国際連合安全保障理事会決議千九百七号(エリトリアに対する制裁に関する決議)に関する件

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○外務省告示第七十二号

平成二十一年十二月二十三日、国際連合安全保障理事会において、ソマリア情勢並びにジブチ及びエリトリア情勢に関し、エリトリアに対して、武器の禁輸、移動の制限及び資産の凍結措置等を導入すること等を決定する次の決議が採択された。

平成二十二年二月二十四日

外務大臣 岡田 克也

(訳文)

二千九年十二月二十三日に安全保障理事会がその第六千二百五十四回会合において採択した決議第千九百七号(二千九年)

安全保障理事会は、

ソマリア情勢及びジブチとエリトリアの間の国境紛争に関する従前の決議及び議長声明、特に決議第七百五十一号(千九百九十二年)、決議第千八百四十四号(二千八年)及び決議第千八百六十二号(二千九年)、並びに二千九年五月十八日(S/PRST/二〇〇九/一五)、二千九年七月九日(S/PRST/二〇〇九/一九)及び二千八年六月十二日(S/PRST/二〇〇八/二〇)の議長声明を想起し、

ソマリア、ジブチ及びエリトリアのそれぞれの主権、領土保全、政治的独立及び統一の尊重を再確認し、

ジブチとエリトリアの間の国境紛争を解決することの重要性を表明し、

ジブチ合意及び和平プロセスが、ソマリアにおける紛争の解決のための基礎であることを再確認し、更に、ソマリア暫定連邦政府(TFG)への支持を再確認し、

同理事会に対し、ソマリアを不安定化させる活動に関与し、平和及び和解の努力並びに地域の安定を損なう武装集団に支援を提供する地域の内外の外国関係者、特にエリトリアに対して制裁を課すよう要請する、リビアのシルテにおける第十三回アフリカ連合(AU)総会の決定(S/二〇〇九/三八八)に留意し、

エリトリアによる、特にジブチとエリトリアの間の国境紛争に関する決議第千八百六十二号(二千九年)の実施に関してまったく進展がないことに重大な懸念を表明する、リビアのシルテにおける第十三回AU総会の決定(S/二〇〇九/三八八)に更に留意し、

決議第千八百五十三号(二千八年)に基づき再設置された監視団により、その二千八年十二月の報告書(S/二〇〇八/七六九)に概略が示された、エリトリアが、ソマリアの平和及び和解並びに地域の安定を損なうことに関与する武装集団に対して政治的、資金的及び後方支援を提供しているとの所見について、重大な懸念を表明し、

TFGの職員及び機関、一般市民、人道支援要員並びにアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)の要員に対するすべての武力攻撃を非難し、

二千九年五月十九日付けエリトリア国連常駐代表発安全保障理事会議長あて書簡(S/二〇〇九/二五六)に記されているとおり、エリトリアによるジブチ合意の拒否について、重大な懸念を表明し、

同理事会が、ソマリアの平和、安全及び安定を脅かす行為に関与し若しくは支援を提供し、武器禁輸に違反して行動し、又は、ソマリアへの人道的援助の流入を妨害しているとして指定される個人又は団体に対する措置を課すことを決定した決議第千八百四十四号(二千八年)を想起し、ソマリアの安定に対するAMISOMの貢献に謝意を表明し、ブルンジ及びウガンダ政府によるAMISOMに対する継続的な約束への謝意を更に表明し、

ジブチ和平プロセスを防止又は妨げる者に対する措置をとる意図を改めて表明し、

エリトリアが、安全保障理事会より決議第千八百六十二号(二千九年)及び二千八年六月十二日の議長声明(S/PRST/二〇〇八/二〇)において要請されているとおり、従前の状態まで部隊を撤退させていないことについて、深い懸念を表明し、

エリトリアがこれまで、ジブチと対話を行うこと、小地域若しくは地域機関による、二国間の接触、仲介若しくは促進する努力を受入れること、又は、事務総長の努力に前向きに反応を示すことを拒否していることについて深刻な懸念を改めて表明し、

