国際刑事裁判所に関するローマ規程

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国際刑事裁判所に関するローマ規程

前文

 この規程の締約国は、
 すべての人民が共通のきずなで結ばれており、その文化が共有された遺産によって継ぎ合わされていることを意識し、また、この繊細な継ぎ合わされたものがいつでも粉々になり得ることを懸念し、
 二十世紀の間に多数の児童、女性及び男性が人類の良心に深く衝撃を与える想像を絶する残虐な行為の犠牲者となってきたことに留意し、
 このような重大な犯罪が世界の平和、安全及び福祉を脅かすことを認識し、
 国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪が処罰されずに済まされてはならないこと並びにそのような犯罪に対する効果的な訴追が国内的な措置をとり、及び国際協力を強化することによって確保されなければならないことを確認し、
 これらの犯罪を行った者が処罰を免れることを終わらせ、もってそのような犯罪の防止に貢献することを決意し、
 国際的な犯罪について責任を有する者に対して刑事裁判権を行使することがすべての国家の責務であることを想起し、
 国際連合憲章の目的及び原則並びに特に、すべての国が、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならないことを再確認し、
 これに関連して、この規程のいかなる規定も、いずれかの国の武力紛争又は国内問題に干渉する権限を締約国に与えるものと解してはならないことを強調し、
 これらの目的のため並びに現在及び将来の世代のために、国際連合及びその関連機関と連携関係を有し、国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪についての管轄権を有する独立した常設の国際刑事裁判所を設立することを決意し、
 この規程に基づいて設立する国際刑事裁判所が国家の刑事裁判権を補完するものであることを強調し、
 国際正義の永続的な尊重及び実現を保障することを決意して、
 次のとおり協定した。

第一部 裁判所の設立

第一条 裁判所
 この規程により国際刑事裁判所(以下「裁判所」という。)を設立する。裁判所は、常設機関とし、この規程に定める国際的な関心事である最も重大な犯罪を行った者に対して管轄権を行使する権限を有し、及び国家の刑事裁判権を補完する。裁判所の管轄権及び任務については、この規程によって規律する。
第二条 裁判所と国際連合との連携関係
 裁判所は、この規程の締約国会議が承認し、及びその後裁判所のために裁判所長が締結する協定によって国際連合と連携関係をもつ。
第三条 裁判所の所在地
1 裁判所の所在地は、オランダ(以下「接受国」という。)のハーグとする。
2 裁判所は、接受国と本部協定を結ぶ。この協定は、締約国会議が承認し、その後裁判所のために裁判所長が締結する。
3 裁判所は、この規程に定めるところにより、裁判所が望ましいと認める場合に他の地で開廷することができる。
第四条 裁判所の法的地位及び権限
1 裁判所は、国際法上の法人格を有する。また、裁判所は、任務の遂行及び目的の達成に必要な法律上の能力を有する。
2 裁判所は、この規程に定めるところによりいずれの締約国の領域においても、及び特別の合意によりその他のいずれの国の領域においても、任務を遂行し、及び権限を行使することができる。

第二部 管轄権、受理許容性及び適用される法

第五条 裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪
1 裁判所の管轄権は、国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪に限定する。裁判所は、この規程に基づき次の犯罪について管轄権を有する。
(a)集団殺害犯罪
(b)人道に対する犯罪
(c)戦争犯罪
(d)侵略犯罪
2 第百二十一条及び第百二十三条の規定に従い、侵略犯罪を定義し、及び裁判所がこの犯罪について管轄権を行使する条件を定める規定が採択された後に、裁判所は、この犯罪について管轄権を行使する。この規定は、国際連合憲章の関連する規定に適合したものとする。
第六条 集団殺害犯罪
 この規程の適用上、「集団殺害犯罪」とは、国民的、民族的、人種的又は宗教的な集団の全部又は一部に対し、その集団自体を破壊する意図をもって行う次のいずれかの行為をいう。
(a)当該集団の構成員を殺害すること。
(b)当該集団の構成員の身体又は精神に重大な害を与えること。
(c)当該集団の全部又は一部に対し、身体的破壊をもたらすことを意図した生活条件を故意に課すること。
(d)当該集団内部の出生を妨げることを意図する措置をとること。
(e)当該集団の児童を他の集団に強制的に移すこと。
第七条 人道に対する犯罪
1 この規程の適用上、「人道に対する犯罪」とは、文民たる住民に対する攻撃であって広範又は組織的なものの一部として、そのような攻撃であると認識しつつ行う次のいずれかの行為をいう。
(a)殺人
(b)絶滅させる行為
(c)奴隷化すること。
(d)住民の追放又は強制移送
(e)国際法の基本的な規則に違反する拘禁その他の身体的な自由の著しいはく奪
(f)拷問
(g)強姦、性的な奴隷、強制売春、強いられた妊娠状態の継続、強制断種その他あらゆる形態の性的暴力であってこれらと同等の重大性を有するもの
(h)政治的、人種的、国民的、民族的、文化的又は宗教的な理由、3に定義する性に係る理由その他国際法の下で許容されないことが普遍的に認められている理由に基づく特定の集団又は共同体に対する迫害であって、この1に掲げる行為又は裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪を伴うもの
(i)人の強制失踪
(j)アパルトヘイト犯罪
(k)その他の同様の性質を有する非人道的な行為であって、身体又は心身の健康に対して故意に重い苦痛を与え、又は重大な傷害を加えるもの
2 1の規定の適用上、
(a)「文民たる住民に対する攻撃」とは、そのような攻撃を行うとの国若しくは組織の政策に従い又は当該政策を推進するため、文民たる住民に対して1に掲げる行為を多重的に行うことを含む一連の行為をいう。
(b)「絶滅させる行為」には、住民の一部の破壊をもたらすことを意図した生活条件を故意に課すること(特に食糧及び薬剤の入手の機会のはく奪)を含む。
(c)「奴隷化すること」とは、人に対して所有権に伴ういずれか又はすべての権限を行使することをいい、人(特に女性及び児童)の取引の過程でそのような権限を行使することを含む。
(d)「住民の追放又は強制移送」とは、国際法の下で許容されている理由によることなく、退去その他の強制的な行為により、合法的に所在する地域から関係する住民を強制的に移動させることをいう。
(e)「拷問」とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず、抑留されている者又は支配下にある者に著しい苦痛を故意に与えることをいう。ただし、拷問には、専ら合法的な制裁に固有の又はこれに付随する苦痛が生ずることを含まない。
(f)「強いられた妊娠状態の継続」とは、住民の民族的な組成に影響を与えること又は国際法に対するその他の重大な違反を行うことを意図して、強制的に妊娠させられた女性を不法に監禁することをいう。この定義は、妊娠に関する国内法に影響を及ぼすものと解してはならない。
(g)「迫害」とは、集団又は共同体の同一性を理由として、国際法に違反して基本的な権利を意図的にかつ著しくはく奪することをいう。
(h)「アパルトヘイト犯罪」とは、1に掲げる行為と同様な性質を有する非人道的な行為であって、一の人種的集団が他の一以上の人種的集団を組織的に抑圧し、及び支配する制度化された体制との関連において、かつ、当該体制を維持する意図をもって行うものをいう。
(i)「人の強制失踪」とは、国若しくは政治的組織又はこれらによる許可、支援若しくは黙認を得た者が、長期間法律の保護の下から排除する意図をもって、人を逮捕し、拘禁し、又は拉致する行為であって、その自由をはく奪していることを認めず、又はその消息若しくは所在に関する情報の提供を拒否することを伴うものをいう。
3 この規程の適用上、「性」とは、社会の文脈における両性、すなわち、男性及び女性をいう。「性」の語は、これと異なるいかなる意味も示すものではない。
第八条 戦争犯罪
1 裁判所は、戦争犯罪、特に、計画若しくは政策の一部として又は大規模に行われたそのような犯罪の一部として行われるものについて管轄権を有する。
2 この規程の適用上、「戦争犯罪」とは、次の行為をいう。
(a)千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約に対する重大な違反行為、すなわち、関連するジュネーヴ条約に基づいて保護される人又は財産に対して行われる次のいずれかの行為
(i)殺人
(ii)拷問又は非人道的な待遇(生物学的な実験を含む。)
(iii)身体又は健康に対して故意に重い苦痛を与え、又は重大な傷害を加えること。
(iv)軍事上の必要性によって正当化されない不法かつ恣意的に行う財産の広範な破壊又は徴発
(v)捕虜その他の被保護者を強制して敵国の軍隊において服務させること。
(vi)捕虜その他の被保護者からの公正な正式の裁判を受ける権利のはく奪
(vii)不法な追放、移送又は拘禁
(viii)人質をとること。
(b)確立された国際法の枠組みにおいて国際的な武力紛争の際に適用される法規及び慣例に対するその他の著しい違反、すなわち、次のいずれかの行為
(i)文民たる住民それ自体又は敵対行為に直接参加していない個々の文民を故意に攻撃すること。
(ii)民用物、すなわち、軍事目標以外の物を故意に攻撃すること。
(iii)国際連合憲章の下での人道的援助又は平和維持活動に係る要員、施設、物品、組織又は車両であって、武力紛争に関する国際法の下で文民又は民用物に与えられる保護を受ける権利を有するものを故意に攻撃すること。
(iv)予期される具体的かつ直接的な軍事的利益全体との比較において、攻撃が、巻き添えによる文民の死亡若しくは傷害、民用物の損傷又は自然環境に対する広範、長期的かつ深刻な損害であって、明らかに過度となり得るものを引き起こすことを認識しながら故意に攻撃すること。
(v)手段のいかんを問わず、防衛されておらず、かつ、軍事目標でない都市、町村、住居又は建物を攻撃し、又は砲撃し若しくは爆撃すること。
(vi)武器を放棄して又は防衛の手段をもはや持たずに自ら投降した戦闘員を殺害し、又は負傷させること。
(vii)ジュネーヴ諸条約に定める特殊標章のほか、休戦旗又は敵国若しくは国際連合の旗若しくは軍隊の記章及び制服を不適正に使用して、死亡又は重傷の結果をもたらすこと。
(viii)占領国が、その占領地域に自国の文民たる住民の一部を直接若しくは間接に移送すること又はその占領地域の住民の全部若しくは一部を当該占領地域の内において若しくはその外に追放し若しくは移送すること。
(ix)宗教、教育、芸術、科学又は慈善のために供される建物、歴史的建造物、病院及び傷病者の収容所であって、軍事目標以外のものを故意に攻撃すること。
(x)敵対する紛争当事国の権力内にある者に対し、身体の切断又はあらゆる種類の医学的若しくは科学的な実験であって、その者の医療上正当と認められるものでも、その者の利益のために行われるものでもなく、かつ、その者を死に至らしめ、又はその健康に重大な危険が生ずるものを受けさせること。
(xi)敵対する紛争当事国又は軍隊に属する個人を背信的に殺害し、又は負傷させること。
(xii)助命しないことを宣言すること。
(xiii)敵対する紛争当事国の財産を破壊し、又は押収すること。ただし、戦争の必要性から絶対的にその破壊又は押収を必要とする場合は、この限りでない。
(xiv)敵対する紛争当事国の国民の権利及び訴権が消滅したこと、停止したこと又は裁判所において受理されないことを宣言すること。
(xv)敵対する紛争当事国の国民が戦争の開始前に本国の軍役に服していたか否かを問わず、当該国民に対し、その本国に対する軍事行動への参加を強制すること。
(xvi)襲撃により占領した場合であるか否かを問わず、都市その他の地域において略奪を行うこと。
(xvii)毒物又は毒を施した兵器を使用すること。
(xviii)窒息性ガス、毒性ガス又はこれらに類するガス及びこれらと類似のすべての液体、物質又は考案物を使用すること。
(xix)人体内において容易に展開し、又は扁平となる弾丸(例えば、外包が硬い弾丸であって、その外包が弾芯を全面的には被覆しておらず、又はその外包に切込みが施されたもの)を使用すること。
(xx)武力紛争に関する国際法に違反して、その性質上過度の傷害若しくは無用の苦痛を与え、又は本質的に無差別な兵器、投射物及び物質並びに戦闘の方法を用いること。ただし、これらの兵器、投射物及び物質並びに戦闘の方法が、包括的な禁止の対象とされ、かつ、第百二十一条及び第百二十三条の関連する規定に基づく改正によってこの規程の附属書に含められることを条件とする。
(xxi)個人の尊厳を侵害すること(特に、侮辱的で体面を汚す待遇)。
(xxii)強姦、性的な奴隷、強制売春、前条2(f)に定義する強いられた妊娠状態の継続、強制断種その他あらゆる形態の性的暴力であって、ジュネーヴ諸条約に対する重大な違反行為を構成するものを行うこと。
(xxiii)文民その他の被保護者の存在を、特定の地点、地域又は軍隊が軍事行動の対象とならないようにするために利用すること。
(xxiv)ジュネーヴ諸条約に定める特殊標章を国際法に従って使用している建物、物品、医療組織、医療用輸送手段及び要員を故意に攻撃すること。
(xxv)戦闘の方法として、文民からその生存に不可欠な物品をはく奪すること(ジュネーヴ諸条約に規定する救済品の分配を故意に妨げることを含む。)によって生ずる飢餓の状態を故意に利用すること。
(xxvi)十五歳未満の児童を自国の軍隊に強制的に徴集し若しくは志願に基づいて編入すること又は敵対行為に積極的に参加させるために使用すること。
(c)国際的性質を有しない武力紛争の場合には、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約のそれぞれの第三条に共通して規定する著しい違反、すなわち、敵対行為に直接に参加しない者(武器を放棄した軍隊の構成員及び病気、負傷、抑留その他の事由により戦闘能力のない者を含む。)に対する次のいずれかの行為
(i)生命及び身体に対し害を加えること(特に、あらゆる種類の殺人、身体の切断、虐待及び拷問)。
(ii)個人の尊厳を侵害すること(特に、侮辱的で体面を汚す待遇)。
(iii)人質をとること。
(iv)一般に不可欠と認められるすべての裁判上の保障を与える正規に構成された裁判所の宣告する判決によることなく刑を言い渡し、及び執行すること。
(d)(c)の規定は、国際的性質を有しない武力紛争について適用するものとし、暴動、独立の又は散発的な暴力行為その他これらに類する性質の行為等国内における騒乱及び緊張の事態については、適用しない。
(e)確立された国際法の枠組みにおいて国際的性質を有しない武力紛争の際に適用される法規及び慣例に対するその他の著しい違反、すなわち、次のいずれかの行為
(i)文民たる住民それ自体又は敵対行為に直接参加していない個々の文民を故意に攻撃すること。
(ii)ジュネーヴ諸条約に定める特殊標章を国際法に従って使用している建物、物品、医療組織、医療用輸送手段及び要員を故意に攻撃すること。
(iii)国際連合憲章の下での人道的援助又は平和維持活動に係る要員、施設、物品、組織又は車両であって、武力紛争に関する国際法の下で文民又は民用物に与えられる保護を受ける権利を有するものを故意に攻撃すること。
(iv)宗教、教育、芸術、科学又は慈善のために供される建物、歴史的建造物、病院及び傷病者の収容所であって、軍事目標以外のものを故意に攻撃すること。
(v)襲撃により占領した場合であるか否かを問わず、都市その他の地域において略奪を行うこと。
(vi)強姦、性的な奴隷、強制売春、前条2(f)に定義する強いられた妊娠状態の継続、強制断種その他あらゆる形態の性的暴力であって、ジュネーヴ諸条約のそれぞれの第三条に共通して規定する著しい違反を構成するものを行うこと。
(vii)十五歳未満の児童を軍隊若しくは武装集団に強制的に徴集し若しくは志願に基づいて編入すること又は敵対行為に積極的に参加させるために使用すること。
(viii)紛争に関連する理由で文民たる住民の移動を命ずること。ただし、その文民の安全又は絶対的な軍事上の理由のために必要とされる場合は、この限りでない。
(ix)敵対する紛争当事者の戦闘員を背信的に殺害し、又は負傷させること。
(x)助命しないことを宣言すること。
(xi)敵対する紛争当事者の権力内にある者に対し、身体の切断又はあらゆる種類の医学的若しくは科学的な実験であって、その者の医療上正当と認められるものでも、その者の利益のために行われるものでもなく、かつ、その者を死に至らしめ、又はその健康に重大な危険が生ずるものを受けさせること。
(xii)敵対する紛争当事者の財産を破壊し、又は押収すること。ただし、紛争の必要性から絶対的にその破壊又は押収を必要とする場合は、この限りでない。
(f)(e)の規定は、国際的性質を有しない武力紛争について適用するものとし、暴動、独立の又は散発的な暴力行為その他これらに類する性質の行為等国内における騒乱及び緊張の事態については、適用しない。同規定は、政府当局と組織された武装集団との間又はそのような集団相互の間の長期化した武力紛争がある場合において、国の領域内で生ずるそのような武力紛争について適用する。
3 2(c)及び(e)の規定は、あらゆる正当な手段によって、国内の法及び秩序を維持し若しくは回復し、又は国の統一を維持し、及び領土を保全するための政府の責任に影響を及ぼすものではない。
第九条 犯罪の構成要件に関する文書
1 裁判所は、前三条の規定の解釈及び適用に当たり、犯罪の構成要件に関する文書を参考とする。犯罪の構成要件に関する文書は、締約国会議の構成国の三分の二以上の多数による議決で採択される。
2 犯罪の構成要件に関する文書の改正は、次の者が提案することができる。
(a)締約国
(b)絶対多数による議決をもって行動する裁判官
(c)検察官
 この改正は、締約国会議の構成国の三分の二以上の多数による議決で採択される。
3 犯罪の構成要件に関する文書及びその改正は、この規程に適合したものとする。
第十条
 この部のいかなる規定も、この規程の目的以外の目的のために現行の又は発展する国際法の規則を制限し、又はその適用を妨げるものと解してはならない。
第十一条 時間についての管轄権
1 裁判所は、この規程が効力を生じた後に行われる犯罪についてのみ管轄権を有する。
2 いずれかの国がこの規程が効力を生じた後にこの規程の締約国となる場合には、裁判所は、この規程が当該国について効力を生じた後に行われる犯罪についてのみ管轄権を行使することができる。ただし、当該国が次条3に規定する宣言を行った場合は、この限りでない。
第十二条 管轄権を行使する前提条件
1 この規程の締約国となる国は、第五条に規定する犯罪についての裁判所の管轄権を受諾する。
2 裁判所は、次条(a)又は(c)に規定する場合において、次の(a)又は(b)に掲げる国の一又は二以上がこの規程の締約国であるとき又は3の規定に従い裁判所の管轄権を受諾しているときは、その管轄権を行使することができる。
(a)領域内において問題となる行為が発生した国又は犯罪が船舶内若しくは航空機内で行われた場合の当該船舶若しくは航空機の登録国
(b)犯罪の被疑者の国籍国
3 この規程の締約国でない国が2の規定に基づき裁判所の管轄権の受諾を求められる場合には、当該国は、裁判所書記に対して行う宣言により、問題となる犯罪について裁判所が管轄権を行使することを受諾することができる。受諾した国は、第九部の規定に従い遅滞なくかつ例外なく裁判所に協力する。
第十三条 管轄権の行使
 裁判所は、次の場合において、この規程に基づき、第五条に規定する犯罪について管轄権を行使することができる。
(a)締約国が次条の規定に従い、これらの犯罪の一又は二以上が行われたと考えられる事態を検察官に付託する場合
(b)国際連合憲章第七章の規定に基づいて行動する安全保障理事会がこれらの犯罪の一又は二以上が行われたと考えられる事態を検察官に付託する場合
(c)検察官が第十五条の規定に従いこれらの犯罪に関する捜査に着手した場合
第十四条 締約国による事態の付託
1 締約国は、裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪の一又は二以上が行われたと考えられる事態を検察官に付託することができるものとし、これにより、検察官に対し、そのような犯罪を行ったことについて一人又は二人以上の特定の者が訴追されるべきか否かを決定するために当該事態を捜査するよう要請する。
2 付託については、可能な限り、関連する状況を特定し、及び事態を付託する締約国が入手することのできる裏付けとなる文書を添付する。
第十五条 検察官
1 検察官は、裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪に関する情報に基づき自己の発意により捜査に着手することができる。
2 検察官は、取得した情報の重大性を分析する。このため、検察官は、国、国際連合の諸機関、政府間機関、非政府機関その他の自己が適当と認める信頼し得る情報源に対して追加的な情報を求めることができるものとし、裁判所の所在地において書面又は口頭による証言を受理することができる。
3 検察官は、捜査を進める合理的な基礎があると結論する場合には、収集した裏付けとなる資料とともに捜査に係る許可を予審裁判部に請求する。被害者は、手続及び証拠に関する規則に従い、予審裁判部に対して陳述をすることができる。
4 予審裁判部は、3に規定する請求及び裏付けとなる資料の検討に基づき、捜査を進める合理的な基礎があり、かつ、事件が裁判所の管轄権の範囲内にあるものと認める場合には、捜査の開始を許可する。ただし、この許可は、事件の管轄権及び受理許容性について裁判所がその後に行う決定に影響を及ぼすものではない。
5 予審裁判部が捜査を不許可としたことは、検察官が同一の事態に関し新たな事実又は証拠に基づいてその後に請求を行うことを妨げるものではない。
6 検察官は、1及び2の規定の下での予備的な検討の後、提供された情報が捜査のための合理的な基礎を構成しないと結論する場合には、その旨を当該情報を提供した者に通報する。このことは、検察官が同一の事態に関し新たな事実又は証拠に照らして自己に提供される追加的な情報を検討することを妨げるものではない。
第十六条 捜査又は訴追の延期
 いかなる捜査又は訴追についても、安全保障理事会が国際連合憲章第七章の規定に基づいて採択した決議により裁判所に対してこれらを開始せず、又は続行しないことを要請した後十二箇月の間、この規程に基づいて開始し、又は続行することができない。安全保障理事会は、その要請を同一の条件において更新することができる。
第十七条 受理許容性の問題
1 裁判所は、前文の第十段落及び第一条の規定を考慮した上で、次の場合には、事件を受理しないことを決定する。
(a)当該事件がそれについての管轄権を有する国によって現に捜査され、又は訴追されている場合。ただし、当該国にその捜査又は訴追を真に行う意思又は能力がない場合は、この限りでない。
(b)当該事件がそれについての管轄権を有する国によって既に捜査され、かつ、当該国が被疑者を訴追しないことを決定している場合。ただし、その決定が当該国に訴追を真に行う意思又は能力がないことに起因する場合は、この限りでない。
(c)被疑者が訴えの対象となる行為について既に裁判を受けており、かつ、第二十条3の規定により裁判所による裁判が認められない場合
(d)当該事件が裁判所による新たな措置を正当化する十分な重大性を有しない場合
2 裁判所は、特定の事件において捜査又は訴追を真に行う意思がないことを判定するため、国際法の認める適正な手続の原則を考慮した上で、妥当な場合には、次の一又は二以上のことが存在するか否かを検討する。
(a)第五条に規定する裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪についての刑事責任から被疑者を免れさせるために手続が行われた若しくは行われていること又はそのために国の決定が行われたこと。
(b)その時の状況において被疑者を裁判に付する意図に反する手続上の不当な遅延があったこと。
(c)手続が、独立して又は公平に行われなかった又は行われておらず、かつ、その状況において被疑者を裁判に付する意図に反する方法で行われた又は行われていること。
3 裁判所は、特定の事件において捜査又は訴追を真に行う能力がないことを判定するため、国が自国の司法制度の完全又は実質的な崩壊又は欠如のために、被疑者を確保し、若しくは必要な証拠及び証言を取得することができないか否か又はその他の理由から手続を行うことができないか否かを検討する。
第十八条 受理許容性についての予備的な決定
1 検察官は、事態が第十三条(a)の規定に従って裁判所に付託されており、かつ、捜査を開始する合理的な基礎があると決定している場合又は同条(c)及び第十五条の規定に従って捜査に着手する場合には、すべての締約国及び利用可能な情報を考慮して問題となる犯罪について裁判権を通常行使し得る国に通報する。検察官は、これらの国に対し情報を秘密のものとして通報することができるものとし、また、関係者を保護し、証拠の破壊を防止し、又は被疑者の逃亡を防止するために必要と認める場合には、これらの国に提供する情報の範囲を限定することができる。
2 国は、1に規定する通報を受領した後一箇月以内に、裁判所に対し、第五条に規定する犯罪を構成する可能性のある犯罪行為であって各国に対する通報において提供された情報に関連するものに関し、自国の裁判権の範囲内にある自国民その他の者を現に捜査しており、又は既に捜査した旨を通報することができる。検察官は、自己の請求に基づき予審裁判部が捜査を許可することを決定しない限り、当該国の要求により、これらの者に対する当該国が行う捜査にゆだねる。
3 国の行う捜査にゆだねたことについては、ゆだねた日の後六箇月を経過した後又は当該国に当該捜査を真に行う意思若しくは能力がないことに基づく著しい状況の変化があった場合にはいつでも、検察官が再検討することができる。
4 関係国又は検察官は、第八十二条の規定に従い予審裁判部の決定に対して上訴裁判部に上訴をすることができる。当該上訴については、迅速に審理する。
5 検察官は、2の規定に従って関係国に捜査をゆだねた場合には、当該関係国に対しその捜査の進捗状況及びその後の訴追について定期的に自己に報告するよう要請することができる。締約国は、不当に遅延することなくその要請に応ずる。
6 検察官は、予審裁判部による決定がなされるまでの間において、又はこの条の規定に従って捜査をゆだねた場合にはいつでも、重要な証拠を得るための得難い機会が存在し、又はそのような証拠がその後に入手することができなくなる著しい危険が存在するときは、例外的に、証拠を保全するために必要な捜査上の措置をとることについて予審裁判部の許可を求めることができる。
7 この条の規定に従い予審裁判部の決定について上訴をした国は、追加的な重要な事実又は著しい状況の変化を理由として、次条の規定に従い事件の受理許容性について異議を申し立てることができる。
第十九条 裁判所の管轄権又は事件の受理許容性についての異議の申立て
1 裁判所は、提起された事件について管轄権を有することを確認する。裁判所は、職権により第十七条の規定に従って事件の受理許容性を決定することができる。
2 裁判所の管轄権についての異議の申立て又は第十七条の規定を理由とする事件の受理許容性についての異議の申立ては、次の者が行うことができる。
(a)被告人又は第五十八条の規定に従って逮捕状若しくは召喚状が発せられている者
(b)当該事件について裁判権を有する国であって、当該事件を現に捜査し若しくは訴追しており、又は既に捜査し若しくは訴追したことを理由として異議の申立てを行うもの
(c)第十二条の規定に従って裁判所の管轄権の受諾を求められる国
3 検察官は、管轄権又は受理許容性の問題に関して裁判所による決定を求めることができる。また、第十三条の規定に従って事態を付託した者及び被害者は、管轄権又は受理許容性に関する手続において、裁判所に対して意見を提出することができる。
4 裁判所の管轄権又は事件の受理許容性については、異議の申立てを2に規定する者が一回のみ行うことができる。異議の申立ては、公判の前又は開始時に行う。裁判所は、例外的な状況において、異議の申立てが二回以上行われること又は公判の開始時よりも遅い時に行われることについて許可を与えることができる。公判の開始時において又はその後に裁判所の許可を得て行われる事件の受理許容性についての異議の申立ては、第十七条1(c)の規定にのみ基づいて行うことができる。
5 2(b)及び(c)に掲げる国は、できる限り早い機会に異議の申立てを行う。
6 裁判所の管轄権についての異議の申立て又は事件の受理許容性についての異議の申立ては、犯罪事実の確認の前は予審裁判部に対して行い、犯罪事実の確認の後は第一審裁判部に対して行う。管轄権又は受理許容性に関する決定については、第八十二条の規定に従い上訴裁判部に上訴をすることができる。
7 異議の申立てが2(b)又は(c)に掲げる国によって行われる場合には、検察官は、裁判所が第十七条の規定に従って決定を行うまでの間、捜査を停止する。
8 検察官は、裁判所が決定を行うまでの間、次のことについて裁判所の許可を求めることができる。
(a)前条6に規定する措置と同種の必要な捜査上の措置をとること。
(b)証人から供述若しくは証言を取得すること又は異議の申立てが行われる前に開始された証拠の収集及び見分を完了すること。
(c)関係国との協力の下に、第五十八条の規定に従って既に逮捕状を請求した者の逃亡を防止すること。
9 異議の申立ては、当該異議の申立てが行われる前に検察官が行ったいかなる行為又は裁判所が発したいかなる命令若しくは令状の有効性にも影響を及ぼすものではない。
10 裁判所が第十七条の規定に従って事件を受理しないことを決定した場合において、検察官は、先に同条の規定に従って事件を受理しないとされた根拠を否定する新たな事実が生じたと認めるときは、その決定の再検討を要請することができる。
11 検察官は、第十七条に規定する事項を考慮して関係国に捜査をゆだねる場合には、当該関係国に対して自己が手続に関する情報を入手することができるよう要請することができる。当該情報は、当該関係国の要請により、秘密とする。検察官は、その後捜査を続行することを決定するときは、その旨を当該関係国に通報する。
第二十条 一事不再理
1 いかなる者も、この規程に定める場合を除くほか、自己が裁判所によって既に有罪又は無罪の判決を受けた犯罪の基礎を構成する行為について裁判所によって裁判されることはない。
2 いかなる者も、自己が裁判所によって既に有罪又は無罪の判決を受けた第五条に規定する犯罪について他の裁判所によって裁判されることはない。
3 第六条から第八条までの規定によっても禁止されている行為について他の裁判所によって裁判されたいかなる者も、当該他の裁判所における手続が次のようなものであった場合でない限り、同一の行為について裁判所によって裁判されることはない。
(a)裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪についての刑事責任から当該者を免れさせるためのものであった場合
(b)国際法の認める適正な手続の規範に従って独立して又は公平に行われず、かつ、その時の状況において当該者を裁判に付する意図に反するような態様で行われた場合
第二十一条 適用される法
1 裁判所は、次のものを適用する。
(a)第一に、この規程、犯罪の構成要件に関する文書及び手続及び証拠に関する規則
(b)第二に、適当な場合には、適用される条約並びに国際法の原則及び規則(確立された武力紛争に関する国際法の原則を含む。)
(c)(a)及び(b)に規定するもののほか、裁判所が世界の法体系の中の国内法から見いだした法の一般原則(適当な場合には、その犯罪について裁判権を通常行使し得る国の国内法を含む。)。ただし、これらの原則がこの規程、国際法並びに国際的に認められる規範及び基準に反しないことを条件とする。
2 裁判所は、従前の決定において解釈したように法の原則及び規則を適用することができる。
3 この条に規定する法の適用及び解釈は、国際的に認められる人権に適合したものでなければならず、また、第七条3に定義する性、年齢、人種、皮膚の色、言語、宗教又は信条、政治的意見その他の意見、国民的、民族的又は社会的出身、貧富、出生又は他の地位等を理由とする不利な差別をすることなく行われなければならない。

