児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律
児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律をここに公布する。
令和元年六月二十六日
法律第四十六号
児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律
(児童福祉法の一部改正)
第一条 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)の一部を次のように改正する。
第八条第一項中「第八項」を「第九項」に改め、同条第六項の次に次の一項を加える。
児童福祉審議会は、前項の規定により意見を聴く場合においては、意見を述べる者の心身の状況、その者の置かれている環境その他の状況に配慮しなければならない。
第十条に次の一項を加える。
国は、市町村における前項の体制の整備及び措置の実施に関し、必要な支援を行うように努めなければならない。
第十一条第一項第二号中トをチとし、ヘをトとし、ホの次に次のように加える。
ヘ 児童の権利の保護の観点から、一時保護の解除後の家庭その他の環境の調整、当該児童の状況の把握その他の措置により当該児童の安全を確保すること。
第十一条第二項中「対し、」の下に「体制の整備その他の措置について」を加え、同条第四項中「第一項第二号へ」を「第一項第二号ト」に改め、同条に次の二項を加える。
都道府県は、この法律による事務を適切に行うために必要な体制の整備に努めるとともに、当該事務に従事する職員の人材の確保及び資質の向上のために必要な措置を講じなければならない。
国は、都道府県における前項の体制の整備及び措置の実施に関し、必要な支援を行うように努めなければならない。
第十二条に次の二項を加える。
都道府県知事は、第二項に規定する業務の質の評価を行うことその他必要な措置を講ずることにより、当該業務の質の向上に努めなければならない。
国は、前項の措置を援助するために、児童相談所の業務の質の適切な評価の実施に資するための措置を講ずるよう努めなければならない。
第十二条の三第二項中第五号を第七号とし、第四号を第六号とし、第三号の次に次の二号を加える。
四 精神保健福祉士
五 公認心理師
第十二条の三第五項中「又はこれに準ずる資格を有する者が」を「若しくはこれに準ずる資格を有する者又は同項第五号に該当する者が」に改め、同条第六項第一号中「又は同項第二号に該当する者若しくはこれに準ずる資格を有する者」を「、同項第二号に該当する者若しくはこれに準ずる資格を有する者又は同項第五号に該当する者」に改め、同条に次の一項を加える。
前項第一号に規定する指導をつかさどる所員の数は、政令で定める基準を標準として都道府県が定めるものとする。
第十三条第二項中「数は、」の下に「各児童相談所の管轄区域内の人口、児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)第二条に規定する児童虐待(以下単に「児童虐待」という。)に係る相談に応じた件数、第二十七条第一項第三号の規定による里親への委託の状況及び市町村におけるこの法律による事務の実施状況その他の条件を総合的に勘案して」を加え、同条第三項中第六号を第八号とし、第五号を第七号とし、第四号の次に次の二号を加える。
五 精神保健福祉士
六 公認心理師
第十三条第五項中「他の児童福祉司が前項の職務を行うため必要な専門的技術に関する指導及び教育を行う児童福祉司」を「指導教育担当児童福祉司」に改め、同条第六項中「前項の指導及び教育を行う児童福祉司」を「指導教育担当児童福祉司」に改め、同条第四項の次に次の一項を加える。
児童福祉司の中には、他の児童福祉司が前項の職務を行うため必要な専門的技術に関する指導及び教育を行う児童福祉司(次項及び第七項において「指導教育担当児童福祉司」という。)が含まれなければならない。
第二十一条の十の二第一項中「(平成十二年法律第八十二号)」を削る。
第二十五条の三に次の一項を加える。
関係機関等は、前項の規定に基づき、協議会から資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力の求めがあつた場合には、これに応ずるよう努めなければならない。
第三十三条の二第二項に次のただし書を加える。
ただし、体罰を加えることはできない。
第三十三条の十二第二項中「児童虐待の防止等に関する法律第二条に規定する」を削り、「同法」を「児童虐待の防止等に関する法律」に改める。
第三十四条の二十第一項第四号中「児童虐待の防止等に関する法律第二条に規定する」を削る。
第四十七条第三項に次のただし書を加える。
ただし、体罰を加えることはできない。
第二条 児童福祉法の一部を次のように改正する。
第十二条第三項中「のうち」の下に「第二十八条第一項各号に掲げる措置を採ることその他の」を加え、「ものを」を「ものについて、常時弁護士による助言又は指導の下で」に、「ことの重要性に鑑み」を「ため」に改め、同条第四項及び第六項中「第二項」を「第三項」に改め、同条第一項の次に次の一項を加える。
児童相談所の管轄区域は、地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件について政令で定める基準を参酌して都道府県が定めるものとする。
第十二条の三第六項中「指導を」を「心理に関する専門的な知識及び技術を必要とする指導を」に、「次の各号に掲げる指導の区分に応じ、当該各号に定める者」を「第二項第一号に該当する者若しくはこれに準ずる資格を有する者、同項第二号に該当する者若しくはこれに準ずる資格を有する者又は同項第五号に該当する者」に改め、同項各号を削り、同条第七項中「前項第一号」を「前項」に改め、同条に次の一項を加える。
児童の健康及び心身の発達に関する専門的な知識及び技術を必要とする指導をつかさどる所員の中には、医師及び保健師が、それぞれ一人以上含まれなければならない。
第十二条の五中「児童相談所の管轄区域」を「当該都道府県内の児童相談所を援助する中央児童相談所の指定」に改める。
