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大塚徹・あき詩集 北海の蟹作者:大塚徹昭和4年1929年
陽に興じては 花粉のごとく風にながれ たそがれにおどろきては 鳥のごとく巣にかえる あわれ友よ 今日もまた旅をゆくか 海あらき 北国の大いなる蟹を ふるさとのわれに送りきたれり (この蟹の貌(かお)は 恐げに 醜く 毒気あり 食えばかならず死すならむ―) おどけたる手紙をよみて 恐れを抱きしごと わが家の妻も児どもも食わずと言う。 北海にそだちし蟹は 今宵 南海の つれなき男に 食われいる おどけたる友よ 毒気ある蟹は 美味(うま)し。
〈昭和四年、愛誦〉