第三部 刑法の一般原則

第二十二条 「法なくして犯罪なし」
1 いずれの者も、問題となる行為が当該行為の発生した時において裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪を構成しない限り、この規程に基づく刑事上の責任を有しない。
2 犯罪の定義については、厳格に解釈するものとし、類推によって拡大してはならない。あいまいな場合には、その定義については、捜査され、訴追され、又は有罪の判決を受ける者に有利に解釈する。
3 この条の規定は、この規程とは別に何らかの行為を国際法の下で犯罪とすることに影響を及ぼすものではない。
第二十三条 「法なくして刑罰なし」
 裁判所によって有罪の判決を受けた者については、この規程に従ってのみ処罰することができる。
第二十四条 人に関する不遡及
1 いかなる者も、この規程が効力を生ずる前の行為についてこの規程に基づく刑事上の責任を有しない。
2 確定判決の前にその事件に適用される法に変更がある場合には、捜査され、訴追され、又は有罪の判決を受ける者に一層有利な法が適用される。
第二十五条 個人の刑事責任
1 裁判所は、この規程に基づき自然人について管轄権を有する。
2 裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪を行った者は、この規程により、個人として責任を有し、かつ、刑罰を科される。
3 いずれの者も、次の行為を行った場合には、この規程により、裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪について刑事上の責任を有し、かつ、刑罰を科される。
(a)単独で、他の者と共同して、又は他の者が刑事上の責任を有するか否かにかかわりなく当該他の者を通じて当該犯罪を行うこと。
(b)既遂又は未遂となる当該犯罪の実行を命じ、教唆し、又は勧誘すること。
(c)当該犯罪の実行を容易にするため、既遂又は未遂となる当該犯罪の実行をほう助し、唆し、又はその他の方法で援助すること(実行のための手段を提供することを含む。)。
(d)共通の目的をもって行動する人の集団による既遂又は未遂となる当該犯罪の実行に対し、その他の方法で寄与すること。ただし、故意に行われ、かつ、次のいずれかに該当する場合に限る。
(i)当該集団の犯罪活動又は犯罪目的の達成を助長するために寄与する場合。ただし、当該犯罪活動又は犯罪目的が裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪の実行に関係する場合に限る。
(ii)当該犯罪を実行するという当該集団の意図を認識しながら寄与する場合
(e)集団殺害犯罪に関し、他の者に対して集団殺害の実行を直接にかつ公然と扇動すること。
(f)実質的な行為によって犯罪の実行を開始させる行動をとることにより当該犯罪の実行を試みること(その者の意図にかかわりない事情のために当該犯罪が既遂とならない場合を含む。)。ただし、当該犯罪を実行する試みを放棄し、又は犯罪の完遂を防止する者は、完全かつ自発的に犯罪目的を放棄した場合には、当該犯罪の未遂についてこの規程に基づく刑罰を科されない。
4 個人の刑事責任に関するこの規程のいかなる規定も、国際法の下での国家の責任に影響を及ぼすものではない。
第二十六条 十八歳未満の者についての管轄権の除外
 裁判所は、犯罪を実行したとされる時に十八歳未満であった者について管轄権を有しない。
第二十七条 公的資格の無関係
1 この規程は、公的資格に基づくいかなる区別もなく、すべての者についてひとしく適用する。特に、元首、政府の長、政府若しくは議会の一員、選出された代表又は政府職員としての公的資格は、いかなる場合にも個人をこの規程に基づく刑事責任から免れさせるものではなく、また、それ自体が減刑のための理由を構成するものでもない。
2 個人の公的資格に伴う免除又は特別な手続上の規則は、国内法又は国際法のいずれに基づくかを問わず、裁判所が当該個人について管轄権を行使することを妨げない。
第二十八条 指揮官その他の上官の責任
 裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪についての刑事責任であってこの規程に定める他の事由に基づくもののほか、
(a)軍の指揮官又は実質的に軍の指揮官として行動する者は、その実質的な指揮及び管理の下にあり、又は状況に応じて実質的な権限及び管理の下にある軍隊が、自己が当該軍隊の管理を適切に行わなかった結果として裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪を行ったことについて、次の(i)及び(ii)の条件が満たされる場合には、刑事上の責任を有する。
(i)当該指揮官又は当該者が、当該軍隊が犯罪を行っており若しくは行おうとしていることを知っており、又はその時における状況によって知っているべきであったこと。
(ii)当該指揮官又は当該者が、当該軍隊による犯罪の実行を防止し若しくは抑止し、又は捜査及び訴追のために事案を権限のある当局に付託するため、自己の権限の範囲内ですべての必要かつ合理的な措置をとることをしなかったこと。
(b)(a)に規定する上官と部下との関係以外の上官と部下との関係に関し、上官は、その実質的な権限及び管理の下にある部下が、自己が当該部下の管理を適切に行わなかった結果として裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪を行ったことについて、次の(i)から(iii)までのすべての条件が満たされる場合には、刑事上の責任を有する。
(i)当該上官が、当該部下が犯罪を行っており若しくは行おうとしていることを知っており、又はこれらのことを明らかに示す情報を意識的に無視したこと。
(ii)犯罪が当該上官の実質的な責任及び管理の範囲内にある活動に関係していたこと。
(iii)当該上官が、当該部下による犯罪の実行を防止し若しくは抑止し、又は捜査及び訴追のために事案を権限のある当局に付託するため、自己の権限の範囲内ですべての必要かつ合理的な措置をとることをしなかったこと。
第二十九条 出訴期限の不適用
 裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪は、出訴期限の対象とならない。
第三十条 主観的な要素
1 いずれの者も、別段の定めがある場合を除くほか、故意に及び認識して客観的な要素を実行する場合にのみ、裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪について刑事上の責任を有し、かつ、刑罰を科される。
2 この条の規定の適用上、次の場合には、個人に故意があるものとする。
(a)行為に関しては、当該個人がその行為を行うことを意図している場合
(b)結果に関しては、当該個人がその結果を生じさせることを意図しており、又は通常の成り行きにおいてその結果が生ずることを意識している場合
3 この条の規定の適用上、「認識」とは、ある状況が存在し、又は通常の成り行きにおいてある結果が生ずることを意識していることをいう。「知っている」及び「知って」は、この意味に従って解釈するものとする。
第三十一条 刑事責任の阻却事由
1 いずれの者も、この規程に定める他の刑事責任の阻却事由のほか、その行為の時において次のいずれかに該当する場合には、刑事上の責任を有しない。
(a)当該者が、その行為の違法性若しくは性質を判断する能力又は法律上の要件に適合するようにその行為を制御する能力を破壊する精神疾患又は精神障害を有する場合
(b)当該者が、その行為の違法性若しくは性質を判断する能力又は法律上の要件に適合するようにその行為を制御する能力を破壊する酩酊又は中毒の状態にある場合。ただし、当該者が、酩酊若しくは中毒の結果として裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪を構成する行為を行うおそれがあることを知っており、又はその危険性を無視したような状況において、自ら酩酊又は中毒の状態となった場合は、この限りでない。
(c)当該者が、自己その他の者又は戦争犯罪の場合には自己その他の者の生存に不可欠な財産若しくは軍事上の任務の遂行に不可欠な財産を急迫したかつ違法な武力の行使から防御するため、自己その他の者又は財産に対する危険の程度と均衡のとれた態様で合理的に行動する場合。ただし、当該者が軍隊が行う防衛行動に関与した事実それ自体は、この(c)の規定に基づく刑事責任の阻却事由を構成しない。
(d)裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪を構成するとされる行為が、当該者又はその他の者に対する切迫した死の脅威又は継続的な若しくは切迫した重大な傷害の脅威に起因する圧迫によって引き起こされ、かつ、当該者がこれらの脅威を回避するためにやむを得ずかつ合理的に行動する場合。ただし、当該者が回避しようとする損害よりも大きな損害を引き起こす意図を有しないことを条件とする。そのような脅威は、次のいずれかのものとする。
(i)他の者により加えられるもの
(ii)その他の当該者にとってやむを得ない事情により生ずるもの
2 裁判所は、裁判所に係属する事件について、この規程に定める刑事責任の阻却事由の適用の可否を決定する。
3 裁判所は、裁判において、1に規定する刑事責任の阻却事由以外の刑事責任の阻却事由であって、第二十一条に定める適用される法から見いだされるものを考慮することができる。そのような事由を考慮することに関する手続は、手続及び証拠に関する規則において定める。
第三十二条 事実の錯誤又は法律の錯誤
1 事実の錯誤は、犯罪の要件となる主観的な要素を否定する場合にのみ、刑事責任の阻却事由となる。
2 特定の類型の行為が裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪であるか否かについての法律の錯誤は、刑事責任の阻却事由とならない。ただし、法律の錯誤は、その犯罪の要件となる主観的な要素を否定する場合又は次条に規定する場合には、刑事責任の阻却事由となり得る。
第三十三条 上官の命令及び法律の規定
1 裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪が政府又は上官(軍人であるか文民であるかを問わない。)の命令に従ってある者によって行われたという事実は、次のすべての条件が満たされない限り、当該者の刑事責任を阻却するものではない。
(a)当該者が政府又は当該上官の命令に従う法的義務を負っていたこと。
(b)その命令が違法であることを当該者が知らなかったこと。
(c)その命令が明白に違法ではなかったこと。
2 この条の規定の適用上、集団殺害犯罪又は人道に対する犯罪を実行するよう命令することは、明白に違法である。

