初等科國語 八/シンガポール陷落の夜

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十五 シンガポール陷落の夜[編集]

この夜、
滿洲國皇帝陛下は、
大本營の歴史的な發表を聞し召し、
やをら御起立、
御用掛吉岡少將に、
「吉岡、おまへもいつしよに、  
日本の宮城を遙拜しよう。」
と仰せられ、
うやうやしく最敬禮をあそばされた。
御目には、
御感涙の光るのさへ拜せられた。
更に、皇帝陛下は南方へ向かはせられ、
皇軍の將兵、戰歿の勇士に、
しばし祈念を捧げたまうた。

深更を過ぎて、
お電話があり、
吉岡少將がふたたび參進すると、
「吉岡、今夜、おまへはねられるか。  
今、日本皇室に對し奉り、  
慶祝の親電を、  
書き終つたところである。  
あす朝早く、  
打電の手續きをしてもらひたい。」
と、陛下は仰せられた。
この夜、
陛下のおやすみになつたのは、
午前二時とうけたまはる。

あけて二月十六日、
寒風はだへをさす滿洲のあした、
皇帝陛下は、
建國神廟しんべうに御參進、
天照大神の大前に、
御心ゆくまで御拜をあそばされた。