へ往かうと思ひます、又私共の学校に印刷機械を買入れたいので、[8]買入方を頼まれました、私は今度初めて彼処アチラに参りますので、[9]人情地理共不案内で、[10]其の上言語も通じませぬ、若も彼処に堅い御友達がありますならば、どうか紹介状を一封御認め下さいまして、私の世話を頼んで遣つて下さいませぬか。[11]
  • 好しい、私は一人至つて心易い友人が有ります、其の人は東京本郷区で一軒の書林を開いて、専ら漢籍を買つて居ます、汝東京へ御出になりましたならば、印刷機械買入の事を其の人に御相談なさいませ。
  • 左様致しませう、其の人の店に印刷機械も買つて居ますか。
  • 其の人の店には印刷機械は買つて居ませぬが、併し私は其の人が買入の事を扱ひ得ると信じます、[12]只此ばかりでなくたとへ他の事でも其の人は扱ひ得ます、物事に明い人で各商店とも皆連絡を有して居ますから、[13]何事も其の人に御頼みになるが一番大丈夫です。
  • 至極好い都合です、其の御友達は吾々共の国の話は解りますか。
  • 其の人は丸で北京語です、当時日本の商人中でも、其の人の北京語は、一二に数へられます。
  • 其は真に愉快です、左様な人を得るのは何といふ仕合でせう、どうか汝一封御懇書を御認め下さいませ。
  • 一切承知しました。
  1. 話條子
    會話書
  2. 寫信
    手紙ヲ書ク
  3. 靠得住
    恃ミニナル、信賴スベキ
  4. 省事
    手數ヲ省ク
  5. 敢自
    マア本當ニノ意、寔ニ也
  6. 勞動您
    君ヲ煩ス
  7. 寄來
    送リ來ル
    開帳
    仕切書ヲ出ス
  8. 印字的機器
    印刷機械
  9. 那麽
    彼処、彼方
  10. 人地生疎
    一切不案内
  11. 照應
    世話
  12. 能辦
    辦ジ得フ
  13. 精明
    聡明、利口
    不但
    啻ニ………バカリデナク
    聯屬
    聯絡

第七章