第四部 裁判所の構成及び運営

第三十四条 裁判所の機関
 裁判所は、次の機関により構成される。
(a)裁判所長会議
(b)上訴裁判部門、第一審裁判部門及び予審裁判部門
(c)検察局
(d)書記局
第三十五条 裁判官の職務の遂行
1 すべての裁判官は、裁判所の常勤の裁判官として選出されるものとし、その任期の開始の時から常勤で職務を遂行することができるようにする。
2 裁判所長会議を構成する裁判官は、選任された後直ちに常勤で職務を遂行する。
3 裁判所長会議は、裁判所の仕事量に基づいて及び裁判所の裁判官と協議の上、他の裁判官がどの程度まで常勤で職務を遂行する必要があるかについて随時決定することができる。そのような措置は、第四十条の規定の適用を妨げるものではない。
4 常勤で職務を遂行する必要のない裁判官のための財政措置については、第四十九条の規定に従ってとるものとする。
第三十六条 裁判官の資格、指名及び選挙
1 裁判所の裁判官は、2の規定に従うことを条件として、十八人とする。
2(a)裁判所を代表して行動する裁判所長会議は、1に定める裁判官の人数を増加させることを、それが必要かつ適当と認められる理由を示して提案することができる。裁判所書記は、その提案をすべての締約国に直ちに通報する。
(b)(a)に規定する提案は、その後、第百十二条の規定に従って招集される締約国会議の会合において検討される。当該提案は、当該会合において締約国会議の構成国の三分の二以上の多数による議決で承認される場合には採択されたものとし、締約国会議が定める時に効力を生ずる。
(c)(i)裁判官の人数を増加させるための提案が(b)の規定に従って採択された後、追加的な裁判官の選挙は、3から8まで及び次条2の規定に従い締約国会議の次回の会合において行う。
(ii)裁判官の人数を増加させるための提案が(b)及び(c)(i)の規定に従って採択され、及び効力を生じた後において、裁判所長会議は、裁判所の仕事量にかんがみて適当と認めるときは、裁判官の人数を減少させることをいつでも提案することができる。ただし、裁判官の人数は、1に定める人数を下回らないことを条件とする。その提案は、(a)及び(b)に定める手続に従って取り扱われる。当該提案が採択された場合には、裁判官の人数は、職務を遂行している裁判官の任期の終了に合わせて、必要とされる人数となるまで段階的に減少させる。
3(a)裁判官は、徳望が高く、公平であり、誠実であり、かつ、各自の国で最高の司法官に任ぜられるのに必要な資格を有する者のうちから選出される。
(b)裁判官の選挙のための候補者は、次のいずれかの能力及び経験を有する者とする。
(i)刑事法及び刑事手続についての確立した能力並びに裁判官、検察官若しくは弁護士としての又は他の同様の資格の下での刑事手続における必要な関連する経験
(ii)国際人道法、人権に関する法等の国際法に関連する分野における確立した能力及び法律に係る専門的な資格であって裁判所の司法業務に関連するものの下での広範な経験
(c)裁判官の選挙のための候補者は、裁判所の常用語の少なくとも一について卓越した知識を有し、かつ、堪能でなければならない。
4(a)この規程のいずれの締約国も、裁判官の選挙のための候補者の指名を行うことができるものとし、指名は、次のいずれかの手続によって行う。
(i)当該締約国における最高の司法官に任ぜられる候補者を指名するための手続
(ii)国際司法裁判所規程に定める国際司法裁判所の裁判官の候補者を指名するための手続
 指名には、候補者が3に規定する要件をどのように満たしているかについて必要な程度に詳細に明記した説明を付する。
(b)各締約国は、いずれの選挙にも一人の候補者を指名することができる。ただし、候補者は、必ずしも当該各締約国の国民であることを要しないが、いかなる場合にも締約国の国民とする。
(c)締約国会議は、適当な場合には、指名に関する諮問委員会の設置を決定することができる。この場合には、諮問委員会の構成及び権限については、締約国会議が定める。
5 選挙のための候補者の名簿は、次の二とする。
   3(b)(i)に規定する資格を有する候補者の氏名を記載した名簿A
   3(b)(ii)に規定する資格を有する候補者の氏名を記載した名簿B
 両方の名簿に記載されるための十分な資格を有する候補者は、いずれの名簿に記載されるかを選択することができる。最初の裁判官の選挙において、名簿Aの中から少なくとも九人の裁判官及び名簿Bの中から少なくとも五人の裁判官を選出する。その後の選挙は、二の名簿に記載される資格を有する裁判官が裁判所において同様の割合で維持されるよう実施する。
6(a)裁判官は、第百十二条の規定に従って選挙のために招集される締約国会議の会合において秘密投票によって選出される。7の規定に従うことを条件として、出席し、かつ、投票する締約国によって投じられた票の最多数で、かつ、三分の二以上の多数の票を得た十八人の候補者をもって、裁判官に選出された者とする。
(b)一回目の投票において十分な数の裁判官が選出されなかった場合には、残りの裁判官が選出されるまで、(a)に定める手続に従って引き続き投票を行う。
7 裁判官については、そのうちのいずれの二人も、同一の国の国民であってはならない。裁判所の裁判官の地位との関連でいずれかの者が二以上の国の国民であると認められる場合には、当該者は、市民的及び政治的権利を通常行使する国の国民とみなされる。
8(a)締約国は、裁判官の選出に当たり、裁判所の裁判官の構成において次のことの必要性を考慮する。
(i)世界の主要な法体系が代表されること。
(ii)地理的に衡平に代表されること。
(iii)女性の裁判官と男性の裁判官とが公平に代表されること。
(b)締約国は、特定の問題(特に、女性及び児童に対する暴力を含む。)に関する法的知見を有する裁判官が含まれる必要性も考慮する。
9(a)裁判官は、(b)の規定に従うことを条件として九年間在任するものとし、(c)及び次条2の規定が適用される場合を除くほか、再選される資格を有しない。
(b)最初の選挙において、くじ引による選定により、選出された裁判官のうち、三分の一は三年の任期で、また、三分の一は六年の任期で在任する。残りの裁判官は、九年の任期で在任する。
(c)(b)の規定によって三年の任期で在任することが選定された裁判官は、九年の任期で再選される資格を有する。
10 9の規定にかかわらず、第三十九条の規定に従って第一審裁判部又は上訴裁判部に配属された裁判官は、これらの裁判部において審理が既に開始されている第一審又は上訴を完了させるために引き続き在任する。
第三十七条 裁判官の空席
1 裁判官の空席が生じた場合には、その空席を補充するために前条の規定に従って選挙を行う。
2 空席を補充するために選出された裁判官は、前任者の残任期間中在任するものとし、その残任期間が三年以下の場合には、前条の規定に従い九年の任期で再選される資格を有する。
第三十八条 裁判所長会議
1 裁判所長、裁判所第一次長及び裁判所第二次長は、裁判官の絶対多数による議決で選出される。これらの者は、それぞれ、三年の期間又は裁判官としてのそれぞれの任期の終了までの期間のいずれか早い満了の時まで在任するものとし、一回に限って再選される資格を有する。
2 裁判所第一次長は、裁判所長に支障がある場合又は裁判所長がその資格を失った場合には、裁判所長に代わって行動する。裁判所第二次長は、裁判所長及び裁判所第一次長の双方に支障がある場合又はこれらの者がその資格を失った場合には、裁判所長に代わって行動する。
3 裁判所長は、裁判所第一次長及び裁判所第二次長と共に裁判所長会議を構成するものとし、同会議は、次の事項について責任を有する。
(a)裁判所(検察局を除く。)の適正な運営
(b)その他の任務であってこの規程によって裁判所長会議に与えられるもの
4 裁判所長会議は、3(a)の規定の下での責任を果たすに当たり、相互に関心を有するすべての事項について検察官と調整し、及びその同意を求める。
第三十九条 裁判部
1 裁判所は、裁判官の選挙の後できる限り速やかに、第三十四条(b)に規定する裁判部門を組織する。上訴裁判部門は裁判所長及び他の四人の裁判官で、第一審裁判部門は六人以上の裁判官で、また、予審裁判部門は六人以上の裁判官で構成する。裁判官の裁判部門への配属は、各裁判部門が遂行する任務の性質並びに選出された裁判官の資格及び経験に基づき、刑事法及び刑事手続についての専門的知識と国際法についての専門的知識とが各裁判部門において適当に組み合わされるように行う。第一審裁判部門及び予審裁判部門は、主として刑事裁判の経験を有する裁判官で構成する。
2(a)裁判所の司法上の任務は、各裁判部門において遂行する。
(b)(i)上訴裁判部は、上訴裁判部門のすべての裁判官で構成する。
(ii)第一審裁判部の任務は、第一審裁判部門の三人の裁判官が遂行する。
(iii)予審裁判部の任務は、この規程及び手続及び証拠に関する規則に従い予審裁判部門の三人の裁判官又は予審裁判部門の一人の裁判官が遂行する。
(c)この2の規定は、裁判所の仕事量の効率的な管理に必要となる場合には、二以上の第一審裁判部又は予審裁判部を同時に設置することを妨げるものではない。
3(a)第一審裁判部門又は予審裁判部門に配属された裁判官は、その裁判部門に三年間在任し、及びその後その裁判部門において審理が既に開始されている事件が完了するまで在任する。
(b)上訴裁判部門に配属された裁判官は、その裁判部門に自己の任期の全期間在任する。
4 上訴裁判部門に配属された裁判官は、その裁判部門にのみ在任する。この条のいかなる規定も、裁判所長会議が裁判所の仕事量の効率的な管理に必要と認める場合には、裁判官を第一審裁判部門から予審裁判部門に又は予審裁判部門から第一審裁判部門に一時的に配属することを妨げるものではない。ただし、いかなる場合にも、いずれかの事件の予審裁判段階に関与した裁判官は、当該事件の審理を行う第一審裁判部の一員となる資格を有しない。
第四十条 裁判官の独立
1 裁判官は、独立してその任務を遂行する。
2 裁判官は、その司法上の任務を妨げ、又はその独立性についての信頼に影響を及ぼすおそれのあるいかなる活動にも従事してはならない。
3 裁判所の所在地において常勤で職務を遂行することを求められる裁判官は、他のいかなる職業的性質を有する業務にも従事してはならない。
4 2及び3の規定の適用に関する問題は、裁判官の絶対多数による議決で決定する。その問題が個々の裁判官に関係する場合には、当該裁判官は、その決定に参加してはならない。
第四十一条 裁判官の回避及び除斥
1 裁判所長会議は、手続及び証拠に関する規則に従い、裁判官の要請により、当該裁判官をこの規程に定める任務の遂行から回避させることができる。
2(a)裁判官は、何らかの理由により自己の公平性について合理的に疑義が生じ得る事件に関与してはならない。裁判官は、特に、裁判所に係属する事件又は被疑者若しくは被告人に係る国内における関連する刑事事件に何らかの資格において既に関与したことがある場合には、この2の規定に従い当該事件から除斥される。裁判官は、手続及び証拠に関する規則に定める他の理由によっても除斥される。
(b)検察官、被疑者又は被告人は、この2の規定に基づいて裁判官の除斥を申し立てることができる。
(c)いずれかの裁判官の除斥に関する問題は、裁判官の絶対多数による議決で決定する。当該いずれかの裁判官は、この事項について意見を提出する権利を有するが、その決定に参加してはならない。
第四十二条 検察局
1 検察局は、裁判所内の別個の組織として独立して行動する。検察局は、裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪の付託及びその裏付けとなる情報の受理及び検討並びに捜査及び裁判所への訴追について責任を有する。検察局の構成員は、同局外から指示を求めてはならず、また、同局外からの指示に基づいて行動してはならない。
2 検察局の長は、検察官とする。検察官は、検察局(職員、設備その他資産を含む。)の管理及び運営について完全な権限を有する。検察官は、一人又は二人以上の次席検察官の補佐を受けるものとし、次席検察官は、この規程に基づき検察官に求められる行為を行う権限を有する。検察官と次席検察官とは、それぞれ異なる国籍を有する者とする。これらの者は、常勤で職務を遂行する。
3 検察官及び次席検察官は、徳望が高く、かつ、刑事事件の訴追又は裁判について高い能力及び広範な実務上の経験を有する者とし、裁判所の常用語の少なくとも一について卓越した知識を有し、かつ、堪能でなければならない。
4 検察官は、秘密投票によって締約国会議の構成国の絶対多数による議決で選出される。次席検察官は、検察官が提供する候補者名簿の中から同様の方法によって選出される。検察官は、選出される次席検察官のそれぞれの職について三人の候補者を指名する。選挙の際に一層短い任期が決定されない限り、検察官及び次席検察官は、九年の任期で在任するものとし、再選される資格を有しない。
5 検察官及び次席検察官は、その訴追上の任務を妨げ、又はその独立性についての信頼に影響を及ぼすおそれのあるいかなる活動にも従事してはならないものとし、他のいかなる職業的性質を有する業務にも従事してはならない。
6 裁判所長会議は、検察官又は次席検察官の要請により、当該検察官又は次席検察官を特定の事件についての任務の遂行から回避させることができる。
7 検察官及び次席検察官は、何らかの理由により自己の公平性について合理的に疑義が生じ得る事案に関与してはならない。検察官及び次席検察官は、特に、裁判所に係属する事件又は被疑者若しくは被告人に係る国内における関連する刑事事件に何らかの資格において既に関与したことがある場合には、この7の規定に従い当該事件から除斥される。
8 検察官又は次席検察官の特定の事件からの除斥に関する問題は、上訴裁判部が決定する。
(a)被疑者又は被告人は、この条に規定する理由に基づきいつでも検察官又は次席検察官の特定の事件からの除斥を申し立てることができる。
(b)(a)に規定する検察官又は次席検察官は、適当と認める場合には、この事項について意見を提出する権利を有する。
9 検察官は、特定の問題(特に、性的暴力及び児童に対する暴力を含む。)に関する法的知見を有する顧問を任命する。
第四十三条 書記局
1 書記局は、前条の規定に基づく検察官の任務及び権限を害することなく、裁判所の運営及び業務のうち司法の分野以外の分野について責任を有する。
2 書記局の長は、裁判所書記とするものとし、裁判所書記は、裁判所の首席行政官である。裁判所書記は、裁判所長から権限を与えられた任務を遂行する。
3 裁判所の書記及び次席書記は、徳望が高く、かつ、高い能力を有していなければならないものとし、裁判所の常用語の少なくとも一について卓越した知識を有し、かつ、堪能でなければならない。
4 裁判官は、締約国会議の勧告を考慮して、秘密投票によって絶対多数による議決で裁判所書記を選出する。裁判官は、裁判所次席書記の必要が生じた場合には、裁判所書記の勧告に基づいて、同様の方法によって裁判所次席書記を選出する。
5 裁判所書記は、五年の任期で在任し、及び一回のみ再選される資格を有するものとし、常勤で職務を遂行する。裁判所次席書記は、五年の任期又は裁判官の絶対多数による議決で決定される一層短い任期で在任するものとし、必要に応じて職務の遂行が求められることを前提として選出される。
6 裁判所書記は、書記局内に被害者・証人室を設置する。この室は、検察局と協議の上、証人、出廷する被害者その他証人が行う証言のために危険にさらされる者に対し、保護及び安全のための措置、カウンセリングその他の適当な援助を提供する。この室には、心的外傷(性的暴力の犯罪に関連するものを含む。)に関する専門的知識を有する職員を含める。
第四十四条 職員
1 検察官及び裁判所書記は、それぞれの局が必要とする資格を有する職員を任命する。検察官の場合には、その任命には、捜査官の任命を含む。
2 検察官及び裁判所書記は、職員の雇用に際し、最高水準の能率、能力及び誠実性を確保するものとし、第三十六条8に定める基準を準用して考慮する。
3 裁判所書記は、裁判所長会議及び検察官の同意を得て、職員規則(裁判所職員の任命、報酬及び解雇に関する条件を含む。)を提案する。この職員規則については、締約国会議が承認する。
4 裁判所は、例外的な状況において、裁判所のいずれかの組織の業務を援助するため、締約国、政府間機関又は非政府機関により提供される無給の人員の専門的知識を用いることができる。検察官は、検察局のためにその提供を受け入れることができる。そのような無給の人員については、締約国会議が定める指針に従って雇用する。
第四十五条 厳粛な約束
 裁判官、検察官、次席検察官、裁判所書記及び裁判所次席書記は、この規程に基づくそれぞれの職務に就く前に、公開の法廷において、公平かつ誠実にそれぞれの任務を遂行することを厳粛に約束する。
第四十六条 解任
1 裁判官、検察官、次席検察官、裁判所書記又は裁判所次席書記は、次の場合において、2の規定に従って解任の決定がなされたときは、解任される。
(a)手続及び証拠に関する規則に定める重大な不当行為又はこの規程に基づく義務の重大な違反を行ったことが判明した場合
(b)この規程が求める任務を遂行することができない場合
2 1の規定に基づく裁判官、検察官又は次席検察官の解任についての決定は、締約国会議が秘密投票によって次の議決で行う。
(a)裁判官については、他の裁判官の三分の二以上の多数による議決で採択される勧告に基づく締約国の三分の二以上の多数による議決
(b)検察官については、締約国の絶対多数による議決
(c)次席検察官については、検察官の勧告に基づく締約国の絶対多数による議決
3 裁判所の書記又は次席書記の解任についての決定は、裁判官の絶対多数による議決で行う。
4 この規程により求められる職務を遂行する行為及び能力についてこの条の規定により異議を申し立てられている裁判官、検察官、次席検察官、裁判所書記又は裁判所次席書記は、手続及び証拠に関する規則に従い、証拠を提示し、及び入手し、並びに意見を述べる十分な機会を有する。異議を申し立てられた者は、その他の方法でこの問題の検討に参加してはならない。
第四十七条 懲戒処分
 前条1に規定する不当行為よりも重大でない性質の不当行為を行った裁判官、検察官、次席検察官、裁判所書記又は裁判所次席書記は、手続及び証拠に関する規則に従って懲戒処分を受ける。
第四十八条 特権及び免除
1 裁判所は、その目的の達成に必要な特権及び免除を各締約国の領域において享有する。
2 裁判官、検察官、次席検察官及び裁判所書記は、裁判所の事務に従事する間又は裁判所の事務に関し、外交使節団の長に与えられる特権及び免除と同一の特権及び免除を享有する。また、任期の満了後、公的資格で行った口頭又は書面による陳述及び行為に関してあらゆる種類の訴訟手続からの免除を引き続き与えられる。
3 裁判所次席書記、検察局の職員及び書記局の職員は、裁判所の特権及び免除に関する協定により、任務の遂行に必要な特権、免除及び便宜を享有する。
4 弁護人、専門家、証人その他裁判所への出廷を求められる者は、裁判所の特権及び免除に関する協定により、裁判所の適切な任務の遂行に必要な待遇を与えられる。
5 特権及び免除に関し、
(a)裁判官又は検察官については、裁判官の絶対多数による議決で放棄することができる。
(b)裁判所書記については、裁判所長会議が放棄することができる。
(c)次席検察官及び検察局の職員については、検察官が放棄することができる。
(d)裁判所次席書記及び書記局の職員については、裁判所書記が放棄することができる。
第四十九条 俸給、手当及び経費
 裁判官、検察官、次席検察官、裁判所書記及び裁判所次席書記は、締約国会議が決定する俸給、手当及び経費を受ける。これらの俸給及び手当については、任期中は減額してはならない。
第五十条 公用語及び常用語
1 裁判所の公用語は、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語とする。裁判所の判決その他裁判所における基本的な問題を解決するための決定は、公用語で公表する。裁判所長会議は、手続及び証拠に関する規則に定める基準に従い、この1の規定の適用上いずれの決定が基本的な問題を解決するためのものと認められるかを決定する。
2 裁判所の常用語は、英語及びフランス語とする。手続及び証拠に関する規則は、他の公用語を常用語として使用することのできる場合について定める。
3 裁判所は、手続の当事者又は手続への参加が認められる国の要請により、これらの当事者又は国が英語及びフランス語以外の言語を使用することを許可する。ただし、その許可は、裁判所が十分に正当な理由があると認める場合に限る。
第五十一条 手続及び証拠に関する規則
1 手続及び証拠に関する規則は、締約国会議の構成国の三分の二以上の多数による議決で採択された時に効力を生ずる。
2 手続及び証拠に関する規則の改正は、次の者が提案することができる。
(a)締約国
(b)絶対多数による議決をもって行動する裁判官
(c)検察官
 この改正は、締約国会議の構成国の三分の二以上の多数による議決で採択された時に効力を生ずる。
3 手続及び証拠に関する規則の採択後、同規則に定めていない緊急を要する特別の状況が裁判所において生じた場合には、裁判官は、三分の二以上の多数による議決で暫定的な規則を作成することができるものとし、締約国会議の次回の通常会合又は特別会合において採択され、改正され、又は否決されるまでこれを適用する。
4 手続及び証拠に関する規則及びその改正並びに暫定的な規則は、この規程に適合したものとする。手続及び証拠に関する規則の改正及び暫定的な規則は、捜査され、訴追され、又は有罪の判決を受けた者について不利に遡及して適用してはならない。
5 この規程と手続及び証拠に関する規則とが抵触する場合には、この規程が優先する。
第五十二条 裁判所規則
1 裁判官は、この規程及び手続及び証拠に関する規則に従い、裁判所の日常の任務の遂行に必要な裁判所規則を絶対多数による議決で採択する。
2 検察官及び裁判所書記は、裁判所規則の作成及びその改正に当たって協議を受ける。
3 裁判所規則及びその改正は、裁判官が別段の決定を行わない限り、採択された時に効力を生ずる。裁判所規則及びその改正は、採択後直ちに意見を求めるために締約国に通報されるものとし、六箇月以内に締約国の過半数から異議が申し立てられない場合には、引き続き効力を有する。

