大塚徹・あき詩集/暴風の出帆
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泪しとど
霧と降り
檣燈 濡れて
愛情の波止場を――
霧うつつ
雲と涌き
城鴎 燃えて
青春の港を――
あやまちならむか、
日頃、
国禁の書を読み
社会主義者と交わり
母に不幸の
妻に不実の
無頼なり
ふたたび帰る日なき
熱血の出帆。
故郷に
牢獄ありて
ながき歳月の流沙よ!
山嶺に
赤き革命の新月よ!
あやまちならむか?
――されど
まこと あやまちならむか?
――ああ、されど
ついにして行きぬ
あえかに悔なく
見はてぬ夢の………
汝の骨
いざ、吹雪野に埋めよと
大鴉なく
北方の 暴風へ――。
〈昭和九年、未発表〉