二千九年三月三十日付け事務総長の書簡(S/二〇〇九/一六三)及びその後のジブチ・エリトリア紛争に関する事務局の説明に留意し、

ジブチが、従前の状態まで部隊を撤退させ、国際連合の事実調査団及び事務総長のあっせんを含めすべての関係者に十分に協力していることに留意し、

ソマリアの平和及び和解を損なうエリトリアの行動並びにジブチとエリトリアの間の紛争が国際の平和及び安全に対する脅威を構成していることを認定し、

国際連合憲章第七章の下で行動して、

1 エリトリアを含むすべての加盟国が、ソマリアに関する決議第七百三十三号(千九百九十二年)の5により課され、決議第千三百五十六号(二千一年)、第千四百二十五号(二千二年)、第千七百二十五号(二千六年)、第千七百四十四号(二千七年)及び第千七百七十二号(二千七年)により詳述及び修正された武器禁輸の規定並びに決議第千八百四十四号(二千八年)の規定を完全に遵守しなければならないことを改めて表明する。

2 エリトリアを含むすべての加盟国に対し、ジブチ和平プロセスを支持し、ソマリアにおけるTFGによる和解の努力を支援するよう要請し、エリトリアに対し、TFGを直接的又は間接的に不安定化又は転覆させようとするあらゆる努力を停止するよう要求する。

3 エリトリアに対し、直ちに決議第千八百六十二号(二千九年)に従い、かつ次のことを行うよう改めて要求する。

(i) その部隊及びすべての装備を従前の状態まで撤退させ、二千八年六月にラス・ドゥメイラ及びドゥメイラ島で紛争が発生した地域において、部隊の駐留又は活動が行われないよう確保すること。

(ii) ラス・ドゥメイラ及びドゥメイラ島におけるジブチとの国境紛争を認め、緊張を和らげるための対話を積極的に行い、また、国境問題の相互に受け入れることのできる解決をもたらす外交努力を行うこと。

(iii) 国際連合加盟国としてその国際的な義務を遵守し、憲章第二条第三項、第四項及び第五項並びに第三十三条に言及されている原則を尊重し、特に決議第千八百六十二号(二千九年)の3に言及されている事務総長のあっせんの提案を通じ、事務総長と十分に協力すること。

4 エリトリアに対し、関係者がジブチの捕虜の存在及び状態を確認することができるよう、二千八年六月十日から十二日の衝突以来、戦闘中に行方不明となったジブチの兵士に関係する情報を提供することを要求する。

5 すべての加盟国は、エリトリアに対する自国民による若しくは自国の領域からの又は自国の旗を掲げる船舶若しくは航空機の使用による、すべての種類の武器及び関連物資(武器及び弾薬、軍用の車輌及び装備、準軍用装備並びにこれらの予備部品を含む。)並びに軍事的活動又はこれらの品目の提供、製造、維持若しくは使用に関連する技術援助、訓練、資金及びその他の援助(自国の領域を原産地とするものであるか否かを問わない。)の販売又は供給を防止するために必要な措置を直ちにとることを決定する。

6 エリトリアが、自国の領域からの又は自国民による若しくは自国の旗を掲げる船舶若しくは航空機の使用による、いかなる武器又は関連物資の直接又は間接の供給、販売又は移転も行わないこと、及び、すべての加盟国が、自国民による又は自国の旗を掲げる船舶若しくは航空機の使用による、エリトリアからの上記5に定める品目、訓練及び支援(エリトリアの領域を原産地とするものであるか否かを問わない。)の調達を禁止することを決定する。