第五部 捜査及び訴追

第五十三条 捜査の開始
1 検察官は、入手することのできた情報を評価した後、この規程に従って手続を進める合理的な基礎がないと決定しない限り、捜査を開始する。検察官は、捜査を開始するか否かを決定するに当たり、次の事項を検討する。
(a)利用可能な情報により、裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪が行われた又は行われていると信ずるに足りる合理的な基礎が認められるか否か。
(b)事件について第十七条に規定する受理許容性があるか否か又は受理許容性があり得るか否か。
(c)犯罪の重大性及び被害者の利益を考慮してもなお捜査が裁判の利益に資するものでないと信ずるに足りる実質的な理由があるか否か。
 検察官は、手続を進める合理的な基礎がないと決定し、及びその決定が専ら(c)の規定に基づく場合には、予審裁判部に通知する。
2 検察官は、捜査に基づき、次のことを理由として訴追のための十分な根拠がないと結論する場合には、予審裁判部及び第十四条の規定に基づいて付託を行った国又は第十三条(b)に規定するときは安全保障理事会に対し、その結論及びその理由を通報する。
(a)第五十八条の規定に基づく令状又は召喚状を求めるための法的な又は事実に係る根拠が十分でないこと。
(b)事件について第十七条に規定する受理許容性がないこと。
(c)すべての事情(犯罪の重大性、被害者の利益、被疑者の年齢又は心身障害及び被疑者が行ったとされる犯罪における当該者の役割を含む。)を考慮して、訴追が裁判の利益のためにならないこと。
3(a)第十四条の規定に基づいて付託を行った国又は第十三条(b)に規定するときは安全保障理事会の要請により、予審裁判部は、手続を進めない旨の1又は2の規定に基づく検察官の決定を検討することができるものとし、検察官に対し当該決定を再検討するよう要請することができる。
(b)予審裁判部は、手続を進めない旨の検察官の決定が専ら1(c)又は2(c)の規定に基づく場合には、職権によって当該決定を検討することができる。そのような場合には、検察官の決定は、予審裁判部が追認するときにのみ効力を有する。
4 検察官は、新たな事実又は情報に基づき、捜査又は訴追を開始するか否かの決定をいつでも再検討することができる。
第五十四条 捜査についての検察官の責務及び権限
1 検察官は、次のことを行う。
(a)真実を証明するため、この規程に基づく刑事責任があるか否かの評価に関連するすべての事実及び証拠を網羅するよう捜査を及ぼし、並びにその場合において罪があるものとする事情及び罪がないものとする事情を同等に捜査すること。
(b)裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪の効果的な捜査及び訴追を確保するために適切な措置をとり、その場合において被害者及び証人の利益及び個人的な事情(年齢、第七条3に定義する性及び健康を含む。)を尊重し、並びに犯罪(特に、性的暴力又は児童に対する暴力を伴う犯罪)の性質を考慮すること。
(c)この規程に基づく被疑者の権利を十分に尊重すること。
2 検察官は、次の(a)又は(b)の場合には、いずれかの国の領域において捜査を行うことができる。
(a)第九部の規定に基づく場合
(b)第五十七条3(d)の規定に基づく予審裁判部の許可がある場合
3 検察官は、次の行為を行うことができる。
(a)証拠を収集し、及び検討すること。
(b)被疑者、被害者及び証人の出頭を要請し、並びにこれらの者を尋問すること。
(c)国若しくは政府間機関による協力又は政府間取極に基づく協力であってそれぞれの権限又は任務に基づくものを求めること。
(d)国、政府間機関又は個人の協力を促進するために必要な取決め又は取極であってこの規程に反しないものを締結すること。
(e)手続のいずれの段階においても、専ら新たな証拠を得るために秘密を条件として自己が入手する文書又は情報について、これらの情報の提供者が同意しない限り開示しないことに同意すること。
(f)情報の秘密性、関係者の保護又は証拠の保全を確保するために必要な措置をとること又は必要な措置をとるよう要請すること。
第五十五条 捜査における被疑者の権利
1 被疑者は、この規程による捜査に関し、次の権利を有する。
(a)自己負罪又は有罪の自白を強要されないこと。
(b)あらゆる形態の強制、強迫若しくは脅迫、拷問又はその他のあらゆる形態の残虐な、非人道的な若しくは体面を汚す待遇若しくは処罰を与えられないこと。
(c)自己が十分に理解し、かつ、話す言語以外の言語によって尋問される場合には、有能な通訳の援助及び公正の要件を満たすために必要な翻訳を無償で与えられること。
(d)恣意的に逮捕され、又は抑留されないこと。また、この規程に定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われないこと。
2 被疑者が裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪を行ったと信ずるに足りる理由があり、かつ、当該被疑者が検察官により又は第九部の規定に基づく請求によって国内当局により尋問されようとしている場合には、当該被疑者は、次の権利も有するものとし、その旨を尋問に先立って告げられる。
(a)尋問に先立ち、当該被疑者が裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪を行ったと信ずるに足りる理由があることを告げられること。
(b)黙秘をすること。この黙秘は、有罪又は無罪の決定において考慮されない。
(c)自ら選任する弁護人を持つこと。また、弁護人がおらず、かつ、裁判の利益のために必要な場合には、十分な支払手段を有しないときは自らその費用を負担することなく、弁護人を付されること。
(d)自ら任意に弁護人に係る権利を放棄した場合を除くほか、弁護人の立会いの下に尋問されること。
第五十六条 得難い捜査の機会に関する予審裁判部の役割
1(a)検察官は、ある捜査が証人から証言若しくは供述を取得し、又は証拠を見分し、収集し若しくは分析するための得難い機会を提供するものであり、かつ、これらの証言、供述又は証拠を後に公判のために利用することができなくなるおそれがあると判断する場合には、その旨を予審裁判部に通知する。
(b)(a)に規定する通知があった場合には、予審裁判部は、検察官の要請により、手続の効率性及び信頼性を確保し、並びに特に被疑者の権利を保護するために必要な措置をとることができる。
(c)検察官は、予審裁判部が別段の命令を発しない限り、(a)に規定する捜査に関連して逮捕された者又は召喚状に応じて出頭した者に対し、当該者がその事案について陳述を行うことができるように関連情報を提供する。
2 1(b)に規定する措置には、次のことを含めることができる。
(a)従うべき手順に関して勧告し、又は命令すること。
(b)手続の記録を作成するよう指示すること。
(c)支援する専門家を任命すること。
(d)逮捕された者若しくは召喚状に応じて裁判所に出頭した者のための弁護人が手続に参加することを許可すること又は逮捕若しくは出頭がいまだなされていない場合若しくは弁護人が指定されていない場合には、手続に参加し、及び被疑者の利益を代表する弁護人を任命すること。
(e)証拠の収集及び保全並びに関係者の尋問について監視し、及び勧告又は命令を行うため、予審裁判部のうちから裁判官一人又は必要な場合には予審裁判部門若しくは第一審裁判部門のうちから対応可能な裁判官一人を指名すること。
(f)証拠を収集し、又は保全するために必要なその他の措置をとること。
3(a)予審裁判部は、検察官がこの条の規定に基づく措置を求めなかった場合であっても、裁判において被告人のために不可欠であると認める証拠を保全するためにそのような措置をとることが必要であると判断するときは、検察官が当該措置を要請しなかったことに十分な理由があるか否かについて検察官と協議する。予審裁判部は、その協議により、検察官が当該措置を要請しなかったことが正当化されないと結論する場合には、職権によって当該措置をとることができる。
(b)職権によって措置をとる旨のこの3の規定に基づく予審裁判部の決定について、検察官は、異議を申し立てることができる。その異議の申立てについては、迅速に審理する。
4 この条の規定に従って公判のために保全され若しくは収集される証拠又はその記録の許容性は、第六十九条の規定に従って公判において規律され、及び第一審裁判部が決定する重要性を与えられる。
第五十七条 予審裁判部の任務及び権限
1 予審裁判部は、この規程に別段の定めがある場合を除くほか、この条の規定に従って任務を遂行する。
2(a)第十五条、第十八条、第十九条、第五十四条2、第六十一条7及び第七十二条の規定に従ってなされる予審裁判部の命令又は決定は、その裁判官の過半数の同意を得なければならない。
(b)(a)に規定する場合以外の場合には、手続及び証拠に関する規則に別段の定めがあるとき又は予審裁判部の過半数により別段の定めをするときを除くほか、予審裁判部の一人の裁判官がこの規程に定める任務を遂行することができる。
3 予審裁判部は、この規程に定める他の任務のほか、次の任務を遂行することができる。
(a)検察官の要請により、捜査のために必要とされる命令及び令状を発すること。
(b)逮捕された者又は次条の規定に基づく召喚状に応じて出頭した者の要請により、防御の準備において当該者を支援するために必要な命令(前条に規定する措置を含む。)を発し、又は第九部の規定に基づく協力を求めること。
(c)必要な場合には、被害者及び証人の保護並びにこれらの者のプライバシーの保護、証拠の保全、逮捕された者又は召喚状に応じて出頭した者の保護並びに国家の安全保障に関する情報の保護のための措置をとること。
(d)検察官に対し、第九部の規定に基づく締約国の協力を確保することなく当該締約国の領域内において特定の捜査上の措置をとることを許可すること。ただし、その事件について、可能な場合には当該締約国の見解を考慮した上で、当該協力を実施する権限を有する当局又は司法制度の構成要素の欠如のために当該締約国が当該協力を明らかに実施することができない旨の決定を予審裁判部が行った場合に限る。
(e)次条の規定に従って逮捕状又は召喚状が発せられている場合には、この規程及び手続及び証拠に関する規則の規定に従い、証拠の証明力及び関係当事者の権利を十分に考慮した上で、第九十三条1(k)の規定に基づき締約国の協力を求めることにより、特に被害者の最終的な利益のために没収のための保全措置をとること。
第五十八条 予審裁判部による逮捕状又は召喚状の発付
1 予審裁判部は、捜査の開始後いつでも、検察官の請求により、当該請求及び検察官が提出した証拠その他の情報を検討した上で、次の(a)及び(b)の要件に該当していると認める場合には、被疑者に係る逮捕状を発する。
(a)当該被疑者が裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪を行ったと信ずるに足りる合理的な理由が存在すること。
(b)当該被疑者の逮捕が次のいずれかのことに必要と認められること。
(i)当該被疑者の出廷を確保すること。
(ii)当該被疑者が捜査又は訴訟手続を妨害せず、又は脅かさないことを確保すること。
(iii)妥当な場合には、当該被疑者が当該犯罪又は裁判所の管轄権の範囲内にあり、かつ、同一の状況から生ずる関連する犯罪を継続して行うことを防止すること。
2 検察官の請求には、次の事項を含める。
(a)被疑者の氏名その他当該被疑者を特定する関連情報
(b)裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪であって当該被疑者が行ったとされるものに関する具体的な言及
(c)当該犯罪を構成するとされる事実の簡潔な説明
(d)当該被疑者が当該犯罪を行ったと信ずるに足りる合理的な理由を証明する証拠その他の情報の要約
(e)検察官が当該被疑者を逮捕することが必要であると信ずる理由
3 逮捕状には、次の事項を含める。
(a)被疑者の氏名その他当該被疑者を特定する関連情報
(b)裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪であって当該被疑者の逮捕が求められているものに関する具体的な言及
(c)当該犯罪を構成するとされる事実の簡潔な説明
4 逮捕状は、裁判所が別段の命令を発するまでの間、効力を有する。
5 裁判所は、逮捕状に基づき、第九部の規定により被疑者の仮逮捕又は逮捕及び引渡しを請求することができる。
6 検察官は、予審裁判部に対し、逮捕状に記載された犯罪を変更し、又はこれに追加することにより当該逮捕状を修正するよう要請することができる。予審裁判部は、変更され、又は追加された犯罪を被疑者が行ったと信ずるに足りる合理的な理由があると認める場合には、当該逮捕状をそのように修正する。
7 検察官は、逮捕状を求めることに代わるものとして、被疑者に出頭を命ずる召喚状を予審裁判部が発することを請求することができる。予審裁判部は、当該被疑者が行ったとされる犯罪を行ったと信ずるに足りる合理的な理由があり、かつ、その出頭を確保するために召喚状が十分なものであると認める場合には、当該被疑者に出頭を命ずる召喚状を発する(国内法に定めがあるときは、自由を制限する条件(抑留を除く。)を付するか否かを問わない。)。召喚状には、次の事項を含めるものとし、これを当該被疑者に送付する。
(a)当該被疑者の氏名その他当該被疑者を特定する関連情報
(b)当該被疑者が出頭すべき特定の日
(c)裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪であって当該被疑者が行ったとされるものに関する具体的な言及
(d)当該犯罪を構成するとされる事実の簡潔な説明
第五十九条 拘束を行う国における逮捕の手続
1 仮逮捕又は逮捕及び引渡しの請求を受けた締約国は、その国内法及び第九部の規定に従い、被疑者を逮捕するための措置を直ちにとる。
2 逮捕された者は、拘束を行う国の権限のある司法当局に遅滞なく引致されるものとし、当該司法当局は、自国の国内法に従って次のことを判断する。
(a)当該者が逮捕状の対象とされていること。
(b)当該者が適正な手続に従って逮捕されたこと。
(c)当該者の権利が尊重されていること。
3 2に規定する者は、拘束を行う国の権限のある当局に対し、引渡しまでの間暫定的な釈放を請求する権利を有する。
4 拘束を行う国の権限のある当局は、3に規定する請求について決定を行うに当たり、行われたとされる犯罪の重大性にかんがみ、暫定的な釈放を正当化する緊急かつ例外的な状況が存在するか否か及び当該拘束を行う国が2に規定する者を裁判所に引き渡す義務を履行することができることを確保するために必要な保障措置が存在するか否かを検討する。当該当局は、逮捕状が前条1(a)及び(b)の規定に従って適切に発せられたか否かを検討することはできない。
5 予審裁判部は、暫定的な釈放の請求について通報されるものとし、拘束を行う国の権限のある当局に対して勧告を行う。当該当局は、その決定を行う前に、当該勧告(2に規定する者の逃亡を防止するための措置に関する勧告を含む。)に十分な考慮を払う。
6 2に規定する者に暫定的な釈放が認められた場合には、予審裁判部は、その暫定的な釈放の状況について定期的に報告するよう要請することができる。
7 2に規定する者は、拘束を行う国が引渡しを決定した後、できる限り速やかに裁判所に引き渡される。
第六十条 裁判所における最初の手続
1 被疑者が裁判所に引き渡され、又は自発的に若しくは召喚状に応じて出頭した場合には、予審裁判部は、当該被疑者が行ったとされる犯罪及びこの規程に基づく被疑者の権利(公判までの間暫定的な釈放を請求する権利を含む。)について、当該被疑者が告げられていることを確認する。
2 逮捕された者は、公判までの間暫定的な釈放を請求することができる。予審裁判部は、第五十八条1に定める要件に該当していると認める場合には当該者を引き続き拘禁し、そのように認めない場合には条件付又は無条件で当該者を釈放する。
3 予審裁判部は、2に規定する者の拘禁又は釈放についての決定を定期的に再検討するものとし、また、検察官又は当該者の要請によっていつでもその決定を再検討することができる。予審裁判部は、そのような再検討に当たり、状況の変化によって必要と認める場合には、拘禁、釈放又は釈放の条件についての決定を修正することができる。
4 予審裁判部は、被疑者が検察官による許容されない遅延のために公判前に不合理な期間拘禁されないことを確保する。そのような遅延が生じた場合には、裁判所は、条件付又は無条件で当該被疑者を釈放することを検討する。
5 予審裁判部は、必要な場合には、釈放された者の出頭を確保するために逮捕状を発することができる。
第六十一条 公判前の犯罪事実の確認
1 予審裁判部は、2の規定に従うことを条件として、被疑者の引渡し又は自発的な出頭の後合理的な期間内に、検察官が公判を求めようとしている犯罪事実を確認するための審理を行う。その審理は、検察官並びに訴追された者及びその弁護人の立会いの下に行う。
2 予審裁判部は、訴追された者の立会いがなくても、検察官の要請又は自己の職権により、次の場合には、検察官が公判を求めようとしている犯罪事実を確認するために審理を行うことができる。
(a)当該者が自己の立会いの権利を放棄した場合
(b)当該者が逃亡した場合又は当該者を発見することができない場合であって、当該者の出頭を確保し、並びに当該者に対して犯罪事実及びその犯罪事実を確認するための審理が行われることを通知するためのすべての合理的な措置がとられたとき。
これらの場合において、予審裁判部が裁判の利益のためになると判断するときは、当該者は、弁護人によって代表される。
3 訴追された者に対しては、審理の前の合理的な期間内に、次のものを提供する。
(a)検察官が当該者を裁判に付そうとしている犯罪事実を記載した文書の写し
(b)審理において検察官が依拠しようとしている証拠についての通知
予審裁判部は、審理のための情報の開示に関する命令を発することができる。
4 審理の前、検察官は、捜査を継続し、及び犯罪事実の改定又は撤回を行うことができる。訴追された者は、審理の前に犯罪事実の改定又は撤回について妥当な通知を受ける。検察官は、犯罪事実を撤回する場合には、予審裁判部に対してその撤回の理由を通知する。
5 審理において、検察官は、訴追された者が訴追された犯罪を行ったと信ずるに足りる実質的な理由を証明するために十分な証拠をもってそれぞれの犯罪事実を裏付けなければならない。検察官は、証拠書類又はその要約に依拠することができるものとし、公判における証言が予定されている証人を招致する必要はない。
6 審理において、訴追された者は、次のことを行うことができる。
(a)犯罪事実について異議を申し立てること。
(b)検察官が提出する証拠について異議を申し立てること。
(c)証拠を提出すること。
7 予審裁判部は、審理に基づき、訴追された者が訴追されたそれぞれの犯罪を行ったと信ずるに足りる実質的な理由を証明するために十分な証拠が存在するか否かを決定し、その決定に基づいて次のことを行う。
(a)十分な証拠が存在すると決定した犯罪事実について確認し、及び確認された犯罪事実について当該者を公判のために第一審裁判部に送致すること。
(b)十分な証拠が存在しないと決定した犯罪事実についての確認を拒否すること。
(c)審理を延期し、かつ、検察官に対して次のことを検討するよう要請すること。
(i)特定の犯罪事実について更なる証拠を提出し、又は更に捜査を行うこと。
(ii)提出された証拠が裁判所の管轄権の範囲内にある異なる犯罪を証明すると認められることを理由として犯罪事実を改定すること。
8 検察官は、予審裁判部が犯罪事実についての確認を拒否する場合であっても、追加的な証拠によって要請が裏付けられるときは、その後に確認の要請を行うことを妨げられない。
9 検察官は、犯罪事実が確認されてから公判が開始されるまでの間、予審裁判部の許可を得て、かつ、被告人に通知した後に犯罪事実を改定することができる。検察官が追加的な犯罪事実を加え、又は一層重大な犯罪事実に改めることを求める場合には、これらの犯罪事実を確認するためのこの条の規定に基づく審理が行われなければならない。検察官は、公判の開始後、第一審裁判部の許可を得て犯罪事実を撤回することができる。
10 既に発せられたいかなる令状も、予審裁判部により確認されなかった犯罪事実又は検察官により撤回された犯罪事実について効力を失う。
11 この条の規定に従って犯罪事実が確認された後、裁判所長会議は、第一審裁判部を組織する。第一審裁判部は、9及び第六十四条4の規定に従いその後の手続を行う責任を有するものとし、これらの手続において関連し、かつ、適用することができる予審裁判部の任務を遂行することができる。