第十三条第三項第二号中「以上」の下に「相談援助業務(」を、「業務」の下に「をいう。第七号において同じ。)」を加え、同項第七号中「児童福祉事業」を「相談援助業務」に改め、同条第六項中「者」の下に「であつて、厚生労働大臣が定める基準に適合する研修の課程を修了したもの」を加える。
(児童虐待の防止等に関する法律の一部改正)
第三条 児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項中「相互間」の下に「又は関係地方公共団体相互間、市町村、児童相談所、福祉事務所、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成十三年法律第三十一号)第三条第一項に規定する配偶者暴力相談支援センター(次条第一項において単に「配偶者暴力相談支援センター」という。)、学校及び医療機関の間」を加え、同条中第七項を第八項とし、第六項を第七項とし、第五項の次に次の一項を加える。
6 児童相談所の所長は、児童虐待を受けた児童が住所又は居所を当該児童相談所の管轄区域外に移転する場合においては、当該児童の家庭環境その他の環境の変化による影響に鑑み、当該児童及び当該児童虐待を行った保護者について、その移転の前後において指導、助言その他の必要な支援が切れ目なく行われるよう、移転先の住所又は居所を管轄する児童相談所の所長に対し、速やかに必要な情報の提供を行うものとする。この場合において、当該情報の提供を受けた児童相談所長は、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十五条の二第一項に規定する要保護児童対策地域協議会が速やかに当該情報の交換を行うことができるための措置その他の緊密な連携を図るために必要な措置を講ずるものとする。
第五条第一項中「病院」の下に「、都道府県警察、婦人相談所、教育委員会、配偶者暴力相談支援センター」を、「弁護士」の下に「、警察官、婦人相談員」を加え、同条中第三項を第五項とし、第二項の次に次の二項を加える。
3 第一項に規定する者は、正当な理由がなく、その職務に関して知り得た児童虐待を受けたと思われる児童に関する秘密を漏らしてはならない。
4 前項の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第二項の規定による国及び地方公共団体の施策に協力するように努める義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。
第六条第二項中「(昭和二十二年法律第百六十四号)」を削る。
第十一条第五項中「第三項」を「第四項」に改め、同項を同条第六項とし、同条第一項から第四項までを一項ずつ繰り下げ、同条に第一項として次の一項を加える。
都道府県知事又は児童相談所長は、児童虐待を行った保護者について児童福祉法第二十七条第一項第二号又は第二十六条第一項第二号の規定により指導を行う場合は、当該保護者について、児童虐待の再発を防止するため、医学的又は心理学的知見に基づく指導を行うよう努めるものとする。
第十一条に次の一項を加える。
7 都道府県は、保護者への指導(第二項の指導及び児童虐待を行った保護者に対する児童福祉法第十一条第一項第二号ニの規定による指導をいう。以下この項において同じ。)を効果的に行うため、同法第十三条第五項に規定する指導教育担当児童福祉司に同項に規定する指導及び教育のほか保護者への指導を行う者に対する専門的技術に関する指導及び教育を行わせるとともに、第八条の二第一項の規定による調査若しくは質問、第九条第一項の規定による立入り及び調査若しくは質問、第九条の二第一項の規定による調査若しくは質問、第九条の三第一項の規定による臨検若しくは捜索又は同条第二項の規定による調査若しくは質問をした児童の福祉に関する事務に従事する職員並びに同法第三十三条第一項又は第二項の規定による児童の一時保護を行った児童福祉司以外の者に当該児童に係る保護者への指導を行わせることその他の必要な措置を講じなければならない。
第十三条第一項中「見込まれる効果」の下に「、当該児童の家庭環境」を加え、同条第四項中「者は」の下に「、正当な理由がなく」を加える。
第十四条第一項中「際して、」の下に「体罰を加えることその他」を加え、「超えて」を「超える行為により」に改める。
第十六条第一項中「第三項まで及び第五項」を「第四項まで及び第六項」に改め、同条第二項中「第十一条第四項」を「第十一条第五項」に改める。
(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の一部改正)
第四条 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成十三年法律第三十一号)の一部を次のように改正する。
第三条第三項第三号中「及び第八条の三」を「、第八条の三及び第九条」に改める。
第九条中「福祉事務所等」を「福祉事務所、児童相談所その他の」に改める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、令和二年四月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 附則第四条、第七条第一項及び第八条の規定 公布の日
二 第二条(次号に掲げる規定を除く。)の規定並びに次条及び附則第三条の規定 令和四年四月一日
三 第二条中児童福祉法第十二条の改正規定(同条第四項及び第六項に係る部分並びに同条第一項の次に一項を加える部分に限る。)及び同法第十二条の五の改正規定 令和五年四月一日
(児童福祉司に関する経過措置)
第二条 前条第二号に掲げる規定の施行の際現に任用されている児童福祉司は、第二条の規定による改正後の児童福祉法(次条において「新法」という。)第十三条第三項の規定により任用された児童福祉司とみなす。
(指導教育担当児童福祉司に関する経過措置)
第三条 附則第一条第二号に掲げる規定の施行前に実施された第二条の規定による改正前の児童福祉法第十三条第九項(第一条の規定による改正前にあっては、同条の規定による改正前の児童福祉法第十三条第八項)に規定する厚生労働大臣が定める基準に適合する研修(厚生労働大臣が定めるものに限る。)は、同号に掲げる規定の施行後は、新法第十三条第六項に規定する厚生労働大臣が定める基準に適合する研修とみなす。