7 すべての加盟国に対し、当該貨物がこの決議の5及び6により、又は、決議第七百三十三号(千九百九十二年)の5に従って定められ、その後の決議により詳述及び修正されたソマリアに対する全面的かつ完全な武器禁輸により、供給、移転又は輸出が禁止されている品目を含むと信じる合理的根拠があることを示す情報を当該国が有する場合には、これらの規定の厳格な履行を確保する目的で、自国の法的権限及び国内法令に従い、かつ国際法に適合する範囲内で、海港及び空港を含む自国の領域内で、ソマリア及びエリトリア向け並びにソマリア及びエリトリアからのすべての貨物を検査することを要請する。

8 すべての加盟国が、上記5及び6の規定により禁止される品目を発見した場合、この決議の5及び6の規定により供給、販売、移転又は輸出が禁止されている品目を押収及び処分すること(破壊し又は使用し得ない状態とすることによる。)を認め、また、すべての加盟国がこれを行うことを決定し、さらに、すべての国がそのような努力に協力することを決定する。

9 いかなる加盟国も、この決議5及び6の規定により供給、販売、移転又は輸出が禁止されている品目を発見したときは、その品目を押収及び処分するためにとった措置を含め、関連する詳細が含まれた報告を委員会に対してすみやかに提出することを要求する。

10 すべての加盟国は、下記15の基準に従って、決議第七百五十一号(千九百九十二年)に従い設立され、決議第千八百四十四号(二千八年)により拡大された委員会(以下、「委員会」という。)により指定される個人が自国の領域に入国し又は領域を通過することを防止するために必要な措置をとることを決定する。ただし、この規定のいかなるものも、ある国に対して自国民が自国の領域内に入ることを拒否することを義務づけるものではない。

11 上記10により課される措置は次の場合には適用されないことを決定する。

⒜ 委員会が、人道上の必要性(宗教上の義務を含む。)を理由として、そのような往来が正当化されることを個別の案件に応じて決定する場合。

⒝ 委員会が、免除が地域における平和及び安定の目的に資すると個別の案件に応じて決定する場合。

12 すべての加盟国は、下記15に従って委員会により指定される個人又は団体に対する、自国民による若しくは自国の領域からの又は自国の旗を掲げる船舶若しくは航空機の使用による、すべての種類の武器及び関連物資(武器及び弾薬、軍用の車輌及び装備、準軍用装備並びにこれらの予備部品を含む。)の直接又は間接の供給、販売若しくは移転、並びに軍事的活動若しくは武器及び軍事装備の供給、販売、移転、製造、維持若しくは使用に関連する、技術援助若しくは訓練、資金、及びその他の援助(投資、仲介若しくはその他の金融サービスを含む。)の直接又は間接の供給を防止するために必要な措置をとることを決定する。

13 すべての加盟国は、この決議の採択の日又はその後いつでも自国の領域内に存在する資金、その他の金融資産及び経済資源であって、下記15に従って委員会により指定される団体及び個人により、又は、それらの代理として若しくはそれらの指示により行動する個人若しくは団体により、直接的又は間接的に所有され又は管理されるものを遅滞なく凍結することを決定し、また、すべての加盟国は、いかなる資金、金融資産又は経済資源も、自国の国民又はその領域内にいる個人若しくは団体により、そのような個人又は団体の利益のために利用可能となることのないよう確保することを決定する。

14 上記13により課される措置は、関係加盟国により次のとおり決定された資金、その他の金融資産又は経済資源には適用しないことを決定する。

⒜ 食糧、賃料又は抵当、医薬品及び医療、租税、保険料及び公共料金のための支払いを含む基礎的な経費として必要であると決定されたもの又は法的役務の提供に関連して生じる妥当な専門手数料及び費用の払戻し若しくは凍結された資金、その他の金融資産及び経済資源の日常の保有若しくは維持のための国内法に基づく手数料若しくはサービス料のためのみに充てられる支払いであると決定されたものであって、関係加盟国より委員会に対し、適当と認められる場合に、そのような資金、その他の金融資産又は経済資源へのアクセスを認める意図が通知され、かつ、委員会がそのような通知がなされてから三作業日以内に否定的な決定を行わない場合。