第六部 公判

第六十二条 公判の場所
公判の場所は、別段の決定が行われる場合を除くほか、裁判所の所在地とする。
第六十三条 被告人の在廷による公判
1 被告人は、公判の間在廷するものとする。
2 第一審裁判部は、在廷している被告人が公判を妨害し続ける場合には、当該被告人を退廷させることができるものとし、必要な場合には通信技術を使用することにより、被告人が法廷の外から公判を観察し、及び弁護人に指示することができるようにするための措置をとる。このような措置については、他の合理的な代替措置が十分でないことが判明した後の例外的な状況においてのみ、かつ、真に必要な期間においてのみとるものとする。
第六十四条 第一審裁判部の任務及び権限
1 この条に規定する第一審裁判部の任務及び権限は、この規程及び手続及び証拠に関する規則に従って行使する。
2 第一審裁判部は、公判が、公正かつ迅速なものであること並びに被告人の権利を十分に尊重して、かつ、被害者及び証人の保護に十分な考慮を払って行われることを確保する。
3 この規程に従って事件の公判を割り当てられたときは、当該事件を取り扱う第一審裁判部は、次のことを行う。
(a)当事者と協議し、公判手続の公正かつ迅速な実施を促進するために必要な手続を採用すること。
(b)公判で使用する一又は二以上の言語を決定すること。
(c)この規程の他の関連する規定に従うことを条件として、事前に開示されていない文書又は情報を、公判のために十分な準備をすることができるよう公判の開始前に十分な余裕をもって開示するための措置をとること。
4 第一審裁判部は、効果的かつ公正な任務の遂行に必要な場合には、予備的な問題を予審裁判部に又は必要なときは予審裁判部門における対応可能な裁判官に付託することができる。
5 第一審裁判部は、適当な場合には、当事者に通知することにより、二人以上の被告人に対する犯罪事実に関して併合し、又は分離することを指示することができる。
6 第一審裁判部は、公判前に又はその過程において任務を遂行するに当たり、必要に応じて次のことを行うことができる。
(a)第六十一条11に規定する予審裁判部の任務を遂行すること。
(b)必要な場合にはこの規程に基づき国の援助を得ることにより、証人の出席及び証言並びに文書その他の証拠の提出を求めること。
(c)秘密の情報を保護するための措置をとること。
(d)当事者が公判前に既に収集し、又は公判の間に提出した証拠に加え、証拠の提出を命ずること。
(e)被告人、証人及び被害者を保護するための措置をとること。
(f)その他の関連する事項について決定すること。
7 公判は、公開で行う。ただし、第一審裁判部は、第六十八条に規定する目的のため又は証拠として提出される秘密の若しくは機微に触れる情報を保護するため、特別の事情により特定の公判手続を非公開とすることを決定することができる。
8(a)公判の開始時において、第一審裁判部は、予審裁判部が事前に確認した犯罪事実を被告人に対して読み聞かせ、当該被告人が当該犯罪事実の性質を理解していることを確認する。第一審裁判部は、当該被告人に対し、次条の規定に従って有罪を自認する機会又は無罪の陳述をする機会を与える。
(b)公判において、裁判長は、公判手続の実施(公正かつ公平な態様によって実施されることを確保することを含む。)について指示を与えることができる。当事者は、裁判長の指示に従うことを条件として、この規程に従って証拠を提出することができる。
9 第一審裁判部は、当事者の申立て又は自己の職権により、特に次のことを行う権限を有する。
(a)証拠の許容性又は関連性を決定すること。
(b)審理の過程において秩序を維持するために必要なすべての措置をとること。
10 第一審裁判部は、公判の完全な記録であって公判手続を正確に反映したものが作成され、及び裁判所書記によって保持され、かつ、保存されることを確保する。
第六十五条 有罪の自認についての公判手続
1 第一審裁判部は、被告人が前条8(a)の規定に従って有罪を自認する場合には、次のことが認められるか否かを判断する。
(a)被告人が有罪を自認することの性質及び結果を理解していること。
(b)被告人が弁護人と十分に協議した後に自発的に自認していること。
(c)有罪の自認が、次に掲げるものに含まれる事件の事実によって裏付けられていること。
(i)検察官が提起し、かつ、被告人が自認した犯罪事実
(ii)検察官が提示する資料であって、犯罪事実を補足し、かつ、被告人が受け入れるもの
(iii)証人の証言等検察官又は被告人が提出するその他の証拠
2 第一審裁判部は、1に規定することが認められる場合には、提出された追加的な証拠とともに有罪の自認を当該有罪の自認に係る犯罪の立証に求められるすべての不可欠な事実を証明するものとして認めるものとし、被告人を当該犯罪について有罪と決定することができる。
3 第一審裁判部は、1に規定することが認められない場合には、有罪の自認がなされなかったものとみなす。この場合には、この規程に定める通常の公判手続に従って公判を続けることを決定するものとし、また、事件を他の第一審裁判部に移送することができる。
4 第一審裁判部は、裁判の利益、特に被害者の利益のために事件について一層完全な事実の提示が必要であると認める場合には、次のことを行うことができる。
(a)検察官に対し、証人の証言を含む追加的な証拠の提出を求めること。
(b)この規程に定める通常の公判手続に従って公判を続けることを決定すること。この場合には、有罪の自認がなされなかったものとみなし、事件を他の第一審裁判部に移送することができる。
5 検察官と被告人との間の協議であって、犯罪事実の改定、有罪の自認又は科される刑罰に関するものは、裁判所を拘束しない。
第六十六条 無罪の推定
1 いずれの者も、適用される法に基づいて裁判所において有罪とされるまでは無罪と推定される。
2 被告人の有罪を証明する責任は、検察官にある。
3 裁判所は、被告人を有罪と決定するためには、合理的な疑いを超えて当該被告人の有罪を確信していなければならない。
第六十七条 被告人の権利
1 被告人は、犯罪事実の決定に当たり、この規程を考慮した上で公開審理を受ける権利、公正かつ公平な審理を受ける権利及び少なくとも次の保障を十分に平等に受ける権利を有する。
(a)自己が十分に理解し、かつ、話す言語で、犯罪事実の性質、理由及び内容を速やかにかつ詳細に告げられること。
(b)防御の準備のために十分な時間及び便益を与えられ、並びに自ら選任する弁護人と自由かつ内密に連絡を取ること。
(c)不当に遅延することなく裁判に付されること。
(d)第六十三条2の規定に従うことを条件として、公判に出席すること、直接に又は自ら選任する弁護人を通じて防御を行うこと、弁護人がいない場合には弁護人を持つ権利を告げられること及び裁判の利益のために必要な場合には、十分な支払手段を有しないときは自らその費用を負担することなく、裁判所によって弁護人を付されること。
(e)自己に不利な証人を尋問し、又はこれに対して尋問させること並びに自己に不利な証人と同じ条件で自己のための証人の出席及びこれに対する尋問を求めること。また、防御を行うこと及びこの規程に基づいて許容される他の証拠を提出すること。
(f)裁判所の公判手続又は裁判所に提示される文書が自己が十分に理解し、かつ、話す言語によらない場合には、有能な通訳の援助及び公正の要件を満たすために必要な翻訳を無償で与えられること。
(g)証言又は有罪の自白を強要されないこと及び黙秘をすること。この黙秘は、有罪又は無罪の決定において考慮されない。
(h)自己の防御において宣誓せずに口頭又は書面によって供述を行うこと。
(i)自己に挙証責任が転換されず、又は反証の責任が課されないこと。
2 検察官は、この規程に定める他の開示のほか、被告人に対し、できる限り速やかに、自己が保持し、又は管理する証拠であって、当該被告人の無罪を示し若しくは無罪を示すことに資すると信じ若しくは当該被告人の罪を軽減することに資すると信ずるもの又は訴追に係る証拠の信頼性に影響を及ぼし得るものを開示する。この2の規定の適用について疑義がある場合には、裁判所が決定する。
第六十八条 被害者及び証人の保護及び公判手続への参加
1 裁判所は、被害者及び証人の安全、心身の健康、尊厳及びプライバシーを保護するために適切な措置をとる。裁判所は、その場合において、すべての関連する要因(年齢、第七条3に定義する性、健康及び犯罪(特に、性的暴力又は児童に対する暴力を伴う犯罪)の性質を含む。)を考慮する。検察官は、特にこれらの犯罪の捜査及び訴追の間このような措置をとる。当該措置は、被告人の権利及び公正かつ公平な公判を害するものであってはならず、また、これらと両立しないものであってはならない。
2 裁判所の裁判部は、前条に規定する公開審理の原則の例外として、被害者及び証人又は被告人を保護するため、公判手続のいずれかの部分を非公開で行い、又は証拠の提出を電子的手段その他特別な手段によって行うことを認めることができる。これらの措置については、特に、性的暴力の被害者である場合又は児童が被害者若しくは証人である場合には、裁判所が別段の命令を発する場合を除くほか、すべての事情、特に被害者又は証人の意見を尊重して実施する。
3 裁判所は、被害者の個人的な利益が影響を受ける場合には、当該被害者の意見及び懸念が、裁判所が適当と判断する公判手続の段階において並びに被告人の権利及び公正かつ公平な公判を害さず、かつ、これらと両立する態様で、提示され、及び検討されることを認める。これらの意見及び懸念は、裁判所が適当と認めるときは、手続及び証拠に関する規則に従い被害者の法律上の代理人が提示することができる。
4 被害者・証人室は、検察官及び裁判所に対し、第四十三条6に規定する適当な保護及び安全のための措置、カウンセリングその他の援助について助言することができる。
5 この規程に基づく証拠又は情報の開示が証人又はその家族の安全に重大な危険をもたらし得る場合には、検察官は、公判の開始前に行われるいかなる手続のためにも、当該証拠又は情報の提供を差し控え、これらに代えてその要約を提出することができる。これらの措置については、被告人の権利及び公正かつ公平な公判を害さず、かつ、これらと両立する態様で実施する。
6 国は、自国の職員又は代理人の保護及び秘密の又は機微に触れる情報の保護について必要な措置をとるよう要請することができる。
第六十九条 証拠
1 証人は、証言する前に、手続及び証拠に関する規則に従い、自己が真実の証拠を提供することを約束する。
2 公判における証人の証言は、前条又は手続及び証拠に関する規則に定める措置によって提供される場合を除くほか、証人自らが行う。裁判所は、この規程に従うことを条件として、かつ、手続及び証拠に関する規則に従い、ビデオ又はオーディオ技術の手段による証人の直接の又は記録された証言を提供すること及び文書又は反訳した文書を提出することを許可することができる。これらの措置は、被告人の権利を害するものであってはならず、また、これと両立しないものであってはならない。
3 当事者は、第六十四条の規定に従って事件に関連する証拠を提出することができる。裁判所は、真実を確定するために必要と認めるすべての証拠の提出を求める権限を有する。
4 裁判所は、証拠の許容性及び関連性について、特に証拠の証明力及び証拠が公正な公判又は証人の証言の公正な評価に与え得る不利益を考慮して、手続及び証拠に関する規則に従って決定を行うことができる。
5 裁判所は、手続及び証拠に関する規則に定める秘密性に関する特権の定めを尊重し、及び遵守する。
6 裁判所は、公知の事実の立証を要求してはならないが、その事実を裁判上顕著なものと認めることができる。
7 この規程に違反する方法又は国際的に認められた人権を侵害する方法によって得られた証拠は、次の場合には、許容性がないものとする。
(a)その違反又は侵害が当該証拠の信頼性に著しい疑いをもたらす場合
(b)当該証拠を許容することが公判手続の健全性にもとり、かつ、これを著しく害し得る場合
8 裁判所は、国が収集した証拠の許容性及び関連性を決定するに当たり、当該国の国内法の適用に関する決定を行わない。
第七十条 裁判の運営に対する犯罪
1 裁判所は、その裁判の運営に対する次に掲げる犯罪であって故意に行われたものについて管轄権を有する。
(a)前条1の規定に従って真実を述べる義務を有するにもかかわらず虚偽の証言を行うこと。
(b)当事者が虚偽の又は偽造された証拠と知りながらこれを提出すること。
(c)証人を買収し、証人の出席若しくは証言について妨害し若しくは干渉し、証言を行ったことに対して証人に報復を行い、証拠を破壊し若しくは改ざんし、又は証拠の収集を妨げること。
(d)裁判所の構成員に対し、その職務を遂行しないこと又は不適正に遂行することを強要し、又は説得する目的で、妨害し、脅迫し、又は買収すること。
(e)裁判所の構成員に対し、当該構成員又は他の構成員が職務を遂行したことに関して報復を行うこと。
(f)裁判所の構成員がその公の職務に関連して賄賂を要求し、又は受け取ること。
2 この条に規定する犯罪についての裁判所の管轄権の行使を規律する原則及び手続は、手続及び証拠に関する規則に定める原則及び手続とする。この条の規定に基づく手続に関し、裁判所に対して国際協力を提供する条件は、被請求国の国内法によって規律される。
3 裁判所は、有罪判決の場合には、五年を超えない期間の拘禁刑若しくは手続及び証拠に関する規則に定める罰金又はその双方を科することができる。
4(a)締約国は、自国の捜査上又は司法上の手続の健全性に係る犯罪を処罰する自国の刑事法の適用範囲を、この条に規定する裁判の運営に対する犯罪であって自国の領域において又は自国民によって行われたものまで拡張する。
(b)締約国は、裁判所が適当と認める場合にはその要請により、訴追のために自国の権限のある当局に事件を付託する。当該当局は、この事件を誠実に取り扱うものとし、これを効果的に処理することができるようにするために十分な資源を充てるものとする。
第七十一条 裁判所における不当行為に対する制裁
1 裁判所は、在廷する者であって不当行為(公判手続を混乱させ、又は裁判所の指示に従うことを故意に拒否することを含む。)を行うものに対し、手続及び証拠に関する規則に定める一時的又は恒久的な退廷、過料その他これらに類する措置等拘禁以外の行政上の措置によって制裁を科することができる。
2 1に規定する措置の適用を規律する手続は、手続及び証拠に関する規則に定める手続とする。
第七十二条 国家の安全保障に関する情報の保護
1 この条の規定は、国が、その情報又は文書の開示が自国の安全保障上の利益を害し得ると判断する案件について適用する。そのような案件には、第五十六条2及び3、第六十一条3、第六十四条3、第六十七条2、第六十八条6、第八十七条6並びに第九十三条の規定の適用を受ける案件並びにそのような開示が問題となる案件であってその他の手続の段階において生ずるものを含む。
2 この条の規定は、情報又は証拠の提供を要請された者が、その開示がいずれかの国の安全保障上の利益を害し得ることを理由としてその提供を拒否し、又は当該国にその問題を付託する場合であって、当該国がその開示が自国の安全保障上の利益を害し得ると判断していることを確認するときについても、適用する。
3 この条のいかなる規定も、第五十四条3(e)及び(f)の規定に基づいて適用される秘密性に関する要求又は次条の規定の適用を妨げるものではない。
4 いずれの国も、手続のいずれかの段階において自国の情報又は文書が開示されていること又は開示されるおそれがあることを知り、かつ、その開示が自国の安全保障上の利益を害し得ると判断する場合には、この条の規定に従ってこの問題の解決を得るために手続に参加する権利を有する。
5 いずれの国も、情報の開示が自国の安全保障上の利益を害し得ると判断する場合には、この問題を協力的な手段によって解決するため、場合に応じて、検察官、被告人、予審裁判部又は第一審裁判部と共に行動して、これらの者が次に掲げるすべての合理的な措置をとるよう求める。
(a)援助についての請求の修正又は明確化
(b)求められる情報若しくは証拠の関連性についての裁判所の判断又は関連性がある場合であっても自国以外の情報源から証拠を入手することができるか否か若しくは既に入手しているか否かについての裁判所の判断
(c)異なる情報源からの又は異なる形態による情報又は証拠の入手
(d)援助を提供することができる条件(特に、要約又は編集した文書の提出、開示の制限、非公開による又はいずれか一方の当事者による手続の利用その他この規程及び手続及び証拠に関する規則に基づいて認められる保護措置を含む。)についての同意の取得
6 いずれの国も、問題を協力的な手段によって解決するためのすべての合理的な措置をとった後、自国の安全保障上の利益を害することなく情報又は文書を提供し、又は開示し得る手段又は条件がないと認める場合には、検察官又は裁判所に対してその旨を具体的な理由を付して通報する。ただし、その理由を具体的に記載することそれ自体が自国の安全保障上の利益を必然的に害し得る結果となるときは、この限りでない。
7 その後に裁判所は、これらの証拠が関連性を有し、かつ、被告人の有罪又は無罪を証明するために必要であると判断する場合には、次の措置をとることができる。
(a)情報又は文書の開示が第九部に規定する協力についての請求又は2に規定する状況において求められ、かつ、国が第九十三条4に規定する拒否の理由を援用している場合には、次のことを行うことができる。
(i)(ii)に規定する結論を出す前に、当該国の意見を検討するために更なる協議を要請すること。その協議には、適当な場合には、非公開かついずれか一方の当事者による審理を含む。
(ii)その事件の状況にかんがみ被請求国が第九十三条4に規定する拒否の理由を援用することによってこの規程の下での義務に従って行動していないと結論を下す場合には、その理由を明示して第八十七条7の規定に従って問題を付託すること。
(iii)その状況において適当な場合には、事実の存否について被告人の公判において推定を行うこと。
(b)(a)に規定する状況以外の状況においては、次のことを行うことができる。
(i)情報又は文書の開示を命ずること。
(ii)情報又は文書の開示を命じない場合には、その状況において適当なときは、事実の存否について被告人の公判において推定を行うこと。
第七十三条 第三者の情報又は文書
締約国は、自国が保管し、保有し、又は管理する文書又は情報であって、他の国、政府間機関又は国際機関より自国に対して秘密のものとして提供されたものの提出を裁判所により請求される場合には、当該文書又は情報の開示のためにその出所元の同意を求める。出所元が締約国である場合には、当該締約国は、当該文書若しくは情報の開示に同意し、又は前条の規定に従って開示の問題を裁判所との間で解決する。出所元が締約国ではなく、かつ、開示への同意を拒否する場合には、被請求国は、裁判所に対し、秘密性についての出所元に対する既存の義務のために当該文書又は情報を提供することができないことを通報する。
第七十四条 判決のための要件
1 第一審裁判部のすべての裁判官は、公判の各段階に出席し、及び評議に終始参加する。裁判所長会議は、個々の事例に応じ、対応可能な場合には、一人又は二人以上の補充の裁判官を指名することができる。これらの補充の裁判官は、公判の各段階に出席するものとし、第一審裁判部の裁判官が出席し続けることができない場合には、当該第一審裁判部の裁判官と交代する。
2 第一審裁判部の判決は、証拠及び手続全体の評価に基づいて行う。判決は、犯罪事実及びその改定に記載された事実及び状況を超えるものであってはならない。裁判所は、公判において裁判所に提出され、かつ、裁判所において審理された証拠にのみ基づいて判決を行うことができる。
3 第一審裁判部の裁判官は、判決において全員一致の合意を得るよう努めるものとし、全員一致の合意が得られない場合には、判決は、第一審裁判部の裁判官の過半数をもって行う。
4 第一審裁判部の評議は、秘密とする。
5 判決については、書面によるものとし、第一審裁判部の証拠に関する認定及び結論についての十分な、かつ、詳しい理由を付した説明を記載する。第一審裁判部は、一の判決を行う。全員一致の合意が得られない場合には、第一審裁判部の判決には、多数意見及び少数意見を記載する。判決又はその要約については、公開の法廷で言い渡す。
第七十五条 被害者に対する賠償
1 裁判所は、被害者に対する又は被害者に係る賠償(原状回復、補償及びリハビリテーションの提供を含む。)に関する原則を確立する。その確立された原則に基づき、裁判所は、その判決において、請求により又は例外的な状況においては職権により、被害者に対する又は被害者に係る損害、損失及び傷害の範囲及び程度を決定することができるものとし、自己の行動に関する原則を説明する。
2 裁判所は、有罪の判決を受けた者に対し、被害者に対する又は被害者に係る適切な賠償(原状回復、補償及びリハビリテーションの提供を含む。)を特定した命令を直接発することができる。
裁判所は、適当な場合には、第七十九条に規定する信託基金を通じて賠償の裁定額の支払を命ずることができる。
3 裁判所は、この条の規定に基づき命令を発する前に、有罪の判決を受けた者、被害者その他の関係者若しくは関係国又はこれらの代理人の意見を求めることができるものとし、それらの意見を考慮する。
4 裁判所は、この条に基づく権限を行使するに当たり、いずれかの者が裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪について有罪の判決を受けた後、この条の規定に基づいて発することができる命令を執行するため、第九十三条1の規定に基づく措置を求めることが必要か否かを決定することができる。
5 締約国は、第百九条の規定の例により、この条の規定に基づく命令を執行する。
6 この条のいかなる規定も、国内法又は国際法に基づく被害者の権利を害するものと解してはならない。
第七十六条 刑の言渡し
1 第一審裁判部は、有罪判決の場合には、科すべき適切な刑を検討するものとし、公判の間に提出された証拠及び述べられた意見であって刑に関連するものを考慮する。
2 第一審裁判部は、第六十五条の規定が適用される場合を除くほか、公判の終了前に、手続及び証拠に関する規則に従い、刑に関連する追加的な証拠又は意見を審理するための追加的な審理を職権によって行うことができるものとし、検察官又は被告人の要請があるときは、当該追加的な審理を行うものとする。
3 2の規定の適用がある場合には、前条の規定に基づく意見は、2に規定する追加的な審理の間及び必要なときは更なる審理の間に審理される。
4 刑については、公開の場で及び可能な限り被告人の在廷の下に言い渡す。