(その他の経過措置の政令への委任)
第四条 前二条に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
(調整規定)
第五条 この法律の施行の日が民法等の一部を改正する法律(令和元年法律第三十四号)の施行の日前である場合には、同法第三条のうち児童福祉法第十一条第一項第二号トの改正規定中「第十一条第一項第二号ト」とあるのは、「第十一条第一項第二号チ」とする。
(児童福祉司の数の基準に関する見直し)
第六条 第一条の規定による改正後の児童福祉法第十三条第二項に規定する政令で定める基準については、児童福祉司の数に対する児童虐待の防止等に関する法律第二条に規定する児童虐待(次条第八項及び第九項において単に「児童虐待」という。)に係る相談に応ずる件数が過重なものとならないよう、必要な見直しが行われるものとする。
(検討等)
第七条 政府は、速やかに、児童相談所の職員の処遇の改善に資するための措置、児童福祉法第十二条の四に規定する児童を一時保護する施設及び同法第三十三条第一項又は第二項の委託を受けて一時保護を行う者の量的拡充に係る方策、当該施設又は当該者が行う一時保護の質的向上に係る方策その他の児童相談所の体制の強化に対する国の支援その他の措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
2 政府は、この法律の施行後一年を目途として、児童福祉法第六条の三第八項に規定する要保護児童を適切に保護するために都道府県及び児童相談所が採る一時保護その他の措置に係る手続の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
3 政府は、この法律の施行後一年を目途として、この法律の施行の状況等を勘案し、児童の福祉に関し専門的な知識及び技術を必要とする支援を行う者についての資格の在り方その他当該者についての必要な資質の向上を図るための方策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
4 政府は、この法律の施行後二年を目途として、児童の保護及び支援に当たって、児童の意見を聴く機会及び児童が自ら意見を述べることができる機会の確保、当該機会における児童を支援する仕組みの構築、児童の権利を擁護する仕組みの構築その他の児童の意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されるための措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
5 政府は、この法律の施行後二年を目途として、民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百二十二条の規定の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
6 政府は、この法律の施行後五年間を目途として、児童相談所及び児童福祉法第十二条の四に規定する児童を一時保護する施設(以下この項及び第八項において「児童相談所等」という。)の整備の状況、児童福祉司その他の児童相談所の職員の確保の状況等を勘案し、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の二十二第一項の中核市及び特別区が児童相談所を設置することができるよう、児童相談所等の整備並びに職員の確保及び育成の支援その他必要な措置を講ずるものとする。
7 政府は、前項の支援を講ずるに当たっては、関係地方公共団体その他の関係団体との連携を図るものとする。
8 政府は、この法律の施行後五年を目途として、第六項の支援その他必要な措置の実施状況、児童相談所の設置状況及び児童虐待をめぐる状況等を勘案し、児童相談所等の整備並びに職員の確保及び育成の支援の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
9 政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後の児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の規定の施行の状況を勘案し、児童虐待の予防及び早期発見のための方策、児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援並びに保護者に対する指導及び支援の在り方その他の児童虐待の防止等に関する施策の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
第八条 政府は、附則第一条第一号に掲げる規定の施行後三年を目途に、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第六条第一項及び第二項の通報の対象となる同条第一項に規定する配偶者からの暴力の形態並びに同法第十条第一項から第四項までの規定による命令の申立てをすることができる同条第一項に規定する被害者の範囲の拡大について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
2 政府は、附則第一条第一号に掲げる規定の施行後三年を目途に、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第一条第一項に規定する配偶者からの暴力に係る加害者の地域社会における更生のための指導及び支援の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(少年法の一部改正)
第九条 少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)の一部を次のように改正する。
第十六条第一項中「第十二条の三第二項第四号」を「第十二条の三第二項第六号」に改める。
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