⒝ 臨時経費として必要であると決定されたものであって、そのような決定が関係加盟国により委員会に対し通知され、かつ、委員会によって承認された場合。

⒞ 司法、行政又は仲裁上の担保又は判決の対象であると決定され、当該資金、その他の金融資産及び経済資源がその担保又は判決を充足させるために使用されるものであって、その担保又は判決がこの決議の日よりも前に効力を生じ、上記13に従って指定される者又は団体の利益のためではなく、かつ、関係加盟国により委員会に対し通知された場合。

15 上記10の規定は、委員会により次のとおり指定される個人(エリトリアの政治的及び軍事的指導者を含む。)に適用されること、並びに上記12及び13の規定は、委員会により次のとおり指定される個人及び団体(エリトリアの政治的及び軍事的指導者、政府及び議会の団体並びにエリトリアの領域の内外に居住するエリトリア国民が私有する団体を含む。)に適用されることを決定する。

⒜ 上記5及び6により定める措置に違反する者。

⒝ 地域を不安定化させることを目的とする、武装した反対集団へのエリトリアからの支援を提供する者。

⒞ ジブチに関する決議千八百六十二号(二千九年)の履行を妨げる者。

⒟ 地域の他国又は他国の市民に対する暴力行為又はテロ行為を行う個人又は団体をかくまい、資金を供し、促進し、支援し、組織し、訓練し又は扇動する者。

⒠ 監視団の調査又は作業を妨害する者。

16 すべての加盟国、特にエリトリアに対し、地域を不安定化し、又は、ジブチにおいて暴力及び国内争乱を扇動することを目的とする、アル・シャバーブを含む武装集団及びその構成員を武装させ、訓練し及び装備させることを停止するよう要求する。

17 エリトリアに対し、関連する決議に定める規定に沿って、委員会及びその他の制裁委員会、特に決議第千二百六十七号(千九百九十九年)に従い設立された委員会により指定される個人又は団体に対する渡航及びその他の形態の金融支援を促進することを停止するよう要求する。

18 次の追加の任務を遂行するため、委員会の任務を更に拡大することを決定する。

⒜ 監視団の支援を得て、上記5、6、8、10、12及び13において課される措置の実施を監視すること。

⒝ 上記15に規定される基準に従い、上記10、12及び13において課される措置の対象となる個人又は団体を指定すること。

⒞ 上記11及び14に定める免除の要請を受けた場合に検討し決定すること。

⒟ その追加の任務を反映させるために指針を更新すること。

19 この決議により課される措置の実施を監視し及び報告を行い、並びに以下に定める任務を遂行するため、決議第千八百五十三号(二千八年)により再設置された監視団の任務を更に拡大することを決定し、また、事務総長に対し、拡大された監視団がその任務を遂行し続けることができるよう、追加の資源及び人員のための適切な枠組みを作るよう要請する。

⒜ 違反に関するあらゆる情報を報告することを含め、上記5、6、8、10、12及び13において課される措置の実施の監視において委員会を支援すること。

⒝ 委員会に提供される上記16及び17の実施に関するあらゆる情報を検討すること。

⒞ 上記15に記述する委員会による個人及び団体の指定に関するあらゆる情報を安全保障理事会に対する報告に含めること。

⒟ これらの任務の遂行において、適当な場合に、他の制裁委員会の専門家パネルと調整を行うこと。

20 すべての加盟国に対し、上記5、6、10、12及び13に定める措置を実施するためにとった措置に関し、この決議の採択から百二十日以内に、安全保障理事会に対して報告することを要請する。

21 エリトリアの行動を検討すること、また、エリトリアによるこの決議の規定の遵守の状況にかんがみ、措置を調整(これらの措置の強化、修正又は解除を含む。)する用意があることを確認する。

22 事務総長に対し、エリトリアによるこの決議の規定の遵守の状況について、百八十日以内に報告することを要請する。

23 この問題に引き続き積極的に関与することを決定する。


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