第七部 刑罰

第七十七条 適用される刑罰
1 裁判所は、第百十条の規定に従うことを条件として、第五条に規定する犯罪について有罪の判決を受けた者に対し、次のいずれかの刑罰を科することができる。
(a)最長三十年を超えない特定の年数の拘禁刑
(b)犯罪の極度の重大さ及び当該有罪の判決を受けた者の個別の事情によって正当化されるときは終身の拘禁刑
2 裁判所は、拘禁刑のほか、次のものを命ずることができる。
(a)手続及び証拠に関する規則に定める基準に基づく罰金
(b)1に規定する犯罪によって直接又は間接に生じた収益、財産及び資産の没収。ただし、善意の第三者の権利を害することのないように行う。
第七十八条 刑の量定
1 裁判所は、刑の量定に当たり、手続及び証拠に関する規則に従い、犯罪の重大さ、有罪の判決を受けた者の個別の事情等の要因を考慮する。
2 裁判所は、拘禁刑を科するに当たり、裁判所の命令に従って既に拘禁された期間がある場合にはその期間を刑期に算入するものとし、また、犯罪の基礎を構成する行為に関連する他の拘禁された期間を刑期に算入することができる。
3 一人の者が二以上の犯罪について有罪の判決を受けた場合には、裁判所は、各犯罪についての刑及びそれらを併合した刑(拘禁刑の全期間を特定したもの)を言い渡す。当該全期間は、少なくとも言い渡された各犯罪についての刑のうちの最長の期間とするものとし、三十年の拘禁刑又は前条1(b)の規定に基づく終身の拘禁刑の期間を超えないものとする。
第七十九条 信託基金
1 締約国会議の決定により、裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪の被害者及びその家族のために信託基金を設置する。
2 裁判所は、その命令により、罰金として又は没収によって徴収された金銭その他の財産を信託基金に移転することを命ずることができる。
3 信託基金は、締約国会議が決定する基準に従って管理される。
第八十条 国内における刑罰の適用及び国内法への影響の否定
この部のいかなる規定も、各国の国内法に定める刑罰の適用を妨げるものではなく、また、この部に規定する刑罰を定めていない国の法律に影響を及ぼすものでもない。

第八部 上訴及び再審

第八十一条 無罪若しくは有罪の判決又は刑の量定に対する上訴
1 第七十四条の規定に基づく判決に対しては、手続及び証拠に関する規則に従い、次のとおり上訴をすることができる。
(a)検察官は、次のいずれかを理由として上訴をすることができる。
(i)手続上の誤り
(ii)事実に関する誤り
(iii)法律上の誤り
(b)有罪の判決を受けた者又は当該者のために行動する検察官は、次のいずれかを理由として上訴をすることができる。
(i)手続上の誤り
(ii)事実に関する誤り
(iii)法律上の誤り
(iv)その他の理由であって手続又は判決の公正性又は信頼性に影響を及ぼすもの
2(a)検察官又は有罪の判決を受けた者は、犯罪と刑との間の不均衡を理由として、手続及び証拠に関する規則に従って当該刑の量定に対して上訴をすることができる。
(b)裁判所は、刑の量定に対する上訴に関し、有罪判決の全部又は一部を取り消し得る理由があると認める場合には、検察官及び有罪の判決を受けた者に対して1(a)又は(b)の規定に基づく理由の提示を求めることができるものとし、また、第八十三条の規定に基づいて有罪判決に関する決定を行うことができる。
(c)裁判所は、専ら1の規定に基づく有罪判決に対する上訴に関し、(a)の規定の下で減刑のための理由があると認める場合には、(b)に規定する手続と同一の手続を適用する。
3(a)有罪の判決を受けた者は、第一審裁判部が別段の命令を発する場合を除くほか、上訴の手続の間、引き続き拘禁される。
(b)有罪の判決を受けた者の拘禁の期間が科された拘禁刑の期間を超える場合には、当該者は、釈放される。ただし、検察官も上訴をしているときは、その釈放は、(c)に規定する条件に従って行われる。
(c)無罪判決の場合には、被告人は、次の(i)及び(ii)の規定が適用されることを条件として、直ちに釈放される。
(i)第一審裁判部は、例外的な状況において、特に、具体的な逃亡の危険性、訴追された犯罪の重大性及び上訴が認められる可能性を考慮した上で、検察官の要請により、上訴の手続の間、当該被告人の拘禁を継続することができる。
(ii)(i)の規定に基づく第一審裁判部の決定に対しては、手続及び証拠に関する規則に従って上訴をすることができる。
4 判決又は刑の執行は、3(a)及び(b)の規定に従うことを条件として、上訴が許される期間及び上訴の手続の間、停止する。
第八十二条 他の決定に対する上訴
1 いずれの当事者も、手続及び証拠に関する規則に従い、次の決定のいずれに対しても上訴をすることができる。
(a)管轄権又は受理許容性に関する決定
(b)捜査され、又は訴追されている者の釈放を認める又は認めない旨の決定
(c)第五十六条3の規定に基づいて職権によって措置をとるとの予審裁判部の決定
(d)手続の公正かつ迅速な実施又は公判の結果に著しい影響を及ぼし得る問題に係る決定であって、上訴裁判部によって速やかに解決されることにより手続を実質的に進めることができると予審裁判部又は第一審裁判部が認めるもの
2 関係国又は検察官は、予審裁判部の許可を得た上で第五十七条3(d)の規定に基づく予審裁判部の決定に対して上訴をすることができる。当該上訴については、迅速に審理する。
3 上訴それ自体は、上訴裁判部が手続及び証拠に関する規則に基づく要請により別段の命令を発しない限り、手続の停止の効力を有しない。
4 被害者の法律上の代理人、有罪の判決を受けた者又は第七十五条の規定に基づく命令によって不利な影響を受ける財産の善意の所有者は、手続及び証拠に関する規則に定めるところにより、賠償の命令に対して上訴をすることができる。
第八十三条 上訴についての手続
1 上訴裁判部は、第八十一条及びこの条の規定に基づく手続を行うに当たり、第一審裁判部のすべての権限を有する。
2 上訴裁判部は、上訴の対象となった手続が判決若しくは刑の量定の信頼性に影響を及ぼすほど不公正であったと認める場合又は上訴の対象となった判決若しくは刑の量定が事実に関する誤り、法律上の誤り若しくは手続上の誤りによって実質的に影響を受けたと認める場合には、次のいずれかのことを行うことができる。
(a)判決又は刑の量定を破棄し、又は修正すること。
(b)異なる第一審裁判部において新たに公判を行うことを命ずること。
 これらの目的のため、上訴裁判部は、原判決をした第一審裁判部に対して事実に係る問題を決定させ、及びその決定を報告させるために当該問題を差し戻し、又は当該問題を決定するために自ら証拠を請求することができる。有罪の判決を受けた者又は当該者のために行動する検察官のみが判決又は刑の量定に対して上訴をしているときは、上訴裁判部は、当該判決又は刑の量定を当該者について不利に修正することができない。
3 上訴裁判部は、刑の量定に対する上訴において刑が犯罪に比して不均衡であると認める場合には、第七部の規定に従って当該刑を変更することができる。
4 上訴裁判部の判決については、裁判官の過半数をもって行い、公開の法廷で言い渡す。判決には、その理由を明示する。全員一致の合意が得られない場合には、上訴裁判部の判決には、多数意見及び少数意見を記載するが、いずれの裁判官も、法律問題に関して個別の意見又は反対意見を表明することができる。
5 上訴裁判部は、無罪の判決を受けた者又は有罪の判決を受けた者が在廷しない場合であっても、判決を言い渡すことができる。
第八十四条 有罪判決又は刑の量定の再審
1 有罪の判決を受けた者若しくはその死亡後は配偶者、子、親若しくは当該有罪の判決を受けた者の死亡の時に存命していた者であって当該有罪の判決を受けた者から再審の請求を行うことについて書面による明示の指示を受けていたもの又は当該被告人のために行動する検察官は、有罪の確定判決又は刑の量定の再審を、次の理由に基づいて上訴裁判部に申し立てることができる。
(a)次の(i)及び(ii)の条件を満たす新たな証拠が発見されたこと。
(i)公判の時に利用することができず、かつ、そのことの全部又は一部が再審を申し立てる当事者の責めに帰すべきものではなかったこと。
(ii)公判において証明されていたならば異なる判決となっていた可能性があるほど十分に重要なものであること。
(b)公判において考慮され、かつ、有罪判決の依拠した決定的な証拠が虚偽の、偽造された又は変造されたものであったことが新たに発見されたこと。
(c)有罪判決又は犯罪事実の確認に参加した裁判官のうち一人又は二人以上が、その事件において、第四十六条の規定に従ってこれらの裁判官の解任が正当化されるほどの重大な不当行為又は義務の重大な違反を行っていたこと。
2 上訴裁判部は、申立てに根拠がないと認める場合には、当該申立てを却下する。上訴裁判部は、当該申立てに根拠があると認める場合には、手続及び証拠に関する規則に定める態様によって各当事者からの聴取を行った後、判決を変更すべきか否かについての決定を行うため、必要に応じ、次のいずれかのことを行うことができる。
(a)原判決をした第一審裁判部を再招集すること。
(b)新たな第一審裁判部を組織すること。
(c)この事案について自己が管轄を保持すること。
第八十五条 逮捕され、又は有罪の判決を受けた者に対する補償
1 違法に逮捕され、又は拘禁された者は、補償を受ける権利を有する。
2 確定判決によって有罪と決定された場合において、その後に、新たな事実又は新しく発見された事実により誤審のあったことが決定的に立証されたことを理由としてその有罪判決が破棄されたときは、当該有罪判決の結果として刑に服した者は、法律に基づいて補償を受ける。ただし、その知られなかった事実が適当な時に明らかにされなかったことの全部又は一部が当該者の責めに帰するものであることが証明される場合は、この限りでない。
3 裁判所は、重大かつ明白な誤審のあったことを立証する決定的な事実を発見するという例外的な状況において、無罪の確定判決又はそのような理由による公判手続の終了の後に釈放された者に対し、手続及び証拠に関する規則に定める基準に従い、自己の裁量によって補償を与えることができる。

第九部 国際協力及び司法上の援助

第八十六条 協力を行う一般的義務
 締約国は、この規程に従い、裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪について裁判所が行う捜査及び訴追において、裁判所に対し十分に協力する。
第八十七条 協力の請求についての一般規定
1(a)裁判所は、締約国に対して協力を求める権限を有する。このような請求については、外交上の経路又は各締約国が批准、受諾、承認又は加入の際に指定する他の適当な経路を通じて送付する。
締約国は、その指定のその後の変更については、手続及び証拠に関する規則に従って行う。
(b)請求については、適当な場合には、(a)の規定の適用を妨げない限りにおいて、国際刑事警察機構又は適当な地域的機関を通じて送付することができる。
2 協力の請求及び請求の裏付けとなる文書については、被請求国が批准、受諾、承認又は加入の際にした選択に従い、被請求国の公用語若しくは裁判所の常用語のうちの一によって行い、又はこれらの言語のうちの一による訳文を添付することによって行う。
その選択のその後の変更については、手続及び証拠に関する規則に従って行う。
3 被請求国は、協力の請求及び請求の裏付けとなる文書を秘密のものとして取り扱う。ただし、請求内容を実施するために開示が必要となる限度においては、この限りでない。
4 裁判所は、この部の規定に従って提供される援助を求めることとの関連で、被害者及び証人となる可能性のある者並びにこれらの者の家族の安全又は心身の健康を確保するために必要な措置(情報の保護に関する措置を含む。)をとることができる。裁判所は、この部の規定に基づいて入手することのできる情報が被害者及び証人となる可能性のある者並びにこれらの者の家族の安全又は心身の健康を保護する方法によって提供され、及び取り扱われるよう要請することができる。
5(a)裁判所は、この規程の締約国でない国に対し、当該国との特別の取極又は協定その他の適当な根拠に基づき、この部の規定に従って援助を提供するよう求めることができる。
(b)裁判所は、この規程の締約国でない国であって裁判所と特別の取極又は協定を締結したものがこれらの取極又は協定に基づく請求に協力しない場合には、締約国会議又はこの事案が安全保障理事会によって裁判所に付託されたものであるときは安全保障理事会に対し、その旨を通報することができる。
6 裁判所は、政府間機関に対して情報又は文書の提供を要請することができる。また、裁判所は、そのような機関の権限又は任務に基づくその他の形態の協力及び援助であって当該機関との合意によって定めるものを要請することができる。
7 締約国がこの規程に反して裁判所による協力の請求に応ぜず、それにより裁判所のこの規程に基づく任務及び権限の行使を妨げた場合には、裁判所は、その旨の認定を行うことができるものとし、締約国会議又はこの事案が安全保障理事会によって裁判所に付託されたものであるときは安全保障理事会に対し、その問題を付託することができる。
第八十八条 国内法の手続の確保
 締約国は、自国の国内法の手続がこの部に定めるすべての形態の協力のために利用可能であることを確保する。
第八十九条 裁判所への人の引渡し
1 裁判所は、ある者の逮捕及び引渡しの請求を第九十一条に規定するその裏付けとなる資料とともに、当該者がその領域に所在するとみられる国に対して送付することができるものとし、当該者の逮捕及び引渡しにおいて当該国の協力を求める。締約国は、この部の規定及び自国の国内法の手続に従って逮捕及び引渡しの請求に応ずる。
2 引渡しを求められた者が第二十条に規定する一事不再理の原則に基づいて国内裁判所に異議の申立てを行う場合には、被請求国は、受理許容性についての関連する決定が行われているか否かを確認するために直ちに裁判所と協議する。事件を受理することが決定されているときは、被請求国は、請求された引渡しの実施を続行する。受理許容性についての決定がなされていないときは、被請求国は、裁判所が受理許容性についての決定を行うまで当該引渡しの実施を延期することができる。
3(a)締約国は、他の国が裁判所に引き渡す者を自国の領域内を通過して護送することについて、自国内の通過が引渡しを妨げ、又は遅延させ得るものでない限り、自国の国内法の手続に従って承認する。
(b)裁判所による通過についての請求は、第八十七条の規定に従って送付される。通過についての請求には、次の事項を含める。
(i)護送される者に関する記述
(ii)犯罪事実及びその法的な評価に関する簡潔な説明
(iii)逮捕及び引渡しのための令状
(c)護送される者は、通過の間抑留される。
(d)護送される者が空路によって護送される場合において通過国の領域に着陸する予定がないときは、その承認は、必要とされない。
(e)通過国は、その領域において予定外の着陸が行われる場合には、(b)に規定する裁判所による通過についての請求を求めることができる。通過国は、通過についての請求を受領して当該通過が行われるようになるまで護送される者を抑留する。ただし、この(e)に規定する目的のための抑留は、請求が予定外の着陸から九十六時間以内に受領されない限り、当該時間を超える期間にわたることができない。
4 被請求国は、裁判所への引渡しを求められている者に関し、自国において引渡しを求められている犯罪とは異なる犯罪について訴訟手続がとられており、又は当該者が服役している場合には、請求を認める決定を行った後に裁判所と協議する。
第九十条 請求の競合
1 前条の規定に基づいて裁判所からある者の引渡しの請求を受ける締約国は、裁判所が当該者の引渡しを求める犯罪の基礎を構成する同一の行為に関し、他の国からも当該者について犯罪人引渡しの請求を受ける場合には、その事実を裁判所及び請求国に通報する。
2 請求国が締約国である場合には、被請求国は、次のときは、裁判所からの請求を優先する。
(a)裁判所が、引渡しを求める事件を第十八条又は第十九条の規定に従って受理することを決定しており、かつ、その決定において請求国がその犯罪人引渡しの請求に関して行った捜査又は訴追を考慮しているとき。
(b)裁判所が1の規定に基づく被請求国からの通報の後に(a)に規定する決定を行うとき。
3 被請求国は、2(a)に規定する決定が行われていない場合には、自国の裁量により、2(b)に規定する裁判所による決定がなされるまでの間、請求国からの犯罪人引渡しの請求についての処理を進めることができるものの、裁判所が事件を受理しないことを決定するまでは、1に規定する者についての犯罪人引渡しを行わないものとする。裁判所の決定は、迅速に行う。
4 被請求国は、請求国がこの規程の締約国でない国であり、かつ、請求国に対して1に規定する者についての犯罪人引渡しを行う国際的な義務を有していない場合であって、裁判所が事件を受理することを決定しているときは、裁判所からの引渡しの請求を優先する。
5 4に規定する場合であって裁判所が事件を受理することを決定していないときは、被請求国は、自国の裁量により、請求国からの犯罪人引渡しの請求についての処理を進めることができる。
6 被請求国は、自国がこの規程の締約国でない請求国に対して1に規定する者についての犯罪人引渡しを行う国際的な義務を有する場合であって、裁判所が事件を受理することを決定しているときは、当該者を裁判所に引き渡すか又は請求国に対して当該者についての犯罪人引渡しを行うかを決定する。被請求国は、その決定に当たり、次の事項を含むすべての関連する事項を考慮する。
(a)それぞれの請求の日付
(b)請求国の利益(適当な場合には、犯罪が請求国の領域内で行われたか否か並びに被害者及び引渡しを求められている者の国籍を含む。)
(c)裁判所と請求国との間においてその後に引渡しが行われる可能性
7 被請求国は、裁判所が当該者の引渡しを求める犯罪を構成する行為以外の行為に関して他の国から当該者についての犯罪人引渡しの請求を受ける場合には、次のことを行う。
(a)請求国に対して当該者についての犯罪人引渡しを行う国際的な義務を有していない場合には、裁判所からの請求を優先すること。
(b)請求国に対して当該者についての犯罪人引渡しを行う国際的な義務を有している場合には、当該者を裁判所に引き渡すか又は請求国に対して犯罪人引渡しを行うかを決定すること。被請求国は、その決定に当たり、6に規定する事項を含むすべての関連する事項を考慮するものとし、当該行為の相対的な重大性及び性質に特別の考慮を払う。
8 被請求国は、この条の規定に基づく通報の後に裁判所が事件を受理しないことを決定し、その後に自国が請求国への犯罪人引渡しを拒否する場合には、裁判所にその拒否の決定を通報する。
第九十一条 逮捕及び引渡しの請求の内容
1 逮捕及び引渡しの請求は、書面によって行う。緊急の場合には、請求は、第八十七条1(a)に定める経路を通じて確認されることを条件として、文書による記録を送付することができる媒体によって行うことができる。
2 第五十八条の規定に従って予審裁判部により逮捕状が発せられている者の逮捕及び引渡しの請求の場合には、当該請求については、次のものを含め、又はこれらによって裏付ける。
(a)引渡しを求める者について記述されている情報であって当該者の特定に十分なもの及び当該者の予想される所在地に関する情報
(b)逮捕状の写し
(c)被請求国における引渡しの手続に関する要件を満たすために必要な文書、説明又は情報。ただし、この要件は、被請求国と他の国との間の条約又は取極に基づく犯罪人引渡しの請求に適用される要件よりも負担を重くすべきではなく、また、可能なときは、裁判所の特性を考慮して軽くすべきである。
3 既に有罪の判決を受けた者の逮捕及び引渡しの請求の場合には、当該請求については、次のものを含め、又はこれらによって裏付ける。
(a)当該者に係る逮捕状の写し
(b)有罪判決の写し
(c)引渡しを求める者が有罪判決にいう者であることを証明する情報
(d)引渡しを求める者が刑の言渡しを受けている場合には、刑の言渡し書の写し並びに拘禁刑のときは既に刑に服した期間及び服すべき残りの期間に関する説明
4 締約国は、裁判所の要請により、2(c)の規定に基づいて適用する自国の国内法に定める要件に関し、一般的に又は個別の事項について裁判所と協議する。その協議の過程において、当該締約国は、自国の国内法に定める個別の要件を裁判所に通報する。
第九十二条 仮逮捕
1 裁判所は、緊急の場合において、引渡しを求める者について、前条に規定する引渡しの請求及びその請求の裏付けとなる文書を提出するまでの間、仮逮捕の請求を行うことができる。
2 仮逮捕の請求については、文書による記録を送付することができる媒体によって行い、次のものを含める。
(a)引渡しを求める者について記述されている情報であって当該者の特定に十分なもの及び当該者の予想される所在地に関する情報
(b)当該者の逮捕が求められる犯罪及びこれらの犯罪を構成するとされる事実(可能な場合には犯罪の日時及び場所を含む。)に関する簡潔な説明
(c)当該者に係る逮捕状又は有罪判決が存在することに関する説明
(d)当該者の引渡しの請求を行うこととなる旨の説明
3 被請求国は、前条に規定する引渡しの請求及びその請求の裏付けとなる文書を手続及び証拠に関する規則に定める期限までに受領しなかった場合には、仮に逮捕した者を釈放することができる。ただし、当該者は、被請求国の法律が許容する場合には、当該期限の満了前に引き渡されることに同意することができる。この場合において、被請求国は、できる限り速やかに当該者を裁判所に引き渡す。
4 引渡しを求められている者が3の規定に基づいて釈放されたことは、その後に引渡しの請求及びその請求の裏付けとなる文書が送付される場合において、当該者を逮捕し、引き渡すことを妨げるものではない。
第九十三条 他の形態の協力
1 締約国は、この部の規定及び国内法の手続に従い、捜査及び訴追に関連する次の援助の提供についての裁判所による請求に応ずる。
(a)人の特定及び人の所在又は物の所在地の調査
(b)証拠(宣誓した上での証言を含む。)の取得及び証拠(裁判所にとって必要な専門家の意見及び報告を含む。)の提出
(c)捜査され、又は訴追されている者に対する尋問
(d)文書(裁判上の文書を含む。)の送達
(e)証人又は専門家として個人が裁判所に自発的に出頭することを容易にすること。
(f)7に規定する者の一時的な移送
(g)場所の見分(墓所の発掘及び見分を含む。)
(h)捜索及び差押えの実施
(i)記録及び文書(公式の記録及び文書を含む。)の提供
(j)被害者及び証人の保護並びに証拠の保全
(k)善意の第三者の権利を害することなく、最終的な没収のために犯罪の収益、財産、資産及び道具を特定し、追跡し、及び凍結又は差押えをすること。
(l)裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪の捜査及び訴追を容易にするため、その他の形態の援助であって被請求国の法律が禁止していないものを行うこと。
2 裁判所は、裁判所に出頭する証人又は専門家に対し、これらの証人又は専門家が被請求国からの出国に先立ついかなる作為又は不作為についても裁判所によって訴追されず、拘束されず、又は身体の自由に対するいかなる制限も課されないとの保証を与える権限を有する。
3 1の規定に従って提出される請求に詳述されている援助に係る特定の措置の実施が、被請求国において一般的に適用される現行の基本的な法的原則に基づいて禁止されている場合には、被請求国は、問題の解決に努めるために裁判所と速やかに協議する。この協議においては、援助を他の方法によって又は条件を付して与えることができるか否かを考慮すべきである。協議を経ても問題を解決することができないときは、裁判所は、請求に対して必要な修正を行う。
4 締約国は、自国の安全保障に関連する文書の提出又は証拠の開示についての請求の場合にのみ、第七十二条の規定に基づいて援助についての請求の全部又は一部を拒否することができる。
5 被請求国は、1(l)に規定する援助についての請求を拒否する前に、特定の条件を付して援助を提供することができるか否か又は後日若しくは他の方法によって援助を提供することができるか否かを検討する。裁判所又は検察官は、条件が付された援助を受け入れる場合には、その条件を遵守する。
6 被請求国は、援助についての請求を拒否する場合には、その拒否の理由を裁判所又は検察官に対して速やかに通報する。
7(a)裁判所は、特定、証言の取得その他の援助のため、拘禁されている者の一時的な移送を請求することができる。被請求国は、次の(i)及び(ii)の条件が満たされる場合には、当該者を移送することができる。
(i)当該者が移送について事情を知らされた上で任意に同意すること。
(ii)被請求国が裁判所との間で合意する条件に従って移送することに同意すること。
(b)移送される当該者は、引き続き拘禁される。裁判所は、移送による目的が満たされたときは、当該者を被請求国に遅滞なく送還する。
8(a)裁判所は、請求において記載されている捜査及び手続に必要となる場合を除くほか、文書及び情報の秘密を確保する。
(b)被請求国は、必要な場合には、検察官に対し文書及び情報を秘密のものとして送付することができる。検察官は、これらの文書及び情報については新たな証拠を取得するためにのみ用いることができる。
(c)被請求国は、その発意により又は検察官の要請により、その後にそのような文書又は情報を開示することに同意することができる。その場合には、これらの文書又は情報は、第五部及び第六部の規定並びに手続及び証拠に関する規則に従って証拠として用いることができる。
9(a)(i)締約国は、引渡し又は犯罪人引渡し以外に係る請求に関し、裁判所から受ける請求と国際的な義務に基づいて他の国から受ける請求とが競合する場合には、裁判所及び当該他の国と協議の上、必要に応じていずれかの請求を延期し、又はいずれかの請求に条件を付することによって双方の請求に応ずるよう努める。
(ii)(i)の規定による解決が得られないときは、競合する請求については、第九十条に定める原則に従って解決する。
(b)裁判所からの請求が国際約束によって第三国又は国際機関の管理の下にある情報、財産又は個人に関するものである場合には、被請求国は、その旨を裁判所に通報するものとし、裁判所は、その請求を当該第三国又は国際機関に対して行う。
10(a)裁判所は、締約国の請求により、裁判所の管轄権の範囲内にある犯罪を構成し、又は当該締約国の国内法に定める重大な犯罪を構成する行為について捜査又は裁判を行う当該締約国に協力し、及び援助を提供することができる。
(b)(i)(a)に規定する援助には、特に次のものを含む。
a 裁判所による捜査又は裁判の過程において得られた陳述、文書その他の形態の証拠の送付
b 裁判所の命令によって拘禁されている者に対する尋問
(ii)(i)aの規定に基づく援助の場合であって、
a 文書その他の形態の証拠がいずれかの国の援助によって得られたときは、その送付には、当該国の同意を必要とする。
b 陳述、文書その他の形態の証拠が証人又は専門家によって提供されたときは、その送付は、第六十八条の規定に従って行う。
(c)裁判所は、この10に定める条件の下で、この規程の締約国でない国からのこの10に規定する援助についての請求に応ずることができる。
第九十四条 進行中の捜査又は訴追に関する請求内容の実施の延期
1 被請求国は、請求内容を即時に実施することが当該請求内容に係る事件と異なる事件について進行中の捜査又は訴追を妨げ得る場合には、当該請求内容の実施を裁判所と合意した期間延期することができる。ただし、その延期は、被請求国における当該捜査又は訴追を完了するために必要な期間を超えてはならない。被請求国は、延期の決定を行う前に、一定の条件を付して援助を直ちに提供することができるか否かを検討すべきである。
2 1の規定に従って延期の決定が行われる場合であっても、検察官は、前条1(j)の規定に基づき証拠を保全する措置を求めることができる。
第九十五条 受理許容性についての異議の申立ての際の請求内容の実施の延期
 裁判所が第十八条又は第十九条の規定に従い受理許容性についての異議の申立てを審議している場合には、被請求国は、この部の規定に基づく請求内容の実施を裁判所による決定がなされるまでの間延期することができる。ただし、裁判所がこれらの条の規定に従い検察官が証拠の収集を行うことができることを特に決定している場合は、この限りでない。
第九十六条 第九十三条に規定する他の形態の援助についての請求の内容
1 第九十三条に規定する他の形態の援助についての請求は、書面によって行う。緊急の場合には、請求は、第八十七条1(a)に定める経路を通じて確認されることを条件として、文書による記録を送付することができる媒体によって行うことができる。
2 請求については、該当する場合には、次のものを含め、又はこれらによって裏付ける。
(a)請求の目的及び求める援助の簡潔な説明(請求の法的根拠及び理由を含む。)
(b)求める援助が提供されるための可能な限り詳細な情報であって、発見し又は特定しなければならないいずれかの者又は場所の所在地又は特定に関するもの
(c)請求の基礎となる重要な事実の簡潔な説明
(d)従うべき手続又は要件の理由及び詳細
(e)請求内容を実施するために被請求国の法律に従って必要とされる情報
(f)求める援助が提供されるためのその他の関連情報
3 締約国は、裁判所の要請により、2(e)の規定に基づいて適用する自国の国内法に定める要件に関し、一般的に又は個別の事項について裁判所と協議する。その協議の過程において、当該締約国は、自国の国内法に定める個別の要件を裁判所に通報する。
4 この条の規定は、必要な場合には、裁判所に対してなされる援助についての請求にも適用する。
第九十七条 協議
 締約国は、この部の規定に基づく請求であって、その関係において、その請求内容の実施を遅らせ、又は妨げるおそれのある問題があると認めるものを受けるときは、この事態を解決するために裁判所と遅滞なく協議する。この問題には、特に次のようなものを含めることができる。
(a)当該請求内容を実施するためには情報が不十分であること。
(b)引渡しの請求のときは、最善の努力にもかかわらず引渡しを求められている者を発見することができないという事実又は行われた捜査により被請求国にいる者が明らかに令状に示された者でないと判断されたという事実
(c)被請求国が当該請求内容をそのままの形態によって実施することが他の国との関係において負っている既存の条約上の義務に違反し得るという事実
第九十八条 免除の放棄及び引渡しへの同意に関する協力
1 裁判所は、被請求国に対して第三国の人又は財産に係る国家の又は外交上の免除に関する国際法に基づく義務に違反する行動を求めることとなり得る引渡し又は援助についての請求を行うことができない。ただし、裁判所が免除の放棄について当該第三国の協力をあらかじめ得ることができる場合は、この限りでない。
2 裁判所は、被請求国に対して派遣国の国民の裁判所への引渡しに当該派遣国の同意を必要とするという国際約束に基づく義務に違反する行動を求めることとなり得る引渡しの請求を行うことができない。ただし、裁判所が引渡しへの同意について当該派遣国の協力をあらかじめ得ることができる場合は、この限りでない。
第九十九条 第九十三条及び第九十六条の規定に基づく請求内容の実施
1 援助についての請求は、被請求国の法律の関連する手続に従い、当該法律によって禁止されていない限り、請求において特定されている方法(請求において示されている手続に従うこと又は請求において特定されている者が実施の過程に立ち会い、及びこれを補助することを認めることを含む。)により実施する。
2 緊急の請求の場合には、これに応じて提供する文書又は証拠については、裁判所の要請により、早急に送付する。
3 被請求国の回答については、その国元来の言語及び様式により送付する。
4 検察官は、この部の他の条の規定の適用を妨げることなく、強制的な措置によることなく実施することができる請求内容(特に、個人の任意に基づき当該個人と面会し、又は当該個人から証拠を取得すること(当該請求内容を実施するために不可欠である場合には被請求国の当局の立会いを伴うことなくこれらを行うことを含む。)及び公共の場所を変更することなく見分を行うことを含む。)の効果的な実施に必要な場合には、いずれかの国の領域において当該請求内容を次のとおり直接実施することができる。
(a)被請求国がその領域において犯罪が行われたとされる国であり、かつ、第十八条又は第十九条の規定に従って受理許容性の決定が行われている場合には、検察官は、被請求国とのすべての可能な協議の後、当該請求内容を直接実施することができる。
(b)(a)に規定する場合以外の場合には、検察官は、被請求国との協議の後、当該被請求国が提起する正当な条件又は関心に従って当該請求内容を実施することができる。被請求国は、この(b)の規定に基づく請求内容の実施について問題があると認めるときは、この事態を解決するために裁判所と遅滞なく協議する。
5 裁判所が聴取し、又は尋問した者に対して国家の安全保障に関連する秘密の情報の開示を防止するための制限を援用することを認める第七十二条の規定は、この条の規定に基づく援助についての請求内容の実施についても、適用する。
第百条 費用
1 被請求国の領域内において請求内容の実施に要する通常の費用は、裁判所が負担する次の費用を除くほか、当該被請求国が負担する。
(a)証人及び専門家の旅費及び安全に関する費用又は第九十三条の規定に基づく拘禁されている者の移送に関する費用
(b)翻訳、通訳及び反訳に係る費用
(c)裁判官、検察官、次席検察官、裁判所書記、裁判所次席書記及び裁判所の機関の職員の旅費及び滞在費
(d)裁判所が請求する専門家の意見又は報告に係る費用
(e)拘束を行う国によって裁判所に引き渡される者の護送に関する費用
(f)請求内容の実施から生ずる可能性のある特別の費用であって協議によって認められるもの
2 1の規定は、適当な場合には、締約国による裁判所に対する請求について適用する。この場合において、実施に要する通常の費用は、裁判所が負担する。
第百一条 特定性の原則
1 この規程に従って裁判所に引き渡された者は、行為又は一連の行為であって自己が引き渡された犯罪の基礎を構成するものを除き、引渡しの前に行った行為のために、訴訟手続に付されず、処罰されず、又は拘禁されない。
2 裁判所は、1に規定する者を裁判所に引き渡した国に対して1に規定する条件を放棄するよう要請することができるものとし、必要な場合には、第九十一条の規定に従って追加的な情報を提供する。締約国は、裁判所に対して放棄を行う権限を有するものとし、放棄を行うよう努めるべきである。
第百二条 用語
 この規程の適用上、
(a)「引渡し」とは、この規程に基づき、国がいずれかの者を裁判所に引き渡すことをいう。
(b)「犯罪人引渡し」とは、条約、協定又は国内法に基づき、一の国がいずれかの者を他の国に引き渡すことをいう。

第十部 刑の執行

第百三条 拘禁刑の執行における国の役割
1(a)拘禁刑は、刑を言い渡された者を受け入れる意思を裁判所に対して明らかにした国の一覧表の中から裁判所が指定する国において執行される。
(b)国は、刑を言い渡された者を受け入れる意思を宣言する際に、裁判所が同意し、かつ、この部の規定に適合した受入れについての条件を付することができる。
(c)個別の事件に関して指定された国は、裁判所の指定を受け入れるか否かを裁判所に対して速やかに通報する。
2(a)刑を執行する国は、拘禁の期間又は程度に実質的に影響を及ぼし得るあらゆる状況(1の規定に従って合意された条件の実施を含む。)を裁判所に通報する。裁判所に対する既知の又は予想し得るそのような状況についての通報は、少なくとも四十五日前までに行う。その間、刑を執行する国は、第百十条に規定する義務に違反するおそれのある行動をとってはならない。
(b)裁判所は、(a)に規定する状況について同意することができない場合には、その旨を刑を執行する国に通報するとともに、次条1の規定に基づいて手続を進める。
3 裁判所は、1の規定に基づく指定を行う裁量を行使するに当たり、次の事項を考慮する。
(a)締約国が手続及び証拠に関する規則に定める衡平な配分の原則に従い拘禁刑を執行する責任を共有すべきであるとの原則
(b)被拘禁者の処遇を規律する広く受け入れられている国際条約上の基準の適用
(c)刑を言い渡された者の意見
(d)刑を言い渡された者の国籍
(e)犯罪若しくは刑を言い渡された者の事情又は効果的な刑の執行に関するその他の要素であって刑を執行する国を指定するに当たり適当と認めるもの
4 いずれの国にも1の規定に基づく指定がなされない場合には、拘禁刑は、第三条2に規定する本部協定に定める条件に従い、接受国が提供する刑務所において執行される。その場合には、拘禁刑の執行によって生ずる費用は、裁判所が負担する。
第百四条 刑を執行する国の指定の変更
1 裁判所は、刑を言い渡された者を他の国の刑務所に移送することをいつでも決定することができる。
2 刑を言い渡された者は、裁判所に対し、刑を執行する国から移送されることをいつでも申し立てることができる。
第百五条 刑の執行
1 拘禁刑は、第百三条1(b)の規定により特定した条件に従うことを条件として、締約国に対して拘束力を有するものとし、締約国は、いかなる場合にも当該拘禁刑を修正してはならない。
2 裁判所のみが上訴及び再審の申立てについて決定する権限を有する。刑を執行する国は、刑を言い渡された者がそのような申立てを行うことを妨げてはならない。
第百六条 刑の執行の監督及び拘禁の条件
1 拘禁刑の執行については、裁判所の監督の対象となるものとし、また、被拘禁者の処遇を規律する広く受け入れられている国際条約上の基準に適合したものとする。
2 拘禁の条件は、刑を執行する国の法律によって規律され、かつ、被拘禁者の処遇を規律する広く受け入れられている国際条約上の基準に適合したものとする。この条件は、いかなる場合にも刑を執行する国における同様の犯罪について有罪の判決を受けた被拘禁者に与えられる条件と同等のものとする。
3 刑を言い渡された者と裁判所との間の連絡は、妨げられず、かつ、秘密とされる。
第百七条 刑を終えた者の移送
1 刑を終えた者であって刑を執行する国の国民でないものについては、当該刑の終了後、刑を執行する国の法律に従い、当該者を受け入れる義務を有する国又は当該者を受け入れることに同意する他の国に移送することができるものとし、その際、これらの国に移送されることとなる当該者の希望を考慮する。ただし、刑を執行する国が当該者に対してその領域内に引き続きとどまることを許可する場合は、この限りでない。
2 いずれの国も1に規定する者の1の規定に基づく他の国への移送に要する費用を負担しない場合には、その費用は、裁判所が負担する。
3 刑を執行する国は、次条の規定に従うことを条件として、その国内法に従い、1に規定する者について裁判又は刑の執行のために犯罪人引渡しを請求している国に犯罪人引渡しを行うことができる。
第百八条 他の犯罪の訴追又は処罰の制限
1 刑を執行する国によって拘禁されている刑を言い渡された者は、当該者が当該刑を執行する国に移送される前に行った行為について訴追、処罰又は第三国への犯罪人引渡しの対象とされない。ただし、当該刑を執行する国の要請により、そのような訴追、処罰又は犯罪人引渡しが裁判所によって認められている場合は、この限りでない。
2 裁判所は、1に規定する者の意見を聴取した後に1に規定する事項を決定する。
3 1の規定は、1に規定する者が裁判所によって科された刑を終えた後に刑を執行する国の領域内に任意に三十日を超えて滞在している場合又は当該国の領域から離れた後に当該国の領域に戻る場合には、適用しない。
第百九条 罰金及び没収に係る措置の実施
1 締約国は、自国の国内法の手続に従い、善意の第三者の権利を害することなく、第七部の規定に基づいて裁判所が発する罰金又は没収の命令を執行する。
2 締約国は、自国が没収の命令を執行することができない場合には、善意の第三者の権利を害することなく、裁判所が没収することを命じた収益、財産又は資産の価値を回復するための措置をとる。
3 財産又は不動産若しくは適当な場合にはその他の財産の売却による収益であって裁判所の判決を執行した結果として締約国が取得したものは、裁判所に移転される。
第百十条 減刑に関する裁判所の再審査
1 刑を執行する国は、裁判所が言い渡した刑期の終了前にその刑を言い渡された者を釈放してはならない。
2 裁判所のみが減刑を決定する権限を有する。裁判所は、1に規定する者の意見を聴取した後にこの事項についての決定を行う。
3 裁判所は、1に規定する者が刑期の三分の二の期間又は終身の拘禁刑の場合には二十五年間刑に服した時に、減刑をすべきか否かを決定するためにこれらの刑を再審査する。このような再審査は、これらの時よりも前に行ってはならない。
4 裁判所は、3に規定する再審査に当たり、次の一又は二以上の要素が存在すると認める場合には、減刑をすることができる。
(a)1に規定する者の裁判所の捜査及び訴追に協力するとの早い時期からの継続的な意思
(b)1に規定する者の自発的な援助であって、他の事件における裁判所の判決及び命令の執行を可能にするもの。特に、被害者の利益のために用いられる罰金、没収又は賠償の命令の対象となる資産の発見のために提供する援助
(c)手続及び証拠に関する規則に定めるその他の要素であって、減刑を正当化するのに十分な明白かつ重大な状況の変化を証明するもの
5 裁判所は、3の規定に基づく最初の再審査において減刑が適当でないと決定する場合であっても、その後、手続及び証拠に関する規則に定める間隔を置いて及び同規則に定める基準を適用して、減刑の問題を再審査する。
第百十一条 逃亡
 有罪の判決を受けた者が拘禁を逃れ、刑を執行する国から逃亡する場合には、当該国は、裁判所と協議の上、現行の二国間又は多数国間の取極に基づき当該者が所在する国に対して当該者の引渡しを請求し、又は裁判所に対して第九部の規定に基づいて当該者の引渡しを求めるよう要請することができる。裁判所は、当該者が刑に服していた国又は裁判所が指定した他の国に当該者を引き渡すよう指示することができる。

第十一部 締約国会議

第百十二条 締約国会議
1 この規程によりこの規程の締約国会議を設置する。各締約国は、締約国会議において一人の代表を有するものとし、代表は、代表代理及び随員を伴うことができる。その他の国であってこの規程又は最終文書に署名したものは、締約国会議においてオブザーバーとなることができる。
2 締約国会議は、次の任務を遂行する。
(a)適当な場合には、準備委員会の勧告を検討し、及び採択すること。
(b)裁判所の運営に関して裁判所長会議、検察官及び裁判所書記に対する管理監督を行うこと。
(c)3の規定により設置される議長団の報告及び活動を検討し、並びにこれらについて適当な措置をとること。
(d)裁判所の予算を検討し、及び決定すること。
(e)第三十六条の規定に従い裁判官の人数を変更するか否かを決定すること。
(f)第八十七条5及び7に規定する請求に協力しないことに関する問題を検討すること。
(g)その他の任務であってこの規程又は手続及び証拠に関する規則に適合するものを遂行すること。
3(a)締約国会議には、三年の任期で締約国会議によって選出される一人の議長、二人の副議長及び十八人の構成員から成る議長団を置く。
(b)議長団は、特に、配分が地理的に衡平に行われること及び世界の主要な法体系が適切に代表されることを考慮して、代表としての性質を有するものとする。
(c)議長団は、必要に応じ、少なくとも年一回会合する。議長団は、締約国会議が任務を遂行するに当たって同会議を補助する。
4 締約国会議は、裁判所の効率性及び経済性を高めるため、必要に応じ、補助機関(裁判所を検査し、評価し、及び調査するための独立した監督機関を含む。)を設置することができる。
5 裁判所長、検察官及び裁判所書記又はこれらの代理人は、適当な場合には、締約国会議及び議長団の会合に出席することができる。
6 締約国会議は、裁判所の所在地又は国際連合本部において年一回会合するものとし、必要な場合には、特別会合を開催する。この規程に別段の定めがある場合を除くほか、特別会合は、議長団の発意により又は締約国の三分の一の要請により招集される。
7 各締約国は、一の票を有する。締約国会議及び議長団においては、決定をコンセンサス方式によって行うようあらゆる努力を払う。コンセンサスに達することができない場合には、この規程に別段の定めがあるときを除くほか、次のとおり決定を行う。
(a)実質事項についての決定は、出席し、かつ、投票する締約国の三分の二以上の多数による議決で承認されることにより行わなければならない。この場合において、締約国の絶対多数をもって投票のための定足数とする。
(b)手続事項についての決定は、出席し、かつ、投票する締約国の単純多数による議決で行う。
8 裁判所の費用に対する分担金の支払が延滞している締約国は、その延滞金の額がその時までの満二年間に当該締約国が支払うべきであった分担金の額に等しいか又はこれを超える場合には、締約国会議及び議長団における投票権を失う。ただし、締約国会議は、支払の不履行が当該締約国にとってやむを得ない事情によると認めるときは、当該締約国に締約国会議及び議長団における投票を認めることができる。
9 締約国会議は、その手続規則を採択する。
10 締約国会議の公用語及び常用語は、国際連合総会の公用語及び常用語とする。

第十二部 財政

第百十三条 財政規則
 裁判所及び締約国会議(議長団及び補助機関を含む。)の会合に関するすべての財政事項については、明示的に別段の定めがある場合を除くほか、この規程及び締約国会議が採択する財政規則によって規律する。
第百十四条 費用の支払
 裁判所及び締約国会議(議長団及び補助機関を含む。)の費用については、裁判所の資金から支払う。
第百十五条 裁判所及び締約国会議の資金
 裁判所及び締約国会議(議長団及び補助機関を含む。)の費用は、締約国会議が決定する予算に定めるところに従い、次の財源より充てる。
(a)締約国が支払う分担金
(b)国際連合総会の承認を受けて国際連合が提供する資金、特に安全保障理事会による付託のために要する費用に関連する資金
第百十六条 任意拠出金
 裁判所は、前条の規定の適用を妨げることなく、追加的な資金として、締約国会議が採択する関連する基準に従い、政府、国際機関、個人、法人その他の主体からの任意拠出金を受領し、及び使用することができる。
第百十七条 分担金の額の決定
 締約国の分担金については、合意する分担率に従って決定する。合意する分担率は、国際連合がその通常予算のために採択した分担率を基礎とし、かつ、当該分担率が立脚する原則に従って調整される。
第百十八条 年次会計検査
 裁判所の記録、帳簿及び決算報告(年次会計報告を含む。)については、独立の会計検査専門家が毎年検査する。

第十三部 最終規定

第百十九条 紛争の解決
1 裁判所の司法上の任務に関する紛争については、裁判所の決定によって解決する。
2 その他の二以上の締約国間の紛争であってこの規程の解釈又は適用に関するもののうち、交渉によってその開始から三箇月以内に解決されないものについては、締約国会議に付託する。締約国会議は、当該紛争を自ら解決するよう努め、又は当該紛争を解決するための追加的な方法(国際司法裁判所規程に基づく国際司法裁判所への付託を含む。)について勧告を行うことができる。
第百二十条 留保
 この規程には、いかなる留保も付することができない。
第百二十一条 改正
1 締約国は、この規程の効力発生から七年を経過した後、その改正を提案することができる。改正案については、国際連合事務総長に提出するものとし、同事務総長は、これをすべての締約国に対して速やかに通報する。
2 締約国会議は、通報の日から三箇月以後に開催するその次回の会合において、出席し、かつ、投票する締約国の過半数による議決で改正案を取り上げるか否かを決定する。締約国会議は、当該改正案を直接取り扱い、又は関係する問題により正当化される場合には、検討会議を招集することができる。
3 締約国会議の会合又は検討会議における改正の採択については、コンセンサスに達することができない場合には、締約国の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
4 改正は、5に規定する場合を除くほか、国際連合事務総長に対する締約国の八分の七による批准書又は受諾書の寄託の後一年ですべての締約国について効力を生ずる。
5 第五条から第八条までの規定の改正は、当該改正を受諾した締約国については、その批准書又は受諾書の寄託の後一年で効力を生ずる。当該改正を受諾していない締約国については、裁判所は、当該改正に係る犯罪であって、当該締約国の国民によって又は当該締約国の領域内において行われたものについて管轄権を行使してはならない。
6 改正が4の規定に従い締約国の八分の七によって受諾されたときは、当該改正を受諾していない締約国は、当該改正の効力発生の後一年以内に通告を行うことによってこの規程から脱退することができる。この脱退は、第百二十七条1の規定にかかわらず、直ちに効力を生ずるが、同条2の規定に従うことを条件とする。
7 国際連合事務総長は、締約国会議の会合又は検討会議において採択された改正をすべての締約国に通報する。
第百二十二条 制度的な性質を有する規定の改正
1 いずれの締約国も、専ら制度的な性質を有する規定、すなわち、第三十五条、第三十六条8及び9、第三十七条、第三十八条、第三十九条1(第一文及び第二文)、2及び4、第四十二条4から9まで、第四十三条2及び3、第四十四条、第四十六条、第四十七条並びに第四十九条の規定の改正について、前条1の規定にかかわらず、いつでも提案することができる。改正案については、国際連合事務総長又は締約国会議が指名する他の者に対して提出するものとし、これらの者は、これをすべての締約国及び締約国会議に参加する他の者に対して速やかに通報する。
2 この条の規定に基づく改正については、コンセンサスに達することができない場合には、締約国会議又は検討会議が締約国の三分の二の多数による議決で採択する。その改正は、締約国会議又は検討会議による採択の後六箇月ですべての締約国について効力を生ずる。
第百二十三条 この規程の検討
1 国際連合事務総長は、この規程の効力発生の後七年目にこの規程の改正を審議するために検討会議を招集する。この規程の検討には、少なくとも第五条に規定する犯罪を含めることができる。検討会議は、締約国会議に参加する者に同一の条件で開放される。
2 その後いつでも、いずれかの締約国の要請があるときは、国際連合事務総長は、1に規定する目的のため、締約国の過半数による承認を得て検討会議を招集する。
3 第百二十一条3から7までの規定は、検討会議において審議されるこの規程の改正の採択及びその効力発生について適用する。
第百二十四条 経過規定
 いずれの国も、第十二条1及び2の規定にかかわらず、この規程の締約国になる際、この規程が当該国について効力を生じてから七年の期間、ある犯罪が当該国の国民によって又は当該国の領域内において行われたとされる場合には、第八条に規定する犯罪類型に関して裁判所が管轄権を有することを受諾しない旨を宣言することができる。この条の規定に基づく宣言は、いつでも撤回することができる。この条の規定については、前条1の規定に従って招集される検討会議で審議する。
第百二十五条 署名、批准、受諾、承認又は加入
1 この規程は、千九百九十八年七月十七日に、ローマにある国際連合食糧農業機関本部において、すべての国による署名のために開放するものとし、その後は、千九百九十八年十月十七日まで、ローマにあるイタリア外務省において署名のために開放しておく。その日の後、この規程は、二千年十二月三十一日まで、ニューヨークにある国際連合本部において署名のために開放しておく。
2 この規程は、署名国によって批准され、受諾され、又は承認されなければならない。批准書、受諾書又は承認書は、国際連合事務総長に寄託する。
3 この規程は、すべての国による加入のために開放しておく。加入書は、国際連合事務総長に寄託する。
第百二十六条 効力発生
1 この規程は、六十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後六十日目の日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。
2 六十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託された後にこの規程を批准し、受諾し若しくは承認し、又はこれに加入する国については、この規程は、その批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の後六十日目の日の属する月の翌月の初日に効力を生ずる。
〔平成一九年七月外務告四一八号により、平成一九・一〇・一から日本国について発効〕
第百二十七条 脱退
1 締約国は、国際連合事務総長にあてた書面による通告によってこの規程から脱退することができる。脱退は、一層遅い日が通告に明記されている場合を除くほか、その通告が受領された日の後一年で効力を生ずる。
2 いずれの国も、その脱退を理由として、この規程の締約国であった間のこの規程に基づく義務(その間に生じた財政上の義務を含む。)を免除されない。脱退は、脱退する国が協力する義務を有している捜査及び手続であって、当該脱退が効力を生ずる日の前に開始されたものに関する裁判所との協力に影響を及ぼすものではなく、また、当該脱退が効力を生ずる日の前に裁判所が既に審議していた問題について審議を継続することを妨げるものでもない。
第百二十八条 正文
 アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの規程の原本は、国際連合事務総長に寄託する。同事務総長は、その認証謄本をすべての国に送付する。
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの規程に署名した。
千九百九十八年七月十七日にローマで作